平成11年6月11日(金)pm1:00

ジャスト1時にT&Cという旅行やらマリンスポーツやらを扱ってるとこから電話がきた。じつは、つい数日前の夜10時頃にもこっから電話があり、新入社員のテレアポ娘の映佳ちゃん(20)をからかって遊んだことがあったのです。

そんときの映佳ちゃんは「池袋の本社に来て私にいろいろ説明させてくださいよ〜」の一点張り。若い娘にテレアポをとらせ、じっさいに足を運ばせ、プロが口説き落とす……っつー、この手の商売の常套手段ですな。

で、めんどっちいので、「いやオレはインドア派だし、旅行は取材で行けるし、マリンスポーツにはまったく興味ないから別にいいよ」と断わったのだが、この娘ががんばるがんばる。なかなか電話を切ろうとしないんだ。しかたがないので、自分はライターで、そういうウラ商売みたいなのに詳しい、だからそんな奴のアポをとったら会社に迷惑がかかるよ、と脅し、その後で「いくつ?」とか「名前は?」などと根掘り葉掘りテレクラよろしく聞きだし、しまいには、「今給料いくらもらってんの?」「どうせヤクザな会社でしょ。やめちまえ、んな仕事」などと逆にあおり文句を入れたりしたのであった。向こうも向こうで「えー、そうしようかなあ……」とか「じゃあ、雇ってくださーい」なんて感じに暗示にかかってんですよ。

で、適当なところで「じゃあね!」と切ったので、もうかかってこないと思ったのだが、幾日もおかずに、こんどは昼にかけてきやがった。懲りない懲りない。そんでもって本日も、「ひまなんでしょ〜今から池袋に来てください。私がじきじきに説明しますからぁ」なんてのたまう。で、一応断わりを入れて、また世間話を始めました。ま、声は可愛いしヒマだったからさ。
 

★っつーことでテレアポ嬢との会話丸ごとテープおこし
 

オレ「今どこに住んでんの?」
映佳「東池袋です」

(以下おなじ順番で会話してます)

「家賃いくら?」
「寮なんですよ。でもけっこう高い寮費とられるんです」
「広いの?」
「狭いですよー。広いところに越したいけど貧乏だし」
「俺も狭いんだよ。一緒に金だして広いとこ住もうよ。2人で5万ずつ出せば10万のとこ住めるよ」
「そうか、そうですよねー。うーん」(←本当に考えてる)
「まじでそうするか」
「って、そんなことじゃなくてー、今から池袋に来てくださいよ」
「やだよ、俺これから小堺くん見るんだから」
「暇じゃないですか!」
「うるさいな、俺だって忙しいんだよ、これからパチンコとかパチンコとかパチンコとかに行かなくちゃなんないんだから」
「パチンコするなら池袋に来てくださいよぉ」
「立川からだと遠いんだよ」
「1時間くらいかかりますよね」
「そんなにかかんないよ! 40分くらいだよ」
「あ、そういえば、伊熊さんの住んでいるあたりに、友だちが住んでいて、錦町でしたっけ? 私けっこうその辺詳しいんですよ。歩道橋みたいなのがあるでしょ」
「まさに。家から一歩出れば見えるよ」
「やっぱり〜」
「男んちだろ」
「違いますよ」
「ところでおまえ、うちの住所どっから仕入れてんだよ」
「えー……」
「まあ、こういう電話はさ、俺みたいなやつじゃなくて、もっと学生みたいな若いやつにかけろよ。エイコが猫なで声を出せば一発でそこまで行くだろ」
「エイコじゃありません、映佳です! 映画の映にニンベンに土ふたつです!」
「ああ、そうだったそうだった」
「学生はダメなんですよ。社会人のみ」
「ああ、そういうキマリになってんのね。独身のヤングサラリーマンに若い娘が電話してアポをとるって算段か」
「そうです……」
「ってオマエ素直に(笑)。だからさ、もっと小金がありそうな若いのに電話しろよ」
「伊熊さん、いくつなんですか」
「30歳」
「若いですねー。声の感じだとそんなふうに聞こえないですよ」
「あーそう。だからさ、30のフリーライターに、マリンスポーツ勧めてもしょうがないだろ」
「そういえばライターってー、どんな雑誌に書いてるんですか〜」
「おまえが絶対読まないような雑誌や本に書いてんの」
「かっこいいー」
「いや、あんましかっこいい雑誌には書いてないよ、アンタが想像してるような。雑誌は何読んでるの?」
「アタシ雑誌とかあまり読まないんですよー」
「あーそう……」
「なんて名前で書いてるんですかぁ」
「コロスケとかね」
「コロスケ〜? きゃはははは」
「笑ってると池袋行ってルポって雑誌に発表しちゃうぞ」
「あ、いいですよ。だから来てくださいよ池袋に……」
「もー、だから俺みたいのにかまってないで、次のやつにかけろよ。っつーか昼なんだからメシでも行ってこいよ。オレも行きたいし」
「そういえばまだ食べてないです」
「一緒に食べない? そこに行くのは嫌だけど、なんか映佳に興味がわいてきたし、顔が見たいから(笑)」
「だったら来てくださいよ。今から見れますよ〜」
「いや、ええっちゅうに。映佳、個人的に俺に会いたくないの?」
「えー……だって」
「あーあ、せっかくコロスケ、キムタクに似てんのに」
「え、ほんとですか! えー、えー!」
「そうだよ、俺は四ツ谷のスナックの韓国人ホステスに、『アナタ、キムタクヤに似てるある』と言われたんだから。ま、だからキムタクっていっても謎の韓国人アイドルのことなんだけどね(笑)」
「そういう韓国のアイドルがいるんですか」
「…………(こいつ天然だな)。映佳誰に似てんの?」
「えー、誰にも……」
「髪長いの? 黒い?」
「ボサボサ」
「ボサボサなのかよ、じゃやっぱ会いたくない」
「そんなこと言わないで〜。ねーマリンスポーツに興味ないんですか? 旅行は?」
「ないの。旅行は取材でなんどもひどい目にあってるから、わざわざ行きたくないの。こないだだって種子島日帰りで行かされたんだから」
「安くていい宿とかあるんですよ」
「あーそう。だったら今電話で教えてよ」
「来てくんなきゃちゃんと説明できないんですよぉ」
「だいたいさ、T&Cってなんの略なんだよ」
「えーと、トラベラーズ&コミュニティですよ」
「わかりやすいのね……」
「ふふふふふ」
「あー、腹減ったしもう切るよ」
「また電話しまーす」

ガチャン☆

電話を切ると小堺くんは終わっていた。どうやらオレは彼女の暇つぶしにつきあわされたようだ。この調子だとまたかけてきそうなので、こんどはケータイの番号くらいゲットしたいと思います。(つづく)
 
 
 
 
 

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