◎保坂俊司著『インド宗教興亡史』(ちくま新書)

 

 

うぬぬぬ! 誤字脱字が多すぎる。まともに校正していないのかも。日本語の本でこれだけケアレスミスが多いのは初めて見た。

 

しかも意味的にも疑問を感じる箇所がいくつかあった。たとえばさっき読んだばかりの箇所に「アクハム王が要塞にたてこもった時、修行者も彼に同行したが、しかしブッダラクは戦いに参加せず、偶像の家(ブッタ・ナヴィハーラ寺院)にいて、宗教の本(経典であろう)を読んでいたとの報告を受けた。¶この記述から、仏教僧ブッダラクは王の護持僧という地位にあり、国王や国家の危機の時には国王と一緒に戦いに参加し、祈祷や呪文などで国家の護持活動を行っていた、と読むことができる(246頁)」。「おいおいどうしてそう読めるんじゃ?」と思った。おそらく「国王や国家の危機の時には国王と一緒に戦いに参加することがなく」の間違いなのだろうと思う。

 

その手の誤字脱字や誤りが多いせいで、たとえば「インド共和国(総人口約一三億八〇〇〇万人、二〇二〇年世界銀行)(21頁)」のような数値も誤字脱字のたぐいに違いないと思ったんだけど、ググってみたらこれは正しかった。信憑性に疑問符がつくから、増刷するときにはその手の誤字脱字を直さんとあかんよね。

 

ここまではネガティブなことを述べたけど、宗教の国インドには最近関心があって(今読み直している、ジョセフ・ヘンリックの大著『WEIRDest People in the World』(FSG, 2020)なども関係している)、その点ではインドの宗教史が概観されているのは個人的にタイムリーでよかった。

 

ちなみにインドの人口が2020年時点で13億8000万なら、すでに中国を抜いている可能性もあるよね(中国の統計はサバを読んでいると言われることもあるし)。すると中国が共産主義イデオロギーでそれだけの数の国民を統治しているのに対し、インドは政治イデオロギーというより宗教の力でほぼ同数の国民を擁する国をまとめているようなところがある。

 

人口が多くても、中国のような政治イデオロギーによる全体主義的支配を強引に適用しないでも国が分解せずにいられるかどうかという壮大な実験をインドはやってくれているのかもしれないよね。そしてそのベースには、共産党ならアヘンと呼ぶであろう宗教があるのも興味深い。

 

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※2023年4月28日