武蔵野万葉散歩
(9巻〜12巻)
遙かなる時代(7世紀から8世紀)
武蔵野は大きな変革の時代を過ごしていました。
そこに住んだ庶民は、美しい故郷、厳しい生活環境の中で
、見事に
愛と恋
喜びと不安
嘆きや悲しみ
・・・・・
をうたい上げました。
その歌が万葉集に残されています。
古代の武蔵野人の悲喜こもごもが、その時とは変わりきった現代の武蔵野に、まるで、生きているように、ストレートにうったえられます。
最近わかってきた歴史的な背景をたよりに、国文学の素人が、恐れ気もなく、その歌の故郷を追ってみたいと思います。
現地を歩いた上で、ご紹介したいので、残念ながら、しばらく工事中が続きます。全体の枠組みを一覧にしておいた方が便利ですので、とりあえず
◎「武蔵国」(東京都と埼玉県と神奈川県の一部)の歌と明記された歌
◎それ以外でも、地域が誇りにして「歌碑」や「記念碑」などを建てている歌
◎歌人・研究者などが「武蔵国」「武蔵野」に関係ありとした歌
を対象として一覧にしてみました。
随分とあるものです。なお、ページが長くなるので、次のように
(1) 万葉集の巻第9から12
(2) 東歌
(3) 防人歌
(4) 地域別
に区切りました。
もちろん、同じ歌でも、歌のふるさとは、いろいろなところに比定され、解釈も様々です。ある程度の客観性を追いながら、結果的には独断と偏見になることをお許し下さい。
また、「武蔵野」と言いながら、「武蔵国」を越え、「下総」や「常陸」まで、相当に範囲が拡大してしまいました。机上ですが、それぞれに歌を追った結果、行き着いてしまったからに他なりません。
現在、歌のふるさとと想定されているところを歩いている最中です。途中で、歌碑の所在地が変わったり、新しい発見があったりした場合は、その都度訂正があることを前提として下さい。
歌碑の所在については、歌人や研究者から、問題提示もあります。お国自慢がそうさせたのか、多少の疑問があっても、地域の人が大事にしているものとして、あるがままに紹介します。
国歌大観番号にリンクマークのついたものは、なにがしかの記事があります。つたない内容ですが、クリックしてみて下さい。
気がついたことを是非ご指摘下さい。
万葉集巻第9〜12
9巻には、「高橋虫麿」や「柿本人麻呂」の詠んだ歌があります。人麻呂はともかくとして、高橋虫麿は常陸国府に関連した人物で、実際に、武蔵国にも足を運んだことが、十分に考えられます。
ところが、困ったことに、1744、1745などは、虫麿の歌集に含まれていながら、その詠んだ所、ふるさとがはっきりしなくて、決め所に議論が分かれています。
幸い、虫麿は、東京都、埼玉県、千葉県の県境に位置する「葛飾郡」で、「真間の手児名」(1807、1808)の伝説を詠んでいます。そこで、1744の「埼玉の小崎」、1745の「曝井」との関連を考えるために、少し範囲を広げて、「下総国」のものですが、取り上げました。
なお、 「真間の手児名」については、山部赤人も、3−431、432、433 で詠んでいます。
冬の荒川上流
虫麿は小崎の沼まで来たのであろうか?
万葉集巻第9
国歌
大観
番号 |
歌(訓み下しは 岩波書店
日本古典文学大系 万葉集による) |
歌碑等
所在地 |
1744 |
武蔵の小崎の沼の鴨を見て作る歌一首
埼玉(さきたま)の小埼(おざき)の沼に鴨そ翼(はね)きる
己(おの)が尾に降(ふ)り置ける霜を払(はら)ふとにあらし |
埼玉県
行田市
|
1745 |
那珂郡(なかのこおり)の曝井(さらしい)の歌一首
三栗(みつぐり)の那珂(なか)に向かえる曝井(さらしい)の
絶えず通はむそこに妻もが |
埼玉県
美里町
茨城県
水戸市 |
1807
1808 |
勝鹿(かずしか)の真間の娘子(おとめ)を詠む歌一首
長いので、別に記します。
反歌
勝鹿の真間の井を見れば立ち平(なら)し
水汲ましけむ手児名(てごな)し思ほゆ |
千葉県
市川市 |
1744、1745、1807、1808は『高橋連虫麿の歌集の中に出づ』とされる。
万葉集巻第11
国歌
大観
番号 |
歌(訓み下しは 岩波書店
日本古典文学大系 万葉集による) |
歌碑等
所在地 |
2763 |
紅(くれない)の浅葉(あさは)の野らに刈る草(かや)の
束(つか)の間(あいだ)も吾(わ)を忘らすな |
埼玉県
坂戸市 |
万葉集巻第12
「浅葉の野」の歌碑
埼玉県行田市の土屋神社公園にある。
人麻呂の2863は、静岡県浅羽町をふるさととする説がある・・・。
国歌
大観
番号 |
歌(訓み下しは 岩波書店
日本古典文学大系 万葉集による) |
歌碑等
所在地 |
2863 |
浅葉野(あさはの)に立ち神(かむ)さぶる菅(すが)の根の
ねもころ誰(たれ)ゆえ吾が恋ひなくに
或本の歌に曰く、誰葉野(たがはの)に立ちしなひたる
右の二十三首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ |
埼玉県
坂戸市 |
3192 |
草陰(くさかげ)の荒藺(あらい)の崎の笠島を
見つつか君が山道(やまぢ)越ゆらむ
一に云はく、み坂越ゆらむ |
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