真っ赤な頬
「こんな時まで部活やるなんてツイてないッスよ」 ブツブツと文句を言う赤也を宥めるように肩を軽く叩く。 「きっと副部長は一人っきりのクリスマスが寂しいから 人の邪魔してるんスよ。間違いない!」 「まぁまぁ、いいでしょ?皆と一緒にファミレスでミニパーティも 出来たんだし」 そう言うと先を歩いていた赤也が振り向く。何処か機嫌が悪そうだ。 「先輩、それ本気で言ってる?」 「え、何で?」 「…ま、先輩のそれは今に始まったことじゃないし、いいッスけど。 なんつーか俺も慣れたつもりなんスけどね」 「何よ、その言い方。私が何か変な事言ったっていうの?」 派手にため息をつく赤也にむっとすると今度は笑われる。何が言いたいのか こっちはさっぱりだ。 「別に?先輩が変じゃないっていうならそうじゃないんスか」 「何よ、その投げやりな言い方」 可愛くないなんて思いながら寒さの所為で紅くなってしまっている 頬をぎゅっと抓る。 「らりするんすか!」 「何言ってるのか、わかんないな〜」 「あーもう!」 抓っていた手を赤也が掴み、そのまま手を繋ぐ。思いも寄らない 行動に狼狽えて手を振りほどこうとするが、一向に離してくれる 様子はない。 「ちょっと、赤也、離しなさいよ!」 「嫌ッス」 右手をしっかり握って離さない赤也を睨んでいると、露骨なため息が 聞こえる。どうも飽きられているようで気分が悪い。そもそも我が侭な 後輩の面倒を見ているのは自分なのに何でこんなに振り回されているのか。 「帰るんでしょ?じゃ、行くッスよ」 「手」 「何言ってるのか聞こえないな〜」 引っ張られるように歩きながら延々と同じ会話を繰り返す。 「もー、赤也。今日の赤也は変だよ」 「変じゃないッスよ」 突然立ち止まった赤也が振り向き、いつもと違う真剣な表情をしていた 事を気付く。 「そうッスね、変だとしたら先輩の所為」 まっすぐとこちらを見る視線に次の言葉が出て来ない。普段の調子の いい赤也と違い、真剣な様子に軽く言葉を返すことなんて出来なかった。 「誰の所為でこんな目にあってるのやら」 「…どんな目?」 「知りたい?」 何か辛い目にあっているのかと心配そうに覗き込むと真剣な表情のまま 赤也が人さし指でもっと寄るようにと合図する。小声で言わなければ 言えないほど、言いにくいことなのかと素直に近寄った。 「…あのさ」 声が聞こえにくいのでもう少しだけ近寄る。 「アンタが好きだから、変なんだよ多分」 「…え…?」 驚いて赤也の方を見ると笑っている。先程までの真剣な表情は何処かへ と消えてしまっていた。ただ残るのは耳元で囁いた言葉だけ。 「そーゆーことなんで、じゃ、いたただきまーす!」 「ちょ、ちょっとストップ!赤也、意味分からないよ!?」 楽しそうに笑って近づく後輩の胸を突き飛ばして距離を取る。突然の 展開にとてもじゃないが、着いて行けてない。 「先輩の意思は関係ないッス!」 「馬鹿、関係大有りよ」 「何言ってんの?それとも俺のこと嫌い?」 「ば、馬鹿!そうじゃなくて…」 「んじゃ、遠慮しないッスからね。いただきまーす!」 その数分後、左の頬を紅く腫らした赤也が謝りながらと歩いている 所を偶然、柳が見つけることになる。 |