岩尾 正隆

本当に息の長い活躍を続けてらっしゃる俳優さんである。デビュー作は『宮本武蔵』シリーズでの死体役であるから、もう40年近くのキャリアを誇っていることになる。最近でもテレビに映画にと精力的な活動を続けているのだが、すでに東映を退社して現在ではフリーで活動しているそうだ。

オレがこの人を初めて意識したのは他の多くの悪役俳優と同様に『仁義なき戦い』であった。数多くの死者がでるこの映画の中でも、第一作目の一番最初に菅原文太に殺されるならず者役を熱演していた。当時のこの人はこういった頭のちょっと弱そうな暴れん坊を演じさせると、その風貌と相まって素晴らしい存在感を発揮していた。

その後は多くの監督に認められて大小様々な映画で活躍している。代表作を挙げれば『県警対組織暴力』『真田幸村の謀略』『冬の華』『竜二』『修羅の伝説』『カルロス』『共犯者』といったところであろうか。演じた役は剛球一直線というイメージの強い人であるが、意外と繊細な役柄も多く(もちろんヤクザなんだが)、特に『竜二』での焼き鳥屋の親父役は自他共に認める名演技だったのではないだろうか。

最近ではきうちかずひろ監督映画(といっても次作品にも出るかどうかは不明)や東映京都製作の時代劇によく出演している。『遠山の金さん』などでは福本清三と交代で用心棒役なども演じているのであるが、本人としては悪役に限らない、もっと幅広い役を演じたいとの希望もあるようだ。オレもそれには大賛成で、目立ち過ぎる悪役が嫌われる最近の邦画においては(どう見ても悪役という役で出るというのはもちろん嬉しいんだが)、剛球一本だけでなく意外な役で出演して観ているオレを驚かせたりもしてほしいものだ。とにかくこれからも楽しみな悪役さんである。


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