カール=オットー・アルバーディ

ドイツ軍俳優である。ドイツ人俳優では無い(名前からするとドイツ人だとは思うけど)。ちょっとした戦争映画マニアの人ならこの顔を一度は観た事があるはずだ。『戦略大作戦』の己の欲望に弱いのタイガーI型戦車の戦車長、『パリは燃えているか』の綴れ錦を受け取りにきた親衛隊員、『バルジ大作戦』では珍しい国防軍将校。とにかく映画に出ているこの人がドイツ軍の格好をしていないのを観た事が無い。金髪・碧眼でモロにドイツ訛りのアクセントの強い英語を使って連合軍と戦い続けた俳優なのだ。

実はオレの子供の頃の自慢は、この人に似ている事だった。今考えると全然自慢にはなってないんだが、圧倒的に連合軍よりドイツ軍の方が人気のあった我町(と言うかオレの友達連中)では、この人に似ているというのはまさに光栄な事だったのだ。トレードマークはタラコ唇でこれもオレと同じだ。

この人は演技派で、シリアスな戦争ドラマで冷酷なドイツ軍親衛隊将校を演じる事もできるし、コメディタッチの戦争ドラマで間の抜けたドイツ軍親衛隊将校を演じる事も出来た。……要するにドイツ軍の役しかできなかったわけだ。オレは大の戦争映画好きなのだが、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線モノを観る時は必ずこの人を探したものだった。それは今でも旧作を観るときはかならずチェックしている。つまり習性になってしまっているのだ。

ただこの人が出ているほとんどの映画では、チョイ役程度でセリフも二言三言くらい、総出演時間は5分くらいというのがザラである。そんなこの人が最も派手に暴れてくれた映画といえば異論無く『戦略大作戦』が挙げられる。ボロボロになったタイガーI型戦車で銀行に眠る金塊を守備している戦車長役は、この人の一世一代の大役。しかもクリント・イーストウッドに丸め込まれて一緒に金塊を強奪する事になるのだが、銀行の金塊の山を見た時この人の細い目が大きく見開かれるシーンは今観ても大爆笑である。

この人が活躍したのは60年代から70年代で、89年にテレビドラマに出て以来どうしているのか分からないのだが、現在は何をやっているのか、生きているのかが非常に気になる人である。