●テーマ別「犬夜叉」考察
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「犬夜叉」のネーミングは適切か  1997/06/15




●「犬夜叉」はどの作品の流れに位置づけられるか  1997/06/15




●「らんま」ファンは「犬夜叉」に移行するか  1997/06/15









 
●「犬夜叉」のネーミングは適切か


 新連載の名前が「犬夜叉」と聞いて、「おや?」と思われた人が多いのではないかと思います。それは、従来の作品につけられているネーミングとの語感が少し異なるからです。特に、今までのるーみっく作品を知っているファンなら、違和感すら感じたとしても不思議ではありません。

 それは「区切り」と「省略」のリズムと申しましょうか、これまでに作品ならば、「うる星・やつら」「めぞん・一刻」「らんま・1/2」というように、途中で区切ることが出来ました。故に、多くのファンから、それぞれ「うる星」「めぞん」「らんま」と省略して呼ばれて親しまれてきました。

 ところが、「犬夜叉」では、そのような区切りや省略は難しいです。確かに「犬・夜叉」で区切れないこともありませんが、単に「犬」もしくは「夜叉」と言っても、にわかに何のことだか分かりません。実際、多くのファンは「いぬやしゃ」とそのままフルネームで呼んでいるようです。

 もちろん、一部のファンの間では「犬」か「夜叉」で通じると思います。しかし、これが広く使われるとは考えにくいです。親しみを込めて呼ばれようとするならば、やはりフルネームではなく、愛称がつけられなくてはいけません。その点、「うる星」「めぞん」「らんま」は語感もよく愛称としては申し分ありません。

 「犬夜叉」は何となく発音もしにくいし、愛称としても省略形が一般的に使われることも期待しにくいので、広くファン層を獲得しようとする意味で、ネーミングに工夫の余地があったかもしれません。

 もっとも、ネーミングに関しては「らんま」で天道あかねの髪型を途中から大胆に変えたような技を使うわけにはいかないので、今となっては「犬夜叉」のままガンガンと売り込んでいくしかないでしょうが…。





 
●「犬夜叉」はどの作品の流れに位置づけられるか


 「犬夜叉」のカットを見ると、一見「人魚の森」シリーズが連想されます。その血なま臭いシーンの数々は、確かに「人魚の森」シリーズと共通するものがあります。ですので、「犬夜叉」は「うる星」や「らんま」系統でなく、「人魚の森」に近いものとして分類しようとする人もいます。

 しかし、作品のコンセプトを見ると、両者のコンセプトは根本的に異なります。「犬夜叉」は、ヒロインのかごめが学園生活という日常の世界を持っています。これがあって、"学校の世界"とは違う"もう一つの世界"が描かれています。学園生活を基礎に登場人物が独自の世界を形づくっているという構図は、「うる星」「らんま」に共通するものです。けれども、「人魚の森」にはそのような世界はありません。

 その文脈で「うる星」「らんま」「犬夜叉」を見ていくと、この「もう一つの世界」は、時代を下るほど独立の色彩を強めながらも、一定の連続的系譜の中に位置づけられることがわかります。かなり色彩は異なりますが、「犬夜叉」は、やはり少年サンデーの王道をいった「うる星」「らんま」の後継たる新るーみっくわーるどの構築をめざそうとする作品であると言うことが出来ると思います。





 
●「らんま」ファンは「犬夜叉」に移行するか


 順調に単行本の冊数を伸ばしていけば、「犬夜叉」からファンになっていく、いわゆる「犬夜叉」世代のファンが増えていくと思われます。

 もっとも、現時点での「犬夜叉」読者のほとんどは、「らんま」など以前の連載を知っている世代です。ここで、「らんま」からファンになった世代は、そのまま「犬夜叉」のファンに移行していくのでしょうか。

 基本的には移行していくでしょうが、移行しないファンも少なからずいて、その差はかなり明確に分かれるのではないかと予想されます。

 「うる星」が終了し、「らんま」が始まったころは、一部の熱狂的な「うる星」ファンをのぞけば、比較的スムースに「らんま」のファンにもなりました。これは、両作品のコンセプトが比較的似ていたからだと言われています。また、「うる星」より「らんま」の方が女の子に受けがよい要素を持っているらしく、「らんま」からファンになった世代の多くは女の子が占めました。

 さて、「犬夜叉」は、「うる星」や「らんま」と大きく異なって、派手に首が飛び、腕がちぎれるカットが数多く登場します。その生々しさについていけない「らんま」ファンは少なからずいるようです。

 ある「らんま」ファンの女の子から届いた手紙には、「好きになろうとしているけれども、血がいっぱい出てくるのは苦手です。」と書かれていました。多分、これは「うる星」や「らんま」との違いを最も簡潔・象徴的に表した言葉ではないかと思います。人が死ぬシーンに違和感を感じるファンは、るーみっく作品という理由だけでは「犬夜叉」のファンになることはないでしょう。

 また、最も多数を占めると思われる、ごくごく普通に「らんま」を読んでいた人によっては、同じるーみっく作品だからという意識ではなく、全くの好みによって「犬夜叉」を読まれたり読まれなかったりするでしょう。

 さて、ここで特に同人誌に親しむ「らんま」ファンについて考えると、(血なま臭いシーンさえ問題にしなければ)そのまま「犬夜叉」のファンにもなっていくのではないかと思われます。

 それは、「犬夜叉」が新しいるーみっくわーるどであるという意識を持っていることに加え、ある意味で「らんま」の登場人物に近い「犬夜叉」のキャラクターに親しみを覚え、それを好んで同人誌に反映させようと試みるからであろうと思われます。

 主人公である犬夜叉は、どうやら早乙女乱馬と性格的に似ているようで、しかもそれなりにカッコよく描かれています。そのキャラクター性は同人誌の素材としてはもってこいで、実際に早くも犬夜叉のキャラクターに惚れ込み、多くのイラストを描き始めたファンもいます。

 また、先述したように「犬夜叉」は主人公が"学校の世界"と、それとは違う"もう一つの世界"の二つを主人公が自在に行き来する作品です。この二つの世界の設定は、実は同人誌の活動を行うファンが実生活の中で持っているそれと似ています。すなわち、同人誌のファンは学校や会社のいわゆる"普通の世界"と"同人誌の世界"の両方を持っていてそれぞれに使い分けていますが、それは「犬夜叉」のかごめが作品世界の中でしていることと構造的には同一です。これは、同人誌をつくるファンにとっては馴染みやすい設定であると言え、かごめの置かれた境遇は、同人誌活動を行うファンの多くに共感をもって受け入れられるかもしれません。


 ついでに、「うる星」世代のファンはどうでしょうか。永久に「うる星」のみに忠誠を誓い続ける例外的なファンを除けば、

・るーみっくの作品であるから、無条件にファンになって没頭する
・ここまでファンをやってきたのだから、惰性でそのままファンをやる
・もう以前のようにハマるほど没頭する訳ではなく、平常心で楽しめる


などといった理由により、ほぼ問題なく「犬夜叉」の世界にも親しむようになるでしょう。何せ「うる星」から「犬夜叉」に至る長期に渡ってファンを続けているのですから。






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