映画 日記   名探偵ポワロ   (2001年から)     池田 博明 


 
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2008年,2014年 名探偵ポワロ     外 国 映 画 (洋画)

名探偵ポワロ データベース



       名探偵ポワロ グラナダTV ドラマ版  ベストテン    池田

  第1位   カーテン
  第2位   オリエント急行殺人事件
  第3位   もの言えぬ証人
  第4位   チョコレートの箱
  第5位   スズメバチの巣
  第6位   象は忘れない
  第7位   マギンティ夫人は死んだ
  第8位   鳩の中の猫
  第9位   ヘラクレスの難業
  第10位  満潮に乗って

 期せずして若竹七海さんの選んだベスト3(『オリエント急行殺人事件』『葬儀を終えて』『スズメバチの巣』)と評価の高い作品(『チョコレートの箱』『ヒッコリーロードの殺人』『ポワロのクリスマス』『100万ドル債券盗難事件』『消えた廃坑』)と三作重なった。若竹選出は「ミステリマガジン」2014年11月号で、最終シーズン放映前なので『カーテン』は選出されていない。順位はさほど重要ではない。
 ベスト推薦作品では、「正義の犯罪はありうるか」「殺人を防ぐ手段があれば、それを行使できるか」という問題が扱われる例が多い。
          名探偵ポワロ データベース 驚嘆すべきデータで、詳細です。


見た日と媒体 作  品        感  想     (池田博明)
2014年10月6日
(2015年3月29日再放送)



BSプレミアム

(2015年1月26日
レンタル)
名探偵ポワロ

カーテン
ポワロ最後の事件



英国グラナダ・プロ
89分
英国
2013年放映
 第52話であるポワロものの最終作。ケヴィン・エリオット脚本、ヘッティ・マクドナルド監督、IMDbの評価は8.7。

 暴虐な父にいじめられていた三人娘の長女マーガレット・リッチフィールドが、父親殺しの罪での絞首刑になったことが冒頭に描かれる。車椅子のポアロに数年ぶりに再会したヘィスティングズ大尉(Hugh Fraser)はポワロの手足になって欲しいと懇願される。30年前にポワロと大尉の最初に遭遇した殺人の舞台となったこの邸スタイルズ荘で、再び危険が迫っているとポワロは危惧していた。邸には大尉の娘ジュディス(Alice Orr-Ewing)が務めていた。ジュディスは薬物学者で医師のフランクリン博士(Shaun Dingwall)の助手をしていた。大尉の目には助手のアラートン(Matthew McNulty)はジュディスを誘惑する得体のしれない若者に見えた。博士の妻バーバラ(Anna Madeley)は病気がちで不満が多い。彼女に魅かれていることを隠さないウイリアム・ボイド・キャリントン卿(Philip Glenister)が同居している邸宅。知人のトビー・ラットレル将軍(John Standing)に恥をかかせることを何とも思わない妻ディジー(Anne Reid)など、怪しい人間関係が大尉の目に付く。母親の支配下にあったという吃音の青年スティフェン・ノートン(Aidan McArdle)。リッチフィールドの妹だというエリザベス・コール(Helen Baxendale)など、いったい誰がポワロが心配する殺人鬼なのか、大尉にはわからなかった。
 やがて、ディジーが兎と誤認されて銃撃される、バーバラが毒物で自殺、ノートンが拳銃で自殺と事件が相次ぐ。そして、ポワロも大尉に手がかりを託したまま亡くなってしまうのだった。ポワロは「執事のジョージに尋ねよ」とメモを残していたが、ジョージ(David Yelland)に聞いてみると、ジョージが父親の介護のために休暇を申請したのではなく、ポワロに解雇されたのだという。その理由はおそらくポワロをよく知らないカーティス(Adam Englander)に介護させるためだったと推測されるという。大尉にはポワロの意図がまったくつかめなかった。ポワロが亡くなって四か月後に大尉のもとに弁護士からポワロの書類が届く。そこにはおどろくべき真実が綴られていた。

 他のキャストはクレィヴン看護婦(Claire Keelan)、コロネル( Gregory Cox)。シェイクスピアの『オセロ』がキイになる。
2014年9月29日
(2015年3月22日再放送)



BSプレミアム

名探偵ポワロ

ヘラクレスの難業



英国グラナダ・プロ
89分
英国
2013年放映
 第51話である。脚本ガイ・アンドリュース、監督アンディ・ウィルソン。このコンビは「満潮に乗って」も作っている。
 原作は短編集『ヘラクレスの冒険』より。エルキュールを英語読みするとヘラクレスとなる。原作は12の短編だが、複数のエピソードを組み合わせてひとつの物語にしている。

 ボディガードを務めていたポアロが殺人犯に出し抜かれ、護るべき囮の女性ルシンダ(Lorna Nickson Brown)を殺されてしまうというショッキングでダークな内容で幕が開く。 殺人犯マラスコーはヴァン・ドリースの連作絵画「ヘラクレスの難業」を次々に盗み、手段を選ばぬ残虐さで人々に恐れらていたが、誰もその正体を知らなかった。 ポワロは事件の後遺症でカウンセラーにかかることになる。三ヶ月後、ポワロは偶然乗ったタクシー運転手テッド(Tom Austen)の恋人ニータが失踪した話を聞き、 自己治療のため、その恋人の発見を約束する。恋人が仕えていたというバレエ・ダンサー、サムシェンカがスイス・アルプスの雪の山荘オリンポス・ホテルに滞在しているという情報を得て山荘に赴くポワロだったが、その山荘には件の殺人犯とおぼしき人物も潜伏したというルマントゥーユ警視(Nicholas McGaughey)の情報によって、覆面捜査官が潜入しているという。雪崩でロープーウェイが運行不能になり、ひとくせありそうな客たちは山荘に足止めをくらってしまう。そして、そこで第二、第三の事件が起こる。かなりの力業によりひとつの物語にまとめあげているため、展開に強引な感があるが、力作であり、ポワロの起死回生の冒険物語の要素もある。
 女性スキャンダルの暴露を恐れて身を隠す外務次官ハロルド・ウェアリング(Rupert Evans。実は醜聞は外務大臣アンソニー(Patrick Ryecart)の罪をかぶったもの)、夫の暴力に耐えるエルシー(Morven Christie)とその母親(実は姉)のライス夫人(Sandy McDade)、 ポワロに犯罪を見逃してもらったことのあるロサコフ伯爵夫人(Orla Brady)と、犯罪心理学に関心があるという彼女の娘アリス(Eleanor Tomlinson)、ダンサーのカトリーナ(Fiona O'Shaughnessy)とおつきの医師ルッツ(Simon Callow)、ホテルの支配人フランチェスコ(Nigel Lindsay)と保険調査員シュワルツ(Tom Wlaschiha)、にわかウェイターのグスタフ(Richard Katz)。

 他のキャストは女性警官(Isobel Middleton)、主任警部(Stephen Frost)、バートン博士(Tom Chadbon)、パーティの司会者(Ashley Powell)、給仕(Jd Roth)。

【参考文献】アガサ・クリスティー『ヘラクレスの冒険』(ハヤカワ文庫):脚本に使われた主要な短編(The prominent short stories here)は、 'アルカディアの鹿 The Arcadian Deer', 'エルマントスの猪 The Erymanthian Boar', 'アルゲイアイス王の大牛舎 The Augenean Stables', 'スチュムパロスの鳥 The Stymphalean Birds', 'ヒッポリュタの帯 The Girdle of Hippolyta' ,'ケルベロスの捕獲 The Capture of Cerberus'だった。
 なかでも中心は '猪 Boar' (マラスコー一味がロシェ・ネージュで落ち合う計画を知ったポアロは誰がマラスコーかを見破る)。 取り込まれたネタは、政治的な醜聞 ('牛舎')、絵画泥棒 ('帯')、殺された少女ルシンダ・ルメシュリエール (唯一未映像化作品の「ルメシュリエールの相続」参照)、失恋した運転手 ('鹿'では自動車修理工)と一緒にしたのは彼のニータとのエピソードの結末 ('鹿')、二人の詐欺師とたやすく騙される外務次官ハロルド ('鳥')、ヴェラ・ロサコフ伯爵夫人と娘(物語では義理の娘)と医師と犬 ('捕獲')。これら出演者のほとんどが集まる場所がスイス・アルプスのホテル・オリンピアであること ('猪')、それに加えて ペテン師のホテル支配人j(一部は'鳥'から借りた)、狡猾なウェイター、 ゲームに熱中するパーラー、マラスコーと呼ばれる謎の犯罪者 ('猪)。
2014年9月22日
(2015年3月15日再放送)



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名探偵ポワロ

死者のあやまち



英国グラナダ・プロ
89分
英国
2013年放映
 第50話である。脚本ニック・ディア、監督トム・ヴォーン。ナス屋敷として撮影され屋敷はクリスティーの家。撮影は本作はポワロが死去するエピソードの『カーテン』よりも後に撮影されたという。『カーテン』が最終の撮影では誰もが滅入ってしまうからだ。撮影終了のお祝いもままならない。

 嵐の夜である。デヴォンシャーのナス屋敷にジョージ卿が新妻パティを連れて戻ってくる。召使たちが出迎えるがパティは具合が悪いと寝てしまう。嵐で古い樹が倒れる。一年後、ポアロは、オリヴァ夫人の電報でナス屋敷へ急いでいた。途中、タクシーは女性二人のヒッチハイカーを拾う。オリヴァー夫人はジョージ卿主催の祭りの日に行う殺人推理ゲームの台本を依頼されたものの、不吉な予感がすると、ポワロに助けを求めたのだった。
 オリヴァー夫人ポワロは屋敷の主人やゲストを観察し始める。なんだかエキセントリックな人々ばかりである。ジョージ卿は落ち着きがない。その妻パティは低脳である。元の持ち主ウォーバートン夫妻は国政の話ばかり。ナス屋敷の持ち主はフォリアット夫人だが、彼女は「世間は忌まわしい。悪人だらけだ」と謎めいた言葉を発する。皮肉な建築家ウェイマム、科学者レッグ夫妻らと一緒の夕食は気まずい空気が流れるものだった。
 祭りの日、いつのまにかパティ夫人が消失。殺人ゲームの死体役だった娘マーリン・タッカーはボート小屋で絞殺されて発見された。失踪したパティが発見されないまま、当日屋敷にやってきたパティの従兄弟だというド・スーザがパティ殺害の容疑で逮捕される。しかし、直接的な証拠はないのだった。フォリアット家の昔の使用人ジョン・マーデルが酔って船から転落死。ポワロは自分の推理が的を射ていなかったことに気づく。
2014年9月15日
(2015年3月8日)



BSプレミアム

(2015年1月26日
レンタル)
名探偵ポワロ

ビッグ・フォー



英国グラナダ・プロ
89分
英国
2013年放映
 第49話である。脚本マーク・ゲティス&イアン・ハラード、監督ピーター・リドン。IMDbの評価は7.2。

  ヘィスティングズ大尉(Hugh Fraser)、ミス・レモン(Pauline Moran)、ジャップ警視監(Philip Jackson)、執事ジョージ(David Yelland)がポワロの葬儀に立ち会っている。四週間前、平和党の集会でリーダーのエィブ・ライランド(James Carroll Jordan)は余興で、ロシアのチェス王サヴァラノフ(Michael Culkin)と対戦、ところがサヴァラノフは急死してしまった。ポワロはチェス盤に特定の駒を置くと電気が流れて感電するような仕掛けが施されているのを知る。これは平和党の陰謀だろうか。エィブは失踪、次いで化学者オリヴィエ婦人(Patricia Hodge)も失踪。外交官スティフェン・ペインター(Steven Pacey)が顔を焼かれて殺される。
 メトセラ劇団のフロッシー・モンロー(Sarah Parish)のもとには熱いファン・レターが届けられていた。ビッグ4と名乗る未知の人物が世界の不安を背景に社会の脅威となっていた。いったいビッグ4の正体や目的は何だろうか。犯人におびき出されたポワロは爆破されて吹き飛び、死亡する。

 他のキャストは特ダネを追う記者タィソー(Tom Brooke)、イングルズ(Nicholas Day)、ペインターの専任クエンテイン医師(Simon Lowe)、劇団の同僚メイベル(Lou Broadbent)、ジョナサン・ホェリー(Peter Symonds)。
2014年9月8日
(2015年3月1日再放送)



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名探偵ポワロ

象は忘れない



英国グラナダ・プロ
89分
英国
2013年放映
 第48話である。原作はそれほどの出来ではないと思うが、映画は見事な出来である。脚本ニック・ディア、監督ジョン・ストリックランド。

 1925年イーストボーンの海岸の崖の上でで仲の良い将軍夫妻が拳銃で心中死体で発見された。二人の傍らで夫妻が飼っていた犬が悲しそうに吠えていた。
 それから13年後、アリアドニー・オリヴァー夫人(ゾーイ・ワナメイカー)の推理小説の受賞パーティ。オリヴァー夫人はバートンコックス夫人(グレタ・スカッキ)からオリヴァー夫人が名付け親となったシリル・レイブンクロフト(ヴァネッサ・カービー)が、ピアニストの自分の息子デズモンド(ファーディナンド・キングスレー)と婚約しているものの、13年前のレイブンクロフト将軍夫妻(アドリアン・ルーキス、アナベル・マリオン)の心中事件の真相が気になるので調べて欲しいと強引に依頼される。
 断りきれなかったオリヴァー夫人はポワロに相談する。しかし、ポワロも精神科のウィロビー医師(イアイン・グレン)から殺人事件の相談を受けていた。こちらの事件はウィロビー医師の父親が一階の診療室の風呂桶で死んでいたというもの。昔行っていた水治療に見立てた殺人だった。事件当夜のアリバイが二階で寝ていたという医師には無い。秘書のマリー・マクダーモット(アレクサンドラ・ダウリング)も先に帰宅したという。捜査に当たるビーズ警部(ヴィンセント・リーガン)はポワロにも同席させて関係者の証言を聞き取っていく。
 オリヴァー夫人に助言を依頼されたポワロは過去の事件の関係者からの聞き取りを勧めるものの、自分の手がけている事件が忙しく、真剣に話に乗っていなかった。しかし、切れ切れの話をつなぎ合わせると、将軍の妻マーガレットがかつらを四つも発注していたこと、双子の姉ドロシー・ジャロー(クレア・コックス)が精神を病んでいて自分の息子を川に突き落として殺したこと、娘が殺したといいふらしていたこと、ドロシーは心中事件の三日前に崖から転落死していたことなどが分かってくる。
 一方無関係に思えたウィロビー研究所の事件はドロシーが殺された父親医師の患者だったことが分かり、つながってくる。水治療は最初に患者に熱い湯をかけ、その後に水責めにするという苛酷な治療だったが、効果があまりなく、近年は中止されていたという。また、事件当夜、将軍家にはフランス人の家庭教師ゼリー・ルーセル(エルサ・モーリエン)、家政婦がいたという。ポアロはもう一人、重要な人物がいたはずだと推理する。
 「象は忘れない」というタイトルはオリヴァー夫人のちょっとした連想に由来する。事件を考察していた夫人は歯にメレンゲがはさまったことをきっかけに、歯→象牙質→象は忘れないと連想を働かせた。ここでは象は過去を語る人物のこと。

 他のキャストは、Julia Carstairs: CAROLINE BLAKISTON / Mrs Buckle: MAXINE EVANS / Mrs Matcham: HAZEL DOUGLAS /ウィロビー医師の妻: JO-ANNE STOCKHAM /過去の事件の捜査官で退職した Garroway: DANNY WEBB/Madame Rosentelle: RUTH SHEEN / Stunt Co-ordinator: TOM LUCY
2015年4月17日





DVD
オリエント急行殺人事件
死の片道切符


USA
2001年
89分
 監督カール・シェンケル、脚本スティーヴン・ハリガン、製作ダニエル・H・ブラット。TVムービー。IMDbの評価は5.2.
 名探偵ポワロ(アルフレッド・モリナ)はイスタンブールでベリーダンサー殺人事件を推理し、脅迫状に回文が使われた特徴などから言語学者を犯人とする。容疑が晴れた美人宝石泥棒ヴェラ(タッシャ・デ・ヴァスコンチェロス)はポワロに自分と手を組むように一種の求婚をするが、泥棒と手を組むわけにはいかないとポワロは断る。しかし、後悔の念を残しながら、ポワロはイスタンブール発のオリエント急行に乗る。友人のブーケ氏(フリッツ・ウェッパー)のはからいでキャンセルで空いた一等客室に乗れたポワロだったが。
 犯人は九人に減らされている。除かれているのはオルソン夫人、伯爵夫人のメイドのドイツ人、探偵ハードマンの三人。
 ラチェット(ピーター・ストラウス)、ハバード夫人(メレディス・バクスター)、アルヴァラド夫人(レスリー・キャロン)、ストラウス(カイ・ウィーシンガー)、ストラウス夫人(アミラ・カサール)、アーバスノット(ディヴィッド・ハント)、マックイーン(アダム・ジェームズ)、フォスカレッリ(ディラン・スミス)、デベナム(ナターシャ・ホイットマン)、車掌ピエール(ニコラス・シャグリン)
 ラチェットへの脅迫にアームストロング事件のデジーのビデオテープが使われる。ラチェットが踏み潰し、マックイーンが捨てたテープをポワロは再生し、自分のコンピュータでアームストロング事件のウェッブを探し、画像を見る。ポワロが聞くデベナムとアーバスノットの会話は市場で。演出が単調だが脚色は短くまとめている。犯人についてふたつの説がある、君はどう思う?とブーケ氏に尋ねる。正義の犯罪について悩む様子は本作のポワロには無い。ヴェラの求婚に悩むポワロはポワロらしくない。最後にヴェラもオリエント急行に乗っていたことが分かり、未練を捨てきれなかったポワロは腕を組んで退場する。これではファンが怒る。
 
2015年1月22日






録画
オリエント急行殺人事件



英国EMI
1974年
128分
 アルバート・フィニーがポワロ役を演じ、オールスター出演で話題になった英国映画。シドニー・ルメット監督。

 冒頭ディジー・アームストロング誘拐事件が新聞記事中心に描かれる。
 イスタンブールで英国陸軍の事件を解決した(見送りの将校の話だけで語られる)ポアロは、英国の新しい事件のためオリエント急行でロンドンに向かうことになった。ところが、列車は12月にしては珍しく混んでおり、一等寝台車は満室。
 ポアロは鉄道会社の重役ビアンキ(原作はブーケ。マーティン・バルサム)の計らいにより、ポアロは乗り込むことになった。
 イスタンブールを出て2日目の夜、雪のために列車はバルカン半島内で停車。その翌朝、一等車に宿泊していた裕福なアメリカ人の乗客ラチェット(リチャード・ウィドマーク)が刺殺死体となって発見された。ポアロとビアンキは、二等車のギリシャ人医師コンスタンティン(ジョージ・クールリス)、フランス人車掌ピエール・ミシェル(ジャン=ピエール・カッセル)と共に捜査に乗り出す。検死により、ラチェットは合計で12回刺されていた。ポアロはラチェットは、カッセッティと呼ばれるマフィアのボスだった。5年前の1930年、カッセッティと部下は、アームストロング大佐の幼女デイジー誘拐事件の犯人だった。共犯者は逮捕されたが、カッセッティ本人は国外逃亡して罪を免れていたのだ。
 オールスター映画なので終始明るいタッチで描かれる。最後はハバード夫人とメアリーにみんなが一人ずつ乾杯に来る。製作者によるとこれはカーテンコールなのだそうである。殺人を描いた映画なのに、こんなにも楽しげなのは許せないと怒ったひともいたそうだが、本格派ミステリーは一種の遊びです。殺人を楽しむんですから。

 キャストはラチェットの秘書マクイーン(アンソニー・パーキンス。『サイコ』の主役に母を慕う青年を演じさせるという自己パロディ的なキャスティング。パーキンスは楽しそうに演じている)、執事ベドウズ(ジョン・ギールグッド)、アーバスノット大佐(ショーン・コネリー)、教師デベナム(ヴァネッサ・レッドグレイブ)、ナタリア・ドラゴミノフ公爵夫人(ウェンディ・ヒラー)、公爵夫人のメイドヒルデガルド(レイチェル・ロバーツ)、ハバード夫人(ローレン・バコール)、オルソン(イングリッド・バーグマン。故意にスェーデンなまりのたどたどしい英語で話す。後でわざとだったことがポワロに見抜かれる)、アンドレニ伯爵夫妻(マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセット)、探偵ハードマン(コリン・ブレイクリー)、イタリア人フォスカレッリ(デニス・クイリー)。
2013年1月10日



BSプレミアム
21:30〜
名探偵ポワロ

オリエント急行の殺人



英国グラナダ・プロ
89分
英国
2012年放映
 第47話である。万難を排して製作された一作。アルバート・フィニー主演、シドニー・ルメット監督の名作があるがゆえに、製作者の苦悩も大変なことだったろうと思われる。製作はカレン・スラッセル、脚本スチュワート・ハーコート、監督フィリップ・マーティン。

 ポアロが追及していた事件の犯人の中尉がポアロの目前で銃で自殺する。真実を追及した結果が惨事になる例を枕にして本編が始まる。
 イスタンブールでポアロは不貞を働いた妊婦が人々に石で追われるのをデヴェナム夫人が救おうとした様子を目撃していた。デヴェナム夫人はアーバスノット大佐と一緒だった。急きょロンドンに戻るように要請されて、ポアロはカレー行きのオリエント急行に乗車しようとする。あいにく列車は満員だったが、車掌長のブークはポワロを知っていた。ひとりくらいならなんとかなると無理やり、列車に押し込んでしまった。
 ポワロは一日目はマックィーンと同室だったが、二日目は一号室に移される。自分が償いのために殺されかねないと訴えるラチェットがポワロを雇おうとするが、ポワロは横柄なラチェットを快く思わず依頼を断る。ラチェットは脅迫状を受け取っているらしい。
 その晩、ラチェットが12回も刺されて殺された。ブーク氏はポアロに解決を依頼する。現場に残されたメモの燃えかすにはAISY ARMSという文字があった。ポワロはDAISY ARMSTRONG誘拐事件を思い出す。ラチェットは偽名で誘拐犯カセッティだったのだ。誘拐犯はディジーを殺したばかりではない。事件により妊娠中だった妻子を死亡させ、犯人に家の情報をもらしてしまったメイドを自殺においやり、家庭教師を失職させ、大佐を死なせていた。それにもかかわらず、身代金でマフィアをだきこんだカセッテッィは起訴を逃れていた。雪に閉ざされた列車のなかで聞き取りを続けるポアロは乗客たちが事件になんらかの関係がある者たちであることに気づく。
 周到に計画された復讐だったのだ。乗客の前で真相をあきらかにするポワロはこの<正義の裁き>を見過ごすことは出来ないと主張する。除雪車とともに警察が来る。ポワロは警察の責任者に犯人が残した車掌の制服と落としたボタンを示す。しかし、ポワロはそんな自分自身を許せなかった。ポワロの表情はきびしく神の十字架を握りしめていた。

 午后9時48分ころ福島県で地震があったため地震情報がかなり出てしまった。配役はドラゴミノフ公爵夫人実はソニアの名付け親(アイリーン・アトキンス Eileen Atkins 声:勝倉けい子)、テディ・マスターマン(ヒュー・ボネヴィル Hugh Bonneville 声:辻つとむ)、メアリー・デベナム実はデイジーの家庭教師(ジェシカ・チャスティン Jessica Chastain 声:日野由利加)、デイジーの子守役だったグレタ・オルソン(マリ・ジョゼ・クローズ Marie-Josee Croze 声:安藤みどり)、車掌長ザビエール・ブーク(セルジュ・アザナヴィシウス Serge Hazanavicius 声:伊藤昌一)、サミュエル・ラチェット(トビー・ジョーンズ Toby Jones 声:納谷六朗)、ヒルデガード・シュミット実は料理人(スザンネ・ローター Susanne Lothar 声:蓬莱照子)、イタリア人実はアームストロング家のお抱え運転手アントニオ・フォスカレリ(ジョセフ・モウル Joseph Mawle 声:吉野貴宏)、自殺したメイドの親だった客室係ピエール・ミッシェル(デニス・メノーシェ Denis Menochet 声:高瀬右光)、ジョン・アーバスノット大佐実はアームストロング大佐の友人(デビッド・モリッシー David Morissey 声:金尾哲夫)、アンドレニ伯爵(スタンレー・ウエーバー Stanley Webber 声:渡辺聡)、アンドレニ伯爵夫人実はソニア・アームストロングの妹(エレナ・セイン Elena Saine 声:生原麻友美)、判事の息子ヘクター・マックイーン(ブライアン・J・スミス Brian J Smith 声:美斉津恵友)、アームストロング家の侍医コンスタンチン医師(サミュエル・ウェスト Samuel West 声:上杉陽一)、ハバード夫人実はソニアの母親(バーバラ・ハーシー Barbara Hershey 声:大西多摩恵)

 AmazonのDVDレビューにceleryという方が次のように書いているが同感。
 「脚色の意図についてですが、私は『愛国殺人』の原作を思い出しました。そこでポワロが犯人に対し、自身の信念を語る場面があります。これは私の勝手な想像なのですが、その場面を、この『オリエント急行』の監督と脚本家は、意識したのではないでしょうか。現代だからなされた解釈なのではなく、クリスティーはその後期において、すでにその境地にあったのです。この新版『オリエント急行』は、私にとって忘れ難い傑作となりました。本当に素晴らしいドラマを観せてもらいました。ただ、この作品はテーマといい描写といい、とても宗教色の濃い内容になっているので、観る側にキリスト教やイスラム教に関する少々の知識が必要かも知れません。それがないと、今何が起こっているのか、何が議論されているのかが分からなくなる恐れがあります。特に、キリスト教文化圏に暮らす人々が何を苦しみ、何に葛藤しながら生きて来たのかを理解していないと、難しいものになってしまうのでは、と思います。それにしても、ミス・オルソンがキリストの言葉を誤解したまま発言する場面は、衝撃的でした。それに対し、全てを分かっていながらそれでも、というミス・デブナムの悲しげな瞳が、感動的です。

 ポワロは「まやかしの陪審員がデタラメの人民裁判を(するなんて)。あなたがたはただのならず者だ。隣人を勝手に裁いた暗黒の中世と同じ。法の精神が地に落ちないように私たちは支えなければならない。そうしなければ私たちの社会はその拠り所を失ってしまう」、オルソン夫人「法の精神よりも崇高な精神がある」、ポワロ「(裁きは)神の手に委ねなさい」、オルソン「もし神が動かなかったら・・・。この世で地獄の責め苦にあえぐ弱い人々、彼らを救えるのは彼らに代わって裁きを下す人間よ。罪を裁くのは罪ではないわ。イエスはおっしゃった。汚れのない者に最初の石を投げさせよと。ここにいる人々は汚れのない人々よ」(吹き替えによる)。

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、第1位に選出された。「極寒の車内で凍死しそうになりながらの謎解きや、正義の名の下でエゴむきだしの登場人物たち、神学的テーマ。ドラマ版はどこをとっても暗いタッチで描かれている。だが。この『オリエント』が『カーテン』のあのオチへとつながっていくだろうこと。こんな古くさい話を、いまの時代に映像化することの意味を考え抜いた末に脚色された冒険かつ野心的なミステリドラマであること。そういった歴史的な意味をのぞいても、一瞬たりとも目が離せない緊迫感あふれる傑作である」。
2015年1月26日


レンタル
名探偵ポワロ

ハロウィーン・パーティ



英国グラナダ・プロ
89分
2010年
英国
 第46話である。マーク・ゲィテイス脚本、チャールズ・パルマー監督。IMDbの評価は7.9。アリアドネ・オリヴァー婦人( Zoe Wanamaker )と彼女の友人ジュディス・バトラー(Amelia Bullmore)が参加したウッドリー・コモン村のハロウィーン・パーティで、少女ジョイス・レイノルズ(Macy Nyman)が殺された。少女は以前に殺人を目撃したことがあると話していた。聞いた話を自分の体験のように語る傾向がある少女の話を誰も信じなかったが、ポワロは真の殺人犯の動揺が原因である可能性を考慮した。
 村に向う列車のなかでポワロは庭設計士のマイケル・ガーフィールド(Julian Rhind-Tutt)に会う。ポワロは村の噂に詳しいグッドボディ婦人(Paola Dionisotti)から不審な過去の事件を聞く。学校教師ベアトリスの水死事件、この事件には教会のオルガン弾きホイタッカー婦人(Fenella Woolgar)が関係しているらしい。フラトン法律事務所の事務員レスリー刺殺事件、この事件にはロウィナ・ドレイク(Deborah Findlay)の娘フランセス・ドレイク(Georgia King)が関係しているらしい。ドレイクの叔母ルエリン・スマイス急死事件、この事件には教区牧師コットレル (Timothy West)が手配したオルガの遺言書偽造事件が関係していた。
 ポワロの聞き取りが真相に近づいていく。ジョイスの母親(Sophie Thompson)は強いキリスト教信者で何事も神の思し召しと考えるのだった。やがて継子レオポルド(Richard Breislin)が殺される。
 ポワロはジュデイスの娘ミランダ(Mary Higgins)がジョイスと仲が良かったことに注目する。殺人に気付いたのはジョイス本人ではなかったのではないか。ミランダの生命が危ない。
 他にドレイクの息子エドマンド(Ian Hallard)、ポワロの執事ジョージ(David Yelland)。
 
2015年1月26日


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名探偵ポワロ

三幕の殺人


英国グラナダ・プロ
89分
2010年
英国
 第45話である。ニック・ディア脚本、監督アシュリィ・ピアース。IMDbの評価は7.7。名優サー・チャールズ・カートライト(Martin Shaw)主催のカクテル・パーティで、牧師(Nigel Pegram)が急死する。同席していたポワロは殺人の可能性は無いと断言する。
 しかし,精神分析医ストレンジ(Art Malik)が同様のパーティで急死するに及んで、最初の牧師の事件も殺人だった可能性が起きてくる。不安を抱える若い女性(愛称)エッグ(Kimberley Nixon)がポワロの助手のように活動して情報を収集していく。エッグを愛するチャールズもポワロの捜査に協力する。医師殺人事件後には執事エリスが失踪していた。 彼が脅迫に関与していたらしいという手紙も見つかった。クロスフィールド警視(Tony Maudsley)はエリスを捜す。
 三人は、二つの事件に関連していた人々を調べ始める。メードのミレィ(Suzanne Bertish)、ディクル大佐夫妻(Anastasia Hille、 Ronan Vibert)、衣装デザイナーのメアリー(Jane Asher)、劇作家のウィルズ(Kate Ashfield)、青年オリバー(Tom Wisdom) 、牧師夫妻(Anna Carteret、Nigel Pegram)など。
2015年1月27日



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名探偵ポワロ

複数の時計



英国グラナダ・プロ
89分
英国
 第44話である。脚本スチュワート・ハーコート、監督チャールズ・パルマー。IMDbの評価は7.9。

 ドイツでヒットラーが台頭して頃。英国の軍事情報をドイツに流すスパイのひとりアナベル(Olivia Grant)が機密情報を傘の取手に隠して持ち出そうとするのを目撃したフィオナ(Anna Skellern)は彼女の後をつけ、受け渡し場所をメモしたものの、アナベルに見つかってしまった。逃げようとしたフィオナは追ってきたアナベルと一緒に車にはねられて死んでしまった。
 フィオナの恋人だったMI6(情報部)のコリン・レース大尉(Tom Burke)はポーカーに夢中で彼女の助けを遅らせてしまったことを後悔し、メモの場所を探っていた。そのとき、屋敷から飛び出してきた女性がいた。見知らぬ部屋に死体があると言う。刺殺死体だった。飛び出してきた女性は秘書派遣業者から派遣されてきたシーリア(Jaime Winstone)。秘書課長マーティンデール(Lesley Sharp)が部屋の持ち主、盲目のペブマーシュ(Anna Massey)からの依頼で手配した指名派遣だったが、部屋には複数の時計が置かれており、それらはみな4時13分を指していた。主任警部ハードキャッスル(Phil Daniels)はシーリアを疑うが、レース大尉は玄関から飛び出してきたシーリアの狼狽ぶりから彼女の無実を信じる。海軍の軍事機密漏えいと殺人事件が関係あるものかもしれない。ポワロも政府から請われて捜査に協力する。
 被害者は保険外交員という身分証だったが、それは偽造かもしれない。ペブマーシュの部屋の付近に住む人々に、直接ポワロは聞いて回る。猫好きのヘミングズ夫人(Beatie Edney)、カナダから来たというブランド夫妻(Tessa Peake-Jones、Jason Watkins)、フランスへの武器商人マブット(Stephen Boxer)、ウォーターハウス夫妻(Guy Henry、Abigail Thaw)。
 検死審問中に誰かのウソに気付いた秘書のノラ(Sinead Keenan)や被害者の身分を偽ったメルリーナ(Frances Barber)が殺されてしまった。これらの殺人は軍事機密の漏えいと関係があるのだろうか。

 他のキャストはスヴェン(Andrew Havill)、スインバーン夫人(Victoria Wicks)。
2011年5月20日


DVD
名探偵ポワロ

死との約束



英国グラナダ・プロ
93分
英国
2010年放映
 第43話である。原作は『死との約束 Appointment with Death』。脚本はガイ・アンドリュース(原作をかなり変更している)、監督アシュレイ・ピアース。

 舞台は1937年のシリア。考古学者ボイントン卿(ティム・カリー)はヘロデ王がヨハネの首を埋めた遺跡を発掘したと信じていた。発掘はニュースになり、見学者が訪れる。卿の妻や子供たちも連れだってシリアを訪れていた。ポアロも見学に来ていたが、熱帯の夏の沙漠の暑さはポアロの体にはこたえた。
 日射病で倒れた医師サラ(クリスティナ・コール)を介抱したのはレイモンド(トム・ライリー)だったが、彼は意地の悪い母レオノーラ(シェリル・キャンベル)の奴隷だった。レオノーラが夫である卿の発掘資金を提供していたのだ。彼女は息子や娘たち・・・キャロル(エンマ・カンニッフェ)、レオナード(マーク・ゲィティス。『鳩の中の猫』脚本)、レイモンド、ジニー(ズー・ボイル)・・・を小さいころから乳母(アンジェラ・プレゼンス)に折檻させ、暴君のようにふるまい、養母の死を願わない子供たちはいなかった。
 発掘現場に向かうバスに途中で乗り込んで来たのは世界中を旅するウェストホルム卿夫人セリア(エリザベス・マックガヴァン)だった。バスにはサラや精神科医ジェラール(ジョン・ハンナー)や修道尼アニュエシカ(ベス・ゴダード)、投資家コープ(クリスティァン・マッケィ)も一緒だった。
 発掘現場でジェラールはマラリアらしき熱病で倒れる。ハチに刺された後、レオノーラ夫人が日光浴中に刺殺されて死んでいた。折よくカーバリ大佐(パール・フリーマン)が訪問。ポアロに事件の捜査を依頼するが、ポアロは大佐が訪問した真の意図を問い正す。大佐は別の秘密の密命を受けていた。
 話を聞くと次第に養母の虐待の事実が明らかになってくる。彼女の養子に対する虐待は実子ができない腹いせで、他にも何人もの養子候補が虐待されては、追い出されたという。いまは行方不明だが、比較的長い期間いた養子のひとりはレスリーという名前だったと乳母は答えたが、その後乳母は自責の念からバスタブで自殺してしまった。
 ジニーが人身売買組織に拉致されかけて修道尼を石で殴ってしまうという事件が勃発する。
 ポアロは関係者を集めて真相を説明する。意外な真犯人とその方法があきらかになる。

     映画川柳 「子供から 純金をつめた 歯を買うと」飛蜘

 『死海殺人事件』(マイケル・ウィナー監督)として映画化されている。発掘と考古学者が中心になる舞台はクリスティーの得意分野。ディアゴスティーニ版ではNo.8である。
2011年5月19日


DVD
名探偵ポワロ

第三の女



英国グラナダ・プロ
93分
英国
2010年放映
 第42話である。原作はThird girl。脚本はピーター・フラナリー、監督ダン・リード。

 食事中のポアロに執事ジョージ(ディヴィッド・イーランド)が来客を伝える。客は若い女で、ひとを殺したかもしれないというのだ。盛装して会ったものの、女はポアロを化石みたいと評して去った。オリヴァー夫人の紹介で来たというので、ポアロはミステリー作家のオリヴァー夫人(ゾー・ワナメィカー)から話を聞く。夫人の住むアパートの上の階に住む秘書のクローディア(クレメンティ・バートヒル)、部屋をシェアするセカンド・ガールのフランシス(マチルダ・スターリッジ)、サード・ガールのノーマ(ジマイア・ルーパー)について情報を得たポアロは、同じアパートに住むノーマの乳母ナンシー(キャロリン・オニール)の自殺に立ち会ってしまう。ポアロは自殺ではないと断言する。
 ノーマの父親は娘が5歳のとき家庭を捨てて出ていった。母親はその衝撃から立ち直れずに自殺。自殺する母親を発見したのはノーマだった。母親は父の写真をすべて捨てた。しかし、半年前に父親(ジェイムズ・ウィルビー)は、南アフリカから戻ってきていた。そして兄の経営していた会社を継いだものの、会社の実態は火の車だった。ノーマの大叔父の失明したロデリック卿(ピーター・ボウルズ)は秘書のソニア(ルーシー・リーマン)に惚れているようだった。また、ノーマには貧乏な画家ディヴィッド(トム・ミソン)が接近していた。オリヴァー夫人はポアロから危険を指摘されていたにもかかわらず、乳母の部屋の鏡裏から手紙を発見、ノーマを尾行し、次いでディヴィッドを尾行し、アトリエに案内されたが、帰途、後ろから殴られて手紙を奪われる。ポワロは大叔父の元に残されていた写真の裏書の、もとノーマの家庭教師バタスビー先生(ハイドン・グウィン)の許を訪ねる。
 意外な犯人とその動機が明らかになる。

     映画川柳 「アイスクリーム ねだったために 間に合わぬ」飛蜘
2011年5月19日


DVD
名探偵ポワロ

鳩の中の猫



英国グラナダ・プロ
93分
英国
2010年放映
 第41話である。原作は「鳩の中の猫 Cat Among The Pigeons」。脚本はマーク・ゲィティス、監督ジェイムズ・ケント。原題は場ちがいな人間がいることを表す。女子高校が殺人現場となり、登場人物もほとんど女子生徒と女子教員という力作

 英国の名門女子高校メドウバンクの校長バルストロード(ハリエット・ウォルター)は退任を考えていた。学園を創立したころの情熱が薄れていたからだ。一方ラマット国の王子アリ(ラジ・ジェィムス)と友人ボブ・ローリンソン(アダム・ド・ヴィル)は革命派に襲われ,最後の抵抗を試みていた。
 メドウバンクに入学してきた亡命者のシャイスター王女(アマラ・カラン)は学園の規則が気に入らず文句を言っている。寮母ジョンスン(キャロル・マックレディ。『エンドハウスの怪事件』に出演)がたしなめる。ポワロは校長から次期校長に誰がふさわしいかを評価して欲しいと依頼される。
 女教師たちは他人のあら捜しが特異な体育のスプリンガー(エリザベス・バーリントン)、芸術とダンスのブレイク(アマンダ・アビントン)、校長と一緒に学園を維持してきた数学のチャドウィック(スーザン・ウールドリッジ)、療養休暇を取っていたが復帰した国語のリッチ(クレア・スキナー)、着任したばかりのフランス語のブランシュ(ミランダ・レイソン)と癖のある面々。秘書アン・シャプランド(ナターシャ・リトル)と庭師アダム(アダム・クロースデル)も来たばかりだった。
 革命から逃げてきたジェニファー(ジョー・ウッドコック)と探偵に興味を持つジュリア・アップジョン(ロイス・エドメット)、スィ・タイ(カティ・ローン)らの生徒はポワロの登場に期待をしている。学期始めのパーティの席上、酔ったヴェロニカ夫人(ジェーン・ハウ。『青列車の秘密』に出演)を見ていたアップジョン夫人(ピッパ・ヘィウッド)は人々のなかに死んだはずの諜報員エンジェルそっくりの女を発見する。
 雨の深夜、体育館でスプリンガー先生が槍で刺し殺され発見された。ケルシー警部(アントン・レッサー)はポワロと協力して捜査を続ける。
 スプリンガーの人形に針を刺して呪っていた誰かもいる。殺人があった学校に生徒を置いておくわけにはいかないと、でぶのパトリシア(ジョージア・コーニック)の両親(ドン・キャランガーと、ジョージィ・グレン)は娘を転校させる。シャイスター王女が行方不明になるがポワロは心配していないようだ。
 ジュリアが推理を働かして、ジェニファーのテニス・ラケットの柄に隠されたルビーを発見する。犯人の目的はこの宝石のようだ。ボブの恋人だったというアンジェリカが謎の諜報員エンジェルなのか。

     映画川柳 「探偵に 憧れる少女へ 赤い石」飛蜘 

【参考書】『鳩のなかの猫』(早川文庫)では、ポワロはなかなか登場しない。ジュリアが宝石を発見したところでポワロの許を訪ねる。途中で砂袋で撲られたのはTV化ではリッチ先生だが、原作ではヴァンシッタート先生で死亡する。
2011年5月22日


DVD
名探偵ポワロ

マギンティ夫人は死んだ



英国グラナダ・プロ
93分
英国
2010年放映
 第40話である。原作は「マギンティ夫人は死んだ」。脚本ニック・ディア、監督アシュレイ・ピアース。全体としては非常に原作に忠実な映像化。よく出来ています

 掃除婦のマギンティ夫人を殺害した罪で下宿人のベントリー(ジョー・アブソロム)が有罪とされた。彼は刑務所に送致され,絞首刑を待つ身である。しかし、捜査を担当したスペンス警視(リチャード・ホープ)はベントリーが殺人を犯す人間のように見えないとポワロに独自の再捜査を依頼した。なぜかベントリーに好意を持ち、ポワロに接近するモード(サラ・スマート)。
 マギンティ夫人が住んでいた田舎ブロードヒーニーに探りに行くポアロ。真上からのふ瞰からパンダウンしてポワロを捕えるカメラは、見知らぬ町でのポワロの孤独感をよく映し出している。すきま風のふきこむ下宿屋ではモーリーン・サマーヘイズ夫人(ラクエル・キャシディ)がポワロの世話をする。ひどい施設、ひどい料理とコーヒーでポワロは閉口する。マギンティの姪ベッシー(エンマ・エイモス)は、叔母がゴシップ記事中心の日曜新聞が好きだったと教えてくれた。雑貨屋のスウィテマン嬢(ルース・ジェメル)からポワロは便箋と封筒を買った。
 ポワロは、町で劇作家ロビン(ポール・リス)に会いに行く途中の作家オリヴァー夫人(ゾー・ワナメイカー)に会った。夫人は自作を戯曲化する計画で相談に来たのだ。ベッシーのところでマギンティ夫人の遺留品を見ると、亡くなる三日前の日曜新聞の一部が切り抜かれていた。
 記事の内容は三十年前の夫が妻を殺害したクレイグ事件を取り扱ったもので、クレイグの愛人19歳のエヴァ・ケインと叔母を殺害した娘リリ-・ガンブルドンの古い写真が載っていた。外国へ行った二人の消息は不明、エヴァは妊娠していたというこの記事を書いた記者のルーシーは、ポワロに取材源を聞かれて、日曜新聞の記事は絵空事だと断言する。
 駅で汽車を待つポワロはホームから突き落とされかける。ポワロは「素晴らしいニュースですよ 私を殺そうとした人物がいたんです」とスペンス警視に報告。写真を関係者に見せると、関節炎で歩けないアップワード夫人(シアン・フィリップス)が、リリ-に見覚えがあると言う。ところがその夫人は翌日の晩に絞殺されてしまった。年齢からすると、アップワード夫人はエヴァ・ケインなのか。混沌とした謎をポワロが一同を集めて解く。

 他のキャストは裁判官(サイモン・モロイ)、ポワロの執事ジョージ(ディヴィッド・イーランド)、メイジャー(リチャード・ディレイン)、レンデル夫人(アマンダ・ルート)、レンデル医師(サイモン・シェファード)、ジョー(ビリー・ジェラティ)、イヴ(マリー・ストックリー)、パメラ(キャサリーン・ラッセル)、ガイ(リチャード・リンターン)。

       映画川柳 「この娘 指差す写真の その先は」飛蜘
2008年10月4日


DVD 
ナイル殺人事件



ユニヴァーサル 
EMI

1978年
145分

 物語の骨格は英国グラナダTV版『ナイルに死す』と同じです。もっとも、今作の方が先ですが。公開時に見た記憶があります。大味な映画だなという印象でした。オールスター映画です。
 アンソニー・シェーファーが脚本を書き、ジョン・ギラーミンが監督したオールスター映画。音楽はニーノ・ロータ、撮影はジャック・カーディフ、衣装デザインはアンソニー・パウエル、編集マルコム・クック、美術ピーター・マートン、制作ジョン・ブラボーンとリチャード・グッドウィン。

 キャストはポワロ(ピーター・ユスティノフ)、サイモン(サイモン・マッコーキンデイル)、ジャクリーヌ(ミア・ファーロー)、リネット(ロイス・チルズ)、リネットの管財人ペニントン(ジョージ・ケネディ)、メイドのルイーズ(ジェイン・バーキン)、小説家サロメ・オタボーン(アンジェラ・ランズベリー)、その娘ロザリー(オリヴィア・ハッセー)、ヴァン・スカイラー夫人(ベティ・ディヴィス)と看護婦バワーズ(マギー・スミス)、共産主義者ファーガソン(ジョン・フィンチ)、医師ベスナー(ジャック・ウオーデン)、レイス大佐(ディヴィッド・ニーヴン)、給仕(ハリー・アンドリュース)、ロックフォード(サム・ワナメイカー)。

 英国TV版『ナイルに死す』と異なる点をいくつか挙げておきます。
 馬で駆けつけて、ピラミッドの頂点に登るリネットとサイモンの二人。そこへ現れるジャクリーンといった映画的な壮大な場面が最初のほうにあります。レイス大佐はリネットの英国側弁護士からの依頼で彼女の周辺を監視に来ています。リネットのメイドのルイーズは婚約者と離婚しようとしていて、お金が必要になっています。彼女は普段はフランス語で話しており、ポワロとルイーズがフランス語で会話すると、レイス大佐が分かるように(英語で)話してくれと頼みます。
 ナイル川クルーズの途中で、遺跡見物しているときに、岩が落下してくる事件が起こります。柱の陰にいる登場人物をチラチラと映して、誰もが怪しいという雰囲気を演出しています。あまりにもわざとらしく、私には成功しているとは思えませんが、ミステリー映画でケレンを排除したら映画が成り立たなくなってしまうので、この辺は見る方の感覚の違いでしょう。
 二人はジャッキーをうまくまいたつもりでしたが、ラムセス2世像の見学のところで、ジャッキーが現れます。
 医者もリネットに資金援助を依頼しますが、医者の腕を疑っているリネットは援助しません。
 発砲事件の後でジャッキーを治療し、付き添うのはバワーズ夫人になります。TV版では治療は医者で付添はバワーズ夫人の立場の娘コーネリア。
 ポワロが仮説として容疑者が犯行に及んだ場合の行動がひとつひとつ映像で表現されるのが、特徴です。似たような映像がくり返されるため、上映時間が長引きました。
 サロメはTV版ではゲイのような女性で酔っ払いではありませんでしたが、映画版では常に酔いどれているアルコール依存症の小説家。アンジェラ・ランズベリーの演技はいつも酔いどれ状態で、一本調子です。
 ポワロの部屋にコブラがおかれて、ルイス大佐が刺し殺します。これは犯人の仕業ではありませんでした。
 最後にロザリーとファーガソンが婚約します。TV版ではファーガソンはコーネリアに求愛、母親は反対しますが、ファーガソンの正体が侯爵だと知って、残念がります。結局、コーネリアは医者と婚約してしまいます。一方、TV版のロザリーはティムに求愛しますが、マザコンのティムにフラれます。ティムには陸にジョアンナがいますし。
 観光名所がふんだんに見られますが、全体にリズムが緩慢でポワロの一人語りが多く、単調な作品になっています。キャストのなかで印象に残る演技者はロイス・チルズとマギー・スミス、ジョージ・ケネディで、他はその人でなければならない演技というわけではありません。ミア・ファーローはキャロル・リード監督『フォロー・ミー』のような見守られる女のほうが適役で、今作のように立場の逆な責める女は向いていないと思います。

     映画川柳 「ナイル川  大きなうねり 見きわめて」飛蜘
データベース 名探偵ポワロ データベース 驚嘆すべきデータで、詳細です。
2008年10月4日

DVD ハピネット・ピクチャ-ズ
名探偵ポワロ

満潮に乗って



英国グラナダ・プロ
94分
英国
2006年放映
 満潮に乗って Taken at the Flood。原作は『満潮に乗って』。脚本ガイ・アンドルーズ、監督アンディ・ウィルソン。シェークスピアの『ジュリアス・シーザー』第四幕第三場のブルータスの台詞「人の世の事柄には潮があり、満潮に乗れば幸運へとたどり着くが、乗り損なった者の人生の船旅は浅瀬にとらわれ不幸に呑まれてしまう」から。

 大富豪ゴードン・クロードが年下の女優ロザリーン(エバ・バーシッスル。声は高橋理恵子)と結婚、その披露に親族が訪れたとき、突然クロードの館が爆発しました。原因はガス。地下のワイン室に居たロザリーンと実兄デヴィッド・ハンター(エリオット・カウアン。声は大塚明夫)は怪我をしたものの命びろいをして、ゴードンの莫大な遺産を受け継いだのです。それから2年後、ゴードンの妹アデーラ(ジェニー・アガター。声は古坂るみ子)の屋敷に来た娘リン(アマンダ・ダウジ。声は田中敦子)は生活費が未払いになっているのに驚きます。財産管理を引き受けているデヴィッドが意地悪なのだとか。
 ポワロの事務所には執事ジョージ(ディヴィッド・イエランド)が雇われています。日本の浮世絵が掛けてあります。ある朝、無作法なキャサリン“キャシー”・ウッドワード(セリア・イムリー。声は吉沢希梨)が訪ねて来て、ロザリーンの最初の夫アンダーヘイを見つけ出して欲しいとの依頼を受けます。霊媒が彼は生きていると告げたのだそうです。ロザリーンは重婚の罪を犯している、と。キャシーの夫は医者のライオネル(ティム・ピゴット=スミス)。
 ファロウ・バンクでのパーティ。ゴードンの弟ジェレミー(ピップ・トーレンス)がクライアントの金を損失、妻のフランシス(ペニー・ダウニー。声は大西多摩恵)はロザリーンに直接交渉し、1万ポンドを借りますが、ハンターにかぎつけられ、みんなの前で小切手を返させられる羽目に・・・。ゴードンの友人だったポワロは危険を感じます。
 アフリカで病院を立てる活動をしているリンは、ゴードンの甥ローリー(パトリック・バラディ。声は星野充昭)と愛を確認します。
 ロザリーンを操るハンターは彼女をロンドンに行かせ、パブで“イノック・アーデン”(ティム・ウッドワード)と名乗る男と会います。アーデンはアンダーヘイは生きていると恐喝に来ているのです。パブの女将ベアトリス(クレア・ハケット)が立ち聞きをしてローリーに連絡します。『イノック・アーデン』はテニスンの長編詩の主人公ですから、あきらかに偽名と分かります。
 ハンターはリンに強引に求愛します。ところがその後、ハンターは約束の時刻にロンドンから電話をしてきて自分と関わるものを傷つけてしまうので関わるなと忠告します。戸惑いながらも、ハンターに魅かれていくリン。
 ハロルド・スペンス警視(リチャード・ホープ。声は野島昭生)がポワロと協力して捜査します。
 検死審問で、ポーター少佐(ニコラス・レ・プリヴォスト)がアーデンがアンダーヘイだと証言しますが、ロザリーンが強く否定したため、証明されません。ポワロは“私は神の慈悲から切り離されている”と嘆いているロザリーンを慰めます。容疑者として連行されるハンター。パブに住むレッドベター夫人(エリザベス・スプリッグス)が事件の日に怪しい扮装の女を見かけていたこと、リンがハンターと会っていたことを証言して、ハンターは釈放されます。
 ポーター少佐が拳銃で自殺します。ロザリーンがモルヒネの過剰摂取で自殺を図ります。ポワロは関係者を集め、“この土地には悪魔がいました”と真犯人の隠された犯行を暴きます。ポワロのカトリック信仰が強く出た作品です。

    映画川柳 「幼き日 牧場の暮らし 草いきれ」飛蜘 
2008年10月12日

DVD ハピネット・ピクチャ-ズ
名探偵ポワロ

ひらいたトランプ



英国グラナダ・プロ
94分
英国
2006年放映
 ひらいたトランプ Cards on the Table。原作は『ひらいたトランプ』。脚本ニック・ディア、監督サラ・ハーディング。。撮影監督ディヴィッド・マーシュ。

 大金持ちで気どりやのシェイタナ(アレクサンダー・シディグ。声は東地秀樹)はポワロに芸術的な殺人について話しています。
 その数日後、シェイタナはポワロを含め8人を招いてパーティを開きました。食後はシェイタナの提案で客はふた組に分かれてブリッジをします。ゲームが終わった後でシェイタナは重大発表をすると宣言していました。客間の暖炉の隅で眠ってていたシェイタナでしたが、午前0時過ぎ、隣室でゲームを終えたウィーラー警視(ディヴィッド・ウェストヘッド。声は辻萬長)が、彼が死んでいるのに気がつきます。凶器は細身の短剣で、心臓をひと刺し。ブリッジの間じゅう、部屋を出たものはいません。犯人は客間にいた四人のなかのひとりだと思われます。客間の四人とは医師ロバーツ(アレックス・ジェニングス。声は江原正士)、若い娘のアン・メレディス(リンゼイ・マーシャル。声は岡本麻弥)、ブリッジ好きのロリマー夫人(レズリー・マンヴィル。声は田島令子)、デスパード少佐(トリスタン・ゲンミル。声は池田秀一)。
 隣の喫煙室の四人はポワロ、探偵小説家のミセス・オリヴァー(ゾーイ・ワナメーカー。声は藤波京子)、ヒューズ大佐(ロバート・ピュー)、そしてウィーラー警視です。執事(ジェイムズ・アルパー)。完全密室での殺人。ポワロはブリッジの点数表の特徴や四人に対する質問でゲームの記憶と心理から解決のヒントを得ようとします。
 ロバーツ医師の秘書バージェス(ルーシイ・リーマン)から患者のクラドック夫人(ジギ・エリソン)と医師はもめ事があったと聞きます。しかし、クラドック夫人は旅先のエジプトで敗血症で死亡していました。
 メレディスは友人のローダ・ドーズ(ハニーサックル・ウィークス)と同居しています。ミセス・オリヴァーが訪ねたとき河を渡るボートでやって来ました。オリヴァーは二人を相手に自分の推理を話します。ただし、直感で。
 ロリマー夫人は過去に二度、夫を亡くしています。夫人はゲームの内容をかなり正確に覚えていました。第3ラバーでグランド・スラムがありました。
 デスパード少佐はポワロに、シェイタナの楽しみはひとの過ちを暴露して困るのを楽しむ暴露ゲームだったと話す。
 デスパード少佐のアマゾン探検に同行したラックスモア教授(フィリップ・ボーエン)が死亡していました。少佐の著書『アマゾンの牧歌』にミセス・オリヴァーは小さなミスを発見します。新しい麻薬を自分で試した教授は精神に異常をきたして、教授の妻(コーデリア・バジェヤ)に殴りかかり、少佐に撃たれます。 
 ローダの叔母ベンソン夫人がアンが間違えて入れ替えた薬品をシロップと飲んでしまい、死亡していました。
 ロリマー夫人はポワロに過去の事件の話をします。
 事件の背後には同性愛がありました。他のキャストはミリー(ジェニー・オギルビー)。

    映画川柳 「計画は 衝動殺人 隠蔽し」飛蜘
2008年10月3日

DVD ハピネット・ピクチャ-ズ
名探偵ポワロ

葬儀を終えて

英国グラナダ・プロ
94分
英国
2006年放映
 葬儀を終えて  After the Funeral。原作は『葬儀を終えて』。脚本フロミーナ・マクドナー、監督モーリス・フィリップス。

 リチャード・アバネシー(ジョン・カーソン)が急死。友人で顧問弁護士のギルバート・エントウィッスル(ロバート・バサースト。声は磯部勉)がポワロに事件の捜査を依頼します。リチャードの世話をしていた妹ヘレン(ジェラルディン・ジェイムズ。声は香野百合子)の息子ジョージ(マイケル・ファスバンダー。声は宮内敦士)に遺産が行くものと思っていた遺族は遺言状でジョージ一人が受取人から外されているのに驚きます。さらにその後、イタリアの画家ガラチオ(アンソニー・ヴァレンタイン)と駆け落ちして長い間疎遠だったリチャードの妹コーラの一言、「うまくもみ消したわね、リチャードは殺されたんでしょ」が一同に衝撃を与えます。翌日、コーラが自宅で手斧で殺されたものですから、みなが疑心暗鬼になります。
 ジョージの従妹で慈善家スーザン(ルーシー・パンチ。声は五十嵐麗)、その妹ロザムンド(フィオナ・グラスコット。声は林真理花)、ロザムンドの夫マイケル(ジュリアン・オヴェンデン。声は福田賢二)、リチャードと仲違いした弟ティモシー(ベンジャミン・ヒットロー。声は青野武)、その妻モード(アンナ・カルダー=マーシャル。声は峰あつ子)。
 ポワロはコーラの家のコンパニオン、ギルクリスト(モニカ・ドーラン。声は小野洋子)に様子を聞きます。リチャードは死ぬ直前にコーラを訪問し、誰かに毒をもられていると話したそうです。しかし、ララビー医師(ドミニック・ジェップコット)は自然死だと言います。珍しく火葬に付されてしまったため遺体の検死解剖はできません。屋敷の権利書が何者かに盗まれてしまい、遺言の執行を始めることができません。そのうち、執事ランスコム(ウィリアム・ラッセル)は目が遠くなっていたが、それを黙って遺言書1枚に署名したと話します。弁護士は驚きます。2枚に渡って読み上げた遺言書は偽造だったのです。
 コーラが殺害された日、一族の人々に確かなアリバイはありません。コーラの遺言により屋敷を譲られたスーザンはギルクリストと一緒に生活します。しかし、ギルクリストは玄関先に置かれたヒ素入りのウェディング・ケーキを食べて中毒します。回復した彼女はアバネシー家に呼ばれます。
 葬儀の日になにか奇妙な感じを味わったヘレンはその原因を思い出しますが、その事実を弁護士に電話で伝えようとして殴られます。
 ポワロは意外な犯人とその動機を説明します。真犯人の気持ちの告白に見られる一瞬の“狂”的な表出が特筆ものです。他のキャストは牧師(フィリップ・アンソニー)、モートン警部(ケヴィン・ドイル)。

   映画川柳 「午後のお茶 スコーンと合わせて 喫茶店」飛蜘 

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、第2位に選出された。「女優の演技力とはっきりした撮り方の工夫で、リアリティーのないトリックを可能なものにした。しかも、登場する人数を整理するだけでなく、キャラクターに原作にはなかったまった新しい性格付けをして、物語に深みが出た。・・・ミステリドラマと人間ドラマがみごとに絡まり合い、物語のその先を観る者に想像させる。美しいマナーハウス、葬儀に集まり、やがてそれぞれの悲しみを胸に散っていく登場人物たち・・・奥行のある美しい映像も素晴らしかった」。

 ディアゴスティーニ版ではNo.5である。
2008年10月3日

DVD ハピネット・ピクチャ-ズ
名探偵ポワロ

青列車の秘密



英国グラナダ・プロ
94分
英国
2006年放映
 第10シーズンは長編4作品。製作者はトレヴァー・ホプキンスに変更。撮影監督アラン・アーモンド、A&EテレビネットワークスのEPはデリア・ファインとエミリオ・ナネッツ、コリンPlcのEPはフィル・クライマー、EPはミチェレ・バックとダミエン・タイマー。日本語版スタッフは翻訳たかしまちせこ、演出高橋剛、音声金谷和美、プロューサー里口千、制作統括は小川純子・廣田健三。

 青列車の秘密 The Mystery of the Blue Train。原作『青列車の秘密』。脚本ガイ・アンドリュース、監督ヘッティ・マクドナルド。。日本語版ではオープニング・タイトルが復活。
 宝石《炎のハート》を受け取った男は相手を殴り倒しました。
 リヴィエラではタンプリン夫人(リンゼイ・ダンカン。声は鈴木弘子)が娘レノックス(アリス・イヴ。声は山田里奈)と、突然介護していた老婦人から贈られた遺産で金持ちになった従妹のキャサリンを別荘に招待しようと計画し始めます。
 ロンドンのパーク・レイン・ホテル。米国の石油王ルーファス・ヴァン・オ-ルデン(エリオット・グールド。声は横内正)が溺愛する娘ルース(ジェイミー・マリー。声は吉田陽子)の誕生パーティが開催されました。舞室の女(ジェイン・ハウ)はルースの母親はアルコール依存症で夫が隠したと噂しています。娘婿デレク(ジェイムズ・ダーシー。声は咲野俊介。グラナダTVのマープルもの『動く指』のジェリー・バートン役)は放蕩無頼の徒で、手切れ金10万ポンドで離婚しろと父親に言われますが、浮気者は女のほうだと断ります。実際のところ、ルースはいかさまカード師のラ・ロシュ伯爵(オリヴァー・ミルバーン)と愛し合っていました。
 ポワロはひとり寂しく座っているキャサリン・グレイ(ジョージナ・ライランス。声は井上喜久子)に声をかけ、急に金持ちになって戸惑っている彼女に助言します。
 タンプリン夫人の別荘ヴィラ・マルガリータにはフランスのカレーから青列車に乗車します。キャサリンはルースから部屋を変わってほしいと頼まれ、快く承知しますが、ルースが自分の父親を自殺においやったヴァン・オールデン石油の娘と知って混乱します。タンプリン夫人も若い夫コーキー(トム・ハーパー。声は川島得愛)や娘を連れて乗り込んできます。メイドのメィソン(ブロナー・ギャラガー。声は菅原あき)が途中駅で降りた後、ニースでルースが殺されているのが発見されます。顔がハンマーでつぶされていました。もっとも怪しい夫のデレクは一晩中、伯爵やコーキーとカードをしていました。
 ヴィラ・マルガリータには偶然にも関係者が招待されていました。青列車に乗っていた黒人のミレル(ジョセット・シモン)がオールデンの愛人だったことが判明します。オールデンの秘書ナイトン(ニコラス・ファレル。声は金尾哲夫。『ABC殺人事件』のドン・フレイザー役で既に出演)は次第にキャサリンに惚れていきます。彼は戦争で負傷し、少しびっこを引いています。夜中にキャサリンがナイフを持った盗賊に襲われる事件が起こります。物音を聞きつけて来たレノックスが女だてらに大活躍、肩にかみついて盗賊は逃走します。もう猶予ができません。
 ポワロは肩に傷の残る意外な犯人を指摘します。そして、共犯者も。

 他のキャストはコー警部(ロジャー・ロイド・パック)、修道女(ヘレン・リンゼイ)、修道女でオールデンの妻ドロレス(エテラ・パルド)、スチュワード(サミュエル・ジェイムズ)。

     映画川柳 「《キャサリンとルース》 上流は 自分のリズムで 話すだけ」飛蜘

 ディアゴスティーニで2011年1月25日から全65巻で「名探偵ポアロ」シリーズを刊行開始。第3巻は「青列車の秘密」。
2008年10月2日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ホロー荘の殺人



英国LWC
94分
英国2004年放映
 ホロー荘の殺人 The Hollow。原作『ホロー荘の殺人』。脚本ニック・ディア、監督サイモン・ラングトン。

 医師ジョン(ジョナサン・ケイク。声は原康義)は彫刻家ヘンリエッタ(メーガン・ドッズ。声は日野由利加)のアトリエを訪ねて来ました。ジョンには失敗ばかりしている妻ガーダ(クレア・プライス。声は相沢恵子)と二人の子供がいます。週末にジョンの実家のアンカテル家に招待された二人。
 ルーシー・アンカテル(サラ・マィルズ。声は藤田弓子)とヘンリー(エドワード・ハードウィック。声は有川博)は隣に住むことになったポワロも招待していました。家には執事ガジョン(エドワード・フォックス。声は小林勝也)、甥のエドワード(ジェイミー・ド・コーセイ)、ブティック店員のミッジ(キャロリン・マーティン)などがいました。ディナーも終わり、ポワロが去った後、米国の女優ヴェロニカ・クレイ(リステ・アンソニー。声は一柳みる)が隣のダヴコーツ荘からマッチを借りに来て、ジョンを初恋の人と呼び、再会を喜びます。彼女を隣に送ったジョンは夜遅く帰宅します。翌朝、再びヴェロニカに呼ばれたジョンはそれぞれが離婚して一緒になろうという彼女の提案をはね付けます。ホロー荘に帰宅したジョンは誰かに撃たれました。1時の約束で再び訪れたポワロはプール脇で倒れているジョン、拳銃をにぎって呆然自失のガーダ、ルーシー夫人、ミッジ、ヘンリエッタを見ます。状況はガーダに不利でしたが、ガーダが拾い上げたという拳銃は殺人に使用されたものではありませんでした。
 捜査主任のグレンジ警部(トム・ジョージソン。声はたかお鷹)はポワロに助けを求めます。ジョンの秘書ベリル・コリン(ルーシー・ブライアーズ)はガーダが人殺しをするはずがないと強調します。ガーダを友人のエルシー(テレサ・チャーチャー。声は雨蘭咲木子)が守ります。ルーシー夫人がモーゼルを持ち歩いていたと言うし、疑惑はあちこちに飛び火します。ポワロは率直なヘンリエッタの意見を聞きながら捜査を進めていきます。他のキャストに ビクター(イアン・タルボット)。 
 撮影監督ジェイムズ・アスピンナル。日本語版スタッフは『ナイルに死す』と同じ。

     映画川柳 「一瞬で 悟る恐怖は すべて嘘」飛蜘

 ディアゴスティーニ版ではNo.10である。
2008年10月2日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ナイルに死す



英国LWC
99分
英国2003年放映
 ナイルに死す Death on the Nile。原作『ナイルに死す』。脚本ケヴィン・エリオット、監督アンディ・ウィルソン。

 解雇されて一文無しのサイモン・ドイル(JJ・フィールド。声は関俊彦)と婚約したジャックリーヌ(エンマ・マリン。声は小島聖)は資産家の友人リネット(エミリー・ブラント。声は森永明日夏)に彼を雇ってもらいます。リネットの友人ジョアンナ(エロディー・イアソウミ)は様子を見ています。
 3ケ月後、エジプトでポワロは、リネットから夫サイモンと自分をつけ回すジャクリーヌに交渉して欲しいと頼みますが、恋人横取りの件を聞いているポワロは断ります。ポワロはジャクリーヌにストーキングを注意しますが、嫉妬心に燃える彼女は聞き入れません。ジャクリーヌに知られずに来たはずなのに、ジャクリーヌが船にいます。
 いわくありげな人々を乗せてナイル川のクルーズが始まります。ゴシップ好きなアラートン夫人(バーバラ・フリン。声は牧野和子)、その息子ティム(ダニエル・ラペイン。声は難波圭一)、リネットの会社の米国の管財人ペニントン(ディヴィッド・ソウル)、小説家サロメ・オタボーン(フランセス・ド・ラ・トゥール)、その娘ロザリー(ズー・テルフォード)、ヴァン・シュワイラー夫人(ジュディ・パーフィット。声は大方斐紗子)とその娘コーネリア(ディジー・ドノヴァン。声は藤本喜久子)、共産主義者ファーガソン(アラステア・マッケンジー)、医師ベクター(スティーヴ・ペムバートン)。
 遺跡の見学中にリネットの上に石が落ちてきます。ジャクリーヌ?ではありませんでした。ポワロは古い知合いのレイス大佐(ジェイムズ・フォックス)と再会します。
 その晩、ポワロが早く寝てしまった後、ブリッジをしていた四人のところに酔ったジャネットとコーネリアが来ます。リネットが寝室に戻って残ったサイモンを突然、ジャクリーヌが撃ちます。足に当たって苦しむサイモン。狼狽するジャクリーヌをコーネリアとファーガソンが部屋についていき、呼ばれた医師がサイモンの膝を治療し、鎮静剤を打って眠らせます。翌朝、起床したポワロにレイス大佐が知らせます、「リネットが撃たれて死んだ」と。  
 レイス大佐の指揮で船内で捜査が始まります。不審者の目撃をほのめかしたリネット夫人のメイド、ルイーズ(フェリシテ・ド・ジュー)が刺殺され、ルイーズと会った人物を話そうとしたサロメが射殺されます。
 関係者を船室に集めてポワロが指摘したのは意外な犯罪方法でした。
 ピーター・ユスティノフがポワロを演じ、『探偵/スルース』の異才アンソニー・シェーファーが脚本を書き、ジョン・ギラーミンが監督したオールスター映画『ナイル殺人事件』(EMI作品)は1978年公開。私は見たはずですが、ほとんど忘れてしまっていましたので、再見したくなりました。
 日本語版スタッフは宇津木道子ほか、金谷和美・賀古勝利・里口千・西亀泰・蕨南勝之。

     映画川柳 「愛ゆえに 運命の星に 従いし」飛蜘 

 ディアゴスティーニで2011年1月25日から全65巻で「名探偵ポアロ」シリーズを刊行開始。第1巻は「ナイルに死す」。
2008年10月2日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

杉の柩



英国LWC
94分
英国2003年放映
 杉の柩 Sad Cypress。原作『杉の柩』。脚本ディヴィッド・パイリー、監督デイヴィッド・ムーア。

 被告人エリノア・カーライル(エリザベス・ダーモット=ウォルシュ。声は麻生侑里)が、殺人の罪で裁かれています。
 数カ月前のこと、エリノアは婚約者ロディ(ルパート・ペンリー=ジョーンズ。声は寺仙昌紀)を連れてハンタベリー・ハウスの叔母ローラ・ウェルマン(ダイアナ・クィック。声は中西妙子)を訪ねていました。幼なじみのメアリー(ケリー・ライリー。声は岡寛恵)がニュージーランドから帰って来ていました。数日前にエリノアは悪意のある手紙を受け取っていました。それには“雪のように白い”人物が叔母の遺産の横取りを企画するという文章です。エリノアは叔母のかかりつけのロード医師ロード(ポール・マッギャン。声は田中秀幸)に相談。医師は知り合いのポワロを紹介し、自ら手紙持参で相談します。
 一方、ロディはメアリーとの再会を喜んでいました。叔母は発作を起こし、弁護士を依頼してメアリーに遺産を遺そうとしているようにみえます。夜中に叔母が急死しますが、容態が急変したとき、エリノアは別の部屋でロディがメアリーと抱き合っているのを目撃しました。
 奇妙なことに遺言書は無く、叔母の遺産は全額もっとも身近な姪のエリノアに行きます。ロディの心が離れてしまったことで、婚約を解消したエリノアは、メアリーには七千ポンドを上げることにします。叔母の看護士ホプキンズ(フィリス・ローガン。声は弥永和子)とオブライエン(マリオン・オディヤー)の薦めで遺言書を作ったというメアリーは、ニュージーランドの叔母に渡るようにしたと話しています。
 エリノアは家政婦のビショップ(リンダ・スプリエール)に暇を出しました。昼食用のサンドイッチを自分で作ったエリノアはメアリーにサケのサンドを、ホプキンズと自分でエビとカニを食べます。お茶を飲んだ後、しばらくして居間のソファーで死んでいるメアリーが発見されます。毒物はモルヒネでした。ローラ叔母の死体が掘り返され、司法解剖されて死因はやはりモルヒネだったことがわかります。
 ポワロに、庭師テッド(スチュワート・ライン)は、メアリーが好きだったが、最近メアリーは人が変わったようだったと話します。マースデン警部(ジャック・ギャロウェイ。声は坂部文昭)はエリノアを容疑者として逮捕。ロード医師はエリノアの人柄から彼女が殺人犯のはずがないと強調しますが、ポワロは故意にエリノア犯人説を主張します。裁判ではエリノア有罪・絞首刑の判決が下されます。
 刑の執行まで日が残されていないなか、ポワロはエリノアの無実を証明します。
 日本語版スタッフは『五匹の子豚』と同じ。

     映画川柳 「見分けれぬ サンドイッチは 同じ味」飛蜘
 
2008年10月2日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

五匹の子豚



英国LWC
94分
英国2003年放映
 第9シーズン長編4作品から製作会社や製作者が大きく変わります。製作者マーガレット・ミッチェル。オープニングは無くなり、映画様のタイトルとなります。撮影監督はマーティン・ファーラー、A&E TVネットワークのEPはデリア・ファインとエミリオ・ナネッツ、アガサ・クリスティーLtd(コリオン)のEPはフィル・クライマー、EPはミチェレ・バックとダミアン・タイマーの二人。第9シーズン以降にはヘイスティングズ大尉とミス・レモンは登場しません。
 五匹の子豚 Five Little Pigs。原作『五匹の子豚』。脚本ケヴィン・エリオット、監督ポール・アンウィン。

 なかむつまじい両親と七歳の娘、そして片目の娘がカメラのシャッターを切る。娘に手紙を書き、絞首刑になる女性。
 14年後、ポワロはルーシー・クレイル(エイミー・マリンズ。娘時代はメリッサ・サフィールド。声は小林さやか)に母キャロライン(レイチェルRachael・スターリング。声は萩尾みどり)が画家の父を殺したという事件の真相を探って欲しいと依頼されます。母は娘に「私は無実」という手紙を遺していました。
 当時の新聞記事と弁護士(パトリック・マラハイド。声は小林尚臣)から事件の概要を聞くポワロ。画家アミアス(エイダン・ギレン。声は松橋登)は妻子がありながら、肖像画を描いていた美少女エルサ・グレア(ジュリー・コックス。声は深見梨加)に恋をしていました。アミアスの親友メレディス・ブレイク(マルク・ワレン。声は牛山茂)の薬棚から紛失した毒物コニンを妻がビールグラスに入れて毒殺。疑いもない事件だったと言います。ポワロは事件の関係者五人に過去の経緯を聞いていきます。
 メレディスの弟のフィリップ・ブレイク(トビー・スティーブンス。声は山路和弘)、エルサ・グレア、メレディス、家庭教師ウィリアムズ(ゲンマ・ジョーンズ。声は八木昌子)、キャロラインの異父妹アンジェラ(ソフィー・ウィンクレマン。娘時代タルラ・ライリー。声は佐々木優子)。幼い頃、キャロラインが投げつけた文鎮で右目を失明しました。現在は考古学者。少しづつ事件の真相があきらかになっていきます。
 メイドのスプリッグス(アネット・バッドランド)も加えて古い屋敷に関係者が集められ、ポワロの謎解きが行われます。原題の「五匹の子豚」はマザー・グースですが、このTV作品には直接使用されてはいません。
 テーマ音楽にサティーの「グノシエンヌ第一番」が使われていますが、この曲は初期の日活ロマン・ポルノによく使われていました。
 日本語版スタッフは宇津木ほか、金谷和美・浅見盛康・里口千・西亀泰・蕨南勝之。

     映画川柳 「償いを 瓶の指紋を 消すことで」飛蜘 
2008年10月2日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

メソポタミア殺人事件



英国LWC
103分
英国2000年放映
 メソポタミア殺人事件 Murder in Mesopotamia。原作『メソポタミヤの殺人』。脚色クライヴ・エクストン、演出トム・クレッグ。

 砂漠。遺跡の発掘現場でアラブ人の男(レジェブ・マグリ)が絞殺されました。
 『名探偵ポアロ/二重の手がかり』のロシアの伯爵夫人ヴェラが困っているとの電報でカイロに来たポワロ。けれども、夫人は旅に出てしまっていました。蚊帳が無く、きしむベッドに戸惑うポワロ。遺跡の発掘現場で大尉の甥ビル(ジェレミー・ターナー・ウェルチ)の案内で、考古学者ライドナー博士(ロン・バーグラス。声は小川真司)に会います。博士は記念写真を撮影する趣味がありました。そろった人々は、ポワロと大尉、ビル、助手のミス・ジョンソン(ダイナ・スタッブ。声は小宮和枝)、博士の妻ルイーズ(バーバラ・バーンズ。声は土井美加)、ルイーズの看護婦レザラン(ジョージナ・サワービイ)、金石文研究者の第一人者ラヴィニー神父(クリストファー・ハンター。声は池田勝)、発掘助手ケアリー(クリストファー・ボーウェン。声は小杉十郎太)、マーカード夫妻(アレクシ・ケイ・キャンベル、デボラ・ポプレット)の妻。
 ディナーでは会話がはずまず、きまずい雰囲気が漂います。夜、部屋に死人の顔が写り、おびえるルイーズ。ポワロたちに彼女がした告白によれば、彼女は戦争直前にフレデリック・ボズナーと結婚。彼は出征し、その後銃殺により戦死。しかし、彼女が誰かと恋をしようとするたびに戦死したはずのボズナーから脅迫状が届く。ライドナー博士と知り合ってから、脅迫状は来なくなっていたのに、エジプトの発掘現場に来るようになって再び脅迫状が再開したというのです。
 脅迫状の手紙の筆跡は彼女自身の筆跡そっくり。脅迫物語は彼女自身の狂言なのでしょうか。
 ポワロがバグダッドのホテルに泊まった日の翌日、白昼、彼女は室内で重い物で殴られて殺されているのが発見されます。部屋のドアは広場から何人もの人に見られており、誰も入ったものはいませんでした。ミス・ジョンソンがかすかに女性の悲鳴を聞いていました。
 バグダッド警察のミートランド署長(イアイン・ミッチェル)が捜査を始め、ポワロは協力します。人々の証言はそれぞれの立場を反映して様々。看護婦レザランの見方では「ケアリーは夫人に冷淡」だったというのに、署長の娘シーラ(パンドラ・クリフォード)の見方では「ケアリーは夫人に夢中」、ケアリー自身は「大嫌いだった」。
 ポワロの調査により、マーカードが麻薬中毒であることが判明します。その後、彼はホテルの一室で自殺してしまいます。冒頭に殺されたアラブ人は麻薬の売人だったようです。
 ポワロはホテルにチェックインするたびに、受付(ヒッチェム・ロストロム)にヴェラ侯爵夫人のことを尋ねますが、連絡はありません。
 屋上でミス・ジョンソンは、殺人の方法が分かったと言います。けれども、その証言をしないうちに彼女自身が塩酸を誤飲させられ、死んでしまいます。最後の言葉は「窓・・・」。一気に謎が解かれます。
 最後にバグダッドを発とうするポワロに伯爵夫人から連絡が入ります、「(ブダペストから)上海に行きます。支払いをしておいて下さい」と。女性に対する意見を言おうとする大尉に、ポワロは一言、「なにも言うな、ヘイスティングズ!」。
 撮影監督ケヴィン・ロウリー、制作総指揮ロブ・ヒンズ。

    映画川柳 「石臼に 野生の恵み 引き寄せて」飛蜘
2008年10月2日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

白昼の悪魔



英国LWC
103分
英国2000年放映
 第8シーズンは長篇2本、『白昼の悪魔』と『メソポタミア殺人事件』。
 白昼の悪魔 Evil Under the Sun。原作『白昼の悪魔』。脚色アンソニー・ホロウィッツ、演出ブライアン・ファーナム。ピーター・ユスティノフがポワロを演じた映画『地中海殺人事件』(1982)もこれが原作。

 ブラックリッジ村のセント・マシュー教会で、牧師が旧約聖書の毒婦イゼベルの章句を朗読しています。その頃、自転車でハイク中の女性により、アリス・コリガンの扼殺遺体が森で発見されましたが、遺産を取得した婚約者には殺害時刻に列車に乗っていたという鉄壁のアリバイがあり、検死法廷では被疑者不詳となりました。さて・・・
 ヘイスティングス大尉の投資したアルゼンチン・レストラン「エル・ランチェロ」の開館祝賀会に出かけたポワロは食事中に倒れ、入院。ミス・レモンの配慮でポワロはヘルス・リゾートに行くことになってしまいます。もちろん監視役の大尉も一緒に。
 目的の島に行く船で、出会ったクリスティン(タムジン・マレソン。声は金沢映子)の夫で、記者のパトリック(マイケル・ヒッグス。声は家中宏)は、女優アレーナ・スチュワート(ルイズ・デラメア。声は山像かおり)に再会して、すっかり舞い上がっています。ポワロはエル・ランチェロで夫の前でアメリカ人の若い男と踊るアレーナを目撃していました。ポワロはヘルス志向のメニューに閉口しています。ポワロたちはアレーナの夫、ケネス(ディヴィッド・マリンソン。声は津嘉山正種)の初恋相手で、過去の殺人事件を通してポワロと知り合っているダーンリィ夫人(マーシャ・フィッザラン)から、アレーナは前夫アースキン卿が急死して得た遺産で悠々自適の生活であることを聞きます。
 恋多き女アレーナをケネスの息子ライオネル(ラッセル・トーヴィー)は嫌っていますし、島で出会ったエミリー・ブルースター(キャロリン・ピクルズ)や牧師レイン(ティム・ミーツ)、バリー少佐(イアン・トンプソン)、みんなが、アレーナを非難しています。
 ホテルでスチーム・サウナに入れられたポワロは、隣のブラット氏(ディヴィッド・ティムソン)と知り合います。彼はヨットに赤い帆を張ったり、白い帆を張ったりしています。ポワロは、パトリックにこの小さな島でアレーナとなぜ浮気をする必要があるのかと忠告しますが、かえってパトリックは激怒します。
 事件の日、ポワロと大尉はピクシー洞窟に船外機付きボートで出かけるアレーナを目撃します。一方、ガル洞窟にはクリスティンとライオネルが出かけます。後でボートで出たパトリックとエミリーはピクシー洞窟の浜辺でうつぶせに倒れているアレーナを発見します。「脈が無い」とパトリック、「アレーナが殺された」とエミリーが通報して、島ではジャップ警部が捜査に入ります。
 多くの人が12時からの約束でテニスをしようとしていました。殺人現場にはライオネルの眼鏡が落ちていました。ポワロはロンドンのミス・レモンにアレーナの前夫アースキン卿の遺産の調査を依頼します。アレーナは6週間前に全資産を債券として引き出していました。一方、ピクシー洞窟の奥にはヘロインが隠されていました。図書館からライオネルが借り出した本は『危険な化学薬品と毒物』、彼は化学の宿題の参考書だと言います。麻薬の売買がこの島を介して行われていたことが分かります。
 事件当日、島から離れていた牧師レインは妻の不倫でスキャンダルとなり、ブラックリッジ村の牧師を辞職していたと話します。ジャップ警部とポワロは未解決のコリガン殺害事件を思い出します。そしてポワロは二つの事件に共通性を発見するのでした。
 スタッフなどは、撮影監督フレッド・ティムス、制作総指揮ロブ・ヒンズ以外は第7シーズンと共通。

    映画川柳 「日焼け色 青白き肌を 隠しけり」飛蜘
2008年10月1日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

エッジウェア卿の死



英国LWT
103分
英国1999年放映
 エッジウェア卿の死 Lord Edgware Dies。原作『エッジウェア卿の死』。脚色アンソニー・ホロウィッツ、演出ブライアン・ファーナム。

 『マクベス』のマクベス夫人を演じているジェイン(ヘレン・グレイス。声は塩田朋子)に劇の途中で拍手をする夫のエッジウェア卿(ジョン・キャッスル。声は勝部演之)。劇の後で抗議する妻に夫は相手役ブライアン・マーティン(ドミニク・ガード。声は佐々木勝彦)との不倫を指摘して、名誉が損なわれたと答えます。離婚など卿の称号を傷つけることは絶対しないと言い切るのでした。
 引退から復活し再開したポワロ事務所に人夫が事件ファイルを運びこんでいるさなか、ヘィスティングズ大尉から帰国の電報。空港に到着した大尉は、アルゼンチンで知り合ったヴェラを投資で失敗して連れて来なかったと言い訳します。
 大尉を元気づけようと、物真似のカーロッタ(アイオナ・アレン。声は野沢雅子)のディナー・ショーを見に行った三人。ポワロは、女優ジェイン・ウィルキンスから離婚を承知するよう夫に話して欲しいと依頼されます。夫エッジウェア卿に会ってみると、ひと月前に離婚を承諾した書状を楽屋宛に送ったというのです。そのことを知らされて喜んだジェインは中止していた晩餐会に急遽、参加することにします。
 晩餐会を催した貴族コーナー氏(ジョン・クェンティン)の夫人(ジャネット・ハーグリーヴズ)は参加者が13人になったのを不吉だと感じます。その夜、エッジウェア卿の屋敷に妻が現れ、執事オルトン(クリストファー・ガード)と秘書キャロル(レスリー・ナイチンゲール)に目撃されます。卿の前妻の娘ジェラルディン(ハンナ・イーランド)と興行師ロナルド・マーシュ(ティム・スティード)はコヴェント・ガーデンのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』を観劇に行っていました。
 同じ頃、晩餐会に出席していたジェインには電話がかかっています。翌朝、刺殺されているエッジウェア卿が発見されます。容疑はジェインにかかりますが、既に離婚される予定で、1ペニーも貰えない立場のジェインには殺す動機がありません。しかも鉄壁のアリバイがあります。ブライアンもその愛人ペニー・ドライヴァー(デボラ・コルネリウス)も調べますが、何ら不審な点はありませんでした。
 屋敷で夫人が使用人に目撃されたと言ってもオルトンは雇われてから日が浅いし、キャロルが見たのは階段の上からで、後ろ姿です。
 ジェインはマートン公爵(トム・ビアド)と再婚する予定です。ポワロは美人女優ジェインに夢中になっているようです。
 カーロッタに気づいたポワロは彼女を訪問しますが、とき遅くヴェロナールの過剰摂取で死亡していました。カーロッタの所持品の中にギフトとして贈られた銘のある薬入れがあり、カーロッタは薬の常習者だと考えられます。メイドのアリス(ヴァージニア・デンハム)から、彼女が妹に手紙を書いていたと聞かされます。
 妹ルーシー(アリザ・ジェイムズ)への手紙には、カーロッタはマーシュからジェインになりすますようにと依頼されたと書いてありました。しかし、マーシュはそれを否定します。
 ポワロは、(1)卿が離婚を承諾する手紙がなぜ受け取らなかったのか、(2)晩餐会の途中でジェインを呼び出した電話は誰で、その目的は何か、(3)カーロッタのハンドバッグにあった鼻眼鏡は何か、(4)カーロッタの手紙になぜマーシュが二千ドルの金を払ったと書かれているのか、(5)金の薬入れの銘のPは誰か、など5つの疑問を挙げて考えます。ミス・レモンの聞き込みでは、薬入れは2、3週間前に作成された物でしたが、不思議なことに七ケ月前にプレゼントされた月日が入れられていました。薬入れを作った、ホテルに宿泊した謎のヴァン・デューゼン夫人が浮かび上がって来ます。
 晩餐会に出席していた劇作家ドナルド・ロス(イアイン・フレイザー)がパリスの審判について何かに気づいたらしく、ポワロに連絡を言付けていましたが、電話の途中で殺されてしまいます。ヘイスティングス大尉のなにげない一言で、事件の謎が解けます。

   映画川柳 「冷酷な マクベス夫人の 蝋人形」飛蜘
2008年10月1日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

アクロイド殺害事件



英国LWT
103分

英国1999年放映
 アクロイド殺人事件 The Murder of Roger Ackroyd。原作『アクロイド殺し』。脚色クライヴ・エクストン、演出アンドリュー・グリーヴ。

 銀行の貸金庫に厳重保管されていた犯人の手記JOURNALを読むポワロ。
 キングズ・アボット村。引退して冬瓜作りを失敗しているポワロのもとにアクロイド卿の執事パーカー(ロジャー・フロスト。声は斎藤志郎)と医師シェパード(オリヴァー・フォード・ディヴィーズ。声は中村正)が尋ねて来ます。ポワロの古い友人ロジャー・アクロイド(マルコルム・テリス。声は稲垣隆史)の招きです。アクロイドは化学者でしたが、事業を起こし、戦争の影響もあって大もうけして、富豪になっています。養子のラルフ・ペイトン(ジェイミー・バンバー。声は大滝寛)と後妻ヴェラ(ヴィヴィアン・ヘイルブロン。声は吉野佳子)の娘フローラ(フローラ・モンゴメリー。声は名越志保)の婚約発表を3日後に行う予定にしたと聞きますが、ラルフにはなにか事情があるようです。
 アクロイドが交際していたドロシー・フェラーズ(ロザリンド・ベイリー)がヴェロナールを飲んで死亡。ポワロはアクロイドからドロシーから病死とされていた夫を実は毒殺したと告白されたと聞きます。さらに、そのことを感づかれた誰かに脅迫もされていたというのです。アクロイドは恐喝犯を見つけてやると決意しています。危険を感じたポワロはその晩、屋敷に駆けつけました。けれども、そのとき既にアクロイドは殺害されていました。
 ディヴィス警部補(グレゴール・トラッター。声は森田順平)が捜査を始め、ジャップ警部が協力します。引退したというポワロは捜査を遠慮しますが、ジャップ警部に懇願され、協力することになります。遺産は秘書レイモンド(ナイジェル・クック。声は納谷六朗)、妻ヴェラと娘のフローラ、養子のラルフに遺されていました。シェパード医師の妹キャロライン(セリナ・カデル。声は谷育子)は事件に興味を持ってなにかと首をつっこんできます(原作では姉のようですが)。工場の実際は秘書レイモンドが任されています。ラルフは行方不明。寝室から40ポンドも行方不明になっていました。
 次に、遺産も遺されずに不満を言い、屋敷の秘密を知っていると広言していた執事のパーカーが車でひき殺されてしまいます。ロンドンでポワロは事務所のあったマンションにジャップ警部と一緒に入って引退前を懐かしみます。
 失踪しているラルフが捕らえれたという新聞記事が出ますが、それはポワロが編集長に依頼したニセ記事でした。その記事が契機となって、ラルフはアクロイド家の小間使いアーシュラ(デイジー・ビューモン。声は渡辺美佐)と結婚していたことが判明、さらにラルフの居所も分かります。小間使いアーシュラの推薦状を書いたフォリオット(リズ・ケットル)にも何か事情がありそうです。
 著名な原作の叙述トリックを真犯人の日記の叙述を織り込むことで表現しています。

  映画川柳 「田舎にも 都会と変わらぬ 悪がある」飛蜘

 LWTが制作した名探偵ポワロの2000年第7シーズンは長篇2本。Executive Producerはデリア・ファイン、Supervising Producerはクリス・スラヴァ、撮影監督クリス・オデール、音楽クリストファー・ガンニング、制作総指揮ロブ・ハリス、衣装デザインはシャルロッテ・ホツディッチ、製作者はブライアン・イーストマン。カーニヴァル・フィルムズ制作。オープニング・タイトルが削除されました。
 日本語版スタッフは宇津木道子ほか金谷和美・南部満治・浅見盛康、佐藤敏夫。ディアゴスティーニ版ではNo.4である。

見た日と媒体 作  品        感  想     (池田博明)
2008年9
月4日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

もの言えぬ証人



カーニヴァル・フィルムズ・プロ

英国LWC
103分
英国1996年放映
 もの言えぬ証人 Dumb Witness。原作『もの言えぬ証人』。脚色ダグラス・ワトキンソン、演出エドワード・ベネット。制作総指揮ロブ、撮影監督サイモン・コソッフ。湖畔の屋敷と霊媒が効果的な傑作です。

 夕暮れの桟橋。湖畔に立つリトル・グリーンハウス。フォックス・テリアのボブは階段にネジを仕掛ける誰かを目撃します。
 ポワロとヘイスティングズ大尉は友人のチャールズ・アランデル(パトリック・ライカート。声は中尾隆聖)が水上ボートでスピード記録に挑戦するのを見学しようと、ウィンダミアに来ました。汽車から乗り換えの船に乗り遅れた二人は親切な人の自動車で駆けつけます。多くの取材陣や村人の他、チャールズの叔母のエミリー(アン・モーリッシュ。声は鳳八千代)、付き添いのウィルミーナ(ノーマ・ウェスト)、チャールズの妹テリーザ(ケイト・バッファリー。声は高島雅羅)、エミリーの姪のベラ・タニオス(ジュリア・セント・ジョン。声は藤田淑子)とその夫ジェイコブ(ポール・ハーツバーグ。声は屋良有作)が集まって来ています。さらに、霊媒のトリップ姉妹、イザベル(ポーリーン・ジェイムソン)とジュリア(ミュリエル・パヴロウ)も駆けつけて、ポワロに“将軍の霊が湖に血が流れる”と警告したと告げます。チャールズのボートは火を噴き、彼は脱出して無事。
 祝賀会の予定だったディナーは単なる夕食会になります。エミリーの主治医グレンジャー医師(ジョナサン・ニュース)も参加。席上、イザベルに霊が乗り移り、M.P.からポワロに警告、力はエミリーに集まると。
 その晩、エミリーが階段から転落。ジェイコブの娘カティヤ(ライラ・ハリソン)は踊り場に犬のボブのボールを見つけます。息子アレクシス(トニアス・サンダース)は、これにつまづいたんだと言います。しかし、ポワロはネジの跡を発見し、階段上にワイヤーが張られていたと推理します。  
 エミリーから相談を受けたポワロは遺産を目当てに狙われるなら、遺言状を書き換え、身内にはあげないことにするという提案をし、エミリーは良案だと受け入れ、すぐにそれを実行します。
 ジェイコブは調合薬をエミリーに渡します。夕方、エミリーはそれを飲み、外の空気を吸いに出ると、口から緑色の煙を吐いて倒れ、亡くなります。霊媒もウィルミーナもエミリーの口から魂が外に出るのを見たと思い込みます。地元の警察キーリィ巡査部長(ジォフリー・フレッシュウォーター)は肝臓障害による死亡と判断し、検死解剖を拒否します。
 降霊会を行うというトリップ姉妹の提案をポワロは受け入れます。降霊会でイザベルはエミリーの言葉では、殺人者はロバート・アランデルだと告げます。そんな人はいません。しかし、犬のボブがロバートです。
 新しい遺言状では遺産すべてはウィルミーナに贈られることが分かります。ウィルミーナ自身もそのことを知らなかったのです。彼女はボブが騒いだ夜、夢うつつで見た“誰か”のナイトガウンにTAと縫い取りされていたことを思いだします。ボブが殺人者を知っています。犬はポワロに預けられます。続いての犠牲者は緑色の煙とリンの関連に気づいたグレンジャー医師でした。
 他のキャストはメイドのセーラ(パット・オトゥール)、スチュワード(ジェスティン・フィリップス)。

   映画川柳 「犬が見る 緑屋敷の 降霊会」飛蜘

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、高く評価された。「原作のできは悪いのに、拾い物だった。鏡のトリックというつまらないクライマックスを、心霊現象や癖のあるキャラクターでおおいにカバー。ポワロと友情をはぐくむテリアの名演技のおかげで、「観て楽しいミステリ」と「読んで面白いミステリ」の違いを痛感させられた」。
 ディアゴスティーニ版ではNo.7である。
2008年9
月3日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ゴルフ場殺人事件



カーニヴァル・フィルムズ・プロ

英国LWC
103分
英国1996年放映
 ゴルフ場殺人事件 Muder on the Links。原作『ゴルフ場殺人事件』。脚色アンソニー・ホロウィッツ、演出アンドリュー・グリーヴ。制作総指揮ロブ・ハリrス、撮影監督クリス・オデール。ポワロものの長篇第2作め。

 ベロルディ殺人事件のニュース映画を編集中の編集者アダム(ジェイムズ・ヴォーハン)。ベロルディの妻は夫を恋人と共謀して殺したという罪で裁かれようとしています。彼女には当時9歳の娘がいました。
 それから10年後、フランスのドーヴィルを訪れたポワロと大尉。大尉が予約したのは「ゴルフ・ホテル」、もちろんポワロはゴルフをしません。ポワロを見かけた社長ポール・ルノー(ダミアン・トーマス)が声をかけて来ます。脅迫されているので相談にのって欲しいというのですが、詳しい内容は翌日話すと言います。秘書ストナー(テレンス・ビースリー)と共に運転手ローレンスの車で帰っていきました。義理の息子ジャック(ベンジャミン・ダレン。声は宮元充)は自転車レースに出ようとしていたのに、突然父親からチリ行きを命ぜられ、怒っています。ジャックは隣りの娘マルト(ソフィー・リンフィールド)と恋愛中ですが、今度の南米行きは表向きはビジネスでも真の狙いは自分とマルトの仲を裂くことにあると考えています。息子と父は激しくいい争いますが、結局ジャックは出発することになり、屋敷を後にします。
 翌日、ポワロがルノー家を訪れると様子がおかしいのです。ルノーの妻エロイーズ(ダイアン・フレッチャー。声は寺田路恵)が縛られて猿ぐつわをされており、南米の二人組に襲われて夫は誘拐されたと言うのです。ポワロは自信満々の警視庁のジロー警部(ビル・ムーディ。声は大平透)と張り合う羽目になります。そして、ヘイスティングズ大尉がゴルフ場で打ったボールの先でルノーの死体を発見します。ルノーは下着の上に大きなコートを羽織っており、コートのポケットにはB.Dと署名のある恋文が入っていました。シロー警部は自分の担当だと主張してことごとくポワロの邪魔をします。遂にはどっちが早く真犯人を捕まえるかの競争で、ポワロのヒゲとジローのパイプを賭けることになります。
 マルトの母ドーブレ(ケイト・フェイ)に出会ったポワロは彼女にどこかで会っているような気がします。ジャックの前の恋人の歌手イザベル(イアチンタ・マルカフィー。声は小山芙美)の悲しい歌に大尉は心を打たれ、彼女に恋をします。犯人が二転三転します。
 他のキャストはメイドのレオニ(ヘンリエッタ・ヴォイツ)、警察署長ベックス・ルシアン(ベルナルド・ラサム)、ホテット医師(アンドリュー・メルヴィル)。

   映画川柳 「庭先で 恋を語らふ ひともあり」飛蜘
2008年9
月3日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ヒッコリー・ロードの殺人



カーニヴァル・フィルムズ・プロダクション

英国LWC
107分
英国1995年放映
 ヒッコリー・ロードの殺人 Hickory Dickory Dock。原作『ヒッコリー・ロードの殺人』。脚色アンソニー・ホロウィッツ、演出アンドリュー・グリーヴ。制作総指揮はロブ・ハリス、撮影監督はクリス・オデール。

 ネズミが歩き回るヒッコリー・ロードの学生寮。夜、パトリシアの宝石箱から指輪を盗む娘がいました。
 ジャップ夫人が休暇のため一人身の警部は、ポワロの進めで肉屋(テリー・ダッガン)から、ヒレ・ミニョン肉を買いましたが、6シリングの値段に驚き。
 オランダ旅行から帰国した留学中の英文学のサリー(パリス・ジェファーソン。声は戸田恵子)と医学のレオナルド(ダミアン・ルイス。声は辻谷耕史)は学生寮に戻って来ました。仲間は中世史・考古学のナイジェル(ジョナサン・ファース。声は家中宏)、政治学のパトリシア(ポリー・ケンプ。声は安達忍)、心理学のコリン(ギルバート・マーティン。声は水野龍司)、化学のシリア(ジェシカ・ロイド。声は藩恵子)、服飾のヴァレリー(エリナー・モリストン。声は勝生真沙子)。
 学生寮の管理人はミス・レモンの姉フローレンス・ハバード(サラ・バデル)で、最近、いろんな物(聴診器、電気の片方、シガレット・ライター、靴など)が無くなるのに心を痛めています。学生寮の家主ニコレティス(レイチェル・ベル)は気難しく、宝石店のジョルジオス(アンディ・リンデン)のもとにダイヤを届けています。密輸品のようです。
 ポワロは書類を見て、あり得ないことだと驚いています(日本語版ではカットされています)。1ページに3つもスペル・ミスをしたミス・レモンの心配は姉の心配でした。ポワロは学生たちにデイナー・レクチャーを計画します。コリンは動機なき殺人なら完全犯罪が可能だという持論を展開します。
 シリアがコリンと一緒に来てポワロに病的盗癖を告白します。ただし、聴診器・リュックサック・電球・ホウ酸はシリアの盗難物ではありません。けれども、シリアはリュックの盗難者が誰かを知っていると言います。その晩、シリアは過剰なモルヒネを飲み、毒殺されました。
 モルヒネの出所はシリアがアルバイトをしていた病院の薬局でした。事件の当夜、レナードはシリアの部屋に侵入していたし(ナイジェルの目撃)、サリーは深夜、非常階段を使って寮を抜け出していました(パトリシアの目撃)。
 反ファシズムの論客で若者に人気があるスタンリー卿(ディヴィッド・バーク)が病院に入院。キーツの詩を研究しているというサリーはポワロが唱えたシェリーの詩《死にいくレディのように》をキーツだと言います。 
 夫人が休暇中にジャップ警部を宿泊させることになったポワロ。ジャップ警部はトイレのビデで顔を洗ってしまいますが、ポワロはあれは壊れているんですと誤魔化します。また、ポワロは夕食に豚足料理を出します。日本語版ではカットされていますが、学生たちには共通の秘密があり、ニコレティスが警察に行くと言います。
 その晩、ニコレティスが刺殺されます。 
 コリンが、毒物を誰にも知られず、盗み出せると言って、みんなで賭けをしたことが分かります。コリンは白衣と聴診器で偽装してモルヒネを盗んだのです。モルヒネは洗面所に流したはずでしたが、内容がホウ酸に取替えられていたことが考えられます。学生寮の家宅捜索でコリンの部屋からモルヒネが発見され、彼は逮捕されます。
 ジャップ警部は10年前にスタンリー卿の妻がモルヒネの過剰摂取で死亡した事件を扱ったことがあります。スタンリー卿は、メイド2人と息子と同居、妻は一包多く飲んでしまい、死亡。ジャップ警部がこっそり覗き見た部屋で、スタンリー卿は弁護士エンディコット(バーナード・ロイド)に何か秘密を打ち明けていました。 
 学生寮の向かいのカバン屋の従業員キャスタマン(グランヴィル・サクストン)は、ポワロにサリーを学生と偽らせて一緒にダイヤの密輸のおとり捜査をしていたと話します。
 病床のスタンリー卿のアルバムから写真を一枚抜き取ったパトリシアが撲殺されます。ポワロと警部は、せっかくミス・レモンが作ってくれた舌ビラメのミルク煮とゆで野菜を食べ損なってしまいます。
 事件解決後、ジャップ警部がポワロを招待し、自作のイギリス流昼食を提供します。マッシュポテトに煮豆、レバーダンゴ。閉口したポワロは実はアレルギーがあると言って食べるのを断ります。警部はデザートのまだらケーキやネズミ捕りのチーズを出そうとします。

   映画川柳 「盗癖を 故意に装う 想いびと」飛蜘

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、高く評価された。「原作はいまひとつなのに、意外に楽しい作品になっていた。数多い学生寮の住人を整理し、マザー・グースに合わせてネズミを配し、ミステリ的にはツッコミどころのあるお話をテンポよく進めてみせた。・・・傑作の一本」。
 
 ディアゴスティーニ版ではNo.22である。
2008年9
月2日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ポワロのクリスマス



カーニヴァル・フィルムズ・プロダクション

英国LWC
103分
英国1995年放映
 第六シーズンは長篇四作品から成る。これ以降は長篇作品のみ。プロデュースはブライアン・イーストマン、エグゼクティヴ・プロデューサーはサラ・ウィルソン、撮影監督サイモン・コソッフ、制作総指揮ロブ・ハリス

 ポワロのクリスマス Herucule Poirot's Christmas。原作『『ポアロのクリスマス』。脚色クライブ・エクストン、演出エドワード・ベネット。ミス・レモンとヘイスティングズ大尉は登場しません。
 南アフリカ1896年。シメオン・リー(ヴァーノン・ドブチェフ。声は大塚周夫)は発見したダイヤを友人を殺して独占し、さらに暑さで倒れたところを救ってくれた女を抱いた後で姿を消します。
 40年後の12月21日、ポワロはクリスマス用のチョコを作っていました。セントラル・ヒーティングが壊れて困っているところにシメオン・リーから電話で泊まりの仕事の依頼が来ます。屋敷にセントラル・ヒーティングがあることが分かって、ポワロは承知します。
 翌12月22日、列車でリー家に向かうポワロは、スペイン人の女性ピラー(サーシャ・ビハール)やハリー・リー(ブライアン・ガスパリ。声は大塚周夫)と一緒になりました。シメオンは金持ちになり、次々と女に手を出し、子供をたくさん作っていました。今回はその子供たちを集めていました。ピラーは娘ジェニファーの子供ですし、ハリーはずっと家を離れていた息子だそうです。屋敷には長男のアルフレード(サイモン・ロバーツ。声は安原義人)とその妻リディア(キャサリン・ラベット田島令子)、次男ジョージ(エリック・カルテ。声は堀勝之祐)とその妻マグダレーナ(アンドリー・ベルナルド)、執事トレシリアン(ジョン・ホースレィ)、使用人ホルベリー(アユブ・ハン・ディン)、ザグデン警視(マーク・タンディ)と役者が勢ぞろいしたところで、主人シメオンが密室で殺害され、銀行から届けさせていたダイヤが紛失します。いったい誰が犯人なのか。犯人が不明なまま、ピラー殴打事件が起こります。

   映画川柳 「《リディアの趣味》 静寂や 日本石庭 小さくも」飛蜘

 ディアゴスティーニ版ではNo.9である。

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、高く評価された。「家族の数を減らし、ジャップ警部との掛け合いを盛り込み、クリスマスムード満載で、過去からの殺人者という陳腐な物語に立体感を与えた・・・・傑作の一本といえるだろう」。
2008年8月30日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第8話 グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件 The Jewel Robbery at the Grand Metropolitan。原作「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」『ポアロ登場』所収。脚色アンソニー・ホロウィッツ、演出ケン・グリーブ。

 1908年の映画『サロメ』でロシアの女優がつけていた30万フランの真珠のネックレスを買ったオパルセン(トレヴァー・クーパー。声は滝口順平)は女優で妻のマーガレット(ソーチャ・キューザック。声は谷育子)につけさせて舞台に。舞台劇は『豚に真珠』。
 女優志望でマーガレットの付き人セレスティーン(ハーマイオニ・ノリス)は劇作家アンドルー(サイモン・シェパード。声は中尾隆生)と恋仲。劇初日の夜のオパルセンのパーティに首飾りをつけるのが煩わしいマーガレットは金属箱に入れて鍵をかけ、箪笥の棚に入れていきます。セレスティーヌが番をします。ところが、パーティを終えて、夫妻が戻ってくると、箱の中は空でした。ホテルのメイド、グレース(エリザベス・ライダー)が夕食を運んだ後、セレスティーヌと話しをしていました。そして彼女が部屋を空けたのは二度、どちらもたった5秒ほどでした。ギャンブルがやめられず、借金取りに追われるアンドルーもなんだか怪しい。
 オパルセンの運転手ソンダース(カール・ジョノソン。声は家弓家正)は客の送迎が仕事です。他のキャストはベル・ボーイ(ティム・スターン)、ハバート・デヴァイン(アンドルー・カー)。制作総指揮ロブ、撮影監督クリス。

    映画川柳 「本物を ニセと見立てて 星を釣る」飛蜘
2008年8月30日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

死人の鏡



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第7話 死人の鏡 Dead Man's Mirror。原作「死人の鏡」『死人の鏡』及びその原型「二度目のゴング The Second Gong」『黄色いアイリス』所収。脚色アンソニー・ホロウィッツ、演出ブライアン・ファーナム。

 競売でポワロが90ポンドで落札しようとした鏡を120ポンドで横取りしたジャーヴァス・シェヴニックス(イアイン・カスバートン。声は富田耕生)は、ポワロに横柄な態度で詐欺調査の仕事を依頼します。詳しい事項を聞こうと翌日、シェヴニックス家へ向かう汽車に乗ったポワロとヘイスティングス大尉は、若き女性スーザン(ツシカ・バーゲン)と乗り合わせます。彼女はシェヴニックスの甥でデザイナーのヒューゴ(ジェレミー・ノーザム)と婚約しようとしているのでした。しかし、ヒューゴは養女のルース(エンマ・フィールディング。声は戸田恵子)と結婚を強制させられているというのです。実はルースは既に建築家ジョン・レイク(リチャード・リンターン)と密かに結婚式を挙げていたのですが。
 絵画収集のシェヴニックス家には助手のリンガード夫人(フィオナ・ウォーカー。声は北村昌子)の他、心霊術に凝っている妻ヴァンダ(ゼナ・ウォーカー)、養女ルース、開発計画に1万ポンドも出資したにもかかわらずレンガ1個も積んでいないという建築家ジョン・レイク、ヒューゴ、スーザンと勢ぞろい。
 ヴァンダはエジプトの預言者サフラが「誰かが死ぬと予告した」と言います。夕食の合図の8時8分の最初の銅鑼、主人の姿が見えないので書斎のドアを破ってみると、主人は左手にピストルを持ちこめかみを撃って死んでいました。弾は貫通したのか鏡にヒビが入っています。完全な密室殺人。居合わせたポワロは慎重に捜査を進めていきます。
 他のキャストはシェヴニックスの執事スネル(ジェイムズ・グリーン)、ヒューゴの助手ローレンス(ジョン・クロフト)、競売のレジストラー(ジョーン・ロルフ)
 制作総指揮ティム・ハッチンソン、撮影監督ノーマン

    映画川柳 「銅鑼が鳴る カフスボタンと 銃弾と」飛蜘
2008年8月29日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

チョコレートの箱



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第6話 チョコレートの箱 The Chocolate Box。原作「チョコレートの箱」『ポアロ登場』所収。脚色ダグラス・ワトキンソン、演出ケン・グリーヴ。ポワロの“ベルギー警察時代の捜査失敗事件”が語られます。傑作

 1911年、ブリュッセル。大臣ポール(ジェイムズ・クームズ)は、妻のマリアンヌ(ルーシー・コフ)と口論、敬虔なカトリック信者の妻は部屋を飛び出し、階段を転落して死亡。ポールの母デルラール夫人(ロザリー・クラッチェリー。声は鳳八千代)が目撃していました。
 20年後、ベルギーのブリュッセル駅。ベルギーから“黄金の枝”(オリーブの枝で無敵の象徴)勲章を受けることになって、招待されたジャップ警部は同伴の妻の代わりにポワロを同行させています。ベルギー警察時代の同僚シャンタリエ(ジョナサン・ハケット。声は仲村秀生)と再開したポワロは、昔のポール・デルラール病死事件について話します。シャンタリエは心不全で解決だとしていますが、ポワロは真相を話し始めます。 
 ある晩、サン・タラール伯爵(ジェフリー・ホワイトヘッド。声は阪脩)とポールは政治と信仰について口論になります。ディナーに同席していたのはマリアンヌの従妹ヴィルジニー(アンナ・チャンセラー。声は鈴木弘子)、デルラール夫人、隣人のガストン・ボージュ(ディヴィッド・ド・キーサー)などでした。友人が帰宅した後、仕事をしていたポールは好物のチョコレートを食べ、急に亡くなったのです。
 検死審問でポールは心不全という結果になりましたが、ヴィルジニーは「病死なんておかしい。審問がいい加減よ」と発言。ポワロとシャンタリエは捜査担当のブシェール警視(マーク・エデン)に独自の捜査を申し出ますが、既に終わった事件だと禁じられます。ヴィルジニーはポワロに私的に捜査を依頼します。
 サンタラール伯爵の会社のチョコレート箱はピンクの蓋と緑の箱。蓋と箱が不一致でした。チョコのかけらを薬剤師ジャン・ルイ(ジョナサン・バーロウ)に分析を依頼、残りは老執事フランソワ(プレストン・ロックウッド)が緑の蓋とピンクの箱で女友達に送っていました。 
 ガストン・ボージュが分析が終わったチョコを盗もうとします。高血圧の薬トリニトリンが使われたのです。自分に処方された薬が盗まれたのだとガストンは言い、ある秘密のために身分を隠していることを打ち明けます。空のトリニトリンの瓶は伯爵のポケットから発見されました。いまや第一の容疑者になった伯爵にヴィルジニーは自白させようと計画します。その自白を立ち聞きするはずのポワロ。大詰めが近づいてきます。
 他のキャストはルイの息子アンリ(リチャード・デリントン)、メイドのデニーズ(リンダ・ブラウトン)とジャネット(キルステン・クラーク)、大佐(マイケル・ベイント)。
 制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督クリス・オデール。

    映画川柳 「信頼の証し 想い出のペンダント」飛蜘

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、高く評価された。「ベルギー警察時代のポワロを描いた佳作」。

 デアゴスティーニ版ではNo.63
2008年8月28日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

イタリア貴族殺人事件



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第5話 イタリア貴族殺人事件 The Adventure of the Italian Nobleman。原作「イタリア貴族殺害事件」『ポアロ登場』所収。脚色クライブ・エクストン、演出ブライアン・ファーナム。

 車会社エリソの専務ヴィッツィーニ(ディヴィッド・ニール。声は内田稔)はアスカニオ(ヴィンチェンツォ・リコッタ)にある指示をします。
 ヘィスティングス大尉は新車を購入しようかどうか迷っています。一方、ミス・レモンに男友達エドウィン・グレイブス(レオナルド・プレストン。声は羽佐間道夫)ができたようです。大尉は車会社でファブリ嬢(アンナ・マゾッティ・声は吉田理保子)に車の契約をします。ファブリのもとにフォスカティーニ伯爵(シドニー・キーン)が現れ、言い争っていました。グレイブスはポワロを訪問し、自分の主人が恐喝されているとほのめかします。ホーカー医師(アーサー・コックス)宅でポワロが夕食中、伯爵から電話があり、宿泊先のホテルに駆けつけると、伯爵は撲殺されていました。召使のグレイブスによるとアスカニオが訪問していたようです。
 アスカニオは犯罪結社マスナダの一員。ミス・レモンの調査で伯爵は偽物。イタリア大使館員(アルベルト・ジャネッリ)はアスカニオが大使館に書類を売りに来たと伝えます。ホテルでアスカニオを逮捕、しかし、解決は序の口です。
 ヴィッツィーニはポワロにアスカニオには手紙を買い戻させたのだと答えます。その手紙には自分が反ファシスト組織を支援していることが記されており、ムッソリーニ支持者の社長エリソに知られればただちに潰されます。問題の手紙はアスカニオが逮捕される直前燃やしてしまいましたが、金は一体どこに消えたのでしょうか。偽の伯爵自体が恐喝者だったのです。客と夕食を食べたはずの伯爵の胃は空っぽ。偽の証言をしたグレイブズが自慢していた船“ファンタジア・フェリーチェ(happy dream)”がチチェスター港に停泊しているはずでした。
 グレイブスの正体をミス・レモンに伝える辛い仕事をポワロは引き受けます。ところが・・・。
 他のキャストは一等書記官(ヴィットリオ・アマンドーラ)、ベドーズ(ベン・バゼル)、ホテルの料理長(ディヴィッド・ヴェリー)、ライダー嬢(ジャネット・リーズ・プライス)。制作総指揮(Production Designer)にティム・ハッチンソン。撮影監督ノーマン。

   映画川柳 「シャム猫を 始末したがる 悪党は」飛蜘
2008年8月27日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

なぞの遺言書



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第4話 なぞの遺言書 The Case of the Missing Will。原作「謎の遺言書」『ポアロ登場』所収。脚色ダグラス・ワトキンソン、演出ジョン・ブルース。

 大晦日のカウントダウン。1926年の新年に際してアンドルー(マーク・キングストン)は遺言書の内容を話しました。医療基金のプリチャード博士(リチャード・ダーデン)に75%、残りは弁護士のシダウェイ夫妻、家政婦のベイカー夫妻、女性学長のフィリダ、そして子供のピーターとロバートに与えられる。後見人をしているヴァイオレットには遺されていない。ピーターかロバートと結婚すればよい、女だからというのです。
 10年後、ケンブリッジ大学で、女性に男性と同じ権利を与えるべきではないという討論会をしています。もと議長アンドルーが人種・宗教や性別によって役割が異なるのは当然と主張、ロバート(エドワード・アタートン)が独裁者が選ばれて欧州大戦が近い、女性を家庭に閉じ込めておいてすむのかと反対意見を述べます。傍聴席からヴァイオレット(ベス・ゴダード。声は島本須美)が「国のために死ねというのならまず評議会に参加させよ」と発言。議場は混乱します。日本語版ではロバートやヴァイオレットの演説がカットされています。
 アンドルーはその言葉とは裏腹にヴァイオレットに全財産を遺すよう遺言書を書き換えるつもりだとポワロに打ち明け、成績優秀なヴァイオレットを自慢し、ポワロを執行者に依頼します。ところがその晩、何者かに離れに呼び出されたアンドルーは死亡。弁護士ジョン・シダウェイ(テレンス・ハーディマン)が公開しようとすると、前の遺言書が紛失しています。遺言書無しの執行では法定相続人に遺産が行きます。
 プリチャード氏はアンドルーには息子がいたらしいと言い、セイラ・シダウェイ(ロウェナ・クーパー。声は麻生美代子)はロバートが息子だと話します。ピーター(ニール・スチューク)かロバートがアンドルーの息子なのか。家政婦マーガレット・ベイカー(ジリアン・ハンナ)や、その夫で警官のウォルター巡査部長(ジョン・ローリムーア)にポワロは過去を尋ねます。ジャップ警部の捜査で、アンドルー殺害現場に落ちていたインスリンの空瓶はプリチャードの保管物と判明、博士は容疑者となります。
 一方、フィリダ(スーザン・トレイシー。声は藤波京子)はポワロに相談に来る途中にエスカレーターから突き落とされて重傷。入院した病院の医師(ステフェン・オクスレィ)が、ポワロとジャップ警部にフィリダは「ミセス」で帝王切開で出産したことがあると話します。車椅子からたちあがれるまでに回復したフィリダは個人で女子の卒業式を行っています。ケンブリッジは女子卒業生には学位授与式を行わないのです。ポワロは関係者を集めて真相を明らかにします。ヴァイオレットが発刊を計画する新雑誌名は「新しい展望」でした。

    映画川柳 「女とて 学をきわむる 型は無し」飛蜘
2008年8月27日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

黄色いアイリス



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第3話 黄色いアイリス Yellow Iris。原作「黄色いアイリス」『黄色いアイリス』所収。脚色アンソニー・ホロウィッツ、演出ピーター・バーバー・フレミング。

 フランス料理店ル・ジャルダン・デ・シーニョ(白鳥の庭)が開店した日、ポワロのもとに黄色いアイリスが届けられます。ポワロは、2年前の1934年、ブエノス・アイレスでの未解決事件を思い出します。
 同じ名前の店での晩餐の夜、実業家バートン・ラッセル(ディヴィッド・トルートン。声は小林修)の妻アイリス(ロビン・マキャフリー)が青酸カリの毒入りシャンペンを飲んで死んだ事件です。翌日起こった軍事クーデターで、急きょ自殺と処理され、ポワロ自身はスパイ容疑で逮捕され国外追放になりました。
 妻の死が自殺ではないと確信するバートンは事件当夜のテーブルに集まった人々を再度集めます。アイリスの妹ポーリン(ジェラルディン・ソマーヴィル。声は小山芙美)、ジャーナリストのアンソニー(ドリアン・ヒーリィ。声は鈴置洋孝)、踊り子ローラ(ヨランダ・ヴァスケズ)、共同の実業家カーター(ヒュー・ロス)です。バートンとカーターが共同で経営するソヴリン石油は、経営危機に陥っています。国内向けの補助金を軍事政権に不法に援助したことがあるようです。クーデターの指導者ピェレイラ(ステファン・グリフ)は、最近公金横領で処刑されました。
 歌手(2年前はキャロル・ケニヨン、当夜はトレィシー・ミラー)が同じ歌を歌います。そして乾杯した後、今度はポーリンが突然倒れます。脈が無い。別室で関係者に対してポワロは存在を意識されない人間を指摘します。

    映画川柳 「《アイリス=瞳》 アイリスに 映る計画 綱渡り」飛蜘
2008年9月8日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

負け犬



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第2話 負け犬 The Under Dog。原作「負け犬」『クリスマス・プディングの冒険』所収。脚色ビル・クレイグ、演出ジョン・ブルース。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督クリス・オデール。

 アストウェル化学会社の化学主任トレフューシス(ビル・ウォリス)の研究室にチャールズ(ジョナサン・フィリップス)が侵入、見つかって器具を壊し火災を起こして逃走します。
 ポワロは会社社長ルーベン・アストウェル卿(デニス・リル。声は川久保潔)に会うのを楽しみにしています。彼がベルギー製ミニチュア・ブロンズのコレクションを持っているからです。ヘイスティングス大尉は友人のチャールズのゴルフ・コンペの応援です。
 コンペの後のディナーは不愉快なものでした。アストウェルのドイツの会社と組んでの儲け主義に弟のヴィクター(イアン・ゲルダー)が反対し、戦争に加担する姿勢を夫人(アン・ベル。声は小沢寿美恵)も批判したのですが、ルーベンはまったく聞く耳を持っていなかったからです。夫人の話し相手として雇われたリリー(アディー・アレン。声は土井美加)は社長の部屋に入って書類を捜しています。それに気付いた社長は翌朝リリーを解雇すると告げます。ポワロはブロンズ像の芸術的価値を誉めますが、ルーベンには単に金の代わりにすぎません。高く売れればその後融かしてしまおうと構わないと言います。ポワロはその姿勢に腹を立てます。
 二人はゴルフ・クラブでチャールズと話します。その後、酔って帰宅したチャールズは叔父の部屋に行き、あわてて部屋から出たところを執事パーソンズ(ジョン・エヴィッツ)に目撃されます。翌朝メイドのグラディス(ルーシィ・ディヴィッドソン)は主人の撲殺死体を発見します。
 容疑は血のついたシャツを部屋で洗い、逃げ出したチャールズにかかります。一方、リリーは盗み出した書類をエキシビジョン・ロードのハンフリー・メイラー氏(アンドリュー・シイーア)に届けます。彼女は張り込んでいた大尉に見られていたことに気付きません。ミス・レモンが凝っている催眠術を用いて、ポワロは夫人が事件当夜目撃したことを語らせます。夫人が夫の部屋に入ったとき、カーテンの陰に誰かがいたようだったと話します。その後、ポワロはリリーを尋問し、彼女の着ていた着衣の一部が部屋に残されており、血が付いていたことをこっそり示唆します(実際にはその血はメイドがテーブルに刺さったナイフの切り裂きで怪我したときのものにすぎないのですが)。リリーはあわてて逃走し、彼女の兄であるメイラー氏に出会ったところをポワロは押さえます。合成ゴムの新素材アストプレンの開発が関係しているようです。
 一同がそろったところでポワロは事件の真相を明かします。
 他のキャストは巡査(マイケル・ヴーハム)等。

    映画川柳 「ブロンズに 生命を吹き込む 芸術家」飛蜘
2008年9月8日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

エジプト墳墓の謎



英国LWC
52分
英国1993年放映
 第五シーズンは1993年放映の短編8作品。
 第1話 The Adventure of the Egyptian Tomb。原作「エジプト墳墓の謎」『ポアロ登場』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出ピーター・バーバー・フレミング。制作総指揮ティム・ハッチンソン、撮影監督ノーマン。

 エジプトのメン・ファラオの墓の発掘で、埋葬室の封印を破壊した瞬間、発掘を指揮していたジョン・ウィラード卿(ピーター・リーヴス)は死亡します。心臓麻痺でした。王の呪いが囁かれるなか、発掘は続けられます。
 ミス・レモンがタロット占いをしています。不吉な死のカードが出ました。ポワロにウィラード卿の夫人(アンナ・クロッパー)から夫の後を継いで調査をする息子ガイ(グラント・サッチャー。声は江原正士)の安否が心配だと告げられますが、ガイ本人は迷信を信ずる気などありません。ちょうどニューヨークに滞在中のヘイスティングス大尉に発掘の費用を出している資産家フェリックス・ブライブナー(ビル・ベイリー)の甥ルパート(ポール・バーチャード)を訪問してもらいます。大尉が会ったルパートは元気がなく、数日後に拳銃で自殺してしまいました。「不治の病気で死を選ぶ」と遺書がありました。叔父のフェリックスも親指の傷から敗血症になり死亡してしまいます。次々と関係者が死亡するなか、ポワロと大尉は急遽エジプトに渡り、王家の谷へ乗り込みます。二人が到着した日にメトロポリタン博物館のシュナイダー博士(オリヴィエ・ピエーレ)が破傷風の激しい発作を起こして死亡。エィムズ医師(ロルレ・サクソン。声は堀勝之祐)がカイロから持って来た血清も効果が無かったといいます。エジプト人の助手ハッサン(モザファー・シャファリー)は大尉に「ガイをここから連れ出せ。悪霊がひそんでいる」と忠告します。
 ポワロ自身も「死者に共通のメン・ファラオの不敬に当たるものはないか」と聞きます。大英博物館のホスウェル博士(ジョン・ストリックランド)は毎日、博物館の管理局長ケアンズ卿に報告を送っています。ブライブナーの秘書ナイジェル・ハーパー(シモン・コウェル-パーカー)とエィムズ、ルパートはイェール大学の同窓生。
 ポワロはミス・レモンにルパートの遺言状の内容を調査してもらいます。ポワロは病気になったエイムズ医師のテントを調べます。そして、遂にポワロにも毒が盛られます。
 ミス・レモンは愛猫キャサリンの死で気落ちしていました。ポワロはエジプト土産に発掘品の猫の置物を贈ります。

   映画川柳 「王家の谷 天幕に映る 犬の影」飛蜘
2008年8月26日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

愛国殺人



英国LWC
103分
英国1992年放映
 第13話 愛国殺人 One, Two, Bucle My Shoe。『愛国殺人』はアメリカでの発売タイトル。脚色クライブ・エクストン、演出ロス・デヴェニッシュ。

 マザー・グースが流れ、子供が石けりをする。歯科医が銃で撃たれる場面がスローモションされます。
 時が変わって、1925年、英国皇太子がインドを訪問した頃。インドのある劇場でシェイクスピアの『空騒ぎ』が上演されています。女優のひとり、主役級のガーダ・アレグザンドラ(ジョアンナ・フィリップス・レイン。鈴木弘子)は、この地の観客に嫌気がさしているのですが、端役のメイベル・セインズベリー・シール(キャロリン・コルクホーン。声は加藤みどり)はそれほどでもありません。皇太子と顔を合わせるパーティの席でガーダは実業家アリステア・ブラント(ピーター・ブライス。声は天田俊明)と結婚すると宣言し、メイベルに祝福されます。      
 それから12年後のロンドン。ポワロは歯医者のモーリー先生(ローレンス・ハリントン)に治療してもらっています。最近メイベルはインドから帰って来ました。歯科医の前で偶然ブラントに出会ったメイベルは彼に挨拶します。メイベルと船で一緒だったインド人のアンベリオティス(ケヴォルク・マリキャン。声は小林清志)は歯痛に苦しんでおり、メイベルがモーリー医師を紹介します。メイベルは自分の友人のガーダがブラントと結婚した話をします。アンベリオティスはブラントの結婚相手が異なるので不審に思います。彼は電話を前に考え込んでいます。一方、メイベルはガーダがシルヴィア・チャップマン夫人として住んでいる部屋を訪ね、ガーダと再会します。
 歯科医には案内係アルフレッド(ジョー・グレコ)がいて、階上にはモーリーの妹ジョージア(ロザリンド・ナイト)が住んでいます。事件の日、歯科医の秘書グラディス(カレン・グレッドヒル。声は宗形智子)は偽の電報で呼び出されており、不在でした。予約客はポワロ、アリステア、メイベル、アンベリオティスなどです。ポワロは治療を終えて帰るときにタクシーを降りたメイベルとぶつかりそうになり、取れたメイベルの靴のバックルを拾う羽目になります。
 午後になって予約客が待たされたと騒ぐので様子を見に行ったアルフレッドは歯科医が拳銃を握り締めて自殺しているのを発見します。お客や関係者に事情を聞くジャップ警部とポワロ。客のひとり、アンベリオティスは心不全で死亡していました。死因は麻酔薬ノヴォカインとアドレナリンの過剰投与で、歯科医師が誤って与えたものと判断されました。責任を感じたモーリー医師は自殺したのではないかというのです。
 国を動かす財閥の長となっているブラント氏の亡くなった妻レベッカの母ジュリア・オリヴィエラ(ヘレン・ホートン)は頻繁に金の無心に来ています。ジュリアの娘ジェイン(サラ・スチュワート。声は藩恵子)も同行しています。あれ? ブラント氏はガーダと結婚したはずでは?視聴者にはそんな疑問がわいてきます。ガーダの友人メイベルのおしゃべりはブラント氏にとって不都合ではないでしょうか。
 検死審問に出頭せず、メィベルが行方不明。チャップマン夫人の部屋の家主ヘンドリー(オリヴァー・ブラッドショー)と妻(ジーン・エインズリー)は失踪者の記事を見て、最近音沙汰の無いチャップマン夫人を訪ねて来た人だと気がつきます。セインズベリー・シールという奇妙な名前に覚えがあるのでした。警察官を呼んで部屋を調べると納戸に顔をつぶされた女性の死体がありました。モーリー医師の後を継いだベネット医師(ジョーン・カーリン)は診療カルテの記録から死体はシルヴィア・チャップマンだと判断されると証言します。
 グラディスの婚約者フランク(クリストファー・エクルストン。声は大塚芳忠)は仕事を無くして困っていましたが、黒シャツ党に入り、忙しい様子です。その後、ブラント氏の庭師として雇われました。
 ポワロは死体のバックルの付いたエナメル皮の靴を点検します。階上のジョージアは家を整理。彼女のメイドのアグネス(トリビー・ジェイムズ)がポワロに、事件当日、グラディスとの婚約に反対しているモーリー医師に意見しようとフランクが診療室に入ったのを目撃したと話します。 
 モンタギュー・ホテルにチャップマン夫妻(ブルース・アレクサンダー、メリー・ヒーリー)が逗留していることが判明しますが、この二人事件とは無関係の別人でした。
 ブラント氏の庭でブラント氏を狙って銃声がします。秘書のヘレンが庭師のフランクが撃ったと証言します。フランクは過激派の動向を探る目的で黒シャツ党への入党や、庭師になって下僕の話を探れと命令されていたと言います。もちろん信ずる者はいません。ポワロは留置所のフランクを訪ね、正直に話すように促します。
 そして、ポワロは事件を解決します。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督クリス・オデール。

 江戸川乱歩は本書と『白昼の悪魔』を「惜しげもなく大きなトリックを幾つも織り込んだ、よく考えた複雑な筋」と絶賛しています。(『アガサ・クリスティー百科事典』より)
 
   映画川柳 「《シェイクスピア》 “空騒ぎ” 仮面を取れば 死んだ妻」飛蜘
 
2008年8月26日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

雲をつかむ死



英国LWC
103分
英国1992年放映
 第12話 雲をつかむ死 Death in the Clouds。『雲をつかむ死』、脚色ウィリアム・ハンブル、演出スティーヴン・ウィティカー。

 モンマルトルを訪れたポワロはガイドブックを落としたスチュワーデスのジェイン(サラ・ウッドワード。声は高島雅羅)と出会います。今回は異国のため、ヘィスティングズ大尉もミス・レモンも登場せず、魅力的なジェインがポワロの協力者を務めます。博物館では、テニス観戦中心の観光に不満をもらす尊大なセシリー(キャスリン・ハリソン。声は戸田恵子)を見かけます。セシリーはカジノでスッてしまいます。夫のスティーヴン・ホーバリー(ディヴィッド・ファース。声は伊藤和晃)と知人のヴェネシア(アマンダ・ロイル)は馬やテニスが好き。ホーバリーはもと女優のセシリーとの結婚を後悔しています。一方、テニス場で、ジェインは歯科医ノーマン・ゲイル(ショーン・スコット声は田中秀幸)に声をかけられます。セシリーは金貸しのマダム・ジゼル(イヴ・ピアース)のホテルに行き、「私につきまとうな」と怒ります。翌日、夫はロンドンに帰国し、セシリーとヴェネシアが一緒にテニスを観戦することになります。ポワロはジェインとシュールレアリスム博物館で出会い、「シュールレアリスムは論理で見てはいけません、心を開いて経験するんですと解説します。
 パリ見物を終えて、パリ発クロイドン行きの航空機一等に乗ったポワロ。他にはゲイル、セシリー、ヴェネシア、ジゼル、考古学者デュポン(ガイ・マニング)、探偵作家クランシー(ロジャー・ヒースコット)等が乗っていました。スチュワーデスはジェイン、スチュワードはミッチェル(イヴス・オーバート)です。コーヒー・タイムの後、マダム・ジゼルが死亡していることにスチュワードのミッチェルが気づきます。一見、ジゼルはハチに刺されて死亡したようでした。しかし、南米の吹き矢が落ちていました。先には毒が塗ってあったようです。
 飛行機が大嫌いなポワロは眠っており、その数メートル後ろで殺人が行われたのです。ポワロは名探偵のプライドを賭けてジャップ警部、そしてパリ警視庁のフルニエ警部(リチャード・イアーソン)と共に捜査します。
 ポワロの座席から矢筒が発見され、ポワロも容疑者のひとりになります。ポワロはジェインに依頼して作家クランシーの本を図書館で借りて来てもらい、クランシーに尋問。クランシー家の棚から矢筒を回収します。
 フルニエ警部のもとにジゼルの娘アン(ジェニー・ダウンハム。声は勝生真沙子)と名乗る女性が現れます。結婚したばかりで、遺産相続を申し立てます。ジゼルのメイドのエリーズ(ガブリエル・ロイド)はジゼルは私生児の娘を産み、23年前に里子に出したと証言します。その後、アンはいったん姿を消します。
 スチュワードのミッチェルは片付けのときソーサーにスプーンが2本あったことを思い出します。そして再びアンが姿を現したとき、彼女には危険が迫っていました。ポワロはアンと以前にどこかで会っているのですが、思い出せません。一方、セシリーは英国から失踪し、俳優ヴァラクラフ(ハリー・オードリー)と共にフランスのカジノに現れます。ポワロは関係者一同を集め、謎を解きます。
 制作総指揮マックス、撮影監督イヴァン、EPニック、制作ブライアン。

   映画川柳 「《フランスの警察》 捜査より 昼食が大事 フランス流」飛蜘

 ディアゴスティーニ版ではNo.11である。
2008年8月25日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ABC殺人事件



英国LWC
103分
英国1992年放映 
 第四シリーズは1992年放映で長篇3本の制作。

 第11話 ABC殺人事件 The ABC Murders。『ABC殺人事件』、脚色クライブ・エクストン、演出アンドリュー・グリーヴ。
 あまりにも有名なミステリーなのであらすじを紹介するまでもないでしょう。前後篇で放送。

 半年ぶりに大尉が南米から帰国、カイマンの剥製をお土産に持ち帰りました。ちょうどポワロにはA.B.C.という匿名の人物から手紙が来ていました。その手紙の予告通り、21日にアンドーバー市で煙草店のアリス・アッシャーが撲殺されます。死体の傍に『ABC鉄道案内』が置かれていました。妻アリスと不仲だった夫フランツ・アッシャー(マイケル・メリンジャー)、姪でメイドのメアリー・ドロウアー(キャスリーン・ブラッドショー。声は吉田理保子)は到底、犯人ではあり得ません。ジャップ警部とともに地区のグレン警部(ディヴィッド・マッカリスター)が捜査を担当。
 2通目は25日にベックスヒル市を予告。厳重な警戒のなか、海岸でベティ・バーナードが絞殺されていました。ベティの恋人ドナルド・フレイザー(ニコラス・ファレル。声は玄田哲章)とは男友達をめぐって時々喧嘩、ベティの父親(ジョン・ブレスリン)と母親、そして姉のミーガン(ピッパ・ガード。声は榊原良子)も容疑者にはなり得ません。カーター部長(ピーター・ペンリー=ジョーンズ)が捜査に加わります。
 警察は連続殺人事件として公開します。「ポワロ困惑」と見出し。3通目が来ます。29日にチャーストン村と予告していますが、もう29日です。急遽ポワロやジャップ警部は駆けつけますが大富豪サー・カーマイケル・クラークが撲殺されていました。富豪の弟フランクリン(ドナルド・ダグラス。声は内田稔)は美貌の秘書ソーラ・グレイ(ニナ・マルク。声は弥永和子)と共に、AとBとCの関係者で捜査チームを作って協力しようと申し出ます。ポワロもその案に賛同します。
 ところで、図書館の男(アンドリュー・ウィリアムソン)はストッキングの行商人カスト(ドナルド・サムプター。声は矢田稔)と事件について話しますが、カストは急に笑い出したりします。カストはミステリ映画に興奮したり、怪しい行動を取ります。
 クラークの母で、不知の病気をもつレディ・クラーク(ヴィヴィアン・バージェス)は事件当日に秘書のグレイが不振な男と会っていたと話します。グレイを「嘘つき女」と非難しますが、グレイはその男が特別な“特徴を持たない人”だったため、忘れていたのだと証言します。
 4通目は9日、ドンカスターと予告。9日には競馬があり人でごったがえしています。犯行現場は競馬場と予想して警察と私的捜査チームは張り込みます。ところが殺人は映画館で起こり、しかもDで始まる男の隣りの席の人が誤って刺殺されました。カストが男の近くにいて、ホテルに帰宅するとポケットに血の付いたナイフと布がありました。血のついた手を洗っているところを安ホテルの部屋係マーベリー夫人(ルチンダ・カーティス)に目撃され、彼女の通報で、カストはABC殺人事件の犯人として逮捕されます。しかし、カストにはBの事件でアリバイがありました。真犯人はいったい誰なのか。また連続殺人事件の動機は何なのか。
 他のキャストはメリオン(アン・ウィンザー)、カストの家主タートン夫人(ミランダ・フォーブス)、富豪の執事デヴリル(ジェレミー・ホーク)、カー博士(アラン・ミッチェル)、富豪の医師(フィリップ・アンソニー)、巡査(クリフォード・ミルナー)、ホテルの捜査をするドンカスターの巡査部長(クロード・クローズ)。
 オーソドックスなアップと切り返しの映像が多い。

 映画川柳 「何も無い 見れども見えず 行商人」飛蜘

 ディアゴスティーニで2011年1月25日から全65巻で「名探偵ポアロ」シリーズを刊行開始。第2巻が「ABC殺人事件」だった。
2008年8月24日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

猟人荘の怪事件



英国LWC
52分
英国1991年放映
第10話 猟人荘の怪事件 The Mystery of Hunter's Lodge。原作「狩人荘の怪事件」『ポアロ登場』所収。脚色T.R.ボウエン、台本助言クライブ・エクストン、演出レニー・ライ。

 ライチョウ撃ちの集まりに参加した大尉とポワロ。大尉の友人ロジャー(ジム・ノートン。声は樋浦勉)の叔父ハリー(ベルナルド・ホースフォール)が持つ猟人荘は猟のときしか使いません。ゾイ(ダイアナ・ケント。声は田島令子)は猟場から先に戻ります。猟人荘では家政婦ミドルトンが家事いっさいを取り仕切っています。甥のアーチー(ショーグハン・シーモア)の誤射でハリーはかすり傷を負います。アーチーは自転車で帰宅し、寒さですっかり凍えたポワロも帰宅して発熱して寝込んでしまいます。ロジャーも帰宅して、手薄になった夜、ハリーが深夜の来訪客によって射殺されました。翌日、客について証言していたミドルトン夫人が失踪します。
 ハリーは仲間を陥れてのし上がり、戦争で儲け、私生児ではあるが弟のジャック(ロイ・ボイド)を猟場の番人にしながら、彼とメイドのジョーン(クレア・トラヴァース=ディーコン)の婚約にもまったくお金を出さない、ひどい人間だったといいます。ロジャーが乗った汽車を途中で降りて途中駅で駅員アンストルーサー(アーサー・ワイブロー)の自転車を盗んだひげの人物がいました。
 他のキャストはメイドのエリー(ヴィクトリア・アルコック) 
 制作総指揮マイク、撮影監督ノーマン。

   映画川柳 「《殺人犯》 冬の日に 身を隠しては 鳥を待つ」飛蜘
2008年8月24日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

戦勝舞踏会事件



英国LWC
52分
英国1991年放映
 第9話 戦勝舞踏会事件 The Affair at the Victory Ball。原作「戦勝記念舞踏会事件」『教会で死んだ男』所収。脚色アンドリュー・マーシャル、演出レニー・ライ。

 即興劇から生まれた6人のマイセンの陶器人形を購入したユースタス(ディヴィッド・ヘンリー)にはもう資金がありませんでした。BBCのラジオ放送の看板女優ココ(ヘイドン・グウィン)は今日も遅刻。
 戦勝舞踏会は仮面舞踏会の趣向です。BBCの製作者ジェイムズ(アンドリュー・バート)はポワロと出会えたことを喜んでいます。6人の人形にあやかって扮装しているのは、パンチネッロ・ユースタスと彼の甥、アルレッキーノ・クロンショー子爵(マーク・クロウディ)、ピエロ・クリス(ナサニエル・パーカー)、ピエレット・その夫人(ナタリー・スレイター)、コロンビーナ・マラビー夫人(ケイト・ハーパー)、プルチネッラ・ココ。ココはクロンショーと喧嘩し、帰宅。
 午前0時に仮面を脱ぐ趣向です。そのとき、ある部屋でクロンショー卿の刺殺死体が発見されます。死体が持っていたのはCの頭文字の小箱にコカイン。「麻薬撲滅協会」の代表でもあった子爵なのに。
 新聞はポワロがいる現場で殺人事件が起こったことを報道。続いて、ココの死体が発見されます。コカインの過剰摂取でした。子爵の死後硬直で握られていた手にはポンポンが・・・
 ポワロはラジオで事件を再現します。他のキャストはBBCアナウンサー(チャールズ・コリングウッド)。
 制作総指揮マイク、撮影監督ノーマン・ラングレィ、音楽ガンニングのみ。
 クリスティーが書いた最初のポワロもの短篇。

    映画川柳 「《ポワロの英語》 放送後 反響は訛り 耳ざわり」飛蜘
2008年8月24日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

盗まれたロイヤル・ルビー



英国LWC
52分
英国1991年放映
 第8話 盗まれたロイヤル・ルビー The Theft of the Royal Ruby。原作「クリスマス・プディングの冒険」『クリスマス・プディングの冒険』及びその原型「クリスマスの冒険 Christmas Adventure」『マン島の黄金』所収。脚色アンソニー・ホロウィッツ、台本助言クライブ・エクストン、演出アンドリュー・グリーヴ。

 エジプト国王の息子、ファールーク殿下(タリク・アリバイ)は泥酔して、出会った女アイリスにラムセス王朝伝来のルビーを付けさせたのですが、そのまま女は失踪してしまいました。デュプレの店でクリスマスのチョコを購入していたポワロは外務次官ジェズモンド(ディヴィッド・ホウェイ)に呼ばれます。ミス・レモンと大尉は休暇で、ポワロはひとり。
 愚かな殿下の失敗を助ける仕事などポワロの仕事ではないと断りますが、殿下自身はポワロの悪口を気に入って依頼したいと言います。殿下が宝石の話をしたことのある考古学者レイシー大佐(フレデリック・トレヴェス。声は福田豊士)の家で、ポワロはクリスマスをすごさざるを得なくなります。レイシー大佐の妻(ステファニー・コール。声は瀬能礼子)は、孫のセアラ(ヘレナ・ミッチェル。声は藩恵子)が正体不明のデズモンド・リー=ワートリィ(ナイジェル・リ・ヴェイラント。声は羽佐間道夫)に夢中で困っていると訴えます。ワートリィは妹のグロリア(ロビン・ムーア)を連れています。大佐はデイヴィッド・ウェルウィン(ジョン・ヴァーノン)に売る美術品の鑑定を依頼しています。
 ポワロは枕元の書置き「プラムプディングは食べるな」を読みます。プディングの中にはいろんなギフトが仕込まれていますが、大佐のプディングからは赤いルビー、ポワロはガラス玉だと偽って殿下に届けます。しかし、殿下は犯人を見つけよとポワロを罵ります。エジプトの反勢力、民族主義者ワフド党のシンパを叩き潰すのだと。
 ポワロはルビーをおとりにします。クリスマス・イヴの翌朝、子供たちマイケル(エドワード・ホルムズ)とコリン(ジョナサン・S・バンクロフト)の悪戯だったはずのブリジエット(アレシア・グゥインター)刺殺事件では、ブリジェットの脈がありません、夫のレイシーは目を覚まさないし、セアラはベッドに居ない。いったい何が起こっているのでしょうか。
 他のキャストはレイシー家の執事ペヴァリル(ジョン・ダンバー)、ポワロに忠告したメイドのアニー(シオバン・ガラヒィー)、コックのロス夫人(スーザン・フィールド)。

   映画川柳 「《ポワロの謝意》 陰謀を 聞いたメイドに 機転あり」飛蜘
2008年8月24日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

スペイン櫃(ひつ)の秘密



英国LWC
52分
英国1991年放映
 第7話 スペイン櫃(ひつ)の秘密 The Mystery of the Spanish Chest。原作「スペイン櫃(ひつ)の秘密」『クリスマス・プディングの冒険』及び「バグダッドの大櫃の謎  The Mystery of the Bagdad Chest」『黄色いアイリス』所収。脚色アンソニー・ホロウィッツ、台本助言クライブ・エクストン、演出アンドリュー・グリーヴ。

 開巻早々は床にチョークで白い中心印を描くキイキイいう耳障りな音。セピア調の画面でフェンシングによる時代錯誤な決闘をする二人。女を争っての決闘だったことが後で分かります。決闘のきっかけは冗談だったとか。
 場面変わって歌劇『リゴレット』のリゴレットとジルダの侯爵邸での二重唱を見るポワロと大尉。大尉がパンフレットを読むポワロに随分熱心だなと言うと、ポワロはリゴレットだけは別格だと言う。「嫉妬深い父親が娘を辱めた男を殺そうとする。だが、女心への理解が足りず破局を迎える。そこが面白い」と。
 会場でポワロに声をかけたレディ・チャタートン(アントニア・ペンバートン)は、翌日会い、友人のマーゲリート・クレイトン(キャロリン・ラングリッシュ。声は萩尾みどり)の夫エドワード(マルコルム・シンクレア。声は田中信夫)の最近の行動が不振だと訴えます。美人のマーゲリートをめぐっては10年前に決闘もあったそうです。エドワードは刃物を求めたり、エジンバラに出張を命じたカーティス大佐(ジョン・マッキナリー。声は中村正)に夫人の不倫疑惑の相談をしたりしています。
 妻を亡くした後、夫人を思慕するリッチ少佐(ピップ・トレンス。声は中田浩二)を訪問したエドワードは少佐の帰宅を待つはずだったのにいなくなってしまいました。その晩のリッチ少佐の家のパーティにも彼は欠席でした。ポワロはエドワードと会うはずでしたが、欠席なので、チャタートン夫人とチャールストンを踊ったりします。その部屋にあったスペイン風の彫り物のあるチェスト(大型の収納箱)から翌朝、刺し殺されたエドワードの死体が発見されます。容疑者として少佐が逮捕されます。少佐は留置所に来訪したマーグリートに「すべて真実を話せ」と助言しますが、彼女は「できないわ」と答え、帰宅した後、大量の睡眠薬を飲んで自殺を図ります。彼女は少佐に「夫が死んでくれたら」と話したことがあり、それが原因になったと自責の念にかられたのでした。
 ジャップ警部はタイプライターと格闘しています。ポワロは警部に依頼して夫人を逮捕させますが、それは真犯人をおびき出すための罠でした。
 夫人に「最高」と評価されたポワロは「たいしたことではありません。私はツイていたんです」と答えて、ヘィステlングスを驚かせます。ポワロはイギリス的な謙虚さを身につけようとしているのだそうです。
 他のキャストは執事ブルゴーニュ(ピーター・コプリー)、スミシー(サム・スマート)、ラウジー役に役名と同じエドワード・クレイトン氏がキャスティングされています。今回はミス・レモンは休暇で不在です。
 制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督クリス・オデール、テーマ音楽はクリストファー・ガンニングだが、付随音楽にフィアチラ・トレンチが初めてクレジットされました。

   映画川柳 「嫉妬から 自分を滅ぼす 道化師が」飛蜘
2008年8月23日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

二重の手がかり



英国LWC
52分
英国1991年放映
 第6話 二重の手がかり The Double Clue。原作「二重の手がかり」『教会で死んだ男』所収。脚色アンソニー・ホロウィッツ、台本助言クライブ・エクストン、演出アンドリュー・ピディントン。

 列車が到着しました。ロシアの伯爵夫人(キカ・マークハム。声は久野綾希子)が降りてきてカールトン・ホテルに着きました。彼女のテーマである穏やかなピアノ曲が背景に流れます。今回は伯爵夫人が現れるときは常にこのテーマが流れます。
 ポワロとヘイスティングズ大尉が車の中で会話しています。結婚式を見かけて「これまでに妻が夫に殺された事件を5件扱っています。そして夫が妻に殺された事件を22件。したがって結婚は遠慮します」ちポワロ。ポワロの事務所に来たジャップ警部は窮地に立っていました。名門の屋敷で起こった宝石盗難事件を解決しないとクビになるというのです。そして、宝石コレクターであるハードマン氏(ディヴィッド・リオン。声は前田昌明)のパーティでメディチ家のエメラルドの首飾りが盗まれました。二重の手がかり、金庫内には手袋が残されており、金庫の前にはシガレットケース(BPの頭文字)が落ちていました。
 ポワロはロシアの伯爵夫人ヴェラに紹介されました。祖国を離れた身の上、二人はすっかり意気投合します。ポワロは伯爵夫人と毎日デート。警部のために大尉とミス・レモンは、パーティのとき屋敷内に入ったジョンストン(ニコラス・セルビー)、レディ・ランコーン(チャーミアン・メイ)、バーナード・パーカー(ディヴィッド・バンバー)に会い、証言を取ります。ランコーンの旧姓はベアトリス・パーマストーンでした。ポワロは私立探偵レッドファーン(マイケル・パッカー)とブイレイク(ウィリアム・チャッブ)に自分にはできない友人を助ける仕事を依頼します。ハードマンのパーティで目撃された浮浪者が何をしていたかを調査した大尉とミス・レモンの二人は突然出た浮浪者に銃撃されスリ傷を負います。ポワロが事務所を止めることになったらと大尉は身の振り方を心配します。大尉は「南米で農場をやるのが夢」。ミス・レモンは「考えたくありません」。
 ジャップ警部もまじえた推理で、ポワロは浮浪者が忍び込み、コートを取りに入った伯爵夫人に目撃され、逃走途中にネックレスを落としたと言います。警部は窓の下を調べて木に引っかかったネックレスを発見します。手袋はパーカーに罪を着せるため、シガレット・ケースはランコーンがハードマンに売ろうと持ち込んだものと解釈します。無事ネックレスが戻って警部のクビはつながったのです。
 アメリカに行くという伯爵夫人をポワロは見送ります。ポワロはBPのシガレット・ケースを餞別に送ります。ロシア語ではBはV、PはRですから、ヴェラ・ロサコフの頭文字にもなります。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督クリス・オデール。

   映画川柳 「さよならを 故国を亡くした 貴婦人に」飛蜘
2008年8月23日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

マースドン荘の惨劇



英国LWC
52分
英国1991年放映
 第5話 マースドン荘の惨劇 The Tragedy at Marsdon Manor。原作「マースドン荘の悲劇」『ポアロ登場』所収。脚色ディヴィッド・レンウィック、演出レニー・ライ。

 胃潰瘍手術後のジョナサン(イアン・マッククロウチ)と若妻スーザン(ジェラルディン・アレクサンダー。声は戸田恵子)。スーザンは大木の上に笑い顔の女の幻像を見ると言います。マースドン荘では50年前に娘が自殺していました。屋敷には『レベッカ』を連想させる秘書ローリンソン(アニタ・キャリー)が居ます。ポワロは殺人事件の疑いがあるという手紙を受け取り、ヘィステイングス大尉と一緒にこの田舎町にやってきましたが、事件は旅館主ノートン(デズモンド・バリット)の創作小説でした。解決に困ったノートンはポワロに自分の創作の決着を考えて欲しいというのです。ポーカー・フェイスを装うものの、怒りが収まらないポワロ。大尉は地元のロウ人形館に入場します。地元の殺人犯のデス・マスクが飾ってあります。なんとポワロの人形もありました。
 スーザンに恋しているブラック大尉(ニール・ダンカン。声は小川真司)は彼女にケニヤの木彫を新聞紙に包んでプレゼントします。ジョナサンは午前中に突然死亡してしまいます。自殺か、病死か、他殺か。地元の警察でもポワロは有名で、警察官に頼まれて、この事件の捜査を開始します。国民防衛集会でスーザンのガスマスクには麻酔薬が仕掛けられます。
 秘書が怖いと訴えるスーザンのために夕食を一緒にすることになるポワロ。死んだはずのジョナサン氏が夜の庭を歩み寄って来ました。他のキャストは医師ベルナルド(エドワード・ジュースベリー)、デンヴァーズ(ラルフ・ワトソン)。制作総指揮マイク、撮影ノーマン・ラングレー。

   映画川柳 「殺人の 示唆を与える 新聞紙」飛蜘
2008年8月23日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

スズメバチの巣



英国LWC
52分
英国1991年放映

 第4話 スズメバチの巣 Wasp's Nest。原作「スズメ蜂の巣」『教会で死んだ男』所収。脚色ディヴィッド・レンウィック、演出ブライアン・ファーナム。

 ヘイステイングズ大尉は手に入れたカメラに夢中です。ポワロやジャップ警部と一緒に行ったバザー会場で「ヴォーグ」のモデル、モリー(メラニー・ジェソップ。声は高橋雅羅)を見かけます。モリーの恋人の、作家ジョン・ハリソン(マーティン・ターナー。声は津嘉山正種)はポワロと知り合いでした。紅茶占いでポワロはモリーに危険が迫っていると言います。ジャップ警部が突然の腹痛を訴え入院。大尉は「占いなど当てにならない」と言いますが、ポワロは紅茶カップの口紅がモリーの口紅の色と違っていたことを指摘します。モリーの前の婚約者で、造形作家クロード(ピーター・キャパルディ)がハリー家のスズメバチ退治に来てくれた日、モリーの自動車はブレーキが故障して事故を起こします。
 薬局のヘンダーソン夫人(ケイト・リン=エヴァンス)から青酸カリを購入しているクロード。水槽に混ざったガソリンに気がついたポワロは不審を感じます。ガソリンも青酸カリもスズメバチ退治に使用される薬剤です。一方、ファッション・ショー会場からモリーを連れ出した怪しい老人(ジョン・ボスウェル)。その後、モリーは泣き崩れて寝込んでしまいます。日記帳のページをくるジョンの姿が挿入され、ポワロは「まだ起こっていない殺人」の捜査に悩みます。傑作
 制作総指揮マイク・オクスレー、撮影監督ジェイソン・リーヘル。

   映画川柳 「残されし日々を形見に かみしめて」飛蜘

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、第3位に選出された。「事件が起きてからやってきて、推理している最中も殺戮続き、というのが名探偵の宿命のようだが、この短篇ではポワロは事件を止めにやってくる。絶望の果ての希望が描かれる、切なさあふれるエンディングはシリーズ屈指のできばえだ。しかもこの作品は、のちに『オリエント』にもつながる、神と人間、正義とはなにかというテーマを内包している」。

 ディアゴスティーニ版ではNo.47である。
2008年8月23日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

プリマス行き急行列車



英国LWC
52分
英国1991年放映
 第3話 プリマス行き急行列車 The Plymouth Express。原作「プリマス行き急行列車」『教会で死んだ男』所収。脚色ロッド・ビーチャム、台本助言クライブ・エクストン、演出アンドリュー・ピディントン。

 列車の中で刺殺死体となって発見されたのは億万長者ハリディ(ジョン・ストーン。声は小林昭二)の娘フロレンス・キャリントン夫人(シェラ・マックロード)。彼女が携えていた十万ドル相当の宝石が盗まれていました。夫人は浪費家の夫ルパート・キャリントン(ジュリアン・ワッドハム)と別居中でした。夫人に同行していた召使ジェーン(マリオン・ベイリー。声は大方斐紗子)によると、プリマスで夫人は客室に謎の男性とともにいたというのです。ポワロとヘイスティングスは列車に乗り込み、夫人の足取りをたどります。ウェストン駅で新聞売り子(スティーヴ・マッキントッシュ)から青いコートの夫人が「遅番の新聞を求めて大騒ぎした」という証言を得ます。フロレンスに求愛接近していたロシュフォール伯爵(アルフフレード・ミチェルソン。声は西沢利明)は株操作で詐欺の容疑が出てきます。ミス・レモンのファイルから闇の宝石商マッケンジー(ケネス・メイー)を探し出したポワロは証拠を確認するために彼の店へ行きます。
 ミス・レモンの名言「困難は克服の母 difficult is met bute come(こう聞こえるんですが・・・)」(困難であるほど達成しがいもあるという意味)。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督クリス・オデール。

   映画川柳 「英国人 完全な召使いは 先を読む」飛蜘
2008年8月22日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

100万ドル債券盗難事件



英国LWT
52分
英国1991年放映
 第2話 100万ドル債券盗難事件 The Million Dollar Bond Robbery。原作「百万ドル債券盗難事件」『ポアロ登場』所収。脚色アンソニー・ホロウィッツ、台本助言クライブ・エクストン、演出アンドリュー・グリーブ

 ヒッチコックの『海岸特派員』を連想させる黒い傘をさした歩く男たちの間に車が突っ込んで来ます。全篇を通じて夜のシーンが多く、人々の衣装も黒を基調にした異色作です。ロンドン・スコティッシュ銀行の部長ショー(ディヴィッド・キルター)が自動車で狙われたのです。
 アメリカとの取引で百万ドルの債券が豪華客船クィーン・メリーの処女航海で銀行からニューヨークに運ばれます。ショーが行けないときには部下のリッジウェイ(オリヴァー・パーカー)が行くことになっています。彼の婚約者でヴァヴァソア部長(イーワン・フーパー。声は富田耕生)の秘書エズミー(ナタリー・オーグル)はポワロに婚約者を見守って欲しいと頼みます。ショーのコーヒーに毒が盛られ、治療で彼は債券運びが無理になります。船酔いがひどいので興味なしと言っていたポワロは債券の番人として船に乗り込みます。クィーン・メリーに乗ったヘィスティングズは船酔いで寝込んでしまいます。当人は牡蠣に当たったと言い張っていますが。
 リッジウェイの船室から債券が盗まれました。謎の女性ミランダ(リッジー・マッキネリー。声は一柳みる)が海に捨てたのでしょうか。債券の入ったトランクは鍵で開かれていました。犯人は合鍵を持っていたのです。
 銀行では警備責任者マクニール(ポール・ヤング)が鍵を確認し、ヴァヴァソア部長の鍵が無くなっているので、部長を容疑者として逮捕します。ロンドンに戻ったポワロはリッジウェイを債券盗難の犯人として連行させます。婚約者エズミーは大憤慨しますが、ポワロには深謀遠慮がありました。
 他のキャストは船長(クリストファー・オーウェン)。ヘイスティングズ大尉は女性の変身ぶりにショックを受けます。
 制作総指揮ロブ・ハリス 撮影監督クリス・オデール。

   映画川柳 「黒い傘 揺れる人波 崩れたり」飛蜘

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、高く評価された。「豪華客船が舞台」。
 ディアゴスティーニ版ではNo.45である。
2008年8月21日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

あなたの庭はどんな庭?



英国LWT

70分

英国1991年放映
 第1話 あなたの庭はどんな庭?How Does Your Garden Grow?。原作「あなたの庭はどんな庭」『黄色いアイリス』所収。脚色アンドリュー・マーシャル、台本助言クライブ・エクストン、演出ブライアン・ファーナム。

 ソヴィエトの大使館に女性が訪ねて来て、お金に困っていると館員に訴え、チェルシー園芸博覧会での再会を約束させます。
 慣れない香水を購入し、つけてみて、チェルシー園芸博覧会に出かけたポワロ。新種のバラがポワロと名づけられ、それが紹介されたのでご満悦でした。そこで、ポワロは、車椅子のバロビー老夫人(マージェリー・メイソン)に贈り物だと種の袋を渡されます。ところが、袋の中には何も入っていません。
 ポワロはその朝着いた未読の手紙の中にバロビー夫人のものがあり、奇妙な家のなかの疑いについて書いてありました。姪のメアリー(アン・スタリブラス。声は新橋耐子)と酒浸りの夫(ティム・ウィルトン)、1年前に雇ったロシア娘のカトリーナ(キャサリン・ラッセル。声は池田昌子)、夫人が誰を疑っていたのかがはっきりしません。翌日、秘書レモンと一緒に、夫人を訪ねたポワロは、夫人がストリキニーネを服用して亡くなっていたことを知らされます。ストリキニーネは大変苦いため、どうして飲ませたのかが不明です。
 遺言で遺産はカトリーナに遺されるため、カトリーナが第一容疑者です。シムズ医師(ラルフ・ノーセック)は夫人に胃腸薬を処方していました。カトリーナは失踪してしまい、ますます怪しい。
 家を訪ねると素晴らしい庭がありましたが、ポワロはマザー・グースの歌“メアリー、メアリー、へそ曲がり、あなたの庭はどんな庭?”を思い出し、何かが違うのに気がつきます。ロシア大使館の青年ニコライ(ピーター・バーチ)はカトリーナという娘は存在しいないと言います。事件を解く手がかりや証拠は、秘書レモンの言葉にありました。スターリンに迫害された貴族の娘という状況が現れて来ます。事務所の留守番を任されたヘイスティングズ大尉がレモンに「ファイルに触るな」「商店の請求に支払いをするな」と言われたにもかかわらず、ポワロが買った香水代を現金で支払ってしまいます。現金で支払うとお店ではそのことを覚えていて小切手の支払いを受け付けてくれなくなるというミス・レモンの指摘がポワロに解決のヒントを与えます。
 二度見ると、毒の入った容器や庭の牡蠣殻など映像による伏線が分かり、伏線の張り方が巧みな一篇です。ポワロとミス・レモンが二人で死体検診に行く場面で、ポワロがミス・レモンを気づかったセリフの後で、ミス・レモンは「戦争中に死体置き場で働いていたので死体は見慣れています」というセリフが出てきます。なにかとミス・レモンが活躍する一篇です。他のキャストはマリソン夫人(ジョン・バージェス)、料理メイドのルーシー(ドーカス・モーガン)、香水店のトランパー(トレヴァー・ダンビー)。

   映画川柳 「牡蠣の白 薔薇が鮮やか 縁取りに」飛蜘

 ロンドン・ウィークエンド・テレヴィジョンが制作放送した名探偵ポワロの1991年第3シリーズ。この第3シリーズは演出者に新しい顔ぶれも加わり、構成も演出もかなり凝っていて、全体にレベル・アップしていると言えましょう。制作総指揮マイク・オクスレー、撮影監督ジェイソン・リーヘル、音楽クリストファー・ガンニング、第一製作者はニック・エリオット、製作者はブライアン・イーストマン。
 配役のレギュラー・メンバーとして、ポワロをディヴィッド・スーシェ(声は熊倉一雄)、友人ヘイスティングス大尉をヒュー・フレーザー(声は富山敬)、ジャップ警部をフィリップ・ジャクソン(声は坂口芳貞)、ミス・レモンをポーリン・モラン(声は翠準子)が演じている。日本語版台本は宇津木道子、演出は山田悦司。

[参考図書]
 数藤康雄(編)『アガサ・クリスティー百科事典』(早川文庫,2004年)
 早川書房編集部『アガサ・クリスティー99の謎』(早川文庫,2004年)

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、高く評価された。「郊外の家庭内の事件という地味な話に、ポワロという新種の薔薇や、ソヴィエトをからめた脚色が秀逸」

 ディアゴスティーニ版ではNo.44である。

見た日と媒体 作  品        感  想     (池田博明)
2008年8月10日

WOWOWで放映(8月5日)
録画
鯨が来た時



英国
20世紀フォックス

1989年
100分


デビッド・スーシェ出演作品
 ヘレン・ミレンとポール・スコフィールドが共演した作品で、1914年に起こった英国の離島の漁村の不思議な出来事を描いています。原作はマイケル・モルパーゴの小説『なぜ鯨が来たのか Why The Whales Came』。脚本は原作者。監督クライヴ・リーズ、自然光を生かした見事な撮影はロバート・ペインター、格調ある美しい音楽はクリストファー・ガンニング(『名探偵ポワロ』シリーズの音楽担当)。衣装リンディ・ヘミング、編集アンドリュー・ボウルトン。情報の少ない作品ですので粗筋を紹介します。
 70年前、サムソン島の漁師たちは海辺に打ち上げられた鯨を捕り、次々に来た大群を捕殺した。しかし、それは呪いの始まりだった。島には疫病が流行し、井戸が涸れ、漁民は去り、サムソン島は無人島になった。ブライヤー島の漁民にはサムソン島へ行ってはいけないという伝説が語り伝えられていた。
 ジェンキンズ家の娘グレイシー(ヘレン・ピアース)とパーカー家の息子ダニエル(マックス・レニー)は幼馴染で、今日もダニエルの作った模型船を浮かべて海浜で遊んでいて、生まれた弟の洗礼式に遅刻してしまった。ダニエルの父親トレーヴ(ジョン・ハーリアム)は息子を叱り、母親メアリー(バーバラ・アーウィン)が甘やかすからだと批難する。一方、グレイシーはジャック(ディヴィッド・スレルフォール)とクレミー(ヘレン・ミレン)のひとり娘、クレミーは「せめてもう一人」子供が欲しいと願っているが、出来ないのだ。パーカー家には5人の子供がいるのに「不公平だ」と嘆く。夫はそんな妻を優しく慰める。
 嵐の夜、海岸に一人で住む老人バードマン(ポール・スコフィールド)は船を出す。サムソン島に行き、かがり火を焚いているのだ。彼は村人から敬遠されている。ダニエルはバードマンが見事な木彫りの技術を持っているのに気がつく。砂浜に石を並べて文字を書くと、翌朝お土産の木彫が置いてあったりして返事があるのだ。船で本土の小学校に通う生徒たち。先生(ジェレミー・ケント)はムチを持って指導している。女性の助教師(ジョアンナ・バーソロミュー)も一緒。
 ドイツ軍との戦争が始まった。嵐の後、バードマンのことが心配になったダニエルはグレイシーと二人でバードマンの小屋を訪れる。二人が誰もいない部屋に入ると、しばらくしてバードマンが帰宅した。バードマンは耳が聞えないので、戦争のことを筆談で知らせる。バードマンは嵐で材木が浜に流れついたことを知らせ、村人たちに呼びかけるように促す。村人は漂着した材木を隠す。すぐに沿岸警備隊が高級木材の漂着調査に来るが、村人たちは知らぬふりをする。これを機会に、二人はときどきバードマンの許を訪れるようになる。
 浜には若者の死体も流れ着くようになり、ジャックは海軍に志願する。村をあげて、お祝いが行われる。残った家族の生活は困窮した。グレイシーはダニエルと一緒に船を出し、母親に代わって釣りをするが、強い潮流に流され、サムソン島に一時避難する。サムソン島の井戸は涸れ、家は放棄されていた。それとなくバードマンが蜂蜜や卵をクレミーに差し入れ、助ける。「夫は行方不明、絶望的」との連絡が来る。
 バードマンは敵のスパイだという噂をもとに不良のティム(デクスター・フレッチャー)たちがバードマンの小屋を燃やす計画をしている。ダニエルとグレイシーがバードマンに急を知らせに行くと、バードマンは浜で一匹のイッカク鯨を海に返そうとしているところだった。鯨を村の財産として分けようと集まって来た漁民たちにダニエルとバードマンは過去の呪いの歴史を説明する。村長ウィル(ディヴィッド・スーシェ)はみんなに呼びかけて鯨を海に返し、その後に押し寄せてきた大群も火で追い返す。
 村に静寂が戻ったとき、バードマンは呪いの解けたサムソン島に帰っていた。ダニエルが訪れてみると井戸に水が溢れていた。そして、もっと嬉しいことが起こった。死んだと思われていたジャックが無事帰ってきたのだ。

   映画俳句 「無人島 鯨の呪いの 解けるとき」飛蜘
2008年8月5日

DVD ハピネットピクチャーズ

名探偵ポワロ

スタイルズ荘の怪事件



103分

英国1990年9月16日放映
 短編ものとはタイトルのロゴが異なる。原作 Mysterious Affair at Styles はクリスティーの処女作。脚色クライヴ・エクストン、演出ロス・デヴェニッシュ。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督ヴァーノン・レイトン、第一製作者はニック、製作者はブライアン。

 戦線記録フィルムを病院で見る兵士たち。第一次世界大戦で負傷したヘィスティングズ中尉は、旧友ジョン・カヴェンディッシュ(ディヴィッド・リントール。声は樋浦勉)の招きでスタイルズ荘に滞在することになります。ジョンの母親で屋敷の女主人エミリー(ジリアン・バーグ。声は阿部寿美子)は、20歳も年下のイングルソープ(マイケル・クローニン。声は銀河万丈)と再婚しており、その件で友人エヴィー・ハワード(ジョアンナ・マッカラム。声は野沢雅子)と喧嘩、彼女を追い出した後、夫と浮気のことで言い争い、ストリキニーネで殺害されてしまいます。中尉は以前に世話になって、村で再会したポワロに捜査を依頼します。ポワロは女主人の部屋を調査して、六つの注意点を挙げます。粉々に成ったコーヒーカップ、鍵がさしこまれたままの書類箱、カーペットのコーヒーの染み、ドアの錠にはさまった深緑色の繊維、ろうそくのロウ、睡眠薬の空箱。暖炉には灰になった遺言状。ここまで前篇。
 検死審問では薬局から犬用にストリキニーネを購入した人物がイングルソープと署名。ローレンスは母親は自然死だったと主張し、メアリーはX氏と夫人との口論の内容を覚えていないと証言します。メアリーが何かを隠していることはあきらかですが、いったい何を隠しているのかが分かりません。陪審員は謀殺と判断しますが、犯人は特定できませんでした。状況から、イングルソープは逮捕されそうになりますが、ポワロが彼のアリバイを証明します。しばらくして、ジョンが逮捕され、中央裁判所で裁判が行われます。空の毒の小瓶がジョンの部屋から発見されたりと不利な状況です。
 養女シンシア(アリー・バーンズ。声は安達忍)は、ヘィスティングズにジョンの妻メアリー(ビーティ・エドニー。声は幸田直子)や彼の弟ローレンス(アンソニー・カルフ。声は田中正彦)から嫌われていると告白、ヘイステイングズはシンシアに「僕の妻に」と求婚します。シンシアは笑って「元気が出たわ」と感謝。隣のレイクス夫人(ペネロープ・ビューモント)は、ジョンとなにかつながりがありそうです。
 ヘィステイングスがポワロと組んで解決する最初の事件です。
 他のキャストはウィルキンズ医師(マイケル・ゴッドリー)、メイドのドーカス(ララ・ロイド)など。

   映画俳句 「支えたり 支えられたり 戦傷者」飛蜘 

 ディアゴスティーニ版ではNo.6である。
2008年8月5日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

西洋の星の盗難事件



52分
英国1990年3月4日放映
 西洋の星の盗難事件 The Adventure of the Western Star。原作は「<西洋の星>盗難事件」『ポアロ登場』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出リチャード・スペンス。制作総指揮マイク、撮影監督イヴァン、第一製作者ニック、製作者はブライアン。

 ジャップ警部はヴァン・ブラックス(シュトルアン・ロジャー)を盗品買いの容疑で逮捕します。宝石商はホフバーグ(ブルース・モンタギュー)。けれども、ヴァン・ブラックスは総監から横槍が入って釈放。
 ポワロはうきうきしています。ベルギーの女優マリー・マーベル(ロザリンド・ベネット。声は榊原良子)が訪れて来るというのです。ところが突然の電話が入ってマリーの泊まったホテルに行くことに。
 マリーは夫グレゴリー・ロルフ(オリヴァー・コットン。声は瑳川哲朗)が購入してくれた宝石「西洋の星」を奪うと言う脅迫状が届けられたと訴えます。「西洋の星」は「東洋の星」と一対で中国寺院の神像の右目と左目であり、いずれ二つの宝石は出会って神のもとへ戻るという伝説があります。「東洋の星」はレディ・ヤードリー(アリスター・キャメロン。声は池田昌子)が持っているという話で、週末にヤードリー・チェイスに行くときに、マリーは「西洋の星」を身に着けていたいというのです。
 ポワロが理髪店でもみあげの左右をそろえてもらっている間に、事務所にはヤードリー夫人が来訪、大尉が先走って宝石盗難の予告だろうと推理します。ポワロと大尉がヤードリー邸を訪れたその晩に、夫人の胸元から宝石が奪われます。奪ったのは中国人だったとか。けれども、これは狂言でした。夫人がポワロのもとにやって来て事情を告白します。マリーの夫ロルフに夢中だったときがあり、そのことをネタに3年前に「東洋の星」を取られたのでした。そしてまた、マリーの「西洋の星」も盗難にあいます。ロルフになりすました中国人によってホテルの貸し金庫の宝石箱から盗られたのです。ポワロは宝石のありかを推理し、しかるべき持ち主に返す努力をします。
 他のキャストはムリング(スティーフェン・ハンコック)、巡査部長(イアン・コリア)、ドゥーガル警部(バリー・ウールガー)。

   映画俳句 「想い出に 片目をつぶる 神の像」飛蜘
2008年8月5日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

誘拐された総理大臣



52分

英国1990年2月25日放映
 誘拐された総理大臣 The Kidnapped Prime Minister 。原作は「首相誘拐事件」『ポアロ登場』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出アンドリュー・グリーヴ。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督イヴァン、第一製作者ニック、製作者ブライアン。

 駅で首相を待つジャップ警部ら。遅れて到着した首相の車から降りた首相は途中で暗殺未遂事件に遭遇したという。頬を銃弾がかすめたため顔には包帯が巻かれています。
 ポワロは仕立て屋フィングラー(ミロ・スパーバー)に上着の寸法を取ってもらっていましたが、フィグラーが「太った」というと、ポワロは「そんなはずはない、巻尺が縮んだのだ」と答えます。ポワロはフィグラーに「ずけずけと言い過ぎます」と忠告さえする始末。ヘィスティングス大尉が「なぜ一流の店に頼まないのか」と尋ねると、ポワロは「フィグラー氏は芸術家です。芸術家にはそれを理解するひとが必要です」と答えます。
 外務省のドッジ事務次官(ロナルド・マインズ。声は内田稔)から極秘捜査の依頼が来ます。首相がパリで誘拐され、居場所が不明だと言うのです。翌日にはパリで国際連盟の軍縮会議が開催されるため、欠席すればイギリスとしては重大な結果になりかねません。時間はあと32時間15分。ポワロはパリに行かずにロンドンで捜査するので、ドッジ氏は気が気ではありません。本当にポワロに依頼して良かったんだろうかと疑っています。ポワロは運転手イーガン(ジャック・エリオット)の経歴やダニエルズ中佐(ディヴィッド・ホロヴィッチ。マープルもののスラック警部役。声は外山高士)の経歴、中佐夫人(リサ・ハロー。声は中西妙子)の旧姓などをジャップ警部に調査してもらいます。するとそこにはアイルランドという共通項がありました。
 他のキャストは首相(ヘンリー・モクソン)、ホッパー巡査部長(オリヴァー・ビーミス)、エステア卿(パトリック・ゴドフリー)、ノーマン曹長(ティモシー・ブロック)、女主人(ケイト・ビンキー)。

   映画俳句  「《ポワロの背広》 仕立て屋の 寸法通りで 窮屈に」飛蜘
2008年8月5日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

安いマンションの事件



52分

英国1990年2月18日放映

 安いマンションの事件 The Adventure of the Cheap Flat。原作は「安アパート事件」『ポアロ登場』所収。脚色ラッセル・マレー、台本助言クライヴ・エクストン、演出リチャード・スペンス。他は前回同様。

 ポワロと大尉と警部はアメリカ映画の鑑賞中ですが、銃撃戦となり、車の衝突で終わるバイオレンス・アクションにポワロは眉をひそめます。
 折りしもFBIのバート捜査官(ウィリアム・ホーキンス。滝口順平)がカーラ・ロメロ(ジェニファー・ランドール。声は戸田恵子)を追跡してアメリカからやって来ます。新型の潜水艦の青写真を海兵ルイジ(ナイジェル・ホイットメイ)を手玉に取って入手、イギリスに夫(ルーク・ヘイドン。声は秋元羊介)とともに逃亡して来たというのです。バート捜査官は「マフィアやコーザ・ノストラなんて組織は存在しない」という信念を持ち、私立探偵を馬鹿にしています。ジャップ警部は頭ごなしに命令されるので面白くありません。
 一方、ステラ(サマンサ・ボンド。声は頓宮恭子)とジェイムズ(ジョン・ミッチー。声は江原正士)のロビンソン夫妻は安マンションを契約することが出来て大喜び。彼らの前に契約しようとしたエルシー(ジェンマ・チャーチル。声は山岡葉子)は名前を聞かれただけで断られたというのに。
 ポワロはブラック・キャットの歌手エルサ・ハートがカーラではないかと推理し、ミス・レモンを新聞記者として派遣し、彼女の事情を探らせます。組織を裏切って青写真を他へ売ろうとするカーラを暗殺者(アンソニー・ペドリィ。声は青森伸)が狙っていました。 
 他のキャストはポール(ピーター・ハウエル)、ブラックキャットの経営者バニー(ニック・マロニー)、テディ(イアン・プライス)。

   映画俳句 「アメリカ出 絶対の自信 捜査官」飛蜘
2008年8月5日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

二重の罪



52分

英国1990年2月11日放映

 二重の罪 Double Sin。原作は「二重の罪」『教会で死んだ男』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出リチャード・スペンス。制作総指揮マックス・オックスレィ、撮影監督は二人になり、ピーター・バートレットとヴァーノン・レイトン。

 引退をほのめかすポワロ。保養地へ大尉とバスツアーで出かけます。一緒になった若い娘メアリ・ダラント(キャロリン・ミゥモー。声は玉川紗己子)は叔母ペン(エルスペット・グレイ。声は藤波京子)から預かった1500ポンドの細密画を持っていると話す。大尉は少女に気を魅かれますが、ポワロは「(高価な品物を持っているなどと広言するのは)おバカさんだ」と相手にしません。案の定、12枚セットの肖像画がトランクから盗まれてしまいます。大尉は可愛い少女のために探偵役で努力しますが、ポワロは「既に引退した」と言って、協力しません。細密画は既に画商ウッド(マイケル・J・シャノン)に売却されていました。大尉はバスを途中で降りた無遠慮な男が怪しいと狙いをつけ、首尾よくその男と一緒にいた女を捕らえますが、この二人、新聞で話題の駆け落ちカップル、アマンダ・マンダレィ(アマンダ・ガーウッド)と小説家のノートン(アダム・コッツ)でした。ウッドに面通しすると細密画を売りに来た女は年寄りで男に変装していたと言います。
 ジャップ警部はウィットコム女子大学の講演でポワロを激賞します。密かに聞きに来たポワロは気分がよくなって、事件の捜査に協力します。大尉はウッドが仕組んだ盗難劇と推理しますが、ポワロはメアリーの車椅子の叔母ペンに注目します。
 他のキャストはヴィニー巡査部長(ディヴィッド・ハーグリーヴズ)、警官(ジェラルド・ホーラン)。ミス・レモンが事務所の合鍵を置き忘れ、紛失したときの行動を一から思い出して、鍵を見つける挿話があります。

   映画俳句 「《ポワロの自負》 お忍びで 警部の講演 聴いてみる」飛蜘
2008年8月5日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ダベンハイム失そう事件



52分

英国1990年2月4日放映
 第4話 ダベンハイム失そう事件 The Disappearance of Mr.Davenheim。原作は「ミスタ・ダヴンハイムの失踪」『ポアロ登場』所収。脚色ディヴィッド・レンウィック、演出アンドリュー・グリーヴ。

 大邸宅に住んでいる銀行の頭取ダベンハイム(ケネス・コリー。声は納谷悟朗)は郵便を出しに出かけたまま忽然と消えてしまいました。ライバルのローエン(トニー・マシューズ、声は家弓家正)と道ですれ違うはずなのに、会わずに失踪したのです。ダベンハイムは出発前に序曲「1812年」のレコードをかけました。夫人(メル・マーティン、声は喜多道枝)は夫は出張するといつも高価な宝石を土産に持参してくれたと言います。
 ポワロ・大尉・警部は美女消失のマジック・ショーを見物。ジャップ警部はポワロと5ポンドの賭けをします。部屋から出ずにダベンハイム失踪事件を解けるかどうかと。大尉がポワロの手足となり、調査します。メイド(フィオナ・マッカーサー)にもジャップ警部が聞いた後、ヘイステキングズも聞くといった具合ですが、ポワロの質問は「ローエンの洋服の色は何色?」というような一見事件とは関係が無いようなものです。ボート屋の番人メリット(リチャード・ビール)は当日浮浪者2人と自転車の女を見かけただけだと証言します。警察はスピードレーサーでもあるローエンに容疑をしぼりこんでいきますが、ポワロは最初からローエンが犯人ではないと断言します。掏りのケレットがジャップ警部の財布をスリ取って捕縛されますが、彼の持ち物からダベンハイムの印章付き指輪が発見されます。ケレットはある紳士が捨てた物を拾ったのだと証言します。そこでケレットに面通しをさせることになります。そのなかにローエンも加えて、いよいよ大詰め・・・
 ポワロは友人から預かったオウムの世話をする羽目になります。そして今回のポワロはいろいろな手品に凝っており、練習してミス・レモンに見せたりします。キャストは他に巡査部長(ボブ・メイソン)、警官(ピーター・ドーラン)、配達員 (スチュワート・ハーウッド)、整備工(ジョンティ・ミラー)。

   映画俳句 「大砲の 轟音響く 大序曲」飛蜘
2008年8月5日
DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

コーンワルの毒殺事件



52分

英国1990年1月28日放映
 第3話 コーンワルの毒殺事件 The Cornish Mystery。原作は「コーンウォールの毒殺事件」『教会で死んだ男』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出エドワード・ベネット。

 歯科医の夫(ジェローム・ウィリス。声は大木民夫)から毒を盛られているようだとポワロに訴えるペンゲリー夫人(アマンダ・ウォーカー。声は公卿敬子)。翌日、夫人の屋敷を訪れたポワロと大尉はメイドのジェシー(ティリー・ヴォスバー。声は一城みゆ希)から、夫人が1時間前に亡くなったと知らされます。ポワロは助けを求めて来た夫人を死なせてしまったことを悔やみます。アダムズ医師(デレク・ペンフィールド。声は松岡文雄)は夫人は間違いなく胃炎だったと断言します。夫人は夫の医師が金髪の助手エドウィナ・マークス(ローラ・ジルリング)と恋愛関係にあったと言っていました。姪フリーダ・スタントン(クロー・サラマン。声は弥中和子)は自分の婚約者ジェイコブ・ラドナー(ジョン・ボウラー、声は堀勝之祐)に叔母が夢中だったと言います。遺言によれば2000ポンドが姪に、残りは夫に。町民は夫を毒殺犯人と噂します。検死審問では夫に不利な証言が続きます。ポワロは真犯人に自白させるため、脅迫に近い手段を使います。

   映画俳句 「金髪の 歯科助手に眩む 大尉かな」飛蜘
2008年8月4日

名探偵ポワロ

消えた廃坑



52分
英国1990年1月21日放映
 第2話 消えた廃坑 The Lost Mine。原作は「消えた廃坑」『ポアロ登場』所収。脚色マイケル・ベィカーとディヴィッド・レヌィック、演出エドワード・ベネット。

 ポワロとヘィスティングスはモノポリーという双六(すごろく)の投資ゲーム中。銀行に残高確認に出かけたポワロは残高が60ポンドもマイナスになっていると聞いて怒ります。ポワロは常に残高を444ポンド4シリング4ペンスに決めていると主張します。
 一方、廃坑になったビルマの鉱山は銀の価値がありながら、鉱脈が不明でした。地図を持っている中国人実業家ウー・リンが上海銀行との交渉のため英国にやって来ますが、約束の時刻に彼は役員会に現れず、ホテルから消えました。銀行の頭取ピアソン(アンソニー・ベイツ。声は村松康雄)がポワロに相談に来ます。ウー・リンは刺殺死体となって発見されました。
 警察の最新の無線捜査でウー・リンと一緒に船にいたという前科者レジナルド・ダイヤー(ジェイムズ・サクソン。声は島香裕)を中国人街で捕縛します。ただし、ダイヤーは証拠不十分で釈放せざるを得ませんでした。警察はここ七年間も中国人がからむ秘密結社を捜査してきたのです。ウー・リンのメモに株式仲買人チャールズ・レスター(コリン・スティントン。声は中田浩二)の名前がありましたが、警察はレスターの捜査をする時間が無く、ポワロ任せになっています。レスターはウーに会いにホテルに面会に行ったことを隠していました。
 ポワロはジャップ警部にウーがホテルに残した灰皿の吸いさしに色が付いていたこと、マッチをスーツケース内に入れて持っていながらなぜ受付係にマッチをくれと言ったのかが解ければ、事件は解決すると言います。レスターの妻(バーバラ・バーンズ。声は弘中くみ子)が夫の身を案じてポワロに相談に来ます。夫のジャケットのポケットにウーの旅券が入っていました。どうもレスターにとっては不利な証拠ばかりです。警察が中国人街のある店を捜査すると、地下は阿片窟になっていました。そして阿片窟の中に売人としてダイヤーがおり、中毒者としてレスターがいました。
 ポワロは警察で真犯人を指摘します。残高不足の原因は・・・ポワロの預金忘れでした。

   映画俳句 「入りびたり チャイナタウンに 阿片窟」飛蜘

【参考文献】ミステリマガジン2014年11月号の若竹七海による「ドラマ版ポワロからベスト3」で、高く評価された。「モノポリー、株式投資、ルーレットとゲームが盛りだくさんのこの話には、ボードゲーム『スコットランド・ヤード』ゲームさながらに、地図上でミニカーを動かしつつ容疑者を追い詰めるというシーンが登場する」

 ディアゴスティーニ版ではNo.35である。
2008年8月4日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ベールをかけた女



52分

英国1990年 1月14日放映

 第2シーズン、制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督ピーター・バートレット、製作者ニック。
 第1話 ベールをかけた女 The Veiled Lady。原作は「ヴェールをかけた女」『ポアロ登場』所収。脚本クライヴ・エクストン、演出エドワード・ベネット。

 バーリントン商店街の宝石店で強盗が行われます。店主は通行人に「泥棒だ。捕まえてくれ」と叫びます。
 最近、ポワロには依頼がありません。犯罪者がポワロを恐れて事件を起こさなくなったからだとポワロは語ります。「犯罪者はポワロさんなんか知りませんよ」というヘイスティングスの答えにポワロは憮然とします。事務所にはポワロの留守中、ベールをかぶった女が依頼に来ます。久しぶりの事件で、ホテルで女に会うと、女は実は侯爵と婚約中のミリセント嬢(フランセス・バーバー。声は小原乃梨子)だと自己紹介し、16歳のときに書いた探険家への恋文を2万ポンドで買えとラヴィントンという男に脅迫されていると訴えます。そこでポワロはラヴィントン氏(テレンス・ハーヴェイ。声は有川博)を事務所に呼び、交渉しますが、受け付けられません。ラヴィントンがパリに行っている間に、スイス人の錠前屋と偽って、ポワロがラヴィントン邸を訪問します。家政婦ゴッドバー(キャロル・ヘイマン。声は寺島信子)は最近このウィンブルドンにはテニスコートができたおかげで、有象無象が集まって来るようになったと不満を言います。家政婦はポワロに「住み込みではない」と言いますが、本当は住み込み。ポワロの目つきを怪しんだ家政婦は夜中にこっそり起きて見張っていたのです。そうとは知らないポワロとヘィスティングズ大尉は屋敷に忍び込み、薪の中に隠してあった中国製の小箱を発見します。中には夫人の手紙が入っているはずです。17分毎にパトロールする巡査(トニー・スティーブンス。声は関根信昭)が家政婦の通報でやって来て大尉は逃亡、ポワロは逮捕されてしまいます。
 留置所に大尉の通報でジャップ警部が来てくれて、なんとかポワロは出してもらえますが、ジャップ警部から、ラヴィントンは既に先週の火曜日にオランダで殺されていたと聞きます。だとするとポワロたちが会ったラヴィントン氏は偽者だったということになります。いったいなぜでしょうか。女首領ガーティが率いる組織的な宝石泥棒グループが背後にいるようです。

   映画俳句 「泥棒も 超一流の 名探偵」飛蜘
2008年8月4日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

エンドハウスの怪事件



102分
日本語版90分
英国1990年1月7日放映
 長編 A Peril an End House。原作は『邪悪の家』。脚色クライヴ・エクストン、演出はレニー・ライ。制作総指揮はマイク、撮影監督ピーター・バートレット、第一製作者ニック、製作者ブライアン。

 ポワロは休暇でヘイスティングスと英国南部の町セント・ルーに来ました。海岸でくるぶしを痛めたポワロを助けたニック(本名はマグダラ)・バックリー(ポリー・ウォーカー。声は中村晃子)。彼女の帽子に銃弾の穴が開いていました。彼女は海岸の古い屋敷エンド・ハウスに愛着を持っていました。架けた絵が落下する、車のブレーキがきかない、石が転落すると彼女の命は誰かに狙われているようです。屋敷に同居していたのは友人のフレディ・ライス夫人(アリソン・スターリング)。そして、ラザラス(ポール・ジョフリー)が踊りに来ています。ニックに惚れているらしいジョージ・チャレンジャー中佐(ジョン・ハーディング。声は前田昌明)もいます。
 ポワロの勧めでニックはヨークシャーから従妹のマギー(エリザベス・ダウンズ)を呼びました。花火の夜、衣装を着替えたマギーが撃たれて殺されます。ここまでが前篇。
 弁護士のバイス(クリストファー・ベインズ)はニックの遺言状は受け取っていないと言います。農夫クロフト(ジェレミー・ヤング)とその母ミルドレッド(キャロル・マックレディ)が勧めて、お手伝いのエレン(メアリー・カニンガム)夫妻の立会で作成したはずだと言うのですが。冒険家マイケル・シートンが世界旅行仲に行方不明、死亡したと思われるとニュースが流れます。マイケルとマグダラ・バックリーが婚約しており、マイケルに遺された莫大な遺産は、マイケルが亡くなった後はその妻であるマグダラに残されていることが分かります。莫大な遺産を狙った犯行でしょうか。注意していたにもかかわらず、病院にポワロ名義で届けられたコカイン入りのチョコレートを食べてニックが危篤、やがて死んだという情報がもたらされます。遺言状が急にバイス弁護士のもとに届きます。内容公開を全員の前で行うポワロ。いよいよ犯人も明らかになります。
 主演のポリー・ウォーカーの表情がくるくる変わるのが大変魅力的。あるときは無邪気に、あるときは大胆に。

 他のキャストにウィルソン(ジオフェリー・グリーンヒル)、警部(ゴッドフリー・ジェイムズ)、アルフレッド(ジョー・ベイツ)、ホテル受付嬢(ジェイン・ペイトン)、グラハム医師(ジョン・クロッカー)、フード(フェルガス・マックラーノン)。
 ポリー・ウォーカーは『D-TOX』『ロザンナのために』『エマ』『パトリオット・ゲーム』に出演しています。エレン役のメアリ・カニンガムは「レディ・フランシスの失踪」『名探偵ホームズ』のコルダー役で出ています。ラザラス役のポール・ジョフリーは「ウッドストック行き最終バス」『主任警部モース』のピーター・ニューラブ役で出演。

   映画俳句 「姿無き 失敗を繰り返す 殺人者」飛蜘
2008年8月4日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ





英国LWC
52分
英国1989年3月19日放映
 第10話 夢 The Dream。原作は「夢」『クリスマス・プディングの冒険』所収。第一シーズン最終作品。脚本クライヴ・エクストン、演出エドワード・ベネット。

 1935年にパイの売り上げNo.1を記録したファーリー社の50周年記念の新工場開きの日、娘のジョアンナ(ジョーリィ・リチャードソン。声は水沢アキ)は恋人ハーバート(マーティン・ウェンナー。声は曽我部和恭)が解雇されたことを知り、父親を憎みます。ポワロはベネディクト社長から依頼を受けます。こんな会話があります。
 ヘィスティングス大尉「依頼人はパイ作りのベネディクトですね」、ポワロ「パイを作る?ベネディクトが。ワーグナーが16分音符を書くようなものです」、ヘイスティングス「最高ですね」、ポワロ「いや最低、品質が。数は最高ですが」。
 会見はポワロひとりだけ、しかも社長は「毎晩、同じ夢を見る。12時28分になると拳銃で自分の頭を撃つ。何か意見は?」と尋ねます。ポワロが証拠が乏しくて意見など述べられませんと答えると、社長は「では、終わりだ」と会見を打ち切ります。ポワロが返却した呼び出し状の間違いに気がつかない社長は、目が見えなくなっているようです。やがて、ベネディクト社長が12時の組合の責任者との打ち合わせをすっぽかし、秘書が社長を確認すると、社長が銃を持ち倒れているのが発見されます。ポワロに話した夢の通りに事件が起こったのです。だとすると、夢のとおりの自殺ということになります。社長の夢のことを聞いたことがあるのは年若い未亡人ルイーズ(マリー・タム。声は井上遙)だけ。娘ジョアンナや有能な秘書ヒューゴ(アラン・ハワード。声は阪脩)、かかりつけの医師(ポール・ラクークス)などは聞いたことがないと答えます。
 ポワロの灰色の脳細胞にヒントを与えたのは、ポワロの秘書レモンが時間を知るために窓から乗り出して教会の時計を見た瞬間でした。ポワロは事件解決のお礼にレモンに時計を贈ります。実はレモンが欲しがっているのは新しいタイプライターだったのですが。
 娘役のジョーリィ・リチャードソンは英国の大女優ヴァネッサ・レッドグレーブの娘です。

   映画俳句 「《社長の勤勉》  工場の 煙突を見て 検査する」飛蜘
2008年8月4日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

クラブのキング



英国LWC
52分
英国1989年3月12日放映
 第9話 クラブのキング The King of Clubs。原作は「クラブのキング」『教会で死んだ男』所収。脚色マイケル・ベイカー、台本助言クライヴ・エクストン、演出レニー・ライ。

 撮影所で女優の演技にダメを出しているのは監督ではありません。製作者リードマン(ディヴィッド・スイフト。声は滝口順平)です。ヘイスティングスの友人バニー・ソーンダース(ジョナサン・コイ。声は堀勝之祐)の第1回監督作品というので、ヘイスティングスと撮影所を見学したポアロは、リードマンに怒られて解雇を宣告されているサイレント時代の俳優ラルフ・ウォルトン(ゴーン・グレインジャー。声は中庸助)を見ます。リードマンは女優ヴァレリー・サンクレア(ニアム・キューザック。声は土井美加)に後で事務所に来るように言います。ポワロは撮影所でモーラニア国のプリンス、ポール(ジャック・クラッフ。声は柴田光彦)に出会います。ポールはヴァレリーと婚約している仲で、映画の出資者でした。リードマンはヴァレリーの秘密を知って脅しているようです。さて、その夜、リードマンと試写を見た後で車で帰る途中にソーンダースは暴走してくるラルフの車とすれ違います。夜間にリードマンの家を訪れたヴァレリーは部屋を飛び出して、隣のウィローズ荘に駆け込みます。すぐに警察に連絡がありますが、ポワロはプリンスからの電話でヴァレリーの一大事だから助けて欲しいと依頼されます。リードマンが鈍器で殴られて死んでいるのでした。現場を見たポワロは窓のカーテンが開いていて、隣のウィローズ荘が見えた事を不審に思います。ヴァレリーが「ひと殺し、彼は殺されている」と駆け込んだとき、ウィローズ荘のオグランダー家はブリッジをしていたそうです。オグランダー夫人(エィヴリル・エルガー。声は小沢寿美恵)と娘ジェラルディン(アビゲイル・クラッテンドン。勝生真沙子)と息子ロニー(ション・パートウィー。声は森一)、足の悪い夫の四人です。
 ポワロは、机上に残されていたカードに、クラブのキングが欠けていることに気がつきました。警察は物盗りの犯行と見当をつけて捜査しますが、ポワロはこの犯行は迷宮入りとなると宣言します。
 他のキャストは、若い男(マーク・クルウィック)、リードマンの執事フランプトン(ヴァス・アンダーソン。声は辻谷耕史)、ウィローズ荘のメイド(キャシー・マーフィ。声は横田みはる)、デロイ夫人(ロジー・ティンプソン)。

   映画俳句 「一大事 娘を助ける 家族愛」飛蜘
 
2008年8月3日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

なぞの盗難事件



英国LWC
52分
英国1989年2月26日放映
 第8話 なぞの盗難事件 The Incredible Theft。原作は「謎の盗難事件」『死人の鏡』及びその原型「潜水艦の設計図 The Submarine Plans」『教会で死んだ男』所収。脚色ディヴィッド・リード、台本助言クライヴ・エクストン、演出エドワード・ベネット。

 兵器省の初代長官メィフィールド卿(ジョン・ストライド。声は宮川洋一)の開発した新型航空機を卿とジョージ・キャリントン卿(ジョン・カーソン。声は石田太郎)が見学していました。ポワロは靴のエナメル革の手入れをしています。ヘイスティングスは恋人との話題に腐心。一方、メィフィールド卿は設計図を餌にバンダリン夫人を釣り上げて見せると豪語。ポワロが動物園で会った匿名のメィフィールド夫人(キアラン・マッデン。声は武藤礼子)は夫のパーティの心配をしており、ポワロに同席を求めていました。さて、パーティの日、キャリントン夫人(フィリダ・ロウ)や息子のレジー(ガイ・スキャントルベリー)も一緒の席に、広く背中の開いたドレスを着て現れたバリントン夫人(カルメン・ドゥ・ソートイ。声は田島令子)。メィフィールド卿はカーライル秘書(アルベルト・ウェリング。声は大塚明夫)が用意した設計図の1枚が紛失していることに気づきます。密かにサー・ジョージの特命を受けていたジャップ警部が捜査。バンダリン夫人の身ぐるみを調べますが何も出てきません。
 翌日、舘を出たバリントン夫人のタクシーをポワロがヘィステイングスの運転する車で追跡します。日本が上海事変を起こした際の大砲がメィフィールド社のものだったという報道が事件の背後にあるようです。

 映画俳句 「盗まれる 状況に無い 設計図」飛蜘
2008年8月3日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

海上の悲劇



英国LWC
52分
英国1989年2月19日放映

 第7話 海上の悲劇 Problem at Sea。原作は「船上の怪事件」『黄色いアイリス』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出レニー・ライ、「砂に書かれた三角形」と同じくギリシア・ユニットが支えます。

 エジプトへの船旅、ヘィスティングスは若い娘キティにクレー射撃を教えています。モーガン夫人(ドロテア・フィリップス。声は巴青子)はエミリー(シェリ・シェプストーン)の伴奏で歌を披露。妻アデリーン(シェイラ・アレン。声は北村昌子)に隷属的な夫ジョン・クラパトン大佐(ジョン・ノルミントン。声は金内吉男)はミュージックホールの芸人だったようですが、戦争中に怪我をして療養中にアデリーンと会ったようです。エジプトのカイロに寄港し、見物で夫が若い娘たちキティ(メリッサ・グリーンウッド。声は鶴ひろみ)とパメラ(ヴィクトリア・ハステッド。声は山田栄子)と一緒に下船している間に、鍵のかかった船室で妻は刺殺されていました。大佐に魅かれているエリー(アン・フィブランク。声は鳳八千代)が現地人から買ったのと同じ首飾りが部屋に落ちています。ファウラー船長(ベン・アリスフォーブス。声は小林清志)はエジプト警察の干渉を受けたくないと、ポワロに捜査を依頼します。昼に戻ったファーブス将軍(ロジャー・ヒューム。声は富田耕生)のノックにアデリーンは答えなかったそうです。船室係スキナー(コリン・ヒギンズ。声は広瀬正志)が盗みに入ったときには既に夫人は死んでいたとか。モリー・トリヴァー(カロリン・ジョーン。声は倉野章子)とその夫には動機がありません。ポワロはモーガン夫人の姪の少女イスメーネ(ルイザ・ジェインズ。声は坂本真綾)に犯人を罠にかけるトリックを依頼します。後でエリー夫人に“卑劣な罠”と非難されるトリック・・・・

   映画俳句 「若い娘と 取り返せるか 青春を」飛蜘
2008年8月3日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

砂に書かれた三角形



英国LWC
52分
英国1989年2月12日放映
 第6話 砂に書かれた三角形 Triangle at Rhodes。原作は「砂にかかれた三角形」『死人の鏡』所収。脚色スティーフェン・ウェイクラム、台本助言クライヴ・エクストン。演出レニー・ライ。制作総指揮マイク・オクスレイ、撮影監督ピーター。

 イタリア領ロードス島に避暑に来たポワロは、バンズ少佐(ティモシー・キングスリー、声は大木民夫)に追いかけられ、逃げているパメラ・ライル(フランセス・ロウ、声は高島雅羅)と知り合います。他の宿泊客のなかで、ひときわ二人の目を引いたのは、美貌と富を享受するヴァレンタィン・チャントリー(アニー・ランバート。声は藤田淑子)と5番目の夫トニー(ジョン・カートライト。声は千田光男)、英国から来たダグラス・ゴールド(ピーター・セッテレン。声は中尾隆聖)と離婚は認めないというマージョリー(アンジェラ・ダウン。声は榊原良子)でした。ヴァレンタインに魅かれるダグラス、いらいらするトニー、耐える女マージョリーという関係を見て、パメラが砂の上に三角形を書いてみせます。一触即発のような関係で、パメラがみんなをピクニック誘った頃がいちばんピーク、その後、仲直りしたようですっかりみんな仲良くなります。ポワロもイギリスへ帰る日、トニーが飲むはずだったピンク・ジンをヴァレンタインが飲んで毒によって死んでしまいます。ジンをトニーに渡したしたダグラスに疑いがかかります。現地の警部(アル・フィオレンティ。声は峰恵研)は早々と犯人と決め付けているようです。ポアロはベルギー人のため、スパイ容疑がかけられ乗船できませんでした。パメラが事件を知らせて、二人は見知らぬ町でツノマムシの牙から取った毒デリテリオ・オキアスを買った者を探し回ります。ようやく見つけた盲目の老婆から毒を買ったのは・・・。時代はイタリアの黒シャツ党が勢力を伸ばし、海岸線の警戒を怠らない頃です。ヘィスティングスやレモン、ジャップ警部などお馴染みの相棒が登場しません。代わりを務めるのが、パメラ夫人と隠密に海岸線を捜査していたバンズ少佐。

   映画俳句 「三角形 一辺を清算する ツノマムシ」飛蜘
2008年8月3日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

4階の部屋



英国LWC
52分
英国1989年2月5日放映
  第5話 4階の部屋 The Third Floor Flat。原作は「四階のフラット」『愛の探偵たち』所収。脚色マイケル・ベイカー、台本助言クライヴ・エクストン。演出エドワード・ベネット。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督イヴァン・ストラスバーグ。

 引越し荷物を運ぶ人夫、36Bに運び込む。ポワロは風邪を引いて苦しんでいます。引越してきたばかりの36Bの若い女アーネスティン・グラント(ジョシー・ローレンス。声は宗形智子)は1階上でダンスをしてうるさいミス・パトリシア・マシューズ(スザンヌ・バーデン、声は小山芙美)に会いたいと手紙をドアの下から差し込む。ポワロはヘイスティングスに“ポワロさんでも解けない”推理劇に誘われます。劇場でポワロは1階下のパトリシアを見かけます。劇の犯人をポワロは執事と推理しますが、最後に新しい人間関係が警部によって明らかにされて犯人は別の人物に決まり、ポワロはアンフェアな劇だったと脚本家を非難します。ほぼ一緒に帰宅したパットとミルドレッド(アマンダ・エルェス。声は島本須美)、ドノヴァン(ニコラス・プリッチャード、声は神谷明)、ジミー(ロバート・マインズ。声は大塚芳忠)は部屋に入ろうとしましたが、鍵が行方不明。パトリシアはリフトを利用すれば部屋に入れると言って、男たち二人がリフトで部屋に入ることになります。ところが、1階分間違えてしまい、彼らはグラント嬢の部屋に入ってしまいます。そこで撃たれたアマンダの死体を見つけてしまいました。現場には6時に会おうという手紙やJFの頭文字の入ったハンカチが落ちています。警察はこの証拠から、ジョン・フレイザーを指名手配しますが・・・
 ポワロがパトリシアの作った夜食を食べながら、パットに「あなたとそっくりの恋人がいましたが、料理が下手で別れました」と話します。ヘィスティングズの愛車が最後に衝突で壊されて彼は落胆します。他のキャストにグラントのお手伝いさん・トロッター夫人(スーザン・ポレット)。

   映画俳句 「ドタン場で 明らかになる 関係が」飛蜘
2008年8月1日

DVD ハピネットピクチャーズ
名探偵ポワロ

24羽の黒つぐみ



英国LWC
52分
英国1989年1月29日放映
 第4話 24羽の黒つぐみ Four and Twenty Blackbirds。原作は「二十四羽の黒つぐみ」『クリスマス・プディングの冒険』所収。脚色ラッセル・マレー、スクリプト・アドバイザー(台本助言)はクライヴ・エクストン、演出レニー・ライ。

 病院で危篤の老人アントニーがいます。家政婦で看護士のヒル夫人(ヒラリー・メイソン。声は中村紀子)から病状を知らされた甥のロリマー(リチャード・ハワード。声は納谷六朗)は都合がつかないと日曜日に行くと答えます。ポワロは、歯科医の友人とビショップ・レストランに行き、女給モリーから、アントニーの双子の兄弟、画家ヘンリー・ガスコインの注文品が変わったことを聞きます。そのヘンリーが階段から落ちて首を折り死亡、ポワロは事故ではなく、殺人だと主張します。
 警視庁に科学捜査局が新設されましたが、被害者のポケットの手紙から死亡日時は土曜日6月15日と判断されました。アントニーも先週の金曜日に亡くなっていました。アントニーの亡き妻シャルロットはヘンリーの絵のモデルでしたが、アントニーが奪った形となり、それ以降二人は絶交状態だったと言います。アントニーの遺言は無く、ヒル夫人には一文も残されず、遺産はすべてヘンリーに行き、ヘンリーが亡くなった時点で甥に行く結果になったようです。ポワロはヘンリーの殺人犯が変装してレストランに出現した証拠を固めます。
 ヘンリーの油絵は出回っておらず、亡くなった後では高値がつきます。標題の黒つぐみはマザーグースの一節、“24羽の黒つぐみ、焼かれてパイのなか”。ヘンリーは最後のディナーに黒イチゴのケーキを食べていました。黒イチゴを食べれば歯が黒くなるはずなのに、ヘンリーの死体の歯は白いままでした。
 画家のモデルのダルシー(ホリー・デ・ジョン。声は増山江威子)、絵画l商メイキンソン(クリフォード・ローズ)、芸人トミー(トニー・エイトキン)とスタッジ(チャールズ・ペンバートン)、劇場支配人アシスタントのハリー・クラーク(ジォフェリー・ラルダー)

   映画俳句 「ひげもじゃの 画家の嗜好が 逆転し」飛蜘
2008年8月1日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ジョニー・ウェイバリー誘拐事件



英国LWC
52分
英国1989年1月22日放映
 第3話 ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 The Adventure of Johnnie Wavely 。原作は「ジョニー・ウェイヴァリーの冒険」『愛の探偵たち』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出レニー・ライ。制作総指揮マイク・オクスレィに変わる、撮影監督ピーター・ジェソップ、音楽・第一製作者は変更なし。

 大邸宅でウェイバリー夫妻(ジオフェリー・ベイトマン、声は樋浦勉。ジュリア・チェンバース、声は一柳みる)が「このイギリスで誘拐なんて」と言い争っています。ポワロのもとへウェイバリーが息子ジョニー(ドミニック・ロージャー)を誘拐するという予告手紙を持参します。警察はいたづらと判断。ポワロが雇われて警戒に当たります。大きなお屋敷は補修が途中で中断しており、先祖伝来の土地も屋敷も経済的に行き詰っているようです。誘拐予告メモは予告日当日にも昼12時を指定時刻に届き、怒った主人は奉公人を全員解雇すると宣言、ポワロは目が少なくなるばかりだからと注意しますが、主人は言うことを聞きません。ジャップ警部に率いられた警察が張り込みます。ポワロはヘイスティングスと車で町へ出かけ、改修業者に館の苦しい状況を聞きますが、帰宅途中で車が故障し、昼の12時までには戻れなくなります。
 居間の時計が12時を打つと男(ロバート・プット。声は宮内幸平)が捕らえられます。脅迫状を持っていましたが、見知らぬ男に依頼されたのだと言い訳します。この騒ぎをよそにジョニーが車で連れ去られてしまいます。居間の時計は10分進めてあったのです。
 警察はロンドンに帰りますが、ポワロはちっともあわてません。真相が分かっているようです。犯人の見当と事件の様子は途中でほぼ付きます。他のキャストは執事トレッドウェル(パトリック・ジョーダン。声は上田敏也)、ジョニーの乳母ジェシー・ウィザーズ(キャロル・フレイザー。声は吉田理保子)、婦長ミス・コリンズ(サンドラ・フリーマン。声は前田敏子)、ポワロたちが昼食を取ったバーのメイド(サマンサ・ベッキンセール)

   映画俳句 「誘拐の 危険を知るも 無防備に」飛蜘
2008年8月1日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

ミューズ街の殺人



英国LWT
52分
英国1989年1月15日放映
 第2話 ミューズ街の殺人 Murder in the Mews。原作は「厩舎街の殺人」『死人の鏡』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出エドワード・ベネット。

 11月5日に花火を打ち上げる行事があります。その夜、ミューズ街でアレン夫人が自殺していました。左手に拳銃を持ち、左のこめかみを撃っていました。同居人の写真家ジェイン(ジュリエット・モール。声は鈴木弘子)が発見します。夫人はウェスト下院議員(ディヴィッド・イーランド。声は小川真司)が婚約していました。証人たちが言うには、アレン夫人は左利きではなかったそうです。ジャップ警部は殺人事件と断定します。事件当夜、夫人のところにインド時代の友人ユースタス少佐(ジェイムズ・フォークナー)が訪れていたことが分かります。夫人が引き出していた200ポンドが見つかりません。ユースタス少佐は事件現場にカフスボタンを落としていたため、殺人の容疑者として逮捕されます。一方、ポワロはピアス夫人(ガブリエレ・ブラント)に頼んで事件の部屋を再調査します。ポワロはある事を確認に来たのでした。ゴルフに出かけたというジェインの後を追って、ゴルフ場に行ったポワロは物陰からジェインの行動を観察します。ジェインはコースを回りながら、ゴルフクラブを捨て、書類ケースを捨てているのでした。奇妙な行動はいったい何を意味するものでしょうか。

   映画俳句 「次々と 証拠を棄てる 同居人」飛蜘
2008年8月1日

DVD ハピネット・ピクチャーズ
名探偵ポワロ

コックを探せ



英国LWT
52分

英国1989年1月8日放映
 Agatha Curistie’s Poirot としてロンドン・ウィークエンド・テレヴィジョンが制作放送。制作総指揮ロブ・ハリス、撮影監督イヴァン・ストラスバーグ、音楽クリストファー・ガンニング、第一製作者はニック・エリオットとリンダ・アグラン、製作者はブライアン・イーストマン。配役のレギュラー・メンバーとして、ポワロをディヴィッド・スーシェ(声は熊倉一雄)、友人ヘイスティングス大尉をヒュー・フレーザー(声は富山敬)、ジャップ警部をフィリップ・ジャクソン(声は坂口芳貞)、ミス・レモンをポーリン・モラン(声は翠準子)が演じている。日本語版台本は宇津木道子、演出は山田悦司。

 第1話 コックを探せ The Adventure of the Clapham Cook。原作は「料理人の失踪」『教会で死んだ男』所収。脚色クライヴ・エクストン、演出エドワード・ベネット。

 男が大きな衣装箱を紐で縛っている。手をすべらせて花瓶を割る。あわてているようだ。
 ポワロのもとにトッド夫人(ブリジット・フォ-サイス。声は此島愛子)がコックのイライザ・ダンを探してくれと依頼。いったんは断ったものの、腕のいいコックを無くすのは貴婦人の真珠を無くすのと同じという夫人の意見でポワロはこの“つまらない事件”の調査を開始します。小間使いのアニー(キャティ・マーフィ。声は佐久間レイ)は奴隷商人に連れ去られたという推理を語り、夫のトッド氏(アントニー・キャリック。声は北村弘一)は慇懃無礼、隣室のシンプソン氏(デルモット・クロウリー。声は安原義人)は煮え切らない答え。その翌日、トッド氏からポワロ宛てに調査断りの手紙が来て、1ギニーの調査料が同封されています。ポワロは烈火の如く怒り、絶対に手を引かぬ、調査料ゼロで真相を突き止めると宣言、ポワロのプライドが鮮烈に印象づけられます。
 ポワロはイライザ宛てに遺産の情報を求む広告を新聞に出します。失踪の日に銀行員ディヴィスが有価証券を持ち逃げして行方不明になっていました。イライザ(フレダ・ドウィー。声は藤夏子)はほとんど人も住まない田舎ケズウィックに遺産で貰ったという家に住んでいました。休みの当日に弁護士クロチェットという男から自分宛の遺産の話を聞き、条件に奉公人であってはならないと言われたので、コックを辞めて引っ越してきたのだと話します。トランクに荷物を詰めてもらったはずなのに、紙包みで届いたとも言います。さて、トランクはいったいどうなったのでしょうか。ポワロはこの事件から“どんな些細な事件もみくびるなかれ”という教訓を得ます。

   映画俳句 「隣人の 古いトランク 使いみち」飛蜘
 
[参考図書]
 数藤康雄(編)『アガサ・クリスティー百科事典』(早川文庫,2004年)
 早川書房編集部『アガサ・クリスティー99の謎』(早川文庫,2004年)


シェイクスピア作品の映画化やその関連の映画は除く。
それらは別ファイルになっている。→ 『シェイクスピアの劇と映画


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