『どろろ』について




『どろろ』の「ばんもん」

佐藤和美 (2001/09/18 12:07)

私は「手塚治虫ショートショート」の「超ミニネタ十題」でこう書きました。
「「どろろ」の「ばんもん」は「板門店」である。」

これで意味がわかってもらえてるでしょうか?
ちょっと自身がなくなったので補足です。

『大辞林』
はんもんてん【板門店】
朝鮮半島中部、北緯三八度線の南5キロメートルの非武装地帯(休戦ライン)にある要地。韓国と朝鮮民主主義人民共和国の共同管理下にあり、朝鮮戦争の休戦会談が行われ、現在も双方の会談が開かれる。パンムンジョム。

この「板門店」の「板門」を日本の音読みで読むと「ばんもん」になります。
「ばんもん」の語源(?)は「板門店」に間違いないと思うんですが。



『どろろ』の「ばんもん」

佐藤和美 (2001/10/24 12:12)

『どろろ』の「ばんもん」佐藤和美(2001/09/18 12:07)
>この「板門店」の「板門」を日本の音読みで読むと「ばんもん」になります。
>「ばんもん」の語源(?)は「板門店」に間違いないと思うんですが。

ばんもん・板門店説の追加情報です。

秋田書店サンデーコミックス「どろろ」第3巻64ページ
「この町はな 前はひとつだったんだ ところがちょうど国ざかいにあったんで… こっちとあっちでいくさが始まったら 町がまっぷたつにわけられて いまじゃ敵味方なんだ」
「前はなかよかったんだが いまじゃ町の北と南は 殺しあいをするほど にくみあってるんだ…」
「なぜこうなっちまったんだか…… いくさのせいだろうと思うけど…」

「町の北と南」というのが、板門店を連想させます。



「どろろ」妖怪命名考(マイマイオンバ)

佐藤和美 (2001/10/13 16:57)

『どろろ』に出てくるマイマイオンバの語源(?)を考えてみました。

『大辞林』からです。

まいまい-が【舞舞蛾】
ドクガ科のガ。開張は雄が約5センチメートル、雌が約8センチメートル。雄のはねは黒褐色、雌は淡灰色の地に黒色紋がある。成虫は夏に現れ、雄は昼間ぐるぐる回りながら飛ぶ。幼虫は体長6センチメートルに達し、灰褐色の体に白い長毛が生え、口から糸を吐いてぶら下がるので「ブランコ毛虫」と呼ばれる。多種の樹木を食害する害虫。世界各地に分布。

おんば 【〈乳母〉】
〔「おうば」の転〕うば。


マイマイオンバのモデルは舞舞蛾でまず間違いないでしょう。
「舞舞蛾」+「乳母」→マイマイオンバ
この考えでどうでしょうか?



「どろろ」妖怪命名考(似蛭)

佐藤和美 (2001/10/14 16:31)

「似蛭」といえば、これしかないでしょう。

『大辞林』からです。

ニヒル [(ラテン) nihil]
(名・形動)虚無。また、虚無的なさま。「―な考え」「―な笑いをうかべる」



「どろろ」妖怪命名考(ガマクジラ)

佐藤和美 (2001/10/17 12:13)

ガマクジラは万代の妖怪部分の名前です。

「ウルトラマン」第14話「真珠貝防衛指令」
この回に登場する怪獣がガマクジラです。
ま、「ガマガエル」+「クジラ」という安易な怪獣ですね。

「ウルトラマン」のガマクジラの特徴
オバQみたいな唇
ハトメみたいな目(二重丸みたいな目)
体中に生えてるイボイボみたいなもの

これらは「どろろ」のガマクジラと共通しています。

「ウルトラマン」のガマクジラは昭和41年
「どろろ」のガマクジラは昭和42年
「どろろ」のガマクジラは「ウルトラマン」のガマクジラの影響を受けたと考えて間違いないでしょう。

「ウルトラマン」のガマクジラは「ガマガエル」+「クジラ」だから、「どろろ」のガマクジラの歩き方(?)も「ガマガエル」に由来すると考えていいでしょう。

「どろろ」のガマクジラはお金に執着があるようですが、「ウルトラマン」のガマクジラはお金ではなく真珠が大好物です。言い換えれば、「どろろ」のガマクジラのお金好きは「ウルトラマン」のガマクジラの真珠好きが影響しているのではないでしょうか。



ガマクジラ

佐藤和美 (2001/10/18 12:31)

「ウルトラマン」のガマクジラの画像を見つけました。

http://www.ne.jp/asahi/gen/shion/kaeru/media/tv/ultraman.html

「どろろ」のガマクジラと比べてみてください。



「どろろ」の時代

佐藤和美 (2001/10/22 07:24)

「どろろ」はどのくらい時代考証してあるんだかわかりませんが、「どろろ」の時代はいつ頃なんだかちょっと考えてみました。

醍醐景光は富樫氏の配下で、隣国の朝倉氏との境界線近くにいます。
富樫は加賀で、朝倉は越前。
加賀が石川県、越前が福井県あたりですね。

1488年に加賀一向一揆が起こりました。
この一揆によって富樫氏は滅び、加賀は「百姓の持ちたる国」になります。
当然、富樫氏の配下であった、醍醐景光も倒されたと考えられます。
この加賀一向一揆が「ぬえの巻」で描かれた一揆ではなかったか?
そうすると百鬼丸の生まれたのは1470年代前半か?



『どろろ』の謎

佐藤和美 (2001/10/24 12:35)

私にとっての「どろろ」の最大のナゾですが、
百鬼丸の盗まれた体の部位はどこかということですね。

サンデー
15まで         ヘソ、鼻、髪の毛等
16   万代      右腕
17   似蛭      右目
18   マイマイオンバ 右脚
19   ばんもんの狐  鼻
20   白面不動    右耳
21   鮫       声

冒険王
    みどろ     不明
    どんぶりばら  右目
    四化入道    不明
    ぬえ      不明

(数字は倒した妖怪の数)

15までの「ヘソ、鼻、髪の毛等」は狐が鼻と決まった後の出版では修正すべき
だったでしょう。
右目はサンデーと冒険王で雑誌が違うから目をつぶる?

さて、失敗は腕、脚などの大きな部分を妖怪一匹にわりふってしまったことで
しょう。
のこりの部分は
背骨、左腕、左目、左足、左耳、性器
あとはどこにしたらいい?
指を別にしとけば、20かせげたのに。(^^)



『どろろ』の無情岬はどこにあった?

佐藤和美 (2001/11/05 12:05)

『どろろ』のばんもんは加賀にあったと考えていいでしょう。(「「どろろ」の時代」(2001/10/22 07:24)参考のこと)ばんもんの次の巻は白面不動ですが、これも加賀だと考えていいでしょう。さてその次の無情岬はどこにあった?

秋田書店サンデーコミックス「どろろ」第4巻90ページ
「どろろと百鬼丸の見たのは不知火だった 不知火は富山湾や有明海で見られる海の火で……」

無情岬はこの富山湾と有明海のどっちかにあった可能性が高いでしょう。加賀の近くと考えると、無情岬は富山湾にあったと判断するのが妥当ではないでしょうか。
ということで、無情岬は富山湾!



「どろろ」の語源

佐藤和美 (2003/05/03 09:45)

「どろろ」の語源ですが、秋田書店サンデーコミックスに手塚治虫は次のように書いています。
「”どろろ”って、かわったタイトルでしょう。
じつは、ぼくの友だちの子どもが、「ドロボウ」といえなくって、カタコトで「ドロロウ」といったのをヒントにしたのです。」

さて、この「友だちの子ども」って誰なのか?

手塚眞『天才の息子』(ソニーマガジンズ)から。
「そもそも『どろろ』という題名も、ぼくがまだ幼かった頃、「泥棒」というのが発音できず「どろろお」と言っていたのからヒントを得たという話ですが、こちらはまったく覚えていません。」

だそうです。

(追記 2007.2.24)
講談社版全集『どろろ』のあとがきに以下の記述がある。
「「どろろ」というタイトルがなぜ生まれたかというと、ぼくの子どもが、どろぼうのことを片言で”どろろう”といったことからできたのです。」



秋田書店サンデーコミックス『バンパイヤ』

佐藤和美 (2003/05/10 15:32)

秋田書店サンデーコミックスの『バンパイヤ』の作者のことばは興味深いものがあります。

「バンパイヤは、わたしの恐怖三部作の第一作目にあたります。第一作が現代物、第二作が時代物、第三作を未来に設定し、この第一作を今までの手塚マンガのカラーからぬけだす糸にしたいと思います。
 バンパイヤの骨ぐみはごぞんじのように、シェイクスピアのマクベスです。わたしはマクベスに、バイタリティーにあふれた現代悪の権化を見る気がします。」

『バンパイヤ』のあとに少年サンデーに連載されたのは『どろろ』です。第二作の時代物は『どろろ』にまちがいないでしょう。じゃ、第三作の未来物は? これは描かれなかったんでしょうね。

それと、『マクベス』。
子供が『マクベス』なんて知ってるわけないですよね。
私はサンデーコミックスで、このことを初めて知りました。




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