第48回「田園調布の飛び入りちんどん」(1999.10.1)



 夏の終わりのある日、田園調布フェア99というイベントに取材に行ってみた。以前このコラムにも書かせてもらったちんどんバンドのかぼちゃ商会が演奏するというので、仕事ついでにそのライブを楽しんじゃおうというわけである。
 このイベント、駅前のふれあい道路の完成記念を兼ねてるとかで、東口のなだらかな坂が会場となっていた。バスの通り道さえ変えちゃって、車道を丸々塞いでステージを設置してあるのだ。露店のテントもたくさん出てて、ビールやかき氷といった定番の他に世界のワインやチーズ、アクセサリーや婦人服が売られてるあたりがさすがの高級住宅地である。
 やがてステージには賑やかなメロディと共にかぼちゃ商会が登場。ジャズの名曲「TAKE5」とか、トトロソングの「さんぽ」とか、明るく楽しくハッピーな音楽が田園調布に響いていった。
 かぼちゃ商会のオリジナル曲「沖縄恋唄」では、チンドン(鉦と小太鼓)の純さんとゴロス(大太鼓)の牧さんが演奏と共に歌声も披露した。アコーディオンのサブロウさんは演奏しながらひょいっと首をすくめて飛んできたトンボから身をかわし、リーダーの新名さんは近くにいた男の子に声をかけてステージの上に招き寄せている。確かササガワ君とかいう名前の小学生だったんだけど、かぼちゃの演奏をバックに「だんご三兄弟」を元気よく歌って会場を盛り上げていた。
 やがてステージを下りたかぼちゃ商会は、演奏したまま坂の下の方まで練り歩いていった。アニメソングの「葛飾ラプソディー」から宇多田ヒカルの「オートマティック」まで、ちんどんアレンジの名曲がきれいになったふれあい道路に鳴り響き、周りのお店の人達が笑顔でそれを見送る。呉服屋のご主人が二階の窓から不思議そうな顔で見下ろしてる様なんて、何とも絵になってたなあ。
 演奏は昼過ぎと夕方に行なわれたんだけど、夕方の練り歩きはなかなか凄かった。どこかの民族楽器らしき太鼓を持った少年や胡弓を持った青年が飛び入り参加したのである。──で、この青年というのが、なんと前回このコラムで紹介した横浜駅の胡弓弾き・けんじさんであった。胡弓の練習に行った帰りに大井町で会った知人に誘われ、タイミングよく田園調布にやってきたんだとか。そのままステージに上がったかぼちゃ商会と「上を向いて歩こう」をセッションし、ソロまでとって拍手を浴びてたのだが、こういう偶然ってあるんだねえ。

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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp