仲よきことは美しき哉






連戦、連戦…着艦しては息つく暇もなく出撃。そんな状態が3日も続いていた。
ようやく敵艦の防衛網を突破した夜明けの船は安全海域にて浮上、修理作業に
取り掛かっていた。ようやく訪れた休息にクルーはほっと胸を撫で下ろしている。

「…あー、声が出ない…」
「…出てるじゃん」

D1フロア…上甲板エレベーターホールのソファーに並んで座っているパイロット
2人は生気のない声を上げていた。連戦に次ぐ連戦で体力はほぼ皆無状態の2人は
死んだように寝た後、起きてもまだ全回復には及ばず現在に至る。

「…俺、当分RBに乗りたくない」
「…アンタが乗らないで誰が乗るんだよ。つかパイロットが仕事放棄すんな」

夜明けの船の男性パイロットの2人の会話はどこか、地球にある日本の『マンザイ』
なるものに似ているとカオリは笑う。ちなみにカオリ曰くボケが、ツッコミが
タキガワらしい。それを聞いたエステルは意味がわからず近頃は休息時間になると
書庫で『マンザイ』の資料を探しているという。

「なー、タキガワ」
「なに?」

ソファーに座って…というのは控えめな表現でダラダラした状態でぼけーっと
している2人はひたすら時間が過ぎるのを待っていた。四半舷休息の当直勤務が
終わったら、再びベットにダイブだと決め掛かっているようである。

「お前、と何処までいった?」
「ぶはっ!?…な、な、何言ってんだよっ!?」

の言葉にタキガワが動揺するとゾンビ化していた2人がにわかに動き出す。
特にの方は先程まで死んでいるような目だったのに、その目には生気が
満ち始めキラキラと輝いているようにも見える。

「おー、その焦り様は何かあったのか?ん?お兄さまに話してみ?」
「誰が、お兄さまだっ!」
「何を言う、正真正銘俺はの兄貴だぞ?例え似てなくても俺の妹だ」
「そんな事知ってるよ!」

まるで本当の兄弟がじゃれるように小突いたり、頭を撫でたりと仲が睦まじい。
するとハンガーデッキの連絡通路から噂のが、そして艦橋からは
エステルがエレベーターホールへと姿を見せた。いつものようにじゃれついている
男2人を見て、微笑ましい光景に笑うと複雑そうな表情で見るエステルに
気付くとタキガワは顔を赤くして、は表情をきりっと戻して立ち上がる。

「随分元気ね?」
「…仕事はどうしたんですか?」

はタキガワに、エステルはへとそう声をかけた。

「まぁね。そういうこそ、大丈夫?無理してない?」
「うん、大丈夫。ペースは落としてるしね。タキガワこそ、大丈夫?さっきまで
顔色悪かったみたいだけど」
「パイロットの本業は戦闘。つまり次の戦闘に向けて英気を養うのが現在の最優先
事項って所だね」
「…確かに一理ありますね」

この2組は艦内でも有名な『特別に仲の良い』コンビ(?)である。一応これでも火星
独立軍の唯一の戦闘艦であるので控えめに表現するとこの言葉になるが、有り体に
言えば艦内公認カップルだ。ついでには兄妹(但し義理で
あるらしい)であり、ここにタキガワを加えると夜明けの船の飛行隊が形成される。

「あ、そうだ。ご飯食べる?俺、腹減っちゃってさ」
「ん?そうね…確かにお腹空いてるかも…うん、食べようかな」
「お、いいね。俺も俺も。エステルは?お腹空いてない?」
「…そうですね。ちょうどお昼時ですし…私も一緒でいいのなら」

わいわいと会話しながら2組のカップルがエレベーターへと乗り込む。ちょうど
エレベーターから降りてきたアキとカオリは4人を見送りながら肩をすくめた。
「ま、仲が良いならいいんだろうよ」
「そういう事だな」




<あとがき>
すいません、オチなしです。とりあえずこれから出てくるであろう男PCの
扱いがここで決まるな〜と思いながら書いてました。多分このままだと
お調子者の兄ちゃんで決定かと。カップリングは上記の通りエステル。
書きたかったのはボケ&ツッコミな2人の会話でした(笑)男2人だけだと
こんな感じでじゃれているのを希望。