言葉の世界・伝言板 1999年7月
heartの語源
ビーバ (99/07/31 16:21)
ペッタさんの「heartの語源について」に関して
heorte は古英語です。ラテン語では cord-「心」です。
ラテン語の cord- という語は、英語の cordial「心からの」などに含まれる語
ですが、英語の heart とラテン語の cord- は同じ語源を持つ単語です。英語と
ラテン語は印欧語族(インドヨーロッパ語族)という大きな言語ファミリーに属
しているからです。その印欧語族の源である印欧祖語のもともとの語形は
「*kerd-」と推定されています。「*kerd-」という語がラテン語の cord-、英語
の heart と移り変わってきたわけです。
ギリシャ語も印欧語族の一つです。英語の heart に対応する古典ギリシャ語は
kardia「心」で、英語の cardiac「心臓(病)の」という単語に含まれています。
この様に英語では、高級語はラテン語から、医学用語はギリシャ語から借用し
ていることが多いので、語源は同じなのに形が違う単語の組がいくつもあります。
ドイツ語の herz「心」も、もちろん同語源です。ドイツ語は英語に近い言語
(両方ともゲルマン語派)なので、語頭が「h」になっています。印欧祖語の「k」
が「h」に変わっているのはゲルマン語の特徴です。次の例を参照してください。
印欧祖語 *kun-「犬」:
ギリシャ語 kuon (cf. cynic), ラテン語 cani- (cf. canine),
ドイツ語 hund, 英語 hound
※大修館書店『スタンダード英語語源辞典』を参考にしました。
Re:A Midsummer Night's Dream
佐藤和美 (99/07/31 14:09)
岩波少年文庫にチャールズ・ラムの「シェイクスピア物語」というのがあります。(訳者は野上弥生子)
これはシェイクスピアのダイジェスト集のような本です。
この本ではシェイクスピアの作品の題名が普通とちょっと違っているものがあります。
「お好きなように」
「がみがみ屋馴らし」
「十二日節の宵祭」
なんだかわかりますか?
で、「A Midsummer Night's Dream」です。
これは
「夏至祭の夜の夢」
という題名になっています。
art
佐藤和美 (99/07/31 14:08)
英語の「art」はラテン語「artem」がフランス語「art」経由で英語に入ったものです。
「art」と「heart」は無関係のようですね。
Re:A Midsummer Night's Dream
コールラビ (99/07/30 19:10)
辞書によると、the middle or height of the summerの語義も見えますね。
シェークスピアの時代以後に発生した語義なのでしょうか?
そもそもA Midsummer Night's Dreamは、夏至の日の物語でしたっけ?
あっ、遅れました。はじめまして、コールラビと申します。お仲間に入れて下さい。_(..)_
heartの語源について
ペッタ (99/07/29 17:28)
全然話しに即していないかも知れませんが、heartの語源を調査中です。
ラテン語ではheorte、ドイツ語ではHerzなのは分かったのですが、artと関係が
あるかどうかを教えていただけないでしょうか。
A Midsummer Night's Dream
佐藤和美 (99/07/28 08:35)
暑い日が続きますね。今が1年で一番暑い時期でしょうか。
シェークスピアの作品に「A Midsummer Night's Dream」というのがあります。
「Midsummer Night」って、今頃の夜のことかな?
ところがこれが違うんですねぇ。「Midsummer」とは夏至のことなんです。
「A Midsummer Night's Dream」は
普通、「真夏の夜の夢」と訳されますが、
最近では「夏の夜の夢」という題も見かけます。
「真夏の夜の夢」は直訳、
「夏の夜の夢」は意訳といったところでしょうか。
「Midsummer」といえば、どうしても今頃の暑い盛りを連想してしまいますものね。
暑中
佐藤和美 (99/07/23 12:45)
日本で季節といえば、普通は四季ですが、
陰陽五行説では五季(春、夏、秋、冬、土用)です。
土用は春、夏、秋、冬の後に四等分して配分されています。
夏と秋の間の土用は、今年は7月20日からです。
そして、秋の始まる日(立秋)の前の日まで続きます.
この期間が暑中です。
この期間に出す見舞いが、暑中見舞いですね。
立秋を過ぎると秋ですから、このときの見舞いは残暑見舞いになります。
カシオペア
佐藤和美 (99/07/22 08:32)
カシオのカシオペアも「Cassiopeia」のようですね。
どうも「dial」が「ダイヤル」が優勢なように、
「Cassiopeia」の「カシオペア」も結構勢力があるようですね。
「ア」か「ヤ」か悩む場合は、
だいたいは「ア」のほうが正しいようですから、その類推でしょうか?
どっちにしろこれらの共通点は、もとのスペルを気にしてないということでしょうね。
カシオペアいろいろ
ビーバ (99/07/21 15:05)
カシオ計算機から発売されているWindowsCE機も「カシオペア」ですし、
向谷実がキーボードをつとめるフュージョンバンドも「カシオペア」ですね
(フュージョンバンドのほうのアルファベット綴りはCASIOPEAですが)。
ネーミングの世界では「カシオペア」がデファクトスタンダードなのでしょうか。
カシオペア
佐藤和美 (99/07/21 09:32)
上野・札幌間に新しい寝台特急がデビューしました。
(この文章って、重複語?)
「カシオペア」です。
でも、ちょっと待ってくださいよ。
それでいいの?
「Cassiopeia」はカナ表記は
「カシオペヤ」か「カシオペイア」です。
「カシオペア」という表記は、まあ間違いですね。
「dial」は「ダイアル」という表記よりも、「ダイヤル」のほうがはばをきかせているようですが、
「カシオペア」という表記を決めた人は、そういうことが頭にあり、
スペルを確認しないで、「カシオペア」にしてしまったんでしょうか?
P.S.
「しあわせ」、「しやわせ」なんてのもありますね。
カウント20000突破
佐藤和美 (99/07/21 09:31)
カウントが20000を突破しました。
うれしいですねえ。
30000めざしてまたがんがりますので、よろしく!
アッパ(朝鮮語では)
ビーバ (99/07/20 20:57)
朝鮮語では「appa」が「パパ」を意味します。親族名称や日常的な語にこのような
「p」音を含んだ単純な発音の単語が用いられることは、多くの言語で見られることだ
と思います(両唇音は小さなこどもにも発音しやすい音であるから)。それが語源的
に対応するとは、簡単には言えないと思います。
日本語の標準語で母親を指す「ハハ」という語は、古くは「papa」という発音であった
でしょうから、東北方言の「アッパ」と対応するかもしれません。
アッパ
佐藤和美 (99/07/20 09:59)
私の持っているアイヌ語辞典には、
「アッパ」が「不浄なもの」とは載っていません。
マユツバものだと思います。
本にしろ、Webにしろ、いいかげんなのが多いので注意が必要です。
アイヌ語辞典からひろってみましょう。
「アパ」 親戚
「ハポ」 母
「シ」 大便
(アイヌ語では「p」と「b」の区別はありません。)
秋田県出身のマンガ家矢口高雄のマンガにはお母さんのことを、
「アバ」と呼ぶシーンがでてきます。
「アバ」と「ハポ」が関係あるのかどうか、私は知りません。関係があるとしたらおもしろいですね。
マタギが山で話す言葉にもアイヌ語が含まれているといわれています。
矢口高雄の「マタギ列伝」にもクマを解剖するするシーンで心臓のことを「サンベ」といってますが、
これもアイヌ語と同じです。
昔、女性が不浄と言われたのは月経のためで、大便のためではありません。女性と大便を結びつけるのは無理があると思います。男だって大便しますものね。
ちょっと仕事がいそがしくて
佐藤和美 (99/07/20 09:57)
ちょっと仕事がいそがしくて、
書きこみを休んでました。
UEJさん、日本にもどられたんですね。
これからもよろしくお願いします。
「しあさって」の「し」ですが、私にもよくわかりません。
日本語では基本的な単語の語源は不明なものが多いような気がします。
これもそのうちの一つかも?
福井方言に
EVT (99/07/18 16:10)
こんにちは。福井方言に「アッパ」という言葉があります。これは「大便」を意味します。
福井方言辞典には「アッパ:盗賊の大便をあらわす隠語」とありました。しかし、あるweb
ページで、「アッパ」はアイヌ語で「不浄なもの」であるという記述を見かけました。これ
は本当なんでしょうか?また、東北のある地域では、母親のことを「アバ、アッパ」という
そうですが、これとも関係あるような気もします。昔は女性は不浄なものと思われていまし
たから。たしかにつながるような気もするのですが、なんとも言えないのでご意見を伺いた
いです。
うろこ&し
UEJ (99/07/16 21:20)
お久しぶりです。日本に帰ってきたUEJです。
うろこについては拙ページ「コトバ雑記」(http://home.att.ne.jp/green/uej/kotoba/)の「聖書のみことば」(http://home.att.ne.jp/green/uej/kotoba/bible.html)をどうぞ。
しあさってについては、河村さんの「勉強さしてもらいます」(http://www2.justnet.ne.jp/~y-kawamura/)の「やなあさってなんだ」(http://www2.plala.or.jp/kamkamkam/gimon2/no51/siasatte.htm)に面白い議論がありますが、
直接の答えはないですねぇ。「再(さ)あさって」→「しあさって」かも?
↓引越しました
http://home.att.ne.jp/green/uej/kotoba/
し?
TK (99/07/16 16:58)
「しあさって」の「し」とは何なのでしょう?辞書を見ると「しあさって」は
「明々後日」とかいてあって、「明」が「し」なのでしょうか。
「眼からうろこ」の語源について
S.Ogura (99/07/16 12:37)
「眼からうろこ」の「うろこ」って何で「うろこ」なんでしょうか?
北海道大学山岳部
佐藤和美 (99/07/12 12:33)
北海道大学山岳部のHP
http://glacier.lowtem.hokudai.ac.jp/aachhome/
に、
「北海道のアイヌ語地名」の「1979年6月・北海道旅行メモ」に関して次の記事がありました。
「佐藤和美さんのホームページ...「1979年6月・北海道旅行メモ」に十勝三股へ行く時に,「北大の山岳部がいたので、バスはこんでいた」とあります.そんなに大勢いたのかなあ?」
このバスは小型のバスで、20人も乗れば満員になってしまうようなバスでした。北大の山岳部の人は10〜15人くらいだったと思います。
それにしても、この旅行からもう20年にもなるんですねぇ。
言葉の本の新刊本
佐藤和美 (99/07/10 12:19)
トップページに「言葉の本の新刊本」を追加しました。
言葉関係の新刊本を新書・文庫を中心に紹介していく予定です。
どういうスタイルにするか、試行錯誤でやってくつもりですので、
要望があったら、どんどん教えてください。
Ultra Ranking
佐藤和美 (99/07/08 12:30)
このHPが
Ultra Ranking
http://ultra.wink.ne.jp/
の99年6月カテゴリー「学問」で11位でした。
このHPも少しは見てくれる人がでてきたんでしょうか。
七夕
佐藤和美 (99/07/07 08:23)
今日は、七夕ですね。
陰陽五行説はいろいろな五つのものに五行を結びつけています。
(この辺は「ヨーロッパの言葉」の「暦と星」を読んでみてください。)
七夕は五節句の一つです。
五節句とは
1月7日 (特に有名な名はない。「人日」なんて聞いたことないですよね。)
3月3日 雛祭(桃の節句)
5月5日 端午の節句
7月7日 七夕
9月9日 重陽(菊の節句)
です。
奇数の月が並んでいて、1月を除いて、
ゾロメ(月と日が同じ)になっているのがおもしろいですね。
白
佐藤和美 (99/07/06 08:19)
「albo」、ラテン語で「白い」。
「albo」のなかまを集めてみました。
アルビノは「白子」。
「ジャングル大帝」のレオみたいなのですね。
「アルビオン」はブリテン島の古名。
ブリテン島の南部海岸が白い崖であることから。
「白い国」の意味。
「アルバム」は「白いもの」の意味。
写真をはる前の状態からですかね。
世界のことば100語辞典
佐藤和美 (99/07/05 13:01)
三省堂から「世界のことば100語辞典」という本が2冊でてました。
石井米雄・千野栄一・編「世界のことば100語辞典アジア編」
千野栄一・石井米雄・編「世界のことば100語辞典ヨーロッパ編」
それぞれの地域の代表的な言語から基本的な100語を選んで、
比べてみようという本です.
そのうち、なにかのネタに使えそうだなというヨコシマな思いで、
思わず買ってしまいます。
伝言板コンピュータ関係集
佐藤和美 (99/07/05 14:06)
「雑学・コンピュータ関連用語集」に「伝言板コンピュータ関係集」を追加しました。
伝言板からテーマ別にひろいだして集めるのも、これが六つ目です。
そろそろ、テーマが思いつかなくなってきたんですが、
なんかありますかねえ?
MCP
佐藤和美 (99/07/03 15:04)
私はプログラマーなんですが、
きのう、MCP試験(Windows95)を受けてきました。
(会社が受けろっていうもんで)
MCPは「Microsoft Certified Professional」で、
Microsoftの企業資格試験です。
受験料が高いんで(\15000!!)とても個人では受ける気がしない試験です。
これで晴れて私もMCP。
「言葉の世界」というHPをやってる私ですが、
得意な言語は英語でも、中国語でも、アイヌ語でもなく、
C言語です。(^^;
数字の意味
佐藤和美 (99/07/02 10:18)
アイヌ語の「イワン」(6の)には「多数」の意味があります。
それ以外は、
UEJさんのHP「コトバ雑記」
http://www.grad.math.uwaterloo.ca/~kueda/kotoba/
第13話「ラッキーナンバー東西」
を見ていただくのがいいでしょう。
上代特殊仮名遣い
佐藤和美 (99/07/01 16:10)
本居宣長はいろいろなことをやった人です。
「字余り」以外にも「上代特殊仮名遣い」というのを発見しています。
万葉仮名は漢字を仮名的に使っていますが、ある特定の音で漢字が使い分けされているのを発見しました。ある特定行の「イ」段、「エ」段、「オ」が2グループに使い分けされていたのです。
これは後に橋本進吉によって再発見されました。橋本進吉はこれは母音の違いではないかと考えました。万葉時代には母音が8あったというのです。八つの母音とは a 、i甲音、 i乙音、 u、 e甲音、 e乙音、 o甲音、 o乙音 です。
岩波文庫に橋本進吉の「古代国語の音韻に就いて」という本があります。この経緯を書いていて、なかなかおもしろい本です。
8母音がどのようにつくられたのか、大野晋は次のように考えました.(定説ではないと思います。)
重母音が新しい母音を作り出してたのではないか。すなわち ui が i乙音 に、 ai が e乙音 にというように。
(このことは「知床地名行」にもちょっと書いています。)
この説だと母音の連続が消滅した理由は説明できるようですね。
さて、次は私の妄想です。
重母音が新しい母音をつくりだすことによって、単語内での母音の連続はなくなりました。
ところが単語の接続する所では、母音連続が起こってしまうときがあります。
このとき8母音がつくられたように、母音の融合が起こらなかったか?
ペルセさんwrote
>二重母音として、一音で発音するからでしょうか?
私もそんな気がするんですが……
数字のもつ意味
TK (99/07/01 13:48)
で、また別件で知りたいことがあります。
日本語では奇数に「調和のとれたもの、めでたいもの」(←ちょっとうまい表現が
みつからないのですが)…e.g.七五三 三三九度
七や八に「数が多い」…e.g.七変化 七度うまれかわる 八百八町 八百万の神)
という意味があるようですが、
他の言語では特定の数詞をともなった言い回しや、本来の意味とは
ことなる表現に数をもちいることはあるのでしょうか。
なるほど。
TK (99/07/01 13:39)
字余りの法則、そういうことでしたか。
秋の田の 刈り穂の庵の 苫をあらみ ← tomawoarami
…すいません、字余りの歌っていうとこれしか思い付かないのですが、これも
あてはまってますよね。
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