ミニミニSS置き場

タキガワ×


「お疲れー」
ワンテンポ遅れて着艦した希望号からが降りて来たので
笑いながらそう言って近づいて行く。すると彼女はまるで
張りつめていた糸が切れたように微笑んでくれる。

その瞬間が結構好きなんだよね、俺。

「タキガワこそ、お疲れさま」
先程の戦闘では夜明けの船に向かう全ての魚雷を叩き切るという
技を見せたパイロットとは思えない笑顔だ。もちろん、自分の贔屓目も
あるのはわかっている。ただパイロットとしての勘、技量に
関して言うなら尊敬する人だ。でも、普段の女性としての彼女には
もっと違う感情を持っている。
「…タキガワ?」
「え?あ、ごめん、ごめん。そうだ、腹減らない?俺、さっきから
お腹空いちゃってさ」
「そうねぇ…。私も小腹が空いてきたかな?」
「じゃあ、決まり。食堂行こう!」
「うん、じゃあ行こうか」

多分気付いてないんだろうな。
でも…まぁ、まだ教えてやんない。
もうちょっとアンタが俺のことを見てくれるまで内緒だ。
俺のこと、少しでも特別に見てくれたら言うよ。

俺、アンタが好きなんだよって。

SWEET PONCHI様 選択式お題シリーズ台詞編1より
「まだ教えてやんない」でした。
カオリ&恵


「お、恵は天使か?」
「はい。あ…私たち、お揃いですね」
嬉しそうに笑う恵にまぁなとカオリが頷く。ニャンコポン
主催というより強制のハロウィンの仮装くじ引きでカオリは
天使を引いたのである。目の前の恵が天使と言うのは
とてもよく似合うし、何の問題もない。が、自分が
天使と言うのは如何な物だろうと思っているカオリは
苦々しく思っているふしがあった。
「うふふ、あっちでが楽しそうに笑ってましたよ」
が?」
「ええ、悪魔を引いたと笑ってました。…一緒に
いたタキガワはとても不満そうでしたけど」
とタキガワが一緒にいるのはいつものこと
だからいいとして、何故悪魔のくじを引いた彼女のことを
タキガワが不満なのかがわからない。

カオリが首を傾げていると恵が再び控えめに笑った。
普段はどちらかというと無表情なことが多い恵が
こんなに笑うのは珍しい。
控えめに笑うその姿は正に天使と言っても差し支えない程、
幸せそうで優しい笑顔だった。
「きっと、の衣裳が気に入らないんですね」
「衣裳?」
「ええ、いつもの制服と違って肌の露出の高いものでしたから」
恵の言葉に成る程と頷くと自分の衣裳を見てみる。
どうやら人を選んで衣裳を渡しているようで、恵には
清楚でシンプルな白いワンピースと羽根を
渡しているが、自分には天使の割に露出の高い衣裳だ。
「あんなに仲が良いと、ちょっと羨ましいです」
「あれがか?…まぁ、仲は良いんだろうが、ちょっとな…」
間違いなく艦内のクルーで一番仲が良いのだろうが、周りを
気にしなさ過ぎるところがある。少なくとも自分は彼らの惚気を
一番聞く羽目になるので最大の被害者と言えよう。
「仲が良いことに悪いことはないですよ」
「…周りに被害がなけりゃな」
「うふふ」

恵ちゃんは何となく無表情なイメージなんですよね。
タキガワ×


「俺、あんたに負ける気は無いんで。…覚悟しといてよ」
頭上に響くのはMAKIのアナウンス。飛行隊の訓練開始の
アナウンスが響いている。
「それはこっちの台詞」
彼の台詞に一瞬あっけにとられたもののすぐに気を取り直して
そう笑って見せる。もちろん負ける気なんてない。
相手が例え自分の好きな相手でも…そして艦内一の才能の
持ち主だとしてもだ。

「んじゃ、真剣勝負だかんな」
「もちろん」
お互いの愛機に乗り込みながら意識を集中させていく。
モニタにうつる互いのRBとビーコンのみに視界を集中させ
無心になる。そして感情が戻るのは戦闘訓練終了後。

「どうもパーフェクトにならないのよね」
「…それ、嫌味?」
「違うってば。タキガワ相手だと気が抜けないってこと。
大抵はギリギリの状態にならないもの」
ビーコンの破壊は全てほんの僅かの差で、4-1で
辛勝という結果だった。
「…ったく、参っちゃうよな」
「何が?」
「だからさ、あんたに負ける気はさらさら無いんだけど。
どうしたって勝てないってこと」
「?」
「…わかんない?」
当直時間だが、訓練後は休憩をかねてD2フロアにある自分たちの
部屋に戻ることが多い。この時もその習慣通りタキガワの個室へと
来ていた。休憩はせいぜい10分程度。情報端末などがある机の
前にくると椅子に腰掛ける。机に座っているタキガワを見上げると
言葉の意味を図りかねて首を傾げた。

「ま、わからないなら、それでもいいけど」
妙に勝ち誇ったような笑顔でタキガワが笑ってこちらを見ている。
「負け続けも悔しいし、たまには俺が優位に立ちたいしさ」
「タキガワ?意味がわからないよ」
「だから、いいって言ってるじゃん。あんたはそのままでいいんだよ」
勝ち誇った笑顔から、微妙に表情に変化が表れる。たまに見せるその
表情は…少年とも青年とも取れる妙に優しい笑顔。

あーあ、ズルイよね。そういう表情。
子供と思わせておいて、そうじゃないところを見せるんだから。

心の中でそうため息をつくと現実でもまたため息をつく。
「…何で、ため息?」
「誰の所為よ」
「…え?俺?」

ああ、世の中は不公平だ。
年齢が上でも、運が良くても勝てないものがある。
…好きな人には弱いんだものね。

SWEET PONCHI様 選択式お題シリーズ台詞編1より
「あんたに負ける気は無いんで」でした。
×エステル


ひとまずは艦内の雰囲気になれるといいと言われ、あてもなく
歩いて回る。足元のBALLSを蹴らないだろうかと気を付けながら
書庫やトレーニングルームを覗いたり、通路を歩くクルーたちに
声をかけられ話を聞く。

不思議な感じ。
私の知らない男性という生き物。
そしてネーバルでも居る、また私と同じ筈の女性もまた
知識や今までの常識とは全く違う。
ここはとても不思議なところだわ。

全てが物珍しく一ヶ所に留まる時間も長い。食堂を訪れたころには
夕食の時間になっていた。クルーたちが和気あいあいと食べる様子を
見ながら、どうやって食事を受け取るのだろうかと遠目から様子を
伺う。するとふと後ろに気配を感じて振り返る。そこに居たのは
この艦で初めて会話したパイロットだった。
「…何か用ですか」
「夜明けの船、広いだろ?」
「…これくらいの規模の船くらい見慣れています」

何でこんなに馴れ馴れしいのかしら、などと思いながら視線を
逸らす。女性ばかりの環境だったせいで男性と言う生き物には
無意識で防御態勢にはいってしまう。それ故に言葉尻はきつめだ。
これが同性ならばきっとそこまで素っ気無い態度も台詞も使うことは
なかっただろう。

「そっか。俺は夜明けの船が初めてでね。最初に来た時は物珍しくて
あちこちを見て回りながら感心してたな」
「そうですか」
「…で、ものは相談なんだけど」
いきなり相談とは何だと思いながら続きの言葉を促す。何故だろうか
この男の言葉は優しく感じる。
「俺と一緒にご飯食べない?」
食事の受け取り口を指差しながら笑う男に一瞬顔を顰めた。
「どうせなら誰かと一緒に食べた方が楽しいだろ?」
こちらの返答も聞かぬまま背中を押され受け取り口へと導かれる。
「わ、私、まだ…っ」
「美味しいよ。味は俺が保証する。ああ、でも嫌いな物とかあるなら
俺が引き受けるしさ。まぁまぁ、これも仲間とのコミュニケーションの
一つだと思って…ほら、はい」
トレイを差し出した男は笑顔はそれなりの青年にも関わらず子供っぽく
見えた。純粋に自分への優しさなのだと悟ると受け取りながら
小さな声でぽつりと彼への返答を口にした…。

SWEET PONCHI様 選択式お題シリーズ台詞編1より
「一緒にご飯食べない?」でした。
テンプレート配布先:スピカ