私の手塚治虫ベスト10
佐藤和美
佐藤和美です。
自分にとってのベスト10を、読んだ(と思う)年代順に並べてみました。
(今日現在のベスト10です。明日はどうなるかわかりません。)
1.「鉄腕アトム」
私のマンガ歴・手塚歴はたぶん「アトム」から始まっていると思います。
私にとっては光文社の単行本がアトムを読み始めた出発点です。いまだに「アトム」といえばその単行本で読んだエピソードが好きです。
「赤いネコ」とか「若返りガス」なんかは、子供にとってかなりレベルが高いと思うのですが、そういう作品でも子供って理解できちゃうんでしょうね。
雑談を一つ。
光文社の単行本の「ミドロが沼」では、まだコバルトが死んでるんですよねぇ。この頃の単行本ではまだ描き直されてないんですね。
2.「白いパイロット」
小学校2年の頃、「少年サンデー」でとびとびですが読んでました。
小学校の頃読んだ作品はどれもインプリンティング(刷り込み)されてる感じですが、そのなかでも「白いパイロット」は特に印象的です。
ラストのハリケーン号の地下要塞への突入のシーン、いいですね。
クリスが「解放だぞ」と言って倒れて、囚人達が歓声をあげて脱出しようとする所なんて涙ものです。
雑談を一つ。
単行本には未収録部分があるので、国立国会図書館で「少年サンデー」を見てきました。
その成果を一つ。
全集1巻201ページにイカかタコの足みたいなのが見えます。また次のページには巨大な巻貝があります。実はこれは巻貝の中にタコの足みたいなのが入ってるんですね。白いパイロット達はハリケーン号の外に出るとこの怪物と戦うことになります。この怪物の正体は実は……。「サンデー」見ましょうね。
3.「火の鳥」
「黎明編」はそれほどおもしろいと思わなかったのですが、次の「未来編」がすごいと思いました。石森章太郎もそんなようなこと書いてましたよね。
これで「火の鳥」の全体像がかいま見えてきたんですよね。
過去と未来から始めて、現代で完結するなんて、なんと壮大な作品なんでしょう。
(これを無視している角川版は違和感を感じます)
雑談を一つ。
我王っていったい何歳まで生きたんでしょうね?
4.「太平洋Xポイント」
これを読んだのは中学生の頃、小学館ゴールデンコミックス版でです。当時手塚作品はひととおり読んだつもりだったのですが、こういう作品もあるんだと感動しました。
ラストのひとコマが印象的でした。
雑談を一つ。
数年前、フランスがムルロア環礁で核実験をやってるとき、この作品を思い出してしょうがなかったです。人類はまだカワセミに笑われる状態なんでしょうね。
5.「ボンバ」
「地球を呑む」を買ったら、それに入っていた「ボンバ」の方が好きになってしまいました。
「ボ、ボンバ!」
雑談を一つ。
実写+CGで映画化したらどんなのができるかな……
6.「人間ども集まれ!」
これを読んだのは20歳ちょっと前くらいでしょうか。「太平洋Xポイント」のときと同じく、手塚作品をひととおり読んだつもりだったのですが、こういう作品もあるんだと感動しました。大人モノではベストではないかと思います。
雑談を一つ。
そういえば、手塚治虫の博士号論文はタニシの精子の研究でしたね。
7.「きりひと賛歌」
青年モノでの最初の傑作ではないでしょうか。
連載を始めた頃、「バンパイヤ」の二番煎じではないかと質問を受けたそうですが、どこを読んだらそういう読み方ができるんでしょうか。
雑談を一つ。
モンモウ病の原因がいつのまにか変更されてますね。
「放射性元素の放射線」が「プルスによる内分泌異常」になってます。
8.「ブッダ」
特に出家するまでが好きです。3、4巻あたりですね。
雑談を一つ。
「ブッダ」の登場人物ってほとんどがインドの現地発音ですが、なんでデーヴァダッタだけ漢訳仏典のダイバダッタなんでしょうね。
9.「ブラック・ジャック」
定番ですけど、やっぱ好きです。
「たいしたやつだな。簡単に五人も死なせるなんて。
こっちは、ひとり助けるだけで、せいいっぱいなんだ。」
雑談を一つ。
私の好きなクイズです。ブラックジャックは毎朝何時に起きてるでしょうか。
10.「アドルフに告ぐ」
ハードカーバーの本全4巻が完結したときに、一気に読みました。
イヤー、おもしろかったですねぇ。
久しぶりの名作&大作を読んだという気分でした。
雑談を一つ。
リヒャルト・ワグナーってユダヤ人嫌いだったそうです。ヒトラーがワグナーを好きだったのはそれも理由の一つだったかもしれませんね。
あとは「メトロポリス」、「ライオンブックス(安達が原、複眼魔人、緑の猫、etc)」、「ジェットキング」、「バンパイヤ」、「キャプテンKen」、「紙の砦」、「マグマ大使」、「どろろ」、「ビッグX」、「ふしぎな少年」……
イヤー、ベスト20はほしいところですねぇ。
「手塚治虫メールマガジン」第2号(1998/11/3発行)に掲載
(1998・10・18)
Copyright(C) 1998 Satou Kazumi