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自然界にある色々なものを利用して音楽をつくることができます。ここでは、アミノ酸の配列から音楽を作る たんぱく質の音楽について考えます。  
たんぱく質の音楽について
DNAの構成物資の配列から音楽を作る遺伝子の音楽と同様に、たんぱく質のアミノ酸の配列から音楽を作る ことができます。 アミノ酸の配列をどのように音楽に変換していくかということについては、幾つかの手法が考えられ、実際、インターネットを検索すると、異なる人たちが異なる手法でたんぱく質の音楽を作成しているのを見つけることができます。
そのような中で手法の1つを紹介する書籍として「タンパク質の音楽」という本が筑摩書房から出版されています。しかし残念ながら、この本では、どのような経緯でアイデアが得られたかや、どのような癒し効果(?)があったかということは詳しく書かれているのですが、具体的にどのような手法でたんぱく音楽の音楽が作れるのかや、どこでたんぱく質の音楽が聴けるのか、ということについては触れられていません。
なお、このプログラムの開発者は、たんぱく質の音楽について、信憑性などはあまり深く考えずに、興味本位で、プログラムを作っています。
主要なアイデア
書籍から読み取れるたんぱく質の音楽の作成手法について、列記してみます。(間違っているかもしれません。)
(1)任意のたんぱく質を構成するアミノ酸の1つ1つを特定の音の高さにマッピングし、音楽を作成する
(2)音価など、音楽の他の要素も同様に作成することができるが、他の要素はあまり重要ではない
(3)特定のアミノ酸に対して、どのような音の高さを割り当てるかは、そのアミノ酸の分子の振動数によって決まる
(4)振動数は、質量に比例するため、各アミノ酸の音の高さは質量から求めることができる
質量による音の割り当て
20種類のアミノ酸を質量の順に並べて表を作ってみました。さらに、書籍の中で紹介されている楽譜から、割り当てられている音を表に加えてみました。
名前 読み 記号 分子量 音高
Glycine グリシン G 75  
Alanine アラニン A 89
Serine セリン S 105
Proline プロリン P 115 ファ
Valine バリン V 117 ファ
Threonine スレオニン T 119 ファ
Cysteine システイン C 121 ファ
Isoleucine イソロイシン I 131
Leucine ロイシン L 131
Asparagin アスパラギン N 132
Asparatic acid アスパラギン酸 D 133
Gulutamine グルタミン Q 146
Lysine リジン K 146
Gulutamic acid グルタミン酸 E 147
Methionine メチオニン M 149
Histidine ヒスチジン H 155 シb
Phenylalanine フェニルアラニン F 165
Arginine アルギニン R 174
Tyrosine チロシン Y 181
Tryptophan トリプトファン W 204  
質量の小さいアミノ酸には低い音が、質量の大きいアミノ酸には高い音が割り当てられていることが分かります。
12平均率では、ここのページで紹介しているように、ある音の周波数に1.0595を掛けると、次の音の周波数を求めることができます。(1.0595を12回かけると2.0になります。)
上記の表でたとえば、フェニルアラニンの分子量165に、1.0595を掛けると175.01となり、アルギニンの分子量の174に非常に近くなります。この2つだけでなく、表の中には、1.0595倍の関係になっているものが、たくさんあります。
しかし、その一方、1.0595倍からすこし外れたものもけっこう含まれています。これは、質量から音高を決める際に、ぴったりしたものが無くても、一番近い音に割り当てるということが行なわれているからだと思います。たとえば、質量が115のプロリンと質量が119のスレオニンには同じファの音が割り当てられています。
また、ダイアとニック音階上の音だけを割り当てるということが行なわれています。(たとえばハ長調だと、bや#のつく音は割り当てない。)たとえば、質量が115のプロリンと質量が121のシステインには同じファの音が割り当てられています。しかし、115を1.0595倍すると121.8となることから、本来であれば、ファ#の音を割り当てるべきかと思います。
また、相当する質量のアミノ酸が無いため「レ」の音は欠落した状態になっています。
グループによる音の割り当て
こちらのサイトでは、上記の書籍とはまったく別の観点から音を割り当てた例が紹介されています。アミノ酸をある基準で分類し、グループごとに音を割り当てるということが行なわれています。
名前 読み 記号 分子量 音高
Isoleucine イソロイシン I 131
Valine バリン V 117
Leucine ロイシン L 131
Phenylalanine フェニルアラニン F 165 ファ
Cysteine システイン C 121
Methionine メチオニン M 149
Alanine アラニン A 89
Glycine グリシン G 75
Threonine スレオニン T 119
Serine セリン S 105
Tryptophan トリプトファン W 204 ファ
Tyrosine チロシン Y 181
Proline プロリン P 115
Histidine ヒスチジン H 155
Asparagin アスパラギン N 132
Gulutamine グルタミン Q 146
Asparatic acid アスパラギン酸 D 133
Gulutamic acid グルタミン酸 E 147 ファ
Lysine リジン K 146
Arginine アルギニン R 174
思うに・・・
DNAの音楽では、どの構成物質にどの音を割り当てるかについては、明確な決まりはなく、また、ある程度、人間が音を選択する余地が残されています。なので、ある配列に対して、人間が音楽的になるように操作することができます。
一方、書籍で紹介されているたんぱく質の音楽では、音の選択に対して、規則によって決まる部分が多く、人間の判断する余地があまりないため、よりアルゴリズム作曲的と言えるのではないかと思います。音楽的なものができた場合、人間による影響は少ないわけですから、配列自体に何か意味があったと考えることができるかもしれません。
 
分からないこと
このページの上のほうにあるアミノ酸の分子量の表はwikiで調べることができます。
下にある表のように、同じアミノ酸でも、塩基の組み合わせが違うものが何種類かあり、それぞれで質量が違っているのではないかと思います が、なぜか一意に特定されるようです。
 
裏にある音
遺伝子では、塩基が対(二重螺旋構造)になっていますから、遺伝子の音楽では、これを元に、裏の音というものを考えることができます。(詳しくはこちら。)アミノ酸は塩基が3つで構成されていますから、同様に、対になるアミノ酸が存在するはずです。(ただし、このアミノ酸は、20種類のアミノ酸には含まれないかもしれない。)この物質の質量から、裏側にある音を求めて、和音で演奏するということが出来るかもしれません。
下の表は、各アミノ酸を構成する塩基です。
アラニン
GCU,GCC,GCA,GCG
ロイシン
UUA, UUG, CUU, CUC, CUA, CUG
アルギニン
CGU, CGC, CGA, CGG, AGA, AGG
リジン
AAA, AAG
アスパラギン
AAU, AAC
メチオニン
AUG
アスパラギン酸
GAU, GAC
フェニルアラニン
UUU, UUC
システイン
UGU, UGC
プロリン
CCU, CCC, CCA, CCG
グルタミン
CAA, CAG
セリン
UCU, UCC, UCA, UCG, AGU, AGC
グルタミン酸
GAA, GAG
 スレオニン
ACU, ACC, ACA, ACG
グリシン
GGU, GGC, GGA, GGG
トリプトファン
UGG
 ヒスチジン
CAU, CAC
 
チロシン
UAU, UAC
 
イソロイシン
AUU, AUC, AUA
バリン
GUU, GUC, GUA, GUG
Cの対はG,Gの対はC,Aの対はU、Uの対はAですから、例えば、アラニンの対となる塩基の配列は、「CGA,CGG,CGU,CGC」のいずれかになります。これらの質量から対になる音の音高を求めれば良いのではないかと思いますが 、前述のように、なぜ1つのアミノ酸に対して、複数の塩基列が割り当てられているのかがわかりません。
そうこう考えているうちにwikiで面白いものを見つけました。
中央にCircle of Fifthを思わせるような円盤があり、周囲にアミノ酸を示す記号が書かれています。この対角線上の対が対応するアミノ酸と考えられるようです。

(上記画像のLGPLに関する記述は、このページの下のほうを見てください。)
暇があれば、この対角線上の音と和音にして演奏できるようなソフトを作りたいと思います。
 
色との関連づけ
タンパク質の音楽では、色との関連づけも行なわれるようです。色々な色には周波数がありますから、おそらく、アミノ酸の質量から、色の周波数を求めるのだと思います。
実際にたんぱく質の音楽を聴くには?
アミノ酸のデータからタンパク質の音楽を演奏するソフトは、こちらのページからダウンロードできます。
また、下記で紹介しているサイトで、実際にたんぱく質の音楽が聞けるようです が、音の割り当ては、書籍で紹介されているものではなく、アミノ酸をグループわけして音の割り当てを行なったものです。
関連リンク
LGPLに関する記述
ページの真ん中ぐらいにあるアミノ酸の円盤の画像は、ファイル:GeneticCode21-version-2.svgにある図の中から関係のありそうなところを抜き出したものです。元々のファイルは、
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/d/d6/GeneticCode21-version-2.svg
にあります。
この画像(protein.jpg)の取り扱いはLGPLにしたがってください。
上記元ファイルに対する編集者:Tetsuji Katsuda
上記元ファイルに対する編集日:2009/01/21
上記元ファイルに関する情報:
Author 
Edited by Seth Miller User:arapacana, Original file designed and produced by: Kosi Gramatikoff User:Kosigrim, courtesy of Abgent, also available in print (commercial offset one-page: original version of the image) by Abgent
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