●イバラードについて
About the World of Iblard

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イバラード鳥瞰 (C)井上直久
イバラードの世界の全体像です。
画集『イバラード博物誌U』に収録されています。
「イバラード」とは、画家・井上直久氏が表現する様々な世界観の総称です。井上氏が居住する大阪府茨木市をモデルとした空想上の国であるとされています。緑豊かな美しい国で、空には多くの小惑星が浮かび、山があれば草原もあり、海も広がっています。西方はスイテリアという国と、東方はタカツングという国と接しています。ちなみに、この両国は大阪府吹田市と高槻市がモデルであるとされています。

イバラードの世界にも住民がおり、住民は多かれ少なかれ魔法の力を持っています。イバラードは魔法が広く使われている国でもあるのです。イバラードの世界では、自分の思い浮かべたものを形をして表すことをソルマと呼んでいます。多くの住民はシンセスタという魔法の石を使いますが、これをソルマとして、自分の頭の中に思い浮かべた物を他の人に視覚像として見せています。ただし、このソルマという概念は決してイバラードの世界に限った特別なものではなく、私達の日常の中にも普通に存在しているものとされています。例えば、井上氏は「絵」というソルマを用いてイバラードの世界観を表現しているということになります。

宮崎駿氏は、イバラード的な視点で見ることを「イバラード目」と表現しています。このイバラード的な視点で見ると、なんでもない普通の風景でも違った風景に見えてくるそうです。例えば、夜のコンビニエンスストアを「コンビニがこんなに灯りをつけやがって」と思ってみると面白くも何ともありませんが、イバラード的な視点で見ると「おお、美しい!」となります。幻想的な灯りが光り輝く奇妙で不思議な世界に見えてしまう訳です。どんなに特徴のない風景であっても、あるいはどんなに殺風景な光景であっても、イバラード的な視点で見ると独特の味わいが醸し出されてくるということでしょうか。イバラードの世界は、「どこか懐かしい気分させられる風景、見たことがないのに懐かしい思いのする風景」であるとも言われますが、それは決して架空の世界なのではなく、私達の日常の世界とどこかでつながっているからなのかもしれません。

このように考えると、「イバラード」は単なる空想上の世界を指すのではありませんし、まして絵で表現された世界観にとどまる概念でもないことが分かります。すなわち、狭義のイバラードは「井上氏の視点を通して表現された世界」ではありますが、広義のイバラードは「新しい視点の発見」「新しいものの見方・考え方」そのものであると考えることも出来ます。

井上氏は普段より「イバラードの現象について私よりも合理的な説明ができるならそれを採用する」と述べていますが、これはイバラードという世界が井上氏が表現する枠組みを超えて拡がっていることを物語っています。イバラード的なるものは、私達自身の中も存在している、と言えるかもしれません。


(C)井上直久 NAOHISA INOUE


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