●基礎データ&あらすじ
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●スタッフ・声の出演  1996/12/21




●あらすじ  1996/12/21




●主な登場人物の解説  2000/08/10









 
●スタッフ・声の出演


原 作:柊あおい「耳をすませば」
りぼん(集英社刊)
平成元年8月号〜11月号 連載


監 督:近藤喜文
脚 本・絵コンテ:宮崎 駿
プロデューサー:鈴木敏夫
製作総指揮:徳間康快
音 楽:野見祐二




主題歌:「カントリー・ロード」
原 曲:"Take Me Home, Country Roads"
原曲作詞・作曲:Bill Danoff,Taffy Nivert and John Denver
日本語訳詞:鈴木麻美子
補 作:宮崎 駿
編 曲:野見祐二
 唄 :本名陽子




声の出演
月島 雫:本名陽子
天沢聖司:高橋一生
雫の父 :立花 隆
雫の母 :室井 滋
雫の姉 :山下容莉江
バロン :露口 茂
地球屋主人:小林桂樹
高坂先生:高山みなみ
原田夕子:佳山麻衣子
杉  村:中島義実


制 作
徳間書店 日本テレビ放送網
博報堂  スタジオジブリ

公開日:1995年7月15日
時 間:111分
配 給:東宝 
配 収:18億円






 
●あらすじ


 月島雫は、東京近郊の団地に住む中学三年生。読書が好きで、受験生にも関わらずせっせと図書館に通っています。

 ある日、本の貸し出しカードに共通して書かれている名前を見つけます。その名は「天沢聖司」。彼は、雫が借りた本は、みんな先に読んでいました。

 「天沢聖司…どんな人だろう…素敵な人かしら。」

 夏休み中、雫は夕子と待ち合わせをするために学校へ行きました。高坂先生に頼み込んで図書室を開けてもらった雫は、借りた本に寄贈印の下に消された「天沢」という蔵書印を見つけます。これが気になって仕方がなかったのですが、夕子に未完成の「カントリーロード」の訳詞を見せ、「コンクリートロード」の替え歌で盛り上がったり、それを突然現れた「ヤなやつ」にからかわれたりしているうちに「天沢」のことはいつの間にか吹き飛んでいました。

 さて、そんなある日、図書館にお父さんの弁当を届けるために出かけた雫は、電車の中で偶然、猫に出会います。猫を追いかけていくと、丘の上に地球屋というアンティークショップにたどり着きましたそこは、不思議な主人、西のおじいさんが営んでいる素敵なお店でした。そこで思わぬ時間を過ごしてしまった雫は図書館へ急ぎますが、弁当を地球屋に忘れてしまいます。その弁当を届けてくれたのは、何故か昨日自分を学校で冷やかした「ヤなやつ」でした。

 図書館の本の貸し出しカードにも「天沢聖司」の名前を見つけた雫は、再び「天沢」ってどんな人かなぁ、と思いを巡らせます。ふと、さっきの「ヤなやつ」の顔が浮かびましたが、それはあわてて打ち消したのでした。

 さて、2学期になっても「天沢」が気になる雫は、職員室の先生に聞きにいき、何とか手がかりをつかもうとします。しかし、思いの外あっさりと分かってしまいそうな感じになって、全てを聞いてしまわないうちにあわてて職員室を飛び出してしまいました。その直後、いつかの「ヤなやつ」とすれ違います。そいつは同じ学校の生徒だったのでした。あれだけ自分を冷やかしておきながら、今度はきれいに無視してくれました。彼はやっぱり「ヤなやつ」でした。

 ところが、それからほどなく再び地球屋を訪れた雫は、そこで以前から気になっていた「天沢聖司」が、他ならぬ「ヤなやつ」だということを知ってしまいます。今まで空想していたイメージが崩壊する、大変ショックなことでした。しかし、地球屋での楽しいひとときはもとより、聖司は自分がまだ持っていない目標を目指して頑張っていることも聞き、彼に対する「ヤなやつ」というイメージは次第に薄らいでいきました。

 次の日の昼休み、突然聖司に呼び出された雫は、クラスメイトの目を避けて、屋上へ上がります。聖司は、イタリアへ修業に行くことが決まったことを雫に伝えます。目標に向かってどんどん先に進んでいく聖司に対し、自分の進路はまだ何も決まっていないことにあせりを感じます。ですから、遠回しながら「イタリアへ行ったら、お前のあの歌、歌って頑張るからな。」と告白されたけれども、雫は素直に喜ぶことは出来ませんでした。

 その夜、雫は夕子の家へ相談に行きます。聖司は自分の能力を確かめるためにイタリアへ行くのだから、自分も能力を試してみよう、と思い至ります。そして、物語を書こうと決心します。

 しかし、それは簡単なことではありませんでした。聖司君が帰ってくるまでの間に仕上げようと決め、西のおじいさんに最初の読者になってもらう約束もしていました。そうしているうちに成績が急降下して家族に問いつめられますが、幸いにも理解を得て、物語を書き続けることが出来ました。

 秋も深まった午後遅く、雫は地球屋を訪れます。出来立ての物語はすぐにでも読んでもらわないと、雫は不安で仕方がありませんでした。雫は、おじいさんが読み終わるまで、ずっと待っていました。

 数時間の後、おじいさんは、とても良い出来だったと言いました。それを聞いて、雫は思わず、
「うそっ、うそっ、本当のことを言って下さい。書きたいことがまとまっていません。」
と叫びました。焦って、焦ってようやく書き上げた後半などはひどい出来だと、自分で分かっていたのです。

 確かに、それはまだまだ未完成だったかもしれません。けれども、おじいさんは、可能性に満ちた将来性を、その物語の中に見出してくれたのです。
おじいさんは静かに、そして優しく言いました。
「あなたの切り出したばかりの原石をしっかり見せてもらいました。頑張りましたね。あなたは素敵です。」
雫は、大粒の涙を流して泣き始めました。

 翌朝早く、目が覚めた雫が何気なく窓を開けると、何と下には聖司が待っていました。聖司は、予定を早めて日本に帰ってきたのです。驚いた雫は慌てて家を飛び出します。聖司は、上着を取りに戻ろうとした雫をひきとめ、そのまま高台の上まで連れていきます。

 そして、朝日が昇る街を見た聖司は、真剣な顔で雫にプロポーズをします。
「雫 あのさ、おれ、今すぐってわけにはいかないけれど、俺と結婚してくれないか。」
「・・・・・・・・・」
「おれ、きっと一人前のバイオリン作りになるから。」
「・・・うん。・・・」
「本当か!?」
「嬉しい。そうなれたらいいなって、思ってた。」

聖司は雫を力一杯抱きしめました。

「雫 大好きだ!」

"If you listen carefully, you will hear a Whisper of the Heart"






 
●主な登場人物の解説
    

月島雫 (つきしましずく)

月島家の次女で中学3年生。高校受験を控えた夏休み中も欠かさず本を読んでいるほどの読書好きである。自立心が強く、明るく元気で成績も良い方ではあるが、恋愛方面にはとにかく疎い。なにしろ、読書カードで見つけた"天沢聖司"の名前に、あこがれにも似たほのかな恋心を抱いてしまう程なのだ。

だから、そんな雫が夕子の恋の相談に乗ることなど無理な話であった。雫は夕子の気持ちに気付かない杉村の鈍さをたしなめるのであるが、杉村が自分に対して抱いていた気持ちに気付いていなかった自分自身の鈍さを逆に思い知らされるという、やぶへびの結果になってしまった。

しかし、この経験は雫を強くした。漠然としたあこがれの世界でしかなかった恋愛から、自ら当事者になって関わっていく恋愛へ踏み出していく転換点になった。この経験がなかったら、聖司が抱いている将来の目標を聞いても、自らの問題として将来の目標を考えるようにはならなかったかもしれない。雫は、絵に描いたような恋に恋する恋を飛び越え、聖司と遠く離れても自分自身の可能性を試すために挑戦し、知らず知らずのうちに確かな絆をも育んでいったのである。その流れの中で見る限り、ラストシーンでのプロポーズも決して突拍子なことではないことが分かる。

この雫の精神的成長は、「耳をすませば」の見どころの一つであると言える。


天沢聖司 (あまさわせいじ)
天沢家の次男。原作のコミックでは兄がいることになっているが、映画版では兄のことは特に触れられていない。母型の祖父である西司郎の影響を受け、バイオリン職人を目指す。


原田夕子 (はらだゆうこ)
雫のクラスメイトで親友。同じクラスの杉村に恋してしまうが、面と向かって告白出来ず、雫に相談をもちかけたりする。


杉村 (すぎむら)

月島雫のクラスメイト。杉村は、聖司のようにハンサムではない。聖司ほど背も高くない。聖司のように女子の間で話題になる訳ではないし、たぶん聖司ほど成績も良くない。さして強豪とはいえない野球部でかろうじてレギュラーを確保していることが唯一の取り柄の、どこまでも地味で平凡な存在でしかない。そもそも、彼は苗字でだけ呼ばれ、フルネームさえ与えられていない単なる脇役に過ぎないのだ。

だが、杉村こそ、最も中学生らしい少年であった。確かに、彼は脇役であったが、単なる引き立て役では終わらなかった。彼も恋愛には疎く不器用であったが、彼には彼なりの誠意があり、潔さと男らしさがあった。雫を想い続けてきた気持ちは誰にも負けないはずなのに、突然降ってわいたような聖司に雫をかっさらわれ、さぞかし地団駄踏んだことだろう。己の不器用さ、ふがいなさに情けなくなったことだろう。雫への想いを断ち切れず、悔しさとやるせなさで眠れない夜もあったことだろう。だが、時を経て彼は潔く雫を諦め、自分に想いを寄せてくれていた夕子の気持ちに応えてあげる決心をする。彼は、きっと誰にも負けない誠意をもって夕子を大切にしていくに違いない。

杉村は、思春期の狭間で揺れ動く数多の少年像をそのまま体現していた。それゆえ、彼は真に等身大の中学生というべき、真に愛すべき存在であった。我々は、杉村のことを決して忘れないだろう。


月島 靖也(つきしまやすや)

雫の父親。市立図書館に勤務している。



月島 朝子(つきしまあさこ)

雫の母親。早い段階から子離れを宣言し、大学院に進学して勉強を続けている。



月島 汐(つきしましお)

雫の姉。大学生。原作のコミックでは聖司の兄と両想いになるが、映画版では兄が登場しないこともあって、彼氏がいるかどうかは不明である。大学院に進学した母親に代わって家事全般を取り仕切り、時には雫の母親役までこなすので、雫にとっては口うるさい存在でしかない。進路についての考え方を巡って雫と激しく対立するが、最後は雫に理解を示す。



西 司郎(にししろう)

聖司の祖父。地球屋を経営している。聖司や雫の良き理解者。



ムーン

ナゾの野良猫。器用に電車を乗りこなす。



バロン

西司郎がドイツから持ち帰った猫の男爵人形。対となる人形がいたが、戦争が迫っていた世相もあって離ればなれになって現在に至る。



ルシータ(Leseeta)

番外編に登場する、このホームページのオリジナルキャラクター。(注!原作にも映画にも登場しません。)
イタリア・クレモーナのバイオリン工房で修業しているドイツ出身の少女で、同じく日本から修業にやってきた聖司に一目惚れしてしまう。しかし、彼女の熱心な求愛も、聖司の前にはことごとく不発に終わっていて、聖司を惑わす恋敵・雫に激しいライバル意識を燃やしている。

奇縁なことに、祖母のルイーゼはかつて西司郎の恋人であった。戦前、ドイツに留学していた西司郎はルイーゼと将来を約束していたが、二人は戦火に引き裂かれてしまい、以後音信不通になったままである。西司郎は日本へ帰国する時にバロンの人形を持ち帰ったが、そのつがいである雌猫の人形は今もルイーゼが持っている。ルイーゼは、ルシータがバロンの持ち主=西司郎を捜し出してくれることを望んでおり、聖司が一時日本へ帰国すること知ったルシータは、急遽日本行きを引き受ける。

かくして、ルシータは雌猫の人形を携えて、西司郎を捜し出すため、聖司を追いかけるため、そしてにっくき恋敵・雫を成敗するため、一路日本を目指すのであった。


(キャラクター描画:泰麒さん)
 






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