語源・思いつくままに(外国語編)PART3
Lachryma Christi
佐藤和美 (2000/08/25 09:36)
「ラクリマ・クリスティ」っていう音楽のグループがありますけど、
小学館「プログレッシブ英和中辞典」で「Lachryma Christi」を引くと、
「ラクリマクリスチ:イタリア南部Naples付近産の食卓用ぶどう酒」
などとでています。
ラクリマ(涙)+クリスティ(キリストの)
キリスト教の知識、ほとんど持ってないんですけど、
「キリストの涙」ってなんか根拠というか由来というかあるんでしょうか?
[ラクリマ クリスティ -キリストの涙- の伝説
蛍 (2000/08/25 23:18)
ラクリマ クリスティ -キリストの涙- の伝説
「ラクリマ クリスティ」です
蛍 (2000/08/25 23:21)
「ラクリマ クリスティ -キリストの涙- の伝説」
というのがありましたので、紹介しようと思ったのですが、
途中で行っちゃいました。すみません。
サントリーのワインの話です↓
http://www.suntory.co.jp/wine/winery/MA_cave.html
ラクリマ・クリスティ
佐藤和美 (2000/08/28 12:55)
蛍さん
>「ラクリマ クリスティ -キリストの涙- の伝説」
>http://www.suntory.co.jp/wine/winery/MA_cave.html
ありがとうございました。
見てきました。
佐藤和美
>小学館「プログレッシブ英和中辞典」で「Lachryma Christi」を引くと、
>「ラクリマクリスチ:イタリア南部Naples付近産の食卓用ぶどう酒」
それでナポリだったんですね。
なっとく!
なぜに「あつい犬」?
ゆう (2000/08/31 18:46)
食べ物に、「ホット・ドック」ってありますよね。
この語源はなんなのでしょうか?
食べることが大好きな私にとっては、
気になるところなんですが、
どなたか教えていただけないでしょうか?
hot dog
蛍 (2000/08/31 21:55)
ソーセージが胴長のダックスフントに似ていたからという説があるそうですよ。
ありがとうございました
ゆう (2000/09/01 12:47)
蛍さんは、書きました。
>ソーセージが胴長のダックスフントに似ていたからという説があるそうですよ。
教えてくださって、ありがとうございました。
これで、1つ賢く(?)なりました。
ホット・ドッグ
佐藤和美 (2000/09/02 09:31)
「ホット・ドッグ」の語源説は二つあるようですね。
一つは「ダックスフント」との形の連想からで、
もう一つは「犬肉を使ったといううわさから」
(「英語語源辞典」研究社)
ヨット
佐藤和美 (2000/09/12 12:48)
「ヨットyacht」の語源です。
まず発音ですが、アメリカ英語とイギリス英語では発音が違います。
「ヨット」はイギリス英語のほうの発音がもとになってます。
オランダ語「jaghtchip」(狩猟船)の短縮形「jaght(e)」が英語に入りました。
シドニー
佐藤和美 (2000/09/17 07:58)
シドニー・オリンピック、始まりましたね。
で、シドニーの語源です。
シドニーSydney
オーストラリア最大の都市。「世界で最も美しい港」とオーストラリア人が呼ぶ港で、「オーストラリアの玄関」とも呼ばれ、観光・貿易の出入港となっている。1788年、囚人を迎え入れるため、オーストラリア最初の流刑植民地として建設された。そして、当時この問題を担当していたイギリス本国の大臣シドニー卿の名にちなんで、シドニーと命名された。
(牧英夫編著「世界地名ルーツ辞典」創拓社)
初めての質問
ガキ (2000/10/09 22:05)
初めて質問させていただきます。英語の”Travel"と”Trouble”は語源で関係があるんでしょうか?もしあるのなら、どちらが先にあった語なのでしょうか?
もし関係があれば教えていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。
「Travel」、「Trouble」
佐藤和美 (2000/10/11 12:58)
「Travel」と「Trouble」は特に関係はないようですね。
Re: 「Travel」、「Trouble」
いばら (2000/10/12 21:40)
佐藤さん:
>「Travel」と「Trouble」は特に関係はないようですね。
具体的には…
【Travel】
中世英語のtravailen(= to labor)から。
Tarvailenは古仏語travaillier(= to labor)から。
【Trouble】
中世英語、さらには古仏語のtourbler、troublerから。
Tourbler/troublerはラテン語のturbulareから来ていると思われる。
Turbulare>turbulus (= agitated)
Turbulus>ラテン語turbulentus>turba (= confusion, crowd)
Turba>ギリシア語のtyrbE (= confusion)と思われる。
以上、Merriam-Webster's COLLEGIATE DICTIONARYからの引用でした。
http://www.m-w.com/dictionary.htm
※上のturbulareはVulgar Latinとあったのですが、
ラテン語にもいろいろあるんですね。
Vulgar Latinは日本語ではなんと呼ばれているのでしょうか?
メラ
佐藤和美 (2000/10/17 12:12)
「インドネシアの意味は?」佐藤和美 (1998/05/15)wrote
>「メラネシア」 「黒い(メラス)島の地方」黒い肌の人々がいたためといいます。
メラ(黒い)の仲間を見つけました。
それは
メラニン 黒色素
です。
単語の仲間が増えていくのが、語源を調べてる上での楽しみかな。
メラ
松茸 (2000/10/17 13:22)
はじめまして。いつも楽しみに読ませていただいております。
佐藤さんへ:
"mela-"というより"melan(o)-"が「黒(い)」の語根でしょう。
http://www.bekkoame.ne.jp/~nerm/tog/melano.htmなるページがありましたのでご参考までに。
日本語化している例としては、他に「メランコリー」もありますね。
メラ
佐藤和美 (2000/10/17 15:03)
松茸さん
>"mela-"というより"melan(o)-"が「黒(い)」の語根でしょう。
>日本語化している例としては、他に「メランコリー」もありますね。
「メラニン」に関してはそうですが、
「メラネシア」の方はちょっと違いますね。
「メラネシア」は「melas」(黒い)+「nesos」(島)+「ia」(地名接尾辞)
そのため今回の書き込みでは「メラ(黒い)の仲間」というあいまいな表現を使いました。
伝言板に書き込んでから気づいたんですが、この内容はすでにUEJさんのとこでありますね。
http://home.att.ne.jp/green/uej/kotoba/humors.html
「メランコリー」に関しても書いてあるので読んで見てください。
メラその他
松茸 (2000/10/18 13:08)
佐藤さんへ:
辞書などを確認したところ、“melanos は melas からの派生語”の旨明示されています。おっしゃる通り「メラ(黒い)の仲間」で問題ございません。お騒がせしました。
#“melan-”でない“mel-”の使用例として、「メラトニン」を追加しておきます。
“黒”について二、三思ったこと:
・「ニジェール(川)」「ナイジェリア」はラテン語“niger”によるのでしょうか?
・「モンテネグロ」は、<国名>が外国語に逐語訳されて流布している面白い例。
・英語と独語の色の名は、褐色をはじめ、赤・青・緑・白・黄などは同源なのに、“black”と
“schwartz-”とはまるで違います。なぜでしょうか?
Re: blackとschwarz
いばら (2000/10/19 01:07)
松茸さんの「なぜ?」への直接の答ではないのですが。
ゲルマン系の言葉のblackに相当する言葉を調べてみたところ
Danish : sort
Norwegian : svart
Swedish : svart
Dutch : zwart
German : schwarz
とどれも語源は同じかなと思わせるような語になっていますが、
blackだけは全く違っていますね。
Merriam-Webster's COLLEGIATE DICTIONARY
http://www.m-w.com/dictionary.htmで調べてみたところ、
Etymology: Middle English blak, from Old English blaec;
akin to Old High German blah black,
and probably to Latin flagrare to burn, Greek phlegein
とありました。
(古英語のblaecのaeはひとつの文字です。)
黒
佐藤和美 (2000/10/19 09:26)
ドイツ語「schwarz」(黒い)と同語源の英語は「swarthy」(黒ずんだ)ですね。
これが印欧祖語からのもともとの「黒」に由来する単語です。
「black」のもともとの意味は「焼け焦げた」です。
牧英夫編著「世界地名ルーツ辞典」からです。
「ニジェール川の語源は、遊牧民ツアレグ族により、この川がニエジーレンn'egiren「川」、またはエジーレンegiren「川」と呼ばれていたことによる。これがフランス人に伝えられ、ニジェールと転訛した。」
Re: 黒
松茸 (2000/10/19 13:47)
佐藤さん・いばらさんへ:
懇切なご教示ありがとうございます。
「ニジェール」は普通名詞が固有名詞化した例ということですね。
なお、モンテネグロ(ツルナゴーラ)については、その後「黒山国」という漢訳(?)を検索(http://www.kyoto-sr.co.jp/mutumi/gaikoku/)しました。
# 他の言語でも、同様に<黒い山>と訳されている例があるかも知れません。
どちらが本当?
せぼん (2000/11/10 16:14)
はじめまして。
はっきり分かりたいことがありまして、書き込んでしまいました。
それは、NEWSの語源です。
色々調べてみると、東西南北のこと、という説と、
形容詞のNEW(新しい)からきている、という説があるようですが・・・。
いったいどちらが正しいんでしょうか・・?
RE: どちらが本当?
佐藤和美 (2000/11/11 11:21)
せぼんさんwrote
>それは、NEWSの語源です。
>色々調べてみると、東西南北のこと、という説と、
>形容詞のNEW(新しい)からきている、という説があるようですが・・・。
「英語語源辞典」(研究社)にも「スタンダード英語語源辞典」(大修館書店)にも、形容詞が名詞化したと書いてあって、東西南北のことはなにも書いてありません。東西南北のほうは俗説だと思いますが。
あの・・
せぼん (2000/11/27 16:14)
今、調べてるんですが、スタミナの語源とは何なんでしょうか?
ギリシャ語からきているとも聞いたんですが・・。
すいません、ご存知の方、お願いします。
stamina
佐藤和美 (2000/11/28 07:46)
スタミナの語源はラテン語ですね。
<ラテン語stamen(たていと)
運命の女神Fatesの紡ぐ「人間の寿命の糸」の意から。
(三省堂「コンサイスカタカナ語辞典」より)
初めまして!
TV (2000/12/16 03:27)
こんばんわ、放浪の末こちらを発見。良かったです…
ご挨拶もそこそこなんですが、「白内障、緑内障」の英語の語源を調べておりました。
先日、身内がそれだったもので、ものの弾みでこの病の事を調べてました所、白内障cataract、緑内障glaucomatousとありました。
医学用語によくあるギリシャ語が語源、との事でしたがこのcataはdown、ractはbreak、したがって「大洪水、大滝」という意味が第一項目として上がっていました。
白内障は大洪水?なんの事やら…
もし、ご存じでしたらぜひ教えていただきたいな、と思い書き込みいたしました。
ちなみに、緑内障のglaucoは青味がかった灰色…の様な事を書いてあったので、こちらは「フムフム」と一応「緑」つながりで、何となく納得したのですが…
病としては、全くの別もの(日本語だと〜内障なので)の様なのですが(本日、たまたまお医者にかかったので聞いてみたのですが、「語源は解らないなぁ」でした)、医学的な認知度では聖書の時代から「白内障」は語られていたようです。
お医者さんのHPや医学関係などもウロウロしてみたのですが、「お大事に…」という感じで(涙)。
すっかり丑三つです。
宜しくお願いいたします。
Re: cataract(白内障)
いばら (2000/12/16 22:48)
TVさん、はじめまして。
Merriam-Webster's COLLEGIATE DICTIONARYからの引用です。
http://www.m-w.com/dictionary.htm
Main Entry: cat・a・ract
Etymology: Latin "cataracta" waterfall, portcullis, from Greek "kataraktEs",
from "katarassein" to dash down, from "kata- + arassein" to strike, dash
Date: 14th century
1 [Middle English, from Middle French or Medieval Latin; Middle French cataracte,
from Medieval Latin cataracta, from Latin, portcullis] :
a clouding of the lens of the eye or of its surrounding transparent membrane that
obstructs the passage of light.
これによると、英語のcataractの語源はラテン語のcataractaで、
さらにその語源がギリシャ語ということのようですね。
上から勢いよく下りてくる(もの)、という意味でしょうか。
cataractaの意味はwaterfall(滝)のほかにportcullisがあり、
白内障のcataractは後者から来ているようです。
Portcullisとは昔の城門や城壁の出入り口などについていた鉄格子のことで、
普段は上に上がっていて、人などの出入りを止める場合に下ろします。
※欧州の中世からの歴史のある街に行くと、今でもこんな鉄格子のついた城門をくぐることがあります。
通っているときにガシャン!と落ちてきたらどうしよう?と思ったりして。(^^;)
私自身は白内障についての知識はありませんが、この説明を読んだ限りでは
白内障になると眼のレンズまたはそれを取り囲む透明な膜が濁って光が通らなくなることから、
城門の鉄格子になぞらえてcataractと呼んだのではないかと思われます。
な〜るほど!!
TV (2000/12/16 23:39)
わぁ!ありがとうございます。>いばらさん
なるほど、確かによく中世物の映画に出てくるような、お城のあれですね。
portcullisですか…「光を遮断する」って感じなんでしょうね。
いばらさんの調べて下さった物を読んで、「ああ、そうか、結構、滝の裏側から見た景色にも似ているのかも」なんていうのも思ったりしました。
始めの頃(伯父曰く)、物の形は見えるのだけれど、輪郭がボンヤリとしてくるのだそうです。
いやぁ、なるほどスッキリいたしました。嬉しいです。
でも、なんかそんな意味深なネーミングするなよ>中世人(笑)
ですね。「曇空」とか、くらいにしてほしいです。
本当にありがとうございました。また、謎にぶち当たったら教えていただきたいです。
ちょこちょこ、のぞかせていただきます…
Beethoven、Mozart
佐藤和美 (2001/01/03 10:00)
KAORIさん
>私は著名クラシック作曲家の人名の意味の中でどうしても
>「ベ−ト−ベン Beethoven」「モ−ツァルト Mozart」だけが分
>かりません。他は大体調べました。ベ−ト−ベンはオランダ語なの
>で分かりません。モ−ツァルトは、私自身ウィ−ンに住んでいてこ
>っちのいろんな人に聞いたけど、誰も知りません。ドイツ語の名前
>には、全く意味の無い物もあるらしいですが。
下宮忠雄編著「ドイツ語語源小辞典」(同学社)からです。
Beethoven
人名[Beet甜菜(てんさい)+hov園(→Hof)の人の意。Beetはオランダ語形で、そのドイツ語形Beteは主にrote Bete 赤かぶ、において用いられる]
Mozart
オーストリアの作曲家[<Motzhart(1331)=”Schmutzfink”(不潔な人)または”sumpfiges Geho(Umlaut)lz”(沼地の茂み)]
(無題)
くみこ (2001/01/09 14:38)
STAFFの語源を知りたいので教えてください。
staff
佐藤和美 (2001/01/10 12:38)
「staff」の語源です。
(歩行・武器用の)つえ。
「棒、杖」が原義で、「職員」の意味は職権を示す「棒・杖」から。
(「スタンダード英語語源辞典」(大修館書店)から)
ありがとうございます
くみこ (2001/01/10 15:51)
佐藤さん教えていただいてありがとうございます。初めて覗かせていただいたのですが礼儀知らずの書きこみで申し訳ありませんでした。これからも是非よろしくお願いします。
(無題)
くみこ (2001/01/10 16:18)
度々お願いしたいのですが、STUFF(今度はUのほうですが)の語源は何でしょうか?意味は材料・原料の他にがらくた・駄作などあるようですが。
stuff
佐藤和美 (2001/01/11 00:31)
英語「stuff」は古フランス語「estoffe」が入ったもの。
フランス語にどのように入ったかは諸説あるようです。
ありがとうございました
くみこ (2001/01/15 13:09)
遅れましたが佐藤さんありがとうございました。無事資料を
提出することが出来ました。ありがとうございます。
galley
佐藤和美 (2001/01/24 12:32)
英和辞典で「galley」をひくと、どういう意味が出てるでしょうか。
いくつかありますが、一つは「ガレー船」、昔の船ですね。
他には「ゲラ」があります。印刷の「ゲラ刷り」の「ゲラ」です。
「ゲラ」って「galley」だったんですね。(ずいぶん訛ってるけど。)
「ゲラgalley」ってもともとは「組版を入れる盆」で、それがガレー船に似てたようです。
R指定
佐藤和美 (2001/04/17 21:23)
R指定のRってなに?
「restricted」のイニシャルでした。
「制限された、限られた」などの意味があります。
「プロキオン」
くまのぱぱ (2001/04/22 06:43)
始めて投稿させていただきます。
星の名前 の子犬座プロキオン ですが
プロ+キオンでしょうか。
プロ 前に
キオン 犬?
ちなみに犬種名には「キオン」の類縁語?が多くあります。
カオ・デ・カストロラボレイロ、カオ・デ・アグア 他(ポルトガル)
シャン・ド・ラトラス(モロッコ->フランス語)、シャン・ダルトワ(フランス)
等々です。
ところで、フランス語ではたしか「シャ」は猫? ラングドシャ猫舌なんてお菓子がありますね。
re:「プロキオン」
青蛙 (2001/04/23 00:22)
くまのぱぱ さん:
> 星の名前 の子犬座プロキオン ですが
> プロ+キオンでしょうか
おっしゃるとおりです。「キオン」はギリシア語で「犬」
のことです。ただしここでは、おおいぬ座のシリウスを指
しています。キオン星(シリウス)より前に昇るのでこの
名がついたといわれています。
佐藤さんが「星の語源」で説明しておられたアルデバラン
とは逆のシチュエーションですね。
そういえば、アライグマの属名が Procyon でしたね。
その上位のアライグマ科は Procyonidae。
犬の名前
くまのぱぱ (2001/04/25 06:48)
青蛙さん、回答有難うございます。
犬種名といえば、前回のシャン・ダルトアは「小さい猟犬」という意味だそうです。
ということは、日本の柴犬の名称の由来のひとつ
チバ('小さい'のアイヌ語)+犬
(他に 「枯芝色の犬」 もあります)
と同じですね。
ところで、「チバ」=小さい であれば
小柄な人をあらわす「ちび」も同じ語源なんですか?
Re: 犬
massangeana (2001/04/25 13:16)
しばらくこなかったらだいぶ盛況なようで...
ポルトガル語とフランス語の形はどちらもラテン語の canis から来ているので,
似ていて当然です。むしろスペイン語の perro みたいに全く違う形の方が変。
風間喜代三「ことばの生活誌」(平凡社選書, 1987) に印欧語族の「犬」の形に
ついていろいろ書いてあります(ただし, あまり言語学的な説明はありません)。
チパ
佐藤和美 (2001/04/25 21:18)
アイヌ語「チパ」(小さい)ですが、以下の辞典には載っていません。
田村すず子「アイヌ語沙流方言辞典」草風館
中川裕「アイヌ語千歳方言辞典」草風館
萱野茂「萱野茂のアイヌ語辞典」三省堂
「チパ」(小さい)は幽霊アイヌ語(存在しないアイヌ語)である可能性が高いでしょう。
犬 再び
くまのぱぱ (2001/04/29 03:31)
perro perra ともにポルトガル語でも 犬 の意味があるようです。
一方、cao (雄)犬
cadela (雌)犬、<口語>ふしだらな女
だそーです。
ブラジル(ポルトガル語圏)には、perreiro 猟犬の世話係 というのが
あるようです。ポルトガル・ブラジルに多い、ペレイロ・フェレイラなどの姓は
ここからきたんでしょうかね。
日本にも「犬養」さん(犬養部=いぬかいべ)がいますね。
やはりヨーロッパには牛(caw,ox,bull・・・)と同じように犬にも
いろんなコトバがあるのでしょうか?
犬
佐藤和美 (2001/04/30 12:45)
「犬儒主義」って何?
「シニシズム」の訳語でした。
「犬儒主義」は死語かな?
「シニック」なんてのもありましたね。
「羅和辞典」(研究社)では「canis」は「commmon gender」となってます。
英語では「hound」がラテン語「canis」と同語源のようですね。
(「英語語源辞典」(研究社)による。)
そういえばグリムの法則なんてのがありました。
「hound」の「h」と「canis」の「c」で全然違うじゃないか。
でも大丈夫、グリムの法則で説明できます。
『大辞林』
グリム-のほうそく【―の法則】
インド-ヨーロッパ祖語からゲルマン語が生じる過程にみられる、三系列の子音群の音韻変化の法則。グリム(1)が1822年に「ドイツ文法」の中で発表。
UEJさんの「コトバ雑記」の「とんがりコーン」から引用させていただきます。
「ラテン語系の「C」はしばしばゲルマン語系の「H」に対応しますが、英語やドイツ語で「角」を意味する単語「horn(ホーン)」や「Horn(ホルン)」も「corn(=角)」の仲間。「Matterhorn〔独〕(マッターホルン)」のような尖った山の名、「Alpenhorn〔独〕(アルペンホルン)」のようなラッパ状の楽器の名に使われます。車のクラクションのことを「horn(ホーン)」とも言いますね。」
グリムの法則(佐藤さんの補足)
田邉露影 (2001/04/30 22:35)
実はグリムが発見したんじゃなくてラスクが発見したんです。
でもラスクはマイナー学者だったので、
グリムの発表まで誰も見向きもしなかったとか。
この法則、k - h の対応のほかにも色々とありまして、
羅列してみると
bh, dh, gh が b, d, g に
b, d, g が p, t, k に
p, t, k が h, th, h に
という対応がゲルマンでは見られるそうです。
当時の人、けっこう耳悪かったんですね(笑)。
あ、ジョークですよ、ジョーク。
さて問題、ではなぜラテン語・サンスクリット語の sept- は
英語では seven になったんでしょう?
ヴェルナーの法則
佐藤和美 (2001/05/03 09:54)
田邉さん
>さて問題、ではなぜラテン語・サンスクリット語の sept- は
>英語では seven になったんでしょう?
ヴェルナーの法則なんてのもありましたね。
グリムの法則は語頭、アクセントの直後の場合にあてはまり、
そうでない場合は有声化する。
こんな感じでいいのかな?
それにしても印欧祖語のアクセントの位置が関係してると気づき、それを推定するなんて、学者ってすごいですね。
サンスクリット語やギリシア語やラテン語って、同語源の単語のアクセントの位置、同じなのかな?
re: ヴェルナーの法則
田邉露影 (2001/05/03 23:47)
> ヴェルナーの法則なんてのもありましたね。
その通りです!! さすが佐藤さんですね。
> グリムの法則は語頭、アクセントの直後の場合にあてはまり、
> そうでない場合は有声化する。
>
> こんな感じでいいのかな?
佐藤さんのお持ちの
下宮先生の『スタンダード英語語源辞典』 p.624 あたりで、
そのことについて触れられていますね。
> それにしても印欧祖語のアクセントの位置が関係してると気づき、
> それを推定するなんて、学者ってすごいですね。
ラリンガルや一般言語学のソシュール、
音韻論のトルベツコイだとか、
素晴らしい人はたくさんいたのですが、
言語学ってノーベル賞みたいな世界的な賞がないので、
いつの日の目を浴びることは少ないんですよね……。
> サンスクリット語やギリシア語やラテン語って、
> 同語源の単語のアクセントの位置、同じなのかな?
サンスクリット語は正式に勉強したことがないので
お答えできませんが、
古典ラテン語はモラによって
アクセントが支配されており、
古典ギリシア語は基本は固定アクセントなのですが、
語尾や次の単語によってアクセントが移動します。
……しかし、実際に両者とも
本当にそういったアクセントだったのかは、
詳しいところ分かっていません。
というのもこれらはホメロスだとかの書いた
古い韻文の韻律から推測しているからです。
と、この辺は確か田中美知太郎先生の
『ギリシア語文法』かなにかに書いてあったと記憶しています。
(前にも書きましたがこの本、嫌いなんですけどね(^_^;、
まだ高津春繁先生の文献は精読しきっていないもので……)
Re: アクセント
massangeana (2001/05/08 09:09)
>サンスクリット語やギリシア語やラテン語って、同語源の単語のアクセントの
>位置、同じなのかな?
古典ラテン語は, 語の形からアクセントが決まってしまうので, 語の識別にアクセントは
役立ちません。狭い意味のサンスクリット語も同様ですが, それより古いヴェーダ時代の
アクセントはきわめて自由です。ギリシア語はその中間で, アクセントは最後の 3つの音
節のどれかに落ちますが, どれにどういうアクセントが落ちるかは(少なくとも名詞の場合)
語によって決まっています。
古インド語とギリシア語, およびリトアニア語のアクセント位置がよく一致するので,
これらのアクセントはある程度印欧祖語にさかのぼると考えられます。
なお, 同語源なら同じ位置にアクセントがくるというわけではなく, 同一の名詞でも
格によってアクセント位置が変わることがあります(だから母音階梯がある)。
田邉露影さん:
>というのもこれらはホメロスだとかの書いた
>古い韻文の韻律から推測しているからです。
ホメロスの韻律は長短によって, アクセントにはよらないのでは?
(無題)
田邉露影 (2001/05/08 23:13)
田邉露影さん:
>> というのもこれらはホメロスだとかの書いた
>> 古い韻文の韻律から推測しているからです。
>
> ホメロスの韻律は長短によって, アクセントにはよらないのでは?
あ、そっか、そうでした。
すみません。おっしゃる通りです(^_^;。
私がこれじゃあ
岩波の『ギリシア語文法』をバカにできないですね(^_^;;。
サンドイッチ
田舎者 (2001/05/06 12:51)
「サンドイッチ」(地名?)という言葉の究極の語源を教えていただけませんか?(“-wich”は村という意味だということは聞いたことがあります。)
Re: サンドイッチ
massangeana (2001/05/07 18:56)
こんなページがありました。sand(砂)+wic(港) とありますね。ここに書いてある Greenwich(グリニッジ), Norwich(ノリッジ) 以外にも Ipswich とかいろいろあります。ラブクラフトの Dunwich は?
wic はおそらくラテン語 vicus の古い借用で, ローマ人の植民市に多い名前らしいのですが, なぜか港であることが多いようです。バイキングの vik との関係は…よくわかりません。
http://www.takeourword.com/Issue109.html
RE:サンドイッチ
佐藤和美 (2001/05/09 21:21)
>「サンドイッチ」(地名?)という言葉の究極の語源を教えていただけませんか?
>(“-wich”は村という意味だということは聞いたことがあります。)
「英語語源辞典」(研究社)には、
「-wich」は「-wick」の異形で「…の村、部落」の意味。
というようなことが書いてあります。
「Greenwich」(グリニッジ)は「Green」+「wich」で「緑の村」ってとこでしょうね。
「sand」には「砂」以外に、「砂浜」とか「砂州」という意味もあります。
EXCEED英和辞典
sand
n. 砂; (pl.) 砂粒; (pl.) 砂原; 砂浜; 砂色; (pl.) 砂州; (the 〜s) (砂時計の)砂[時刻], 寿命; [[米俗]] 勇気.
http://www.m-w.com/cgi-bin/dictionary
にはこうあります。
Sandwich
town SE England in Kent on Stour River population 4227
「on Stour River」って、「Stour川の上」?
「砂州の村」なのかな?
Re:サンドイッチ
坂梨 (2001/05/10 08:48)
>「on Stour River」って、「Stour川の上」?「砂州の村」なのかな?
「ほとり」位の意味だと思います。>佐藤さん
RE:サンドイッチ
田舎者 (2001/05/11 21:04)
私が調べたところによりますと、Wickham,Sandwich,Greenwichに見られる'-wich'なる物は、直接には古期英語'-wic「村」'に由来しているということです。この単語はラテン語'vicus'「村」から来ていますが、'v-'を'w-'と取り入れたことから、どうやら非常に古い頃(大陸移住前?)に古期英語に入ったようだ、ということです。
Laborの語源は?
Roko (2001/05/07 19:29)
はじめまして。面白くて、とても参考になるので、よく拝見しています。
お願いがあるのですが・・・
仕事で、どうしても英語のslaveとlaborの語源を調べないといけなくなってしまいました。
slaveの方は、辞書に「多くのスラブ人が征服されて奴隷にされたことから」とあったのですが、laborの方が調べてもわかりません。
また、この2つの語源が一緒という話を聞いたのですが、これは正しいのでしょうか?
よろしければ、どうかご教示ください。よろしくお願いします。
RE:Laborの語源は?
佐藤和美 (2001/05/08 21:07)
以下、「英語語源辞典」(研究社)を参考にしながら。
「slave」と「labor」は無関係ですね。
「labor」はフランス語経由でラテン語までさかのぼります。
ラテン語「labor」(苦難、疲労、労役、などの意味)
labor語源>佐藤さま
Roko (2001/05/16 21:43)
教えてくださって、ありがとうございました。
slaveとは無関係だったのですね。はっきりして良かったです。
本当にありがとうございました!!
woman
舞矢 (2001/05/21 05:58)
はじめて書き込みさせていただきます。m(__)m
英語のwomanですが、この語は聖書のアダムとイブに関連して
manから作られた派生語(?)だと聞いたことがあるのですが、
本当でしょうか?
それと、ここの掲示板はとても興味のある内容なので
過去ログをまとめて読みたいと思います。
DLできる場所があれば、おしえてください。
よろしくお願いします。
俗説のようですね。
未菜実 (2001/05/21 10:56)
以下は、講談社現代新書「英語の語源」渡部昇一 によりました。
man の語源は印欧語根の men-(考える) に由来します。
woman の語源は wif-man「蔽われた人」に由来するそうです。
wif-は、後の wife にあたり「蔽われたもの」の意味で「女性」
を意味したそうです。
なぜ蔽われた人かは、花嫁を包んだことから出たのではないかと
のこと。
ただ、woman の語源は長い間不明だったとのことで、俗説が多く
あるそうです。
1.woe-man 男性にとって災厄(woe)である。
エデンの園を追放されたのがイブのせいだから
2.womb-man 子宮(womb)を持った人
など
womanについて
ビーバ (2001/05/23 21:26)
woman の語源が“wif-man”というのは問題ないのですが、man が印欧語根
men- に由来するというのは有力なのでしょうか?
少なくとも、「手」を意味する語根 man- と結びつける説や、サンスクリッ
ト manu などとともに「人」を意味する語根 man- を想定する説があり、
「人」を意味する語根 man- とする説が有力なように思います。
また wif を「蔽われたもの」というのも、どうなのでしょうか。
今度、渡部昇一『英語の語源』を読んでみたいと思いますが、ちょっと偏って
いるように感じます(あまり自信はありませんが)。
RE:womanについて
佐藤和美 (2001/05/26 14:42)
「woman」ですが、辞典を引いてみました。
「スタンダード英語語源辞典」(大修館書店)
woman
「wif「女」+mann「人」」
「英語語源辞典」(研究社)
woman
「wif'female,WIFE'+mann'person,MAN'」
wife
「一説では語根としてIE*weip-「ねじる、包む」を想定し、原義を「ベールをかぶった者」としているが疑問。」
man
「IE語根として*man- man のほか、*men- to think or to breathe(L mens),*mens- small,isolated,*(dh)ghomon-(L homo man),*man- hand(L manus)などとの関係が想定されているが、いずれも定説には至っていない。」
「L」はラテン語、「IE」は印欧祖語です。
渡辺昇一って英語に関してはまともな人だと思ってたんですが。
「英語の語源」も好きな本だったんですが……
woman
massangeana (2001/05/26 16:40)
印欧祖語から英語に発展するところを見た人はだれもいないのですから, 「正しいかどうか」でなく, 「そう考えるのにはどのような根拠があるのか」を考えた方が生産的だと思います。
こないだ書いた「ことばの生活誌」には:
ラテン nubere (結婚する) ... 当時のローマ人の理解としてウァロー(『ラテン語について』De lingua latina 5, 72) は, これをヴェールで「おおう」という意味から説明している. つまり, 空をおおう「雲」(nubes) に結びつけていたのである. これは一見こじつけのようにみえるが, ラテン語にも ob-nubere 「おおう」があるばかりか, 英語 wife<古英語 wif, ドイツ Weib「女」<古高ドイツ wib, 古ノルド vif「女」の対応を探ってみると, 古ノルド veifa 「巻く, かぶせる」, 古英語 woefan 「巻きつける, 着せる」がある. 従って, 「花嫁」は「(ヴェールで)おおわれている」という理解は正当なものであり, ここにかつての印欧語族のつつましい女性の姿があらわれてくる. (p.217)
またゴート manna, サンスクリット ma'nu(s.a)- は, 英語 man, ドイツ Mann とともに, *men- 「考える」という語根に関係する形と推定される。(p.64)
とあります。
教えて下さい
のぶ (2001/08/29 12:17)
&というの何かの(ラテン語?)組み合わせらしいのですがどなたかご存じ無いでしょうか?
Re: &
UEJ (2001/08/29 13:02)
以下のページ(最後の方)をご参考ください。
http://home.att.ne.jp/green/uej/kotoba/letters2.html
&
のぶ (2001/08/29 18:07)
UEJさんありがとうございました!
おかげでスッキリしました(^o^#
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