東京混声合唱団第178回定期演奏会プログラム

2001年2月21日(水) 19:00開演 東京オペラシティコンサートホール・タケミツメモリアル
指揮:松原千振、大谷研二

〔極めつき20世紀合唱名曲選−様々な技法にみる変遷その2〕
●リゲティ・曲
曲:György Ligeti (1923- )
永遠の光
Lux aeterna (1966)
●ペンデレツキ・曲
曲:Krzysztof Penderecki (1933- )
悲しみの聖母
Stabat Mater (1962)
●トルミス・曲
曲:Veljo Tormis (1930- )
大波の魔術 [男声合唱]
Incantatio maris aestuosi (1996)
●武満 徹・曲
曲:Toru Takemitsu (1930-1996)
風の馬 より 第1ヴォカリーズ、指の呪文 [女声合唱]
Wind Horse (1961)
●ボディ・曲
曲:Jack Body (1944- )
聖ステファンへの讃歌
Carol to St. Stephen (1975)
●マクレーン・曲
曲:Clare Maclean (1958- )
希望がここに
Hope there is (1990)

『海外委嘱作品・再演』
●シェーファー・曲
曲:R.Murray Schafer (1958- )
自然の声
Vox Naturae (1997)

『次世代に謳う 委嘱初演パートU』
●西村 朗・曲
曲:Akira Nishimura (1953- )
無伴奏混声合唱とカウンター・テナーのための 内部への月影
Inner moonlight (2001)

 昨年の「極めつき20世紀合唱名曲選−様々な技法にみる変遷その1」ではドビュッシーやシェーンベルクなど、ヨーロッパの中心部の作曲家による作品が主となっていましたが、今回はその周辺部、あるいはヨーロッパ以外の国の作曲家の作品に移ってきていますね。ヨーロッパ中心部以外にも豊穣な音楽があるということが認識されてきた時期だからでしょうか。
 リゲティはハンガリー動乱の時期に西側に亡命しましたが、ハンガリー時代には合唱団を指導していた関係で、結構合唱曲を作曲していました。その時代の代表的な曲は「夜」「朝」ですが、亡命後も「レクイエム」や「永遠の光」などを作曲しています。永遠の光は16部の無伴奏混声合唱曲ですが、厳密に五線譜で記譜されているにしても、同声部内では同じような音形がリズムを細かくずらされているために、結果としてクラスター風の音楽となるようになっています。「2001年宇宙の旅」にも使われていますので、今年演奏するのはちょうど良い時期なのかも。前にも東混の定期で演奏されたことがありましたが、その時はあまりいい演奏ではなかったなぁ。今回に期待します。
 ペンデレツキの「悲しみの聖母」は基本的には12声部の無伴奏混声合唱曲ですが、途中48声部に分かれるところがあり、そこではすべてのパートは半音づつずらされ、結果として5オクターブのクラスターになります。エキストラを入れて48人で歌うのでしょうか。それともクラスターの部分はグリッサンドで歌うのかな。一部シュプレッヒ・シュティンメとなっていますが、それ以外はリゲティの曲と同じく厳密に五線譜で記譜されています。この曲は東混がサントリーのサマーフェスティバルで歌っていますが、あんまり熱さを感じない演奏でした。ペンデレツキの合唱曲は初期の「ダビデの詩篇」や「悲しみの聖母」は熱さのある曲だと思うので、mtakとしては最後のD-durに熱さが欲しいです。
 トルミスはECMレーベルの「忘れられし民族」で広く知られるようになったと思います。当時は楽譜の入手が困難であったため、日本ではなかなか演奏されることがなかったようですが、松原千振氏(当時はフィンランド在住)による合唱センターへの楽譜の寄贈などのご努力によって、だんだんといろいろなところで演奏されるようになりましたね。今日のこの曲も合唱連盟のコンクールで自由曲として数団体によって演奏されています。
 武満さんの「風の馬」については何もいうことはないでしょう。武満さんの合唱曲の代表として今後も歌われていくと思います。ただ、mtakは極めつき20世紀合唱名曲選ということで日本の合唱曲を選ぶとすれば、柴田南雄さんの「追分節考」を推薦したいと思います。
 ジャック・ボディさんはニュージーランドの作曲家で、かつて日本音楽集団からも委嘱を受け、その時、邦楽器の勉強のために来日していたこともあったと記憶しています。この曲は中世のキャロルをテーマにした一種の変奏曲です。特にリズム的な面の変奏に特徴が有ると思います。ちょっと変わったレパートリーとしてうってつけかも。
 マクレーンさんはオーストラリアの作曲家で、「希望がここに」は8声の混声合唱曲ですが、mtakはまったく知らないので、どんな曲なのかとっても興味があります。
 その他、シェーファーさんの委嘱曲再演や西村さんの委嘱初演も楽しみですね。