東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)

2011年3月11日 発生

池田博明 2011年3月12日-4月12日  記録

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 ここに記録したのは震災後1ケ月間の時々刻々の記録である。その後の展開を考察するときに役立つ。例えば2011年5月23日には、原発への海水注入が首相判断で中止されたかどうか、原子力安全委員会の斑目委員長の言葉などがまことしやかに国会やマスコミで取り上げられているが、それらの議論が枝葉末節であることが分かる。
 当時の記録を注意深く見れば、マスコミに登場した日本の原子力の専門家という人で事態を正しく把握、予測していたひとは誰もいなかった東電側も何が起こっているのか、次に何が起こるのかが理解できていなかった。当然である。メルトダウンしているかもしれない原発に誰も近づけなかったし、計器類も作動していなかったのだから。
 海水注入という判断でさえ、3月11日の電源停止時点では誰も言及していなかった。建屋の水素爆発さえ予測されていなかった。反原発派の2006年発行、古長谷稔『放射能で首都圏消滅』(三五館)に第3期として水素爆発の危険が指摘されている(炉心溶融の前でも起こる!)にもかかわらず。この本の著者は原子力の専門家ではない。素人ですよ!

 原子力安全委員会という組織は当初まったく表面に出て来なかった(頻繁に登場した原子力保安院はまったく別の組織)が、12日に安全委員会の斑目委員長は「海水注入による再臨界の危険性はゼロではない」と言ったのを、細野首相補佐官が「再臨界の危険性がある」と取り違えたのが悪いというマスコミの論調は愚かにもほどがある。細野は素人同然だと批判されているが、官邸筋が素人なのは当然であって、いまさら批判されることではない。私は政府を弁護する意図ではなく、科学の専門家というひとびとがいかに素人相手に話すことに慣れていないかということを指摘しているのである。「危険性はゼロではない」ということと、「危険性がある」ということは、素人には同じである。専門家は科学的に正確な発言で責任逃れを図ることが多いが、素人相手に曖昧なことを言ってはならないのだ。
 海水注入を55分間中断したのが悪いように言うマスコミもどうかしている。後知恵ではないか。55分の中断が重大な影響を与えたとは思えない。既に炉心溶融は起こっており、建屋の水素爆発も起こった後である。
 もっと早く12日朝から手作業で水を注入していれば爆発事故を防げたと発言した専門家も当時いたが、いったい誰がそれをするのか。そんな特攻的作業を誰もできるはずがない。自分が危険な作業をする立場でない人間だから言える言葉である。「臨界はありえない」と専門家が断言し始めたのは13日になってからである。この13日夜の時点でも海水注入の意義を専門家は強調できていなかった。
 14日午前にも別の3号機で水素爆発が起こる。みんな右往左往していただけだったのである。そして、ついに使用済み燃料プールで次々に火災も起こった。これまた誰も予測できていなかった。当初、使用済み燃料のほうは心配ないと解説されていたのだ。後になって使用済み燃料の方が保管施設が脆弱なため実際には怖いという説明になった(こっちの説明のほうが正しい)。NHKのニュースで12日に原子力保安院の職員が事態がさっぱりわからないと非難する記者に向かって、「俺たちだって東電と政府の中継ぎをしているだけだ。(何もわからないんだ)」と発言したのが流れてしまったが、ことの本質はこんな些細なところに現れる。(池田。2011年5月25日記) 

 原子力安全委員会の斑目春樹委員長(委員による互選で昨年4月から委員長)の専門は流体・熱工学であって、原子力工学ではない。原子力安全委員会の会議は震災当日の午後4時から、 たった5分間で終了している。公表された議事録によれば「委員会のたち上げを行った」だけ。3号機が水素爆発した直後も4時間半後に開始されてやはり5分間で終わっている 。この際にも線量限度の告示の決定だけ。しかも内容は保安院から説明を受けただけだ。3月17日も5分で終了!この委員5人は,班目春樹;東京大学大学院工学系研究科教授,久木田豊;名古屋大学大学院工学研究科教授,久住静代;(財)放射線影響協会放射線疫学調査センター審議役,小山田修;(独)日本原子力研究開発機構原子力科学研究所所長,代谷誠治;京都大学原子炉実験所長。委員たちは広島や名古屋,京都から駆け付けてそれぞれたった5分間の議論をしたのだろうか。議事録には出席者が書いていない(その後、斑目委員長から「歩いて来れる人だけが参集した」と報じられた。つまり、委員長だけだったということである)。委員の年間報酬はひとり1700万円ほどだ。私達はこんなひとびとに多額の給与を払っているのである。

 追記:海水注入は首相の許可を得ていないという官邸の雰囲気(首相も側近も中止を指示などしていないと証言)を官邸にいる東電関係者が伝えてきて、東電側がテレビ電話などで検討していったん海水注入を中止するよう指示したのだという報道だったが、2011年5月26日になって東京電力は実際には海水注入を中断していなかったと発表した。現場をとりしきる吉田所長の判断で注入を続けていたというのだ。なぜ吉田所長は聞き取りの時点でそのことを言わなかったのかという疑問が投げかけられている。疑問でもなんでもない。上司の注入中断という判断を吉田所長は無視したのである。現場の技術者として上司の判断が誤まっていると考えたからである。所長はIAEAの査察も行われる事態になったため、正確な事実を報告したほうがためになると思ったと答えている。東電は所長の処分を検討していると伝えられた。「週刊現代」では、従来から東電でまともな対応をしているのは現場で陣頭指揮を取っている吉田所長だけだ、あとの関係者は無能と切り捨てていた。結果的に正しい判断をした所長を処分するという会社の体質は間違っているのではないか。マスコミもきっちり所長を擁護すべきではないか。ツィッターでは所長を切り捨てるのは問題だとする声が「燃え上がった」。

 2014年2月7日付け読売新聞の記事を右に挙げた。原発事故がいかに大きな影響をもたらすもので、その対策や原発の管理が人智で対処し難い問題であるかを如実に示している(2014年2月7日記。

 震災後一年ほどは反原発の意見や本が多く出版されたが、翌2012年の2月ころから原発推進派の巻き返し本の出版が始まった。新書サイズで結構出始めたのである。論調の多くは反原発はエネルギーの現実を見ない非現実的な意見であるというもの。小出氏の本や人物を批判するものなど、かなり低レベルのものもある。
 ちなみに、これまで反原発派が勢力を得たことなど、一度もないのである。誤解してはいけません。過去も現在も原発推進派が圧倒的に多数派なのである。この構図はタバコ産業や公害企業が攻撃されたときにそっくりである。『世界を騙し続ける科学者たち』で指摘されているように、反・反原発を主張することで、原発に関する科学的見解が未確定であるかのように見せかけて解決を引き伸ばす作戦なのである。
 再確認しておくが、誰がなんといおうと、原発は廃棄物処理の一点からしてもコストに見合わないシステムであることと、低レベルの放射線のゆっくりと起こる障害に関しては悪影響を受けることは明らかなのである。
(2012年3月5日,池田記)
 事故調査委員会の報告書やマスコミの報道も事実と異なる批判や見当ちがいの見解が多い。そんななか、福山哲郎『原発危機 官邸からの証言』(ちくま新書)が2012年8月に出版された。震災当時、官房副長官だった福山ノートに基づく事故対応の記録である。
 この本の記述で私がここに記録し、推測したことがほとんど正しかったことを確認した。
(2012年10月16日 池田記)
 門田隆将『死の淵を見た男』(PHP,2012年12月)は吉田昌郎所長ほか現場の人々の決死の努力を記録している(2012年12月16日 池田記)。
  スターングラス博士の見解 放射能の被害症例は糖尿病である

 ストロンチウム90からできるのが、イットリウム90だ。これは骨じゃなくて、膵臓に集中する。 膵臓というのは、糖尿をおさえるホルモンであるインスリンを分泌しているから、ここに異常が出ると糖尿病になる。
  世界中で、糖尿病が急増しているのは知ってるね。 日本は、すでに人口の割合から言えば、アメリカの(糖尿病になっている人の)2倍もいる。そのアメリカだって、イギリスより発症率が高いのだ。 日本では、戦後から現在にかけて、膵臓がんが12倍にもふくれあがっている。 50年代の終わりにドイツの動物実験で発見されたのが、ストロンチウム90が電子を放出してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動するのだが、膵臓に最も高い集中見られたということだ。 膵臓からインスリンがうまく生産されないようになると、血糖値が上がって糖尿病になってしまうのだ。
  今までは放射能が糖尿病と繋がっているなんてまったく認知されていないのだ。 これで分かっただろう、国際放射線防護委員会(ICRP)は、当初、放射能の影響として、特定のがんと奇形児くらいしか認めなかった。 未熟児、乳児の死亡や、肺、心臓、膵臓、これらの部位への影響はすべて無視されてきたのだ。
  (※彼の本の邦訳版『人間と環境への低レベル放射能の脅威─福島原発放射能汚染を考えるために』が出ています)2015/12/29


「福島原発の放射能を理解する」http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.htmlカリフォルニア大学のモンリオール氏による講演のスライド
(素粒子原子核分野の研究者グループ)(事故後世界的な専門家がわかりやすく公開)

欧州放射線リスク委員会報告 翻訳
市民レベルでの全国放射線測定値(R−DANによる)
原発情報に関する有志によるブログ および3月16日までのScience Media Center情報発信pdfファイル  
原子力情報室の外国特派員協会での記者会見(15日動画)1時間40分   その解説内容を文書で提供(WORD)
朝まで生テレビ 2011年4月30日 徹底討論
Windows Media Playerで「TSUNAMI(津波)が襲う」動画(15MB)
NHKニュース「動画」(津波・地震・避難・被災者・救援)    NHKニュース(原発関連最新情報)
津波マップ(津波の高さを決めてどこまで浸水するかが世界規模でシュミレートできる)
被災・避難の状況写真報告pdf(津波に襲われていない地域の大学) 被災者より必要なことの例pdf
  3月12日(土)の紙面見出し

  ▼輪転機が壊れた
  「石巻日日新聞」
  手書きの壁新聞
  が25日の読売紙面
  に載っていた。
  現地の状況を伝える
  紙面なので該当日
  のところに掲載

3月11日(金)、14時46分、地震が起きた。神奈川県大井町では弱い横揺れが1分くらい続き、その後震度4から5くらいの揺れが2分近く。少しずつ引いていった。東海地震が来たかと思ったが、震度はそれほどでもなく、初期微動が長いから震源は遠かった。余震も自分がめまいを起したのかなと勘違いする程度。ところが、震源地に近い地域では状況はまったく異なった。マグニチュードは最初は7.4と報道された。1時間後には8.4、夜には8.8となった。マグニチュードが1ランク上がるとエネルギーは約32倍上がる。マグニチュード8.8は観測史上最大である。1時間半後、国道255号線は小田原市成田付近で水道管が断裂、道路に水があふれた。渋滞が始まる。ラジオでは震源は三陸沖、岩手県・宮城県・福島県の被害情報が出始め、東北の太平洋岸に津波が繰り返し襲ってくる危険を報じていた。神奈川県西部は停電しなかったので情報はテレビでも見られた。津波が市街地を飲み込んでいく映像が繰り返し報道された。
 首都圏も鉄道が運転中止となった。

 私は次のことを実感した

 停電が「情報難民」
 を産む


以下、は池田個人の記録・感想

枝野官房長官が気象庁が「東北地方太平洋沖を震源とする地震」と命名したと言う。翌日の報道では「東北地方太平洋沖地震」となり、読売新聞紙上では「東日本巨大地震」と名付けられていた。死者・行方不明者多数。
 山形の実家に電話しても東北地方への電話は回線が混んでいてつながらないし、そのうち施設が故障となり通信不能となった。
地震当日は中部地方を
除き
全国的に晴れ。
2011年3月11日
(金曜日)
読売新聞朝刊の
各地の天気予報

(ここだけ翌12日の
紙面では
ありません。
前日11日のものです)

震災地域では電力が停まった。停電したのである。なにもかもが電力に依存している生活なので、震災地域には情報が届かなくなる。地域の無線も電気が無いから使えない。
 「危険だから、ああしろ、こうしろ」と行政がアドバイスするのだが、それがもっとも危険を知らせる必要がある地域の人々には届かないのである。つまり、停電した地域の人々は情報難民となるのだ。
 携帯電話は回線が混んで通じない(これは前の地震のときもそうだった。地震の際にはつながらないというのは高校での地震訓練でも繰り返し生徒に教えて来たことである。どうするか? 緊急回線を使う。あるいは携帯電話からアクセスできるインターネットの安否確認サイトを使う(ただし情報発信側と受信側があらかじめそのサイトに関する知識を共有している必要がある)。

 停電になって今回、困った施設のひとつが、原子力発電所だった。炉心を冷却する水を供給する装置が停電で動かなくなったのだ。
 緊急補助電源を用意していなかったのだ。「想定外の地震でバックアップ体勢に問題が生じた」というのが東京電力側の説明だが。
 バッテリーを確保中などという報道がされ、専門家が「あわてる必要はありません」などと言明するが、翌12日朝には、福島第一原子力発電所の半径10kmの住民には避難勧告が出る。第二原発でも炉心が冷却できない状態だという。
 やはり原子力発電はアブナイのではないかと不安を感じたひとも多いことだろう。

 ちなみに私は、原子力発電は放射性廃棄物をクリーンにすることができないため、処理コストと安全上のリスク対策を考えると経済的にひき合わない発電であるという認識であり、この考えに異議をさしはさむ専門家はいませんとだけ言っておく。
 すでに1978年に伊東光晴が中高校生向けのちくま少年図書館『君たちの生きる社会』で取り上げているのだ。一部をpdfで紹介しておく。
 2009年10月にNHK特集で「原発解体」問題を取り上げている。
 2016年1月25日にNHKクローズアップ現代「“廃炉時代”到来 積み残された課題」では、廃炉で出る低レベル廃棄物(L3)処理でさえ、処理を排出者責任とする現況ではもはや処分が不可能な状況であることを伝えていた。日本政府は無策のまま建設を進めてきた実態が明らかである。

 追記:ディーゼル電源用の燃料である軽油タンクが津波により根こそぎ持っていかれた。電源車(100/200V)が51台も来たが、電圧が適合するものが1台も無かった。原子炉はゼネラル・エレクトリック設計のもので電圧が440Vと6000Vという特殊な電圧をデファクトしていたからである(大前研一『日本復興計画』より)。

上追加資料は,小出裕章『隠される原子力・核の真実―
原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社)より

▼3月12日(土)15:36 福島第一原発1号機で爆発があった。それを受けて政府の要請により福島県は避難指示を半径20kmに拡大。原子力安全保安院が15:20ごろに炉心溶融が起こったと発表(20:40ころ、これは否定された)。
 追記:2011年5月15日(日)東京電力は1号機でメルトダウンが起こったと推定される日時を発表した。メルトダウンが起こったことは5月14日に発表されていた。発表によると,3月11日の19:30には燃料棒の損傷が始まり,一気に燃料棒が融けて,16時間後,12日の7時に炉心の底に溜まったとみられるとのことだ。原子力安全保安院の12日当時の炉心溶融が起こったという発表は正しかったことになる。その後否定されたが、この否定のほうが間違っていたわけだ。

 20:00NHKニュースのなかで、原子力工学の関村直人東大教授は第一号機は非常用電源が故障したため炉心の温度が上がったと説明したが、それはもうニュースで何度も伝えられていることで、関村教授はなんら有用なコメントを言わなかった。自衛隊が応援に出ているなどと話していたが、自衛隊員は特攻隊員ではないのだから、危険な炉心に近づくわけがない。炉心が溶融して臨界事故の恐れがあったら、誰も接近できないはずだ。科学文化部記者の山崎淑行氏も矛盾する説明をする。避難指示地域の人は外に出ないでください、移動するときは水で濡らしたハンカチで口や鼻をおおって下さい、皮膚を露出しないようになどという。住民はそんなに危険なのかと不安になっただろう。結局、スリーマイル島の原発事故があったにもかかわらず、原子力の専門家という人々が、事故を想定していなかったことが、この一日目で全国的に明らかになってしまった。20:30から管総理の記者会見、枝野官房長官の説明があったが、その際に枝野氏は危険はないと強調していたにも関わらず、山崎記者はその後も同じ助言を繰り返していた。これは東電側の説明を信用していないということだ。
▼宮城県気仙沼市、南三陸町で発行されている『三陸新報』(1946年創刊、現在1万9000部発行)。高台にあった社屋は被災を免れたが、 停電と故障で輪転機が動かなくなってしまった。そこで、クルマのバッテリーと社内のプリンターを繋いで、津波翌朝に号外300部を印刷、 社員総出で避難所に配ったという。その後も、読者が一番知りたい安否情報を提供するため、被災者名簿を掲載し続けた。

 USAのNRC議事録抜粋


▼3月12日(土) 津波が来たときの釜石市内の様子が直前に高台に逃げたNHKのカメラマンの映像で放映された。コメントは記者の徳田氏。
 15:14、地震発生から約30分後、沖の方から津波が白波を立ててやって来た。男の子の声が「津波だ。津波が来た」と言う。
 15:21、津波が市内へ入って来た。記者「スゴイです。釜石の市街が土煙りにおおわれています」
 15:23、「浜町付近です。水門を超えて水が市内に流れこんでいます。浜町は水びたしになっています」
 高台で市民は茫然としている。子供は「どこに逃げたらいいの」と恐れおののいている。
▼3月12日(土) 18:30 1分ほど遅れて管直人総理の記者会見、総理の論点は(1)人命救出に全力をあげる、自衛隊は既に5万人体勢で支援に当たっているが、さらなる動員を防衛大臣に要請した、(2)避難民の生活への対応、(3)原発周辺住民への対応。そして復興策に命がけで取り組むと言明。

 次いで枝野幹事長が福島第一原発1号機の事故を東電側の報告をもとに行った(これ以降も枝野氏の会見内容は東電側の報告をもとに行われている。 枝野氏はそのことを最初に必ず断っている。東電側が事態を正しく把握できていなかったことは後に明らかになった)。15:36の爆発は炉心の格納容器(鋼鉄製)とその外側のコンクリートと鉄筋でつくられたタテヤの間に生じた水素ガスによる爆発で、炉心の格納容器の爆発ではない。
 炉心の水不足により生じた蒸気圧が建屋(たてや)に満ち、それが水素に変わった。そこへ酸素ガスが混入して爆発したものだ。格納容器内には酸素は無いため爆発する心配は無い。

 放射性物質が大量に出るものではない。放射性物質のモニタリングでも爆発前後で放射能値は増えてはいない。むしろ減っている。
 15:29  1015 マイクロシーベルト/時 (爆発前)
 15:40   860               (爆発後)
 18:58    70. 5 

 その他の炉心の安全対策として14:00に圧力を逃がす措置が行われ、爆発後は放射線量はむしろ低下している。外部の漏れには変化はない。
 今後、対策として容器を海水で満たす措置を検討し、ホウ酸も用いて行うことで危険を回避することで、保安院も措置は妥当と結論し、20:20に着手した。避難指示は万一の場合に備えての対応である。今回の措置により危険が生ずるものではないが、念のため万全を期した。

▼福島第一原発2号機の半径10km以内の住民にも避難指示が出された。原子力保安院と原子力安全委員は違う組織だったのか(26日に読売新聞に解説があったので添付した。今回、原子力安全委員会は機能していない)。昨日11日の時点で関村教授は海水注入という対策措置をなぜコメント、ないしは助言できなかったのだろうか。
 追記(2011年5月24日):「今回、原子力安全委員会は機能していない」と書いたがマスコミにまったく登場しなかったものの官邸筋では あれこれ助言していたことが5月末に明らかになった。しかし、どの助言も見当はずれだった。会議が5分で終了していること、 会議は内容の無い形式的なものだったことから、委員会の検討を経た意見ではなく、斑目委員長の個人的な希望的観測を述べていたものと判断できる。(その後、斑目委員長から「歩いて来れる人だけが参集した」と報じられた。つまり、委員長だけだったということである。)
 また、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質の広がりについて、「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」を用いて結果を文部科学省は予測していた。予測は5月3日まで非公開とされていた。これらの結果は、あくまでも想定だが、具体的な放射性物質の拡散の様子がわかるものだ。迅速に公表していれば、避難方法の検討などに役立っていた可能性がある。
 文部科学省は、地震翌日の3月12日から同16日までに行った38件について公開した。12日午前2時48分には、1号機の格納容器の圧力が異常上昇したことを受け、放出された場合の24時間後までの影響を見積もっていた。
 同日午後6時4分には1号機の水素爆発を受けた計算もしていた。
 また、経済産業省原子力安全・保安院は地震のあった11日の夜から15日にかけて42件の計算をしていた。
 政府は5月3日夜から、順次ホームページ上で公開し始めた、


3月12日(土)、20:40ごろ、山形県全域が停電していたが、天童市は復旧した。実家の父親と電話がつながった。地震直後から停電したため、昨日のうちにスーパーから乾電池、懐中電灯、ラジオ、生鮮食品、カセットコンロなどが売り切れたという。冷蔵庫が使えなくなるため生鮮食品はアッという間に無くなったという。山形の老父は被災地に支援で回るため一般の人に回ってくるのが後になると予想していた。ガソリン・スタンドも電気が来ないから閉店していたという。
 23:00 24時間のマックス・バリューのスーパーに行くと、神奈川県西部が被災したわけではないが、カップ麺やパン、レトルトごはん、牛乳などは棚に無かった。野菜などもあまりなくなっており、鮮魚や納豆も東北・北海道のものは無かった。お惣菜も生産拠点が被災地にあるため、ほとんどなくなっていた。
 ← USAのNRC議事録抜粋


3月13日(日) 記録

3月13日(日)
▼昨日の報道では、避難したひとの被ばく状況を抽出で調べたところ、爆発後に被ばくしていることが分かったと言う、

ただちに人体に影響を与えるレベルではないということだが、放射能漏れしているのだ。ちなみに、微弱な放射線が健康に与える影響はよく分かっていないと思う。

▼読売新聞は社説で、枝野官房長官が事故から2時間で公式に認めた、5時間余りたってから正式発表では遅すぎると批判した。原子力保安体制の遅れが露呈して原発活用が危うくなることへの危機感を表明している。

この論調はもちろん読売が原発推進派だからである。しかし、昨日12日の記者会見で読売の記者は枝野長官に「避難指示範囲を拡大したのは無要の措置ではないか」と質問していた。社説を書くひとと記者クラブの記者は同じひとではないだろうから、見解が異なってもいいわけだが、終始一貫するならば、むしろ「避難指示は遅すぎたのではないか」と質問すべきだったろう。

 紙面には大阪大学名誉教授・宮崎慶次氏(原子力工学)の、爆発は「たいへん深刻な事故だ。今回の事故は、故障した非常用電源をバックアップする作業にこだわりすぎた感がある。12日朝から始めた、仮設消防ポンプで水を注入し、原子炉の温度を下げる作業をもっと早くしていれば、防げた事故だと思う」とのコメントがある。記者は専門家の意見に弱いため、この見解には何も意見がついていないが、本当にこんな発言だったとしたら、これまたずいぶん奇妙なものである。
 冷却水を注入することが停電で出来なくなったという報道で、まず素人が考えるのはそんなら手作業で水を入れればいいじゃないかということだ。しかし、それが出来れば、やっている。いったい誰がそんな特攻隊的作業をするのだろうか。結局、機械が停止したならば、どんな危険な作業も人間がやるしかないのである。だとすれば作業について安全だと確信が持てない状況で作業に着手できるはずがない。学者のなかには無責任なことをいう人がいるが、原子力工学の専門家というひとのレベルが分かった感がある。平時に災害を想定しておかなければならないはずである。

 津波のシミュレーションもされた。第一波は10分後、大津波は30分後に来て、地形の複雑さから10メートル以上にもなった可能性がある等と分析されたが、被災者が被災後にそんな分析を聞いてもハラが立つだけである。そんな分析が可能なら、なぜ事故が起きる前にシミュレーションしてくれなかったのかと。後知恵はいくらでも可能だ。

追記:水素が溜まるのは想定できたことだ。なぜもっと有効に水素を逃がす手立てが講じられなかったか。現場の放射線レベルが高過ぎて、本来は電動のバルブを手動で開くことが出来なかったのかもしれない。決死隊が身を挺して開くべきだったと言えば、それは酷に過ぎるというものだろう(大前研一『日本復興計画』より)。


宇宙開発や原子力などよりも、海底研究や地震対策に優先的に資金を使うべきだと私は思う。


3月13日(日) 記録

▼3月13日(日)12:58 気象庁の記者会見でマグニチュードを9.0と修正。3回の巨大地震が連続して起こったと説明。断層面積が広いため余震が多いと予想されるとのこと。
 NHKでは「東北関東大震災」と称している。南三陸町では住民の半数と連絡が取れていない(その後15日に2000人は無事、8000人は行方不明と判明した)。陸前高田では2万3千人の町民のうち8千人と連絡が取れていないという。
 福島第一発電所3号機でも、水素爆発が懸念される事態が生じている。
 20:30 総理の記者会見は、(1)電力供給がきびしい状況が想定されるため明日15日から計画停電=輪番停電を行う、(2)被災地への食料搬送、(3)3号機の不具合状況といった内容だった。枝野官房長官が3号機の説明を行い、海江田万里経済産業大臣が計画停電について説明した(こちらは内容が無かった)。

「NHK特別番組 緊急報告 東北関東大地震」。リアス式の三陸海岸は決して津波防災を看過していたわけではなく、たとえば宮古市の田老地区では昭和8年3月3日の津波被害やその後も583戸の住宅のうち500戸が倒壊するといった津波被害を受け、昭和9年に防潮堤を設置。現在は高さ10mの防潮堤を備えていた。今回の津波はその防潮堤を乗り越えてやって来た。想定を超える大津波だったのだ。

 東京大学地震研究所の古村孝之教授によれば、今回の地震は5分以上長く強い揺れが続いた。阪神淡路大地震のときは震度7の揺れが15秒続いただけだった。太平洋プレートの沈みこみに対して、乗っているプレートがはね返り、そのプレートの上の波が持ち上げられたのだ。それが津波になった。動いたプレートは岩手県から茨城県の範囲500キロ以上の長さ。持ちあがった水塊が津波となって沿岸を襲う。それが湾で高まった。

 東大の別の先生によると、震源に近い方と海岸に近い方の海面の記録をみると津波は陸に接近する前から徐々に高まりやがて急に高くなっていた。わずか1、2分で10m以上の高さになり、証言者が壁のように見えたといったのはこの急速に水位上昇する波だという。

 私は「水は塊だったんだ」と思った。ただの液体ではない。エネルギーを持った水は岩だ。
 津波の周期も長かった。30秒も高いままで沿岸部を襲った。ちなみに、869年にも仙台地方を襲った大津波があったという。

特別番組の第2部は原発に関する報告。科学文化部・山崎記者と関村教授が出演。報道された内容をくり返した。原発内部の状況が部外者に分かるはずもないから、コメントしようがないのだ。
 1979年のスリーマイル島の事故を教訓に、地震などによって緊急事態が発生したときに三重の危険回避システムが取られていたという。
 第一に自動運転停止、第二に炉心冷却システム、第三に電源停止でも水蒸気を凝縮して冷却するシステムだ。今回第一の自動停止システムは機能した。被災地には女川原発、福島第一原発、福島第二原発がある。定期検査中で運転していなかった福島第一原4号機から6号機以外の原発の原子炉は地震とともに燃料棒が差し込まれ、原子炉はすべて自動停止した。そこまでは良かった。だが、津波が来た。そのため停電になっても作動するはずだった緊急用電源が働かない。炉心はむき出しになり始め、炉心溶融の危険が起こる。そこで第三のシステムが起動するはずだった。しかし、起動しない。なにか弁が外れたか、バルブが閉じていないのか、原因不明だが、まったく水位が上がらないのだ。冷却できず炉心の温度は上昇、悪夢の始まりだった。

 強制的に格納容器全体を海水で冷却する方法について、その効果と問題点を問われた関村氏は、原子炉の構造から説明し始めた。視聴者は驚いたのではないか。なぜならそれらはいま番組で説明したばかりなのだ。同じ話がくり返された。司会者が「海水で冷やすことに問題はないのでしょうか」とポイントを聞き返す。関村氏はやっと「海水には不純物が含まれているので心配」と答える。司会者「ホウ酸はどんな効果があるのですか」と聞く。「連鎖反応を起こさないため、つまり中性子を吸収するためにホウ素を使う」と答がある。格納容器中に放射性物質は閉じ込められている。それが外に出ないようにしなければならない。だが、司会者の質問「圧力を逃がすために気体を外へ出したらどうなるのか」。教授の答「放射性物質が多少は漏れてしまう」という。当然だ。

▼3号機は水素爆発を起こした1号機と同じ状態だったが、翌14日(月)午前11時01分 爆発が起こった。社員も6名ケガをしたという。

← USAのNRC議事録抜粋


3月14日(月) 記録

読売新聞1面大見出しは
「輪番停電きょうから」 「3号機も水素爆発の恐れ」 「宮城、死者1万人以上」
▼神奈川新聞 識者評論で石橋克彦神戸大学名誉教授は、かねてから「原発震災」を指摘していたが、「日本国民は、地震列島の海岸線に54基もの原発を林立させている愚を今こそ悟るべきである。3基が建設中だが、いずれも地震の危険が高いところだから、直ちに中止すべきだ」としている。

▼読売新聞は9面で“米「原発に悪印象」懸念”として、炉心溶融報道が原子力発電のイメージを傷つけることをアメリカが警戒していると報道している。クリントン国務長官は11日の地震直後にホワイトハウスの会合で「日本の技術水準は高いが、(福島第一原発では)冷却材が不足している。在日米空軍を使って冷却材を空輸した」と発言。国務省はその後、空輸の事実を否定した。この時点では長官の勇み足発言だった。
 しかし、結果的には核燃料が露出、炉心溶融を招いた。当初の長官発言も米政府が日本の危機管理能力に不信を持ち、解決策を検討していたことを浮き彫りにした。

3号機は水素爆発を起こした1号機と同じ状態だったが、14日(月)午前11時01分 爆発が起こった。社員も6名ケガをしたという。
 2号機も危険な状況になった。21:00ごろ、NHKのニュースで整理報道によると、2号機は14:00から水圧が低下、17:17燃料頂部まで水位が低下した。18:28 ダウンスケールになった。ポンプで海水を注入したところ、19:54 水位計が揺れているから海水は入っているものと推定している。20:07 水位は安定してきた。圧力は0.54メガパスカル。海水は入っているが燃料棒は露出している。ひとまず危険は回避したという報道だが、しかし、それは甘かった。

 23:00 2号機で気体を逃すフタの弁が閉じ、圧力容器内の圧力が高まって冷却水を送れなくなって、水位が下がり始めた。なぜ弁が閉じたのか。海水注入作業中の職員が現場を離れたすきにモーターの燃料が切れたのだという。東電の記者会見があったが、記者会見の場で東電側の解説者は一般のひとに説明する能力を欠いていることが明らかになった。ボソボソとカタカナ言葉の多い専門用語と規則条項をつなぎあわせるだけで内容が分からないのだ。たぶん多少は原子力に関する知識が多い私が聞いていても要領を得ないのだから、一般の人は理解できないのではないか。私は1983年に『原子力』の授業を行ったことがあり、 その際の授業書と見解は変わっていないのだ。

 記者が質問して、ようやく東電の関係者は普通の言葉で話す。わざと面倒な言葉を使って深刻な事態を曖昧化しようとしているようにしか見えない。原子力技術の専門家というのはつくづく一般のひとと無縁な人びとであると痛感した。
 今回の事故では、要するに、原子力技術者もどうしていいか分からないのだ。

 真夜中に解説をしたNHKの水野解説委員も事故のきっかけにはあきれていた。「東電は訓練がなっていないのではないか、4時間くらい稼動したら燃料が切れるのは当たり前ではないか」と。圧力弁は21個もあり、自動の弁も手動の弁もあるそうだ。閉まったのは自動の弁。手動の弁を開く措置を試みているのではないかと水野解説員。はて、東電側はそんなことは明言していなかったが。だいいち、そんな特攻隊的作業ができるのか。希望的観測ではないか。

 3月15日(火)、6:10 2号機で爆発。職員も退避して原子炉は放置された。危険な怪物には誰も近寄れないのではないか。
 ←USAのNRC議事録抜粋


3月15日(火)  記録
読売新聞1面大見出しは
「3号機で水素爆発」 「2号機燃料棒は全露出」 「1600遺体、9割引き渡せず」
昨日は、計画停電は第5グループで一部地域が実施されただけだった。避難所の地域も停電したため、東電の対応に批判が集中した。担当者はひたすら謝罪していた。これも停電地域をきちんと1時間前に発表していれば防げたことで、何の予告もなく停電させるから、困ってしまう。なにかと準備するために1時間前には予告して欲しいものだ。首都圏の電車がほとんど運休していたため、停電を実施せずにしのいだという結果になった。「やるといってやらないのはただ混乱を招いただけだ」と政府を批判した記者もあったが、全面運休と停電実施は裏表の関係と説明されたという。結果的に停電しないのは悪いことではないから、記者の批判は当たらないものの、交通機関への対応も交通各社任せ、東電側の対応も東電任せにしているため、計画の名に値しない対応となる。政府がリーダーシップを取れないのは、事後の補償について責任を持てないためだろう。1本電車を停めさせたら何億円と言う損害が出る。それを補償する当てがないから強い指示は出せないのだろう。

▼2号機は深刻な事態を迎えた。6:10 2号機で爆発。職員も退避して原子炉は放置された。原爆同様の危険な怪物には近寄れないのだ。50名が残って作業をしているという。作業員の被爆が心配だ。短時間で交替して作業に当たっていると推定されている。

▼NHKテレビの原発事故関連番組の解説者が関村教授から東大大学院の岡本孝司教授に変わった。変更された理由は不明だが、説明が明解になった。関矢教授は2日後から再登場。その後、数日して登場しなくなりました。



←USA
 NRC
 議事録
 抜粋

 追記:事故から一年がたった
 2012年3月16日、
 神奈川新聞に次の
 ような記事が出ていました。

 既に昨年の3月26日に私は
 次のようにコメントしています。
  “「首相が15日に東電に乗り込み、
 「現場からの撤退はありえない。
 撤退した場合、東電は100%つぶれるぞ」
 と怒ったという。首相の怒りを揶揄する
 論調が多いが、私は、首長だって、
 怒るべきときには怒ることが必要だと思う
 ので、首相の怒りには理解を示す。”

 一年たって、多くの人々も
 同様の見解になってきたようです。

 追記:『週刊朝日』2012年6月22日号より。
 <2012年6月8日、国会の原発事故調査委員会に東京電力の清水正孝前社長が現れた。焦点は、(1)海水注入中止の指示をしたのは誰か、(2)東電は「原発からの全員撤退」を申し出ていたのか──の二つであった。
 事故調の質問に対し、清水氏は、こう述べた。 「原子炉を冷やすことが最優先だと考えていた。(廃炉につながる)海水注入をためらってはいない」 「官邸に詰めていた武黒(一郎・東電フェロー=当時)から国の了解がないままに進めることはいかがと連絡が来た。それ(一時中断)を是認した」
 本誌は、『福島原発の真実 最高幹部の独白』(朝日新聞出版)の福島第一原発最高幹部に話を聞いた。清水氏の発言を聞いていた最高幹部は、強く握った拳が震えていた。
 廃炉をためらっていないって、そんなウソを言っていいのか。これを見てくださいよ。ここですよ。 そう言った最高幹部は、ファイルから数枚のペーパーを取り出した。指さした先には、こう書いてあった。「海水・廃炉、損失大、回避が最善」「(海水の)注水、判断苦し 現場はまったナシ。時間ない」
 これは、本店(東電本社)の幹部が書いた事故当時のメモ。そのとき、この幹部は私にこう言いました。 「海水を入れると廃炉になるので、トップが海水注入の決断を渋っていた。必死で闘う現場と本店の温度差を感じた」。その後、私もいろいろと本店で情報収集しました。「清水氏ら本店幹部が海水注入をすぐに決断できなかったのは間違いない」というのが私の結論です。  
 海水注入の中断を誰が判断し命令したのか、は国会でも大きな問題になりました。フクイチの現場としては、あの時点では炉を冷やすしかない。ところが、本店は現場より国の意向ばかり気にしていた。原発を最もわかっているのは現場。菅(直人)前首相はじめ国は素人。しかし、清水氏は素人の意見を優先したことがはっきりしました。
 清水氏は事故調で、中断命令を“是認した”と言った。これは、現場の人間に死を宣告したことと同じです。現場を見殺しにする、前代未聞の無責任男だと、自分で認めたようなものです。
 二つ目の焦点は、震災3日後の3月14日に2号機の原子炉の圧力が上昇した際、東電がフクイチからの「全員撤退」を申し出たのかどうか、だった。清水氏は、 「全員撤退は念頭にない。注水やベントに現場は立ち向かっていた。当時、現場には700人ほどいた。女性や事務の人もいたので、全員がいる必要はないという認識だった」 「最悪のシナリオの考えもあったが、全員撤退ということはない」と「全員撤退」を何度も否定した。さらに、枝野幸男官房長官(当時)が事故調で「全員撤退の申し出を受けた」と証言したことについて聞かれると、「どうも記憶がよみがえってこない」と話し、肝心なところは記憶を失う一方で、「菅首相が東電に来られ、『撤退すれば、東電は百%つぶれる』『60(歳)を超した幹部は現地へ行って死んでもいい』と。(首相の言動を見て)打ちのめされているんじゃないかというのが率直な感想だ」と、他人の批判になると記憶が鮮明になるのだから、驚かされる。
 本店が全面撤退を考えているらしい、という話は、当時耳に入っていました。しかし、そんなことはできるわけがない。相手にしなかった。現場としては作業に最低限必要な人数、ざっと70人を現場に残す想定を始めていた。私たちとともに、一緒に死を覚悟して残ってくれるメンバーの人選でした。残ってほしいと考える人物でも、「あいつはまだ子どもが小さいな」とメンバーから外したケースもありました。切羽詰まった状況に追い込まれていた。
 東京電力という日本を代表する会社の社長が、緊急時に現場がどう対応するのか、官邸に対して明確に伝えることができない。撤退と言ったのかも、はっきりしないという。こんな大事な問題の記憶すらない。
 こちらは命がかかっているような状況だった。たった一言、「一部、70人は残す」とだけ伝えていればこんな大きな問題にはならなかった。この人は社長として、現場をどう考えていたのか。この無責任さには、あきれるばかりです。
 事故直後から、清水氏ら本店の幹部たちの現場軽視の対応で官邸の東電不信はさらに高まったのでしょう。
 撤退をめぐって、官邸から直接、現場に電話がかかってきました。何度も、細野(豪志)補佐官(当時)から連絡があり、現場のトップが「撤退はない。がんばります」と言っていたシーンを見た。
 当時はなぜ現場に官邸からの電話があるのか、と思っていたが、この清水氏の証言を見て、理由がわかった。本店がアテにならない、信じられないということに尽きますね。菅首相批判の後、事故調の委員に、電気事業連合会の会長としての対応や感想を聞かれた清水氏は、「差し控える」と証言、さらに、枝野官房長官とのやりとりについては「覚えていない」と繰り返し、会場から失笑が漏れた。
 感想や評価は述べないというのに、都合のいい場面ではしゃべり、悪くなるとはぐらかす姿は勝俣(恒久・東電会長)さんと同じだ。こんな人がよくトップとして指揮できたものです。
 事故調は最後に、「現場は一貫して、ずっと対応に取り組んできた」と現場の意見を評価してくれました。とてもうれしい。一方で、その評価と清水氏の証言を対比すると、話にならないほど情けない。あの無責任さにはあきれて、モノも言えません。
 清水氏が出席した事故調と同じ日、野田(佳彦首相)さんが大飯原発の再稼働に向けた会見をしました。でも、政府や電力会社の意向優先の再稼働では、いずれまた大きな問題になることは目に見えています。
 
           ミステリー作家の赤川次郎の意見   岩波書店「図書」2012年7月号より

 経済界が菅首相を何が何でも政権から引きずり下ろすと決めたのは、菅さんが浜岡原発を停止させたときだろう。
 大事故を起した福島第一原発が停まるのは仕方ない。しかし、まだ事故を起したわけでもない浜岡原発を停めるとはどういうことだ。
 ---その瞬間から、新聞、TVの大手マスコミを総動員しての「菅おろし」がスタートした。
 結果、仮設住宅がなかなかできないのも、がれきの処理が進まないのも、福島の事故が収束しないのも、すべて「菅のせい」だと言わんばかりの記事、報道が続出した。
 菅さんが東京電力の幹部を怒鳴りつけたという、しごく当然のことさえ、一国の指導者の資質に欠けると批判した。では、事故を前にただ茫然自失している東電や安全保安院の連中にすべてを任せて黙っているのが、首相としてふさわしい行動だったのかというのか?
 ともあれ。経済界の意を体して首相になった野田さんは、最初の国会質疑で、訊かれてもいないことまで答弁した(官僚の作文をそのまま読んだ)ほどいい加減だったのに、今、消費税増税には「政治生命をかける」ほど熱心である。
 俳優の山本太郎さんが「役者生命をかけて」、原発反対を訴えているのと比べ、その「生命」の軽さはどうだろう。
 今も放射性物質を出し続け、原子炉に近づくこともできず、4号機の危険が指摘されているというのに、早々と「事故の収束宣言」を出したとき、世界は唖然としたのではないか。私は、平然とこういう発言をする首相を持ったことに赤面した。

3月16日(水)  記録
読売新聞1面大見出しは
「超高濃度の放射能観測」 「身体へ影響の数値」 「75歳、92時間ぶりの救助」
避難所では津波で道路が失われ、必要な生活物資も届かないまま、ひとびとが自分の持つ職能を最大限に生かして活動している。例えば医師や療法士、看護士たち。不眠不休で助け合っている。NHK教育テレビ、衛星第2放送、ラジオのNHK・FMなどはずっと安否情報を放送。これらの被災者やその家族の声がひとびとの輪と和を実感させる役割を果たしている。

▼原発は昨日、地震当時、運転を停止していた4号機の使用済み核燃料も電源供給不能・水不足で発熱し、火災を起こした。今朝も火災が起こった。福島の避難地域の人々は地震・津波の始末もできない状態で屋内待機。物資も来ない。津波の被害と同時に原発事故も世界が注目している。

追記:建屋の中に使用済み核燃料のための巨大な冷却プールがあるのは日本独自の光景である。このことを初めて知って、驚いた方も多いのでないだろうか。停止中の4号炉で水素爆発が起こったのは、この使用済み燃料から発生した水素によるものだった。なぜ停止中なのに?と思われるかもしれないが、じつはほかに使用済み核燃料の置き場がないからである。・・・仮設のものだから、事故を起こすことなどまったく想定されていなかったわけだ。・・・福島第一の使用済み燃料は、安全な場所に運び出さなくてはいけないが、持って行く場所がないのである(大前研一『日本復興計画』より)。

ガソリンが不足気味で昨日の午後からスタンド前に長い列。神奈川県小田原市の状況。今日は朝から売り切れのスタンドも出て、営業しているスタンドは車が20台程度ならんでいる。大臣が被災地を優先するため、食料にしろガソリンにしろ買占めに走らないように注意した。

▼NHKテレビ 20:00から「巨大津波が原発を襲った」報道。本日は3号機に空から自衛隊のヘリで注水する案が検討され、訓練も行われたが、原発上空の放射線量が高いため中止。乗員の安全が確保できないのだからやむを得ない。万一、原発の上に墜落でもしたら大変なことになる。ニュース・ナインでキャスターが岡村教授に質問していたが、この質問は的確だった。「今日の時点で放射線量が高いということは、明日以降もその方式は無理だということですね」と。その通りであった。(しかし、翌日、空から放水された。決死の行動であろう)。
 消防車で外から水をかけ入れる方策に変更された。早ければ夜中からということだったが、翌朝からになったようだ。

 被災地は真冬なみの寒さに気温が低下した。昨夜・今夜・明日の夜と寒い日が続く。被災地は灯油が無い。ガソリンも無い。食糧も避難所では、一人おにぎり1個という状況だ。戦争中の空襲後のようである。

▲USAのNRC議事録抜粋


3月17日(木)  記録
読売新聞1面大見出しは
「警視庁放水車 投入へ」 「火災2度の4号機」「防護服の機動隊員、交代で」 「救援物資の輸送困難」




▼政府の要請により3月17日午前より、自衛隊のヘリによる上空からの放水が始まった。隊員の被ばくの心配は二の次になった。
これは主に屋根が吹きとんだ3号機の注水だ。地上からの放水も行われた。







 
▼被災地で必要なものはまずガソリン。
 しかし、道路が寸断されて届けることが
できない。
 避難所には灯油や、食料といった緊急援助
物資が必要だという。

▼遠方からの援助は
現段階では義捐金がいちばんいいようだ。

19:02 第四グループに入っている大井町
(神奈川県)も停電。
 まっくらになった。周辺の家々もまっくら。
 だが、LEDのフットランプは消えなかった。
 充電機能があるのだ。
 意識していなかった。
 懐中電灯より明るい。
 これは便利だ。
 周囲が明るいと消灯し、
暗いと点灯する器具だが
安価なものは充電機能がついていないので
役に立たない。2千円クラスのものがよい。

 21:53 停電が解消した。約3時間の停電は
一般の家庭では冷凍庫のなかのものも解凍
しない程度で無理のない範囲だったと言える。

 ただ、かなり寒かった。
 着る物を着てしのいだが、
 被災地はもっと寒いだろうし、
着るものもままならない避難者は
きびしい寒さにさらされたはずだ。
 外で瓦礫の下になっていた方は
凍死しただろう。無情の冬将軍だ。
 灯油を待たずに壊れた家の木を
燃せばいいと思うのだが。

▼原発の状況については
 原子力資料情報室の外国特派員協会で
の会見が参考になる。
 英語による同時通訳がある。
 解説は東芝で格納容器の設計を担当していた
 後藤正志氏が行っている。
 (本ページのTOPにリンクしておいたが
 解説内容を文書で提供(WORD)

 

 ← USAのNRC議事録抜粋

3月18日(金)  記録
読売新聞1面大見出しは「3号機 陸からも放水」
▼本日は50トンの放水がされたという。昨日、米国のオバマ大統領は原発80km以内の米国人は避難するようにと指示した。
▼被災地でインフルエンザ流行のきざしがあるという。A香港型だという。手洗いがもっとも効果的な予防法だが、被災地は水不足で手洗いができない。アルコール製材で消毒。高齢者をケアする医師や看護師は献身的に活動している。避難所になった中学校などの教員も避難民の世話などで献身的な活動。
▼神奈川県足柄上郡大井町付近は午後4時から7時まで停電した。


3月19日(土)  記録
読売新聞1面大見出しは「3号機、連日の放水」
▼本日も原発には放水が続く。上空からの測温では1〜4号機の原子炉容器の表面は100℃を超えていないという。
▼本日中に1号機へ外部電源が敷設された。明日、海水につかった機器の通電テストをして復旧を開始するという。それまでに余震や再津波が来ないことを祈る。(26日になっても復旧していない)
▼死亡者数が阪神・淡路大震災を上回った。まだ増える見込みである。
▼日中は気温が上がる見込みで、計画停電は本日はない予定。
菅総理は自民党の谷垣総裁に副総理兼復興担当大臣での入閣を要請した。しかし、谷垣総裁は政策のすり合わせもないままの大連立はできないと断った。これで被災者の票は自民党には入らなくなったと、私は思う。内閣と国会は異なるのだから、未曾有の大災害に入閣して協力してもおかしくはないのだ。被災者目線で観たら、民主党だろうと自民党だろうと関係ない。内閣は行政府なのだから、挙国一致内閣でも不思議はないのに。自民党は責任逃れをしたとみえる。この判断の誤りは大きなツケとなる。公明党も連帯責任を取らされるとしぶっていると報道がある。2チャンネルでは野党に責任転嫁する菅首相はバカだという批判が湧き上がっているが、いまさら責任をとるのとらされるのという次元の話じゃないだろう。この事態、政府は何をしても十分ではないから批判されるのを覚悟で事に当たるしかないだろう。

▼NHKでは朝の連続テレビ小説「てっぱん」を本日から放送開始。大河ドラマ「江」も本日より開始する(3月6日の再放送)。
小田原市の古書店に注文した古本を取りに行ったところ、店主が地震と占星術に詳しい方で、惑星のならびかたからすると今年の四月と八・九月は斥力が働き、大地震の可能性が強いとか。もっとも、それが日本で起こるとは言えない、といった話を聞いた。以下も店主のUさんのお話。
 関東大震災のとき、大井町の倒壊率は90%以上で震源は駿河湾沖とされているが、データを分析し直した別説によると大井町直下という説もある由。もともと足柄平野は酒匂川の氾濫源なので地盤が弱く、金手とか金子、金目と地名に「かね」が付されている場所は川の曲がりに当たっているところだという。大工の曲がり尺をかねしゃくというのが同じ語源だ。九頭竜という地名も川の曲がりを龍にたとえたもの。
 津波の過去の記録は人口の少ない時代の記録であるため、被害が小さく津波の規模が正しく見積もられていない。関東大震災のときは津波が大井町あたりまでさかのぼったという。しかし今回のような地震が起こっても小田原付近の津波が十メートル以上に高まることないだろう、その理由はプレートが3種ぶつかっているため、衝撃が東西に分散し、小田原のプレートは地盤がハネ上がる方で津波の侵入に対して反対に働くはずだというのだ。ちなみに、私は占星術は科学ではないと思う。

3月20日(日)  記録
読売新聞1面大見出しは「2号機に電源接続」。ただし、まだ電気は供給されていない。
▼テレビ報道によると政府の要請により、放水は13時間半続けられ、2400トンの海水が供給されたという。消防庁の作業員は放射線被ばくを前提に決死の覚悟で臨んだようだ。家族に別れの言葉を告げ、家族からは日本国民のために頑張って欲しいと激励されて出動している。まさに戦場である。
▼新聞の地震被害状況は死者7508人、行方不明1万1680人、負傷2583人、建物11万7570戸。テレビによると避難者は36万8500人、ただしこれには原発避難民は入っておらず、それを入れると50万人を超える。

▼リビアにはフランス・イギリス・アメリカが今朝から軍事介入。カダフィ大佐政府軍の要所を攻撃。大佐は欧州の十字軍だと批判し、全面対決の声明を出した。

 3月21日 神奈川新聞紙面より 


3月21日(月)  記録
読売新聞1面大見出しは「9日ぶり2人救助」「米英仏軍、リビア空爆」「2号機、通電作業続く」
▼16歳の高校生とその80歳の祖母が倒壊した住居から救出された。濡れなかったこと、台所にとじ込められて水や菓子があったことで生存できた。
▼原子炉1〜4号機は、あいかわらず全面復帰はせず、不安定な状況が続いている。
2号機や3号機から予期せぬ原因不明の煙が上がって本日夕方に作業中止。

 3月22日 読売新聞紙面より

 3月22日 神奈川新聞紙面より


3月22日(火)  記録
読売新聞1面大見出しは「2号機通電作業 中断」「3号機から煙、退避」「出荷制限、4県に指示」
「福島原発の放射能を理解する」pdf カリフォルニア大学モンリオール教授による
▼ホウレンソウとかき菜・原乳の放射性ヨウ素が規準以上の汚染で出荷停止となった。葉もの・路地栽培の野菜も同様の汚染をしているはず。
19時から3時間の停電。

3月23日(水)  記録
読売新聞1面横大見出しが無くなった。
▼福島県・茨城県などの野菜・原乳・水の放射能汚染が広い範囲にわたった。摂食停止措置も取られた。
一方、原子炉は3号機から夕刻、黒い煙が上がり、電源復帰作業が中断。
すぐには健康に影響のないレベルと専門家は解説するが、ヨウ素を測定しやすいから測定しているだけで他の放射性元素も放出されているはずだ。
 それに低線量の放射線の長期にわたる健康被害ははっきりしないところがある。

 追記(2011年5月14日):小出裕章『隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社)には、米国が1950年から開始した広島・長崎の被爆者の調査の結果,「どんなに低い被曝量であっても被曝量に比例した影響が出ると考えるようになりました。この考え方を「直線・しきい値なし」(LNT)仮説とよびます」とあります。米国科学アカデミーの委員会は2005年6月30日,七番目の報告でしきい値がないと結論しています。ICRP=国際放射線防護委員会は危険度を半分に見積もっている。
 放射線の影響の専門家の北海道大学医学部の石川教授は田原総一朗の討論番組でLNT仮説を「誤りだ」と断定していたが、その理由が奇妙なものだった。「LNT仮説の直線を下に伸ばしていくと原点にならないからだ。つまり放射線が0でも危険があることになってしまう」と説明した。この説明は一見数学的・科学的に聞こえるが、理由になっていない。低い方では直線化していないかもしれないからだ。しきい値なし仮説は直線的に影響が出るという断定をしている仮説ではないのである。番組では名だたる専門家の誰も反論していなかった。こんな説明になっていないことを言われても、言い返せないほどみんな低放射線の影響については自信が無いのだ。

 図2に示されたLNT仮説よりも危険度が大きくなるバイノミナル効果・バイスタンダー効果・ゲノム不安定性が知られて来た。バイノミナル効果のバイノミナルは二項式のこと、上に凸になるような効果のこと、バイスタンダー効果は被曝した細胞から隣接した細胞に被曝情報が伝えられること、ゲノム不安定性は継世代への影響である。
 危険度が小さくなる効果は修復効果・ホルミシスだが,修復効果は紫外線に対する修復のように被曝に対する修復効果がある、ホルミシスは放射線に被曝すると免疫効果が活性化されるというもの。
この著書の一部はpdfで提供されている。

 日本物理学会が1988年にまとめた『原子力発電の諸問題』(東海大学出版会)には「微弱放射線の影響」があるが,確定的なことは書かれていなかった。
 このころは放射線量の単位はレムが使われていた。1シーベルトは100レム。
 神奈川県の大井町は16時から3時間の停電。この後、停電した日は無かった。

3月24日(木)  記録
読売新聞 見出しは「放射性物質 初の拡散試算」「都の浄水場 放射性物質」


上ふたつは読売新聞

下ふたつは神奈川新聞


携帯用放射線測定装置が売り切れ、在庫なしだった。

1年間継続摂取しなければ安全という
情報がテレビ「クローズアップ現代」で報道される。しかし、・・・・

原子力関係の学者は基本的に原子力擁護者である。
なぜなら原子力学が生活の糧だからである。
もし原発がなくなったら路頭に迷ってしまうので
原発を否定するようなコメントは基本的に出さないのだ.
 経済産業省の原子力安全委・保安院の人々も同様で
監視機能を持っている人々ではない。したがって、彼らの
コメントは始めからバイアスがかかっていると思った方が良い。
このような状態では自分なりの判断が重要だと大戦中に
大本営発表で騙された老人たちはコメントしている。
▲計画停電は足柄上郡大井町は本日はなかった。明日もない予定。

3月25日(金)  記録
読売新聞1面見出し。「作業員被曝、2人搬送」「死者60歳以上が65%」「秋葉原殺傷 加藤被告に死刑」
▼3号機で原子炉建屋の地下にたまっていた水が強い放射能に汚染されていて作業に入った作業員が被曝した。
一昨日、放射線量が低くなったため油断しており、線量測定員を同行しないまま短靴で現場に入り汚染水が靴に入ったという。
なんたる杜撰さであろうか。今後の作業に対する信頼性が低下した。
 (幸い障害の程度は軽度だったらしく、28日の午前に3名とも放射線医学総合病院を退院)

 この水を汚染したのは格納容器内の燃料が原因と考えられると保安院は発表した。
 NHKの水野解説員によるとその理由は汚染物質にはヨウ素131が多く含まれていて、半減期が8日の物質だから
使用済み核燃料のほうから放出されたとは考えにくいのだという。格納容器は壊れていないと言明してきたのに・・・・。
 水野解説委員は容器は20cmの厚さがある鋼板だが、配管などの継ぎ目から洩れて来たのではないかという。
 この配管の脆弱性については次の本に記載してあった。

書店に2006年発行の古長谷稔『放射能で首都圏消滅』(三五館)という本があった。静岡県の浜岡原発が東海地震が来たときにいかに危険であるかを具体的に書いた本だが、今回の福島原発事故にもピッタリ当てはまる内容だったので震撼した。もとの本はカラーだが白黒で紹介する。


▼NHKテレビでは原子力の専門家が
チェルノブイリでも25年たって大人
にはガンの増加は見られなかった。
 子供には甲状腺のガンが増加した
と解説していたが、この本には青年・
大人の甲状腺ガン発生数のグラフが
あった。どの年代層のデータか不明瞭
だが。
▼屋内退避で被爆を受けないための
マニュアルがあった


▲停電や水道管破裂のときのために大きいポリ袋(ゴミ袋)を
数十枚、猫用のトイレ砂を準備しておきましょう。

▲ろ過機能のある浄水器もないよりはましです。

3月26日(土)  記録
読売新聞1面見出しは「20〜30キロ圏、自主退避促す」「被災者の生活、国が負担」

▼「ようやく省庁総動員」という見出しで読売は政府の体制を報じている。

週刊誌で総括記事や批判、識者の意見が出始めた(3月30日号,文春、毎日、新潮)。
 菅首相は工学部出身のため、原子力には詳しい。「サンデー毎日」によると、11日に冷却不能に陥った時点で、首相は海水を炉内に注入するよう指示したが、東電側はこれを拒否。また米国が技術支援を申し入れたが東電が「東電だけで対応できる」と強調したため、政府は支援を断ったと報じられた。その結果、次々に水素爆発や火災などが起き、首相が15日に東電に乗り込み、「現場からの撤退はありえない。撤退した場合、東電は100%つぶれるぞ」と怒ったという。首相の怒りを揶揄する論調が多いが、私は、首長だって、怒るべきときには怒ることが必要だと思うので、首相の怒りには理解を示す。中江兆民だって田中正造だって怒って暴言を吐き、挙句の果てに議員を辞職している。
 原子力産業のような巨大産業は政・官・民(他の国ならこれに軍が加わる)一体となって進められていて、反対や反論を受け付けないシステムなのだ。それを止めたら関連の学者も企業も路頭に迷ってしまう。したがって、原則的に危険だというリスク情報は隠蔽される傾向にある。前福島県知事で福島原発を批判した結果、(たぶん)収賄罪を仕掛けられて失脚した佐藤栄佐久氏の怒りの声が参考になる。
 だいいち保安院が推進派の経済産業省の下部組織なのが奇っ怪である。今回の事故の経緯で分かる通り、保安院の報告は基本的に楽観的見通しばかりであった。それに東電側の情報に一元的に依存しているだけで自分たちの情報を持っていない。「煙が出た」といっても、それがなにが原因なのか、「わからない」というだけである。推測さえしないのだ。対策にしても東電の対策をただ見守っているだけで、なにかを提言したわけでもない。彼らはただ東電と政府の間で情報を取り次いでいるだけなのだ。こんな組織は即刻、事業仕分けの対象だろう。そこで働いている人には、気の毒だが。もっとも事故の後始末に膨大な予算が組まれるから十年間はなくなるまい。
 追記:保安院は震災事故の翌年,2012年5月に運転期間が40年を超えた原発の延長を決定した。政府が原発の運転期間を40年に制限しようとしているのにもかかわらず。まったくトンデモナイ組織があったものである。


3月27日(日)  記録
読売新聞1面見出しは「核燃料の損傷 進行か」「復旧費、自治体負担ゼロ」
2面3面横大見出し「汚染水が作業阻む 配管から海へ流出か

 「サンデー・モーニング」によると、水が建屋の床に貯まっているのは3号機だけでない。1号機40cm、2号機100cm、3号機150cm、4号機80cmである。
 これらすべての水が汚染している可能性がある。
 海に流して終了というわけにはいかないだろう。
 日本の食品は既に汚染されているという風評被害も出始めている。
 
 金町浄水場で暮らしている父の老齢の友人は薬を飲むミネラル・ウォーターが店に無く購入できない状況だという。
 そこで、父が天童市内のスーパーに購入に行ったところ、一昨日まではあったミネラル・ウォーターがもはや売り切れていたという。
 なんとか見つかったスーパーで買おうとしたら母子手帳を持つひと優先ということで買えなかった、仕方がないので家の井戸水を送ったという。
 神奈川県西部でもミネラル・ウォーターは入手不能である。

 放射能の値は自然で浴びる放射能から比べればたいした値ではない、と専門家は話す。サンデー・モーニングでは寺井東大教授が解説していた。
 しかし、少しでも危険なものを摂取しないですまそうという庶民の自主防衛行動を非科学的だと言ってすまされるものだろうか。
 週刊誌にはパニック行動だとか、民意が低いなどと言って批判する識者もいるが、私は庶民にとっては「当然のことではないか」と思う。
 専門家という人は放射能を多量に含んだ水を平気で飲んでみせられるか。出来るわけがない。なぜなら、本来、安全な水には放射性物質はほとんど含まれていないのだから。放射性物質の慢性毒性量について自信をもって言える人はいないのだ。(専門家は晩発性障害という)
 「すぐに健康に障害が出るような値ではない」というのは理解できよう。しかし、「すぐに」障害が出なくとも十年後には? 放射性セシウムは排泄されるというが排泄された後、その場に30年は残るのである。
 築地魚市場が汚染地域に新設されることで安全性に疑問を持ってしまう国民性である。それを笑えるひとがいるとは思えない。

▲神奈川新聞より

3月28日(月)  記録
読売新聞1面見出しは「1〜3号機高濃度汚染水」「福島8自治体移転」
「週刊現代」4月9日号が発売

 見出しが次のようなもの
 ・「安全な被曝」なんてありえない
 ・「放射能汚染」東京上陸
   体内被曝は始まっている
 ・福島第一原発 隠された真実

 その内容は私が感じ、記していたこととほぼ同じだった。週刊誌では「週刊現代」(講談社)と「週刊ポスト」(小学館)の記事に価値がある。「週刊新潮」(新潮社)はゴシップ体質。「週刊文春」(文藝春秋)は世論迎合記事が多い。
 
 陣頭指揮などせず、表面に出て来ない管首相への批判もかなり強い。
 米軍が提供した冷却材なども横田基地に積まれたままだという。最初に米軍の救援を、東電だけでなんとか処理できると断ってしまったからだ。この誤判断は影響が大きかった。
 現在の結果は東電の管理能力を上回っているからである。

▼本日、東電および保安院から重要な危険情報があった。

 27日15時30分、2号機タービン建屋の外にあるトレンチ(トンネルの一種)から建屋内部に貯まった水と同じ1000ミリシーベルト以上(線量計が振り切れるため測定不能)の放射線量を計測したという。

 このトレンチは建屋外にありここから水があふれだすと海に放射能が漏れ出すことになる。

 トレンチの水は建屋とトレンチを仕切る壁を通して入ったと思われるため、まず建屋の水を抜かなければならない。
 復水器に回収しようと試みたが、既に復水器は満水状態。
 その水を別のところに棄ててから復水器に貯める。その作業にいつ移れるか不分明だという。
 危険な状況である。
  3月28日 神奈川新聞紙面より

 神奈川新聞によれば、津波被害の予想は専門家が指摘していた。つくば市にある産業技術総合研究所の岡村行信(活断層・地震研究センター長)は経済産業省での審議会で東電の説明に異議を唱えた(2009年6月)。「869年の津波は想定されていない」と。
 東電は評価を棚上げ、実質検討を見送った。
 産業総合研究所の宍倉正展(海溝型地震履歴研究チーム長)によると、太平洋岸には津波の痕が残っていたという。


▼小松左京原作
『日本沈没』
の劇画化
 さいとうプロ
 作品(リイド社)
第二巻の扉絵と
津波が来た瞬間

 第四章より「大正
大震災に比べて、
もう一つ著しくちがう
ことは、津波の被害が大き
かったこと
である」
▼吉村昭の記録
『三陸海岸大津波』
(文春文庫)
もとは中公新書
『海の壁』として刊行

▼「風俗画報」より明治29年津波


3月29日(火)  記録
読売新聞1面見出しは「建屋外でも高放射能」、2面「原発修復 極限の数百人」、3面「冷却か環境か板挟み」

▼28日、日米両政府が課題ごとの検討・作業チームを設置した。
 連絡調整会議は22日に発足し毎日開催していた。

■首相視察で原発対策の初動が遅れた可能性をうんぬんする議員やマスコミもあるが、それこそ風評である。
 そんなことで対応を遅らすようだったらむしろ東電のほうの頭がおかしい。
 誰かが責任転嫁の風評を流しているとしか思えない。
 阪神・淡路大震災の際に村山首相は完全に現地が安全になってから視察に行き、いまさら来ても遅いと批判された。殺人者のA少年にさえも。
 大失態だった。その轍をふまなかったことは評価できるのだ。
 ただ管首相は空中視察だった。現地に降りて視察すべきだった。


△読売新聞より
▽読売新聞より


△神奈川新聞による

▼NHKクローズアップ現代「被災支援 ソーシャルメディアの力」にて
 「ツイッター」を利用する人々が震災直後、Anpiレポートや情報地図作製、手話ニュースなどを協力して発信。被災者支援を続けている。
 節電運動も『エヴァンゲリオン』にあやかって「ヤシマ作戦」と名付けられ、広がっていった。ツィッターのヘビー・ユーザーは20〜30代の若者だが、運動はネットを使わない人々をも巻き込んで展開されていく場合もある。

新しい「輪」と「和」のかたちが出来上がりつつある。


3月30日(水)  記録
読売新聞1面見出しは「2・3号機 汚染水回収急ぐ」。   実際には進まなかった。


▼内陸5kmまで浸水した。

▼現在の日本の原発で今回のような津波が来たときに対応できる施設はほとんどない。

▼計画停電で東北の部品生産ラインに打撃(クローズアップ現代による)。


3月31日(木)  記録
読売新聞1面見出しは「1〜4号機 廃炉」

▼東電会長が陳謝。1〜4号機は廃炉にすべきとの見解を発表。 しかし汚染水が妨げとなり、電源も復旧せず、汚染水の漏出は続く。冷温状態になるめども立たない危険な状態は回避されていない。

当面の新聞記録はここまで。講談社の野間社長が心不全で亡くなりました。67歳だそうです。

東電は作業員ひとりひとりに線量計を持たせていないことが明らかになった。地震と津波で線量計が壊れて足りなくなったので放射線が低いと想定される場所ではグループでひとつにしたのだという。作業規定に違反している。他の原発から借りればすむ話ではないか。なんたる杜撰さ!
 東電の作業の信用性は地に落ちた。
 翌4月1日の報道も噴飯ものだった。線量計を450個準備した。これで足りなければその作業は後回しにするのだという。必要な作業なら後回しも何もない。何がなんでもやらなければならないはずだ。線量計を日本中からかき集めることだってできるだろうし、ネットでヘルプすれば日本じゅうから集まるはずだ。なにしろ線量計はネット上で販売している機器は売り切れてしまっているのだから。もちろん外国から買えば買える。
 自分のところですべてできるという体勢はもう崩れてしまっている。
 作業にあたる自衛官や消防署員にホテルなみの東電の休憩室を使わせないという無神経さもひどい(「週刊文春」より)。その理由は汚れるからだという。バカじゃないか。
ヨーロッパの学者の放射能被害の評価  日本とは大違いです
すべてが当たっているとは思いませんが参考になります。赤字は池田が重要と思うところ。
 (日本の原子力安全・保安院はようやく4月11日にチェルノブイリと同じレベル7の事故であると評価した。
 バスビー教授が「チェルノブイリ・レベル」と評価したのは3月24日である。その判断が正しかったのだから他も・・・)
 5月末になるとこの委員の判断のほとんどが正しかったことが明らかになった。
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2011年3月24日付 (Press TV)  
 日本の当局は、原子炉からの放射線物質漏えいを軽視し、最小限の危険性を市民に知らせることの重要性を軽視しているが、実際はその反対を行うべきである。
 バスビー教授はロンドン在住の放射線リスク欧州委員会(ECRR)の委員である。彼は今回の日本の原発事故はチェルノブイリのレベルあるいはそれ以上 で、東京が危機にさらされている可能性があると警告した。

欧州放射線リスク委員会報告 翻訳

 Press TV:日本で起こっている原発事故による放射線漏えい状況はどれくら い深刻ですか?
 バスビー教授:この状況は、チェルノブイリ事故に非常に似ています。最初は、誰もが大した事故ではないと言い、次に多量の放射線が漏えいしているわけではないと言い、そのうち、問題が深刻になるにつれて、立場が後退していきました。
 現時点では、おそらくチェルノブイリに非常に近づいていると感じています。 コミュニケが多く出されていますが、私は信じていませんし、事実に基づく情報が十分に提供されているとも思いません。私は膨大な量の放射能がすでに原発から放出されたと推定しています。
 たとえば、昨夜のIAEAのウェブサイト情報によれば、汚染は原発から58キロ範囲にまで広がっているという。このレベルはチェルノブイリの立ち入り禁止区域のレベルの2倍になります。チェルノブイリの立ち入り禁止区域は30キロだった。既にこのレベルで大きな事故になっているわけです。

 Press TV:あなたはコミュニケを信じていないとおっしゃいますが、なぜ、日本のメディアは間違った情報を報道し、IAEAからこれについての詳細な情報が出てこないのですか。
 バスビー教授:IAEAは何が実際に起こっているのか知らないのだと思います。 彼らは日本側当局が言う事を聞いているだけなのでしょう。原子炉内の放射線 レベルが余りにも高いので、そこに近づくことはできません。近づけば死ぬだけです。というわけで、原子炉で何がおこっているのか誰も知ることができないのです。それが問題なのです。
 そして、制御室にある原子炉で何が起こっているかを測定する計器類がすべて破壊されています。これでは、何が起こっているかを知る方法はありません。彼らは必死に燃料棒と原子炉そのものを冷やす水を注ごうとしています。ということは、原子炉内部には水は入れられないということなのでしょう。 これらは、IAEAが公表している濃度です。これは、信じるとか、信じないとかの問題ではありません。
 それは入手可能な事実に基づいて、何が起こったかを推測することです。入手可能な事実は2つです。
 第一に原発からかなりの距離の場所でも放射線レベルが非常に高いことです。
 第二に原発から少なくとも 50キロ以内の地点で地上の汚染レベルが非常に高いということです。

 Press TV:あなたは、この事故がチェルノブイリと同じ、あるいはほぼ同じ位に大事件だとおっしゃっているわけですが、現時点で、これ以上、事態を悪化させないために彼らに何ができると思いますか?
 バスビー教授:何も思いつきません。燃料は原子炉圧力容器内部で溶融したようです。少なくとも3つないしそれ以上の圧力容器の底部に溶融燃料が溜まっていると思われます。これが第一の問題でしょう。
 そして、溜まった溶解燃料に水を注いで冷やすことはできません。分離されている燃料棒は、水を循環させることにより冷やすことができますが、熱い大きな金属塊を冷やすことはできません。
 もう一つの問題は、原子炉1、2と3の使用済み燃料が爆発して、周辺地域の空気中に放出されたと推測されますし、おそらく海にも放出され、海水も汚染されていると推測されますが、手の打ちようはありません。 これまで、だれもこのような事故を見たことがありません。
 ですから、何ができるかを知ることは非常に難しいのです。私には解決策はありません、ただ祈るのみです。

 Press TV:第3原子炉から黒煙が出たとか、また別の場所から白煙が出ているという報道がありますが。煙の色の違いは何を意味するのですか?
 バスビー教授:私にできるのは推測だけ。我々が知っていることは黒い煙と白い煙が出ているということだけ。それについて私が言えることは、どちらの煙も強い放射性がある、これは疑いの余地がありません。さらにこの煙には非常に熱い放射線微粒子が含まれており、光を反映していること、海方面あるいは風向き次第で何処にでも飛んでいくだろうと感じています。
 現在、約5日間、放射線リスク欧州委員会では、第一と第三原子炉の爆発から出て海に行き、最後に東京に戻ってきた空気の流れをモデリングしています。 我々が観察したのは、気流が一旦外に出て東京上空を大きな輪を描き、それから日本を北上するということでした。 気流が逆転する前に沖縄を囲んだ。その地域では放射線量が突然高くなったので、そこの発電所で融解事故があったのかと考えた程だった。
 ウランやトリチウムやヨウ素はもちろん、その他の放射線物質は本州を汚染しており、今や原発から遠距離に住む住民の健康に重大な影響を与えるものと思われる。
 
 Press TV:日本では原発から20キロ以内に住む人々に避難命令が出されましたが、あなたが日本国内にいて意思決定の立場にあったらもっと広い地域の住民に避難勧告しますか?
 バスビー教授:ええ、最初からそうします。実際、私たちは100キロ以上にしたらよいというアドバイスを欧州委員会のウエブサイトなどで、しました。今や彼らは東京の住民を避難させることを考えなければいけないと思います。彼らをどこに避難させるかという問題は悪夢です。
 東京自体はヨウ素だけでなく種々の放射性成分のリスクにさらされています。その中には検出することが容易でないものもあります。
 トリチウムは、あらゆる場所にまき散らされ、遺伝的欠陥、ガンや様々な病気を発生させる可能性があります。
 原子力産業はまだ使えるとか、原子力発電所の建設を続けようと説得しようと、あるいはウランの株価を下げさせないなどのために議論することは犯罪だと思う。人々はこの結果として死ぬことになる。彼らはできるだけ早くそこの人々を脱出させる必要がある。

 Press TV:あなたは人々が死ぬと言っていますが、日本政府は、環境中により高い放射線レベルを認めたが、さして重要なことではないとか、人が通常のX線で浴びる程度の放射線量とか、それほど重要でないとか言っています。これについて、あなたのご意見は?
 バズビー教授:犯罪と言って良いほど無責任です。チェルノブイリ事故の後、 ガンや他の病気の発生率が増加されています。例えば、2004年にスウェーデン で行われた研究では、チェルノブイリ事故で汚染されたスウェーデン北部の地域では住民のガン発症率は11%増えた。将来のことを考慮しなくても、汚染 地域でのガンの発生率がこの数字の2倍以上になる可能性さえあります。 問題は、これらの声明が出てくる根拠となっているリスクモデルは、時代遅れで正しくないということです。
 放射線防護国際委員会(ICPR)の事務局長は、こ のリスクモデルは、最大900倍エラーであると認めています。 そこで、われわれは様々な研究からこのモデルが間違って設定されており、日本の今回の被曝には有効でないことを知っています。人々はリスクモデルで予想されたよりもはるかに高い割合でガンに罹患する可能性がありますから、避難させる必要があります。

 Press TV:ヨウ素が人々を放射線の影響から保護するという報道がありますが、本当に役に立ちますか、日本人はヨウ素を服用したりする必要がありますか?
 バズビー教授:ありますね。人々は安定したヨウ素を服用すれば、甲状腺が放射線ヨードの吸収をブロックして、甲状腺ガンを増加させる効果の多くを軽減 します。 チェルノブイリ事故の後、甲状腺ガンが大きく増加し、これは放射線ヨウ素が原因だとされています。あなたが通常のヨウ素を十分にとっていれば甲状腺ガンにはならなくて済みます。しかし、これは甲状腺ガンだけに限定されますし、甲状腺ガンの発生は稀です。放射線放出の結果として起こる癌には、乳癌、白血病を含んだありとあらゆるガンがありますし、他の病気や先天性奇形や不妊の問題がチェルノブイリ事故の影響を受けた旧ソ連領土の全土で見られました。

 Press TV:食物についてはどうでしょう? 放射線が検出された野菜や海産物についてのニュースが報道されています。米国はこの地域からの輸入を禁止 していますし、EUもまた、コントロールしようとしています。
 バスビー教授:私がこれから言う事は命を救いますし非常に重要です。人々は、安定ヨウ素の錠剤を服用し、子供たちに与えること。第二に、水は危機発生以前に詰めた瓶詰の水を飲むこと、あるいは南部から純粋な水を持ってくること。ミルクは決して飲まない事。新鮮野菜や生鮮魚介類は食べないこと。缶詰食品だけを食べてください。
 この危機が続く限り、これらの行動が多くの生命を救います。

 Press TV:最悪のシナリオは?
 バスビー教授:最悪のシナリオは爆発が起こること、色んな物質が一緒になり、強制的に爆発を引き起こすことです。 他の科学者は必ずしも同意しないかもしれませんが、私は可能だと考えています。1957年ソ連クイシトゥイムのマヤーク原発が爆発しました。使用済み燃料が爆発し、同じ状況が起こりました。燃料タンクの水が沸騰してなくなり、燃料棒は融解して塊になり爆発しました。1000平方マイルの土地が汚染されました。この土地は、以来ずっと現在まで、放射能があります。これと同じ事が万一起これば、噴出した物質は、いたる所に散らばるでしょう。
 われわれは既に物質の一部は米国に達したのではないかと疑っています。 最善のシナリオは、溶けて、地中に消散し、爆発なしというものです。ですが、それは放射線物質で非常に汚染されることを意味します。そして彼らはその上に砂、スレート等を積み上げ、それを約100キロ程離れたどこかに移し、塀で囲まなければなりません。
 しかし、問題は日本の当局が放射線レベルが低いと言っていることと、人々が30キロゾーンの外に住むことができると言っていることです。
 彼らは、原子力発電所を建設し続け、ウランを採掘し続け、沢山のお金を儲けたいのだと思います。これは、犯罪と言っても良いほど無責任です。

 ソース

 リスク評価
2011年1月に出版された,小出裕章『隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社)を購入しようと思ったら品切れだった。(その後,5月5日に増刷版を入手できました)

 木元教子・碧南酉葵・東嶋和子『私たちは、なぜ放射線の話をするのか』(2008,ワック出版)は原子力の平和利用に原発は貢献しているから怖がる必要はない、安全対策はしっかりしていると技術者は言っているのだから大丈夫という論理だった。今回の原発事故がこの本の内容を裏切っている。この4月に再刊されたが、話し手の見込みや見識が間違っていたことが分かる皮肉な本となっていた。

 大朏博善(編)『放射線の健康への影響』(2008、ワック出版)は原発専門家へのインタビューをまとめた本だが、内容は前著と大同小異だった。安全に管理された放射性物質は安全であるという論理なのだ。
 インタビューに選ばれた人々が原子力推進派なので発言自体にバイアスがかかっている。例えば疫学調査は科学的な結論が得にくいということを大桃洋一郎氏もフランスのオシェム氏も言う。だが、それだから危険だというのは特別な意図を持ったいい方だとオシェム氏は話を進める。これでは誰でもおかしいと思うはずだ。疫学調査は明確な結論が出にくいことはいいとしよう。だが、だから危険だということにはならないという結論は変だ。だから安全とはいえないという結論も同時に成り立つからである。
 中村政雄氏(科学記者)は「国と事業者を信用することが大切」だ」と言うが、それが可能ならだれも心配しない。フクシマの事情はその提言を裏切っているのだ(2011年4月4日、池田記)。 

 今後は落ち着いた分析や正しい評価も出てくると思う。とりあえず時々刻々の記録はこれまで。
【追記】nikkeiBPnetに出た大前研一の論文は4月4日の時点でかなり正確だった。ワード・ファイルで記録しておく。

▼岩波新書『津波災害』より


 ■2011年4月12日。冷温停止しても原子炉を廃炉にして安全にするには数十年がかかる。これは今回のような事故を起こした原発に限らないのだ。
 安全と言われているすべての原発に当てはまることなのである。鎌田浩毅京都大学教授は「1963年に日本で最初の原子力発電が行われてから蓄積された膨大な量の放射性廃棄物を地中に処分する課題も、依然として残っているのです」と指摘している(「週間東洋経済」3/26号)。
 稼働していなくとも、その冷却期間に再び地震が津波に襲われないとは言えない。現に今回も4月8日に再び震度6の地震にみまわれた。
 復旧作業は中断した。配管は破損した可能性がある。
 3月末の状態から二週間たったが、原発はなんら改善されていない。原発の安全技術はウソだったことが明らかになっている。
 これでも原発を信じることができる人はよほど技術力に信頼を置いている人だろうが、それは幻想である。
 放射能汚染水が流され放しの事態に、本日チェルノブイリ級の「レベル7」の事故と判断されたと言う(原子力安全保安院による評価)。日本製品ブランドはすべてダメになる。市民レベルでの全国放射線測定値(R−DANによる)があります。さすが日本の市民運動。


▼2011年4月23日
書店で朝日新聞社からの
朝日選書876
『原発のどこが危険か』新版が
出ていた。
奥付の発行日は4月25日。
前著が出たのは1995年。
その時点で全交流電源喪失
(ステーション・ブラックアウト)が
起こる危機を想定していた。

また、
今回の事故の評価について
かなり正確な判断をしていた。
事態を正しく見通せたひとは
誰もいなかったこと、
それは危機管理の欠陥であったこと
が正しく述べられている。


5月のゴールデンウィーク。山形県天童市で大きな八文字屋書店では原発事故関連本が平台に多種類並べられていた。小田原市内ではまったく並んでいなかったのに。
 翌第二週になると小田原市内の書店にも並び始めた。NEWTONの6月号が地震と原発事故をクロノロジカルによくまとめている。他に池上彰『そうだったのか! 池上彰の学べるニュース』(海竜社)、明石昇二郎『原発崩壊』(金曜日)、安斎育郎『福島原発事故』(かもがわ出版)を参照した(池田,2011年5月14日)。 

小出裕章氏の本は6月1日に発行ということだったが、書店では売り切れらしく、出ていなかった。アマゾンでも一時的に品切れ。
 6月6日に入手できた。『隠される原子力』と重なっている記述が多いが、フクシマ事故の状況が推測され、その推測は正しいことが徐々に明らかになっている。また、事故後の原発会社の対応の欺瞞も指摘されている。

原発事故当時の状況は「読売新聞」で6月8日から「検証 原発危機」として始まった連載記事が正確と思われる。6月8日現在、管直人首相の原発事故対応を小沢一郎が批判して、早期退陣を要求しているが、認識が間違っている。原発事故対応の誤りは、原発科学者や専門家にあったのだ。政府の誰が対応しても不適切のそしりを免れなかった。要するに専門家は原発事故を甘く見ていたのだ。そのことは事故当時の報道や状況を逐一注視していれば分かったはずなのだが・・・・。
 批判の矛先が奇妙な方向に向かって、内閣打倒が野党はもとより与党の目的になっている。議員たちにそんなことをしている暇はないはずだが。(2011年6月9日記、池田)

 

群馬大学・早川由起夫教授のブログより

 国と地方自治体が、7000余りの地点で放射線量を測定して
インターネットで公表している。
 福島県内だけでなく、関東地方全域と東北地方南部に及ぶ。
測定点の位置を@nnistarさんがひとつ一つ地図上で確かめて、
測定値ごとに色分けしてプロットした(たいへんな御苦労である)。
 私がそれをみて、0.25マイクロシーベルト毎時などの等値線を
引いてつくったのがこの地図である。
 したがって、使ったデータはすべて国と自治体が測定したもの
である。@nnistarさんのページにデータ表が公開されている。


 事故から半年たってようやく正しい情報が整理されて出るようになった。
 議論百出で混迷の度合いを深めていく可能性もあるが、
 小出裕章氏の著書を中心に理解を進めていきたいと思う。
 
 小中学生にも読めるという配慮で書かれた本も出ました。
 (2011年9月19日発行)


 2011年10月25日記 

 内部被曝に安全な放射線量という基準はないという確信で書かれた本

 薬学博士・生田哲による

 




▼USA側の議事録が公開された。その内容の一部。



▲2012年1月29日 読売新聞より




END
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