第55回「ラーメン二郎と蒲田駅」(2000.5.1)



 慶応大学の三田校舎の近所には、知る人ぞ知るラーメン屋がある。「ラーメン二郎」っていうんだけど、とにかくやたらと脂こってりのラーメンを出す店で、腹を減らした体育会系の学生や近隣のサラリーマン達に贔屓にされている。開店前からスープがなくなるまで行列が途切れないほどの人気店で、男達がずらっと並んでる様は近所の風物詩になっていたものである。
 その味に惚れ込んで弟子入りを願い出る人も多いらしく、都内各地に支店も出ている。本店は取材お断りらしくてメディアにはほとんど出てこないんだけど、数ある支店には雑誌やテレビ番組で紹介されてる店も多いので、そちらの方を知っているっていう人も多いんじゃないだろうか。
 で、目蒲線と池上線がJRと交わる蒲田駅である。こないだ駅前で時間の空いた僕は、ぶらぶら歩いているうちにラーメン二郎蒲田店の看板を発見してしまった。こういうのって、ひょいと昔の知り合いに再会したようで悪くない。ちょうど小腹も減ってたし、ちょいと一杯食べていこうかなと思って立ち寄ってみることにした。
 入口には支度中の看板が出てたんだけど、聞けば仕込みはもうすぐ終わるという。そんじゃあと駅前で散歩を続け、しばらくしてから戻ってきてみた。
 食券の自販機には本店にはない「つけラーメン」ってメニューもあったけど、生憎と品切れ中とのことなんでオーソドックスなラーメンとチャーシューの組み合わせでいくことにした。本店流に言うと「小ダブル」ってやつで、小さい方の丼(つったって大盛りじゃないってだけで結構なボリュームである)でチャーシューがどかって入ってるのだ。
 とにかく食べごたえのあるラーメンなので、うっかり大を選んだ日には大変である。開店して間もなく席も埋まっていったんだけど、年配のお客にはお店側から「脂多くて全体にこってりなんですが大丈夫ですか?」なんて聞いてるんだから凄い。──もしも大丈夫じゃないなんて答えたらどうなるんだろうなあ。
 ともあれ、小ダブルが出てくるのを待つことしばし、トッピングは野菜ニンニク(野菜多めのニンニク入り。脂と辛さも指定できる)を頼んだ。──で、味の方は期待通り。これでもかってくらいのこってり感としっかりした麺、ジューシーで分厚いチャーシューと、本店にも劣らぬ食べ応えを満喫できたのであった。
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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp