●「もののけ姫」公開初日レポート
The First Day of "Princess Mononoke"

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●上映開始まで 



●舞台挨拶風景 



●上映終了後 




1997年7月12日より、「もののけ姫」が全国で公開されました。舞台挨拶が行われた有楽町・日劇プラザ前では、前日の昼過ぎから行列が出来始め、徹夜組は500人に達しました。徹夜組だけで第1回上映の定員を満たすほどの記録的人数です。当日も、始発から電車が到着するたびに行列が増えていきました。

この日は朝からあいにくの雨天であったにもかかわらず、朝6時には1000人、7時には2000人もの行列がビルを取り囲みました。この異例の混雑のため、9:00AM開場、9:30AM開映の予定も繰り上がることとなりました。6:40AM頃には早くも入場がはじまり、7:30AMに第1回の上映が開始されました。そして、宮崎監督の舞台挨拶も当初1回だけの予定でしたが、急遽2回行われることとなりました。

しかし、舞台挨拶を見ることが出来たのは徹夜組と一部の始発電車組に限られ、大半の人達は舞台挨拶どころか映画館への入場さえ3時間待ち・5時間待たされることになり、ついには「これから並ばれても、本日中に入場できません」というアナウンスの絶叫が響きわたるという、まさに日本映画史に残る記録的な風景が出現しました。


 
●上映開始まで



「もののけ姫」看板と徹夜組 



日劇プラザ前の状況(5:30AM)



人であふれかえったロビー



取材風景



客席500人、立ち見200人で超満員の館内



 
●舞台挨拶風景



舞台挨拶をする宮崎監督
「もののけ姫」制作にまつわる話を淡々と話しました。
会場を埋め尽くした満員の観客から、盛大な拍手が何度も送られました。



日本テレビの福沢朗アナウンサーのより紹介を受ける出演者。
左から松田洋治、石田ゆり子、宮崎監督。

この舞台挨拶の席上で、セル画の実際の使用枚数が14万4000枚に上ったことが明らかにされました。
また、徹夜組の数は500人、7:00AMの時点で2000人が列を作ったことも併せて報告され、歓声があがりました。


宮崎駿氏と観客



宮崎駿氏の言葉に聴き入る観客



テレビ局の取材スタッフ


挨拶をおわって


満場の拍手が送られる



 
●上映終了後



混雑で近寄れない売店



人で埋め尽くされた入口



入場待ちの行列



入場待ちの行列



入場待ちの行列



満員札止めの表示


舞台挨拶は成功だったか

「もののけ姫」で観客の笑いを誘うシーンは、少なくとも2カ所あります。

ひとつは、川に転落した牛飼いをアシタカが救出してタタラ場へ移動する際に通り抜けた森の中のシーン。コダマがアシタカ達のマネをして、おんぶにだっこで走り抜けるかわいらしさは、思わずくすくす笑いが漏れてしまいます。

もう一つは、山犬の子がサンに「あいつ食べていい?」と聞くシーン。その先にはヤックルが遠くおびえながら立っている。ヤックル=エサという落差に、観衆はドッと沸き上がります。

試写会を見られた方なら、多分この笑いに心当たりがあるのではないかと思います。また、一般向け試写会に先だってマスコミ関係者だけを招待して行われた試写会でも、全く同じところで笑い声が漏れたと言われています。いわゆる客層が異なっても、映画を見に来た目的が異なっていても、スクリーンに集中しておれば同じシーンで笑いが誘われることを意味しており、これは大いに注目されるべき点だと思います。

さて、公開初日。有楽町・日劇プラザ。舞台挨拶有。

全くなかったんです。笑い声が。どこからも。どうして?

大勢の徹夜組、長大な行列、9:30AMから上映の予定が何と2時間も繰り上がるほどの熱気に包まれ、幕が上がると同時に盛大な拍手が会場全体に響きわたり、これ以上ないという位の期待と興奮の中で上映が始まったはずなのに…。

その原因は次第に分かってきました。要するに、みんな上映後に予定されている宮崎監督の舞台挨拶に気をとられていて、スクリーンに注目していなかったんです。ソワソワしていたんです。笑いを誘うシーンを見逃すか、笑う余裕をなくしているほど、会場が一体となっていなかったんです。この日の3回目の上映や他の劇場では、先のふたつのシーンは大いに沸き上がったといいますから、その差は一層際だちます。

上映中なのに交代で席を立つ人。録音用MD交換のためにカシャカシャ音を立てる人。カバンの中にミニライトを突っ込んで機材をチェックする人。ラストが迫って、スタッフの間をすり抜けてスルスルと通路の間に陣取る人…。懐にカメラを忍ばせて。

日劇プラザは決して大きな劇場ではありません。第1回の上映に入れた人のほとんどは徹夜組です。何のための徹夜? 大胆に言い切ってしまえば、この回のメインは舞台挨拶であって、スクリーンに映し出される「もののけ姫」ではないのです。違う? 目当ては宮崎監督であって、映画の方は後日ゆっくりと見に行けばいいんだという会話を聞いてしまったぞ私は。

で、上映が終わると再び盛大な拍手の嵐。でも、これはもしかしたら映画に対する称賛というよりは、「早くコイコイ宮崎監督!」という催促の拍手だったのかもしれません。

宮崎監督が舞台に出てきました。盛大な拍手と、フラッシュの嵐に迎えられて。

監督は、とつとつとですが、しっかりとした口調で語って下さいました。しかし、内容は既に知られたものに終始し、この舞台挨拶のためだけに出てきた言葉というものはありませんでした。

そうですよね。わざわざ舞台挨拶なんかしなくても、いま巷の雑誌に掲載されまくっている各種インタビュー記事の方が、よっぽど詳しく述べられています。「もののけ姫」がたった今上映された後に、監督が舞台に立って、一体何を付け足す必要がありましょうか。何を補足する必要がありましょうか。監督たるもの、映画の中で全てを表現するのであって、舞台挨拶で語るべきことなど何もなくて当然なのです。

もちろん、映画に集中して見ていた人も多いでしょう。しかし、会場全体が一体とはなりませんでした。舞台挨拶が気になるあまり、肝心のスクリーンに注目出来ないとしたら、本末転倒ではないでしょうか。この模様はスポーツ新聞で大々的に取り上げられるはずですが、その実態はいかほどのものでしょう。

これでは、宮崎監督はまるで徹夜組の客寄せトトロ、見せ物じゃあないですか。会場が盛り上がれば盛り上がるほど、世間が騒げば騒ぐほど、宮崎監督と観衆の距離が開いていくような気がします。そう感じるのは私だけでしょうか?

監督がナマで見られる舞台挨拶が目当てでもいいんです。でも、監督が心血を注いで制作した映画こそ、しっかりと見なければいけません。一流の作品には、それにふさわしい鑑賞態度が求められると思います。


リンク

舞台挨拶第1回詳報ホームページ(by Kozaki Kazutaka )


舞台挨拶第2回詳報ホームページ(by Noriyuki Arisaka)





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