若葉がぐんぐん伸びる季節となりました。新年度が始まって2ヶ月を過ぎ、お互いに仲良くなってきた頃です。でも、この原稿に取りかかりはじめて2週間いつの間にか梅雨入りのニュースが聞かれる頃になってしまいました。
ところで、私たちの学校では小学部3年生から宿泊学習が計画されます。以前は1年生から計画し、低学年は「親子一緒に校内で」、中学年は「親から離れて校内で」、高学年になったら「校外で」と段階的に仕組んでいたのですが、私が離れていた数年の間に「親子で」の段階が省略になっていました。
どういう経緯で省略されたのか分かりませんが、何となくしっくりときません。時間をかけて見直さなければと思っています。
さて、3年生の宿泊学習「お泊まり会をしよう」ですが、何しろ初めての事、とにかく「楽しかったよ」という思い出を作りたいなあと思っています。そこで、過去の取り組みの反省・・・。
どうしても「この際だから、あれもさせたいこれもさせたい。」と欲張りがちですが欲張らず、「やってみた、経験した、楽しかった」をモットーに入浴と食事作りを中心に取り組もうと考えました。つい、ADLに関わって出来ないことが目につき、出来ないことを出来るようにとトレーニングしがちですが、それは生活単元学習の本質とはずれるので出来るだけ排除しました。(でも、お風呂での洗い方などは家庭に連絡して、気をつけてもらうようにお願いしましたが)
それから、食事作りに関わって食材の買い物などにも取り組みます。それについても「買い物を経験した」が目標。もう一つ欲張るなら「買い物の経験を通して、買い物にはお金が必要なことに気づく」というところでしょうか。もちろん、一人ひとりの状況によって目指す姿は違うのですが。
「お泊まり会をしよう」の単元の立ち上げは、校外学習と「夜まであそぼうの会」の2本立ての活動で行うことにしました。電車に乗って出かけることの好きな子ども達ですから、電車を使っての校外学習は楽しみな活動の一つです。市内へ出かけて夕食の材料や花火の買い物をすることにしました。また、いつもの下校時間には帰らず夕食を食べ、花火を楽しんでから帰ろうという「夜まであそぼうの会」は、お泊まり会に向けての心構えを作る第一歩として計画しました。
校外学習は順調に進んだのですが、夜まであそぼうの会で小さな事件がありました。時計を見て時刻の分かる自閉症のA子さんが「帰る時間!」といってパニックになったのです。スクールバスを見れば他の子どもたちも帰ると言い出すだろうと考え、下校時間をおやつの時間として教室で過ごすことにしました。思った通り、他の子ども達は下校時間を過ぎても特に騒ぎ出すことはなかったのですが、さすがA子さんは時計を見て下校時間と分かって騒ぎ出したようでした。
前日と当日の朝にスケジュールを話し確認しておいたのですが、聞いて知るということと分かって納得することは違うんですね。「今日は何をするの」「花火」、「いつ帰るの」「7時」、などといった会話が出来るからと行って、必ずしも分かって納得できている訳ではないということを改めて思いました。
単元は、「お風呂の日」「買い物の日」「食事作りの日」「デザート作りの日」を繰り返します。また、夜の集いの時に行う遊びなども随時行います。
「お風呂の日」は当日利用する寄宿舎のお風呂の使い方に慣れることがめあてです。学校での取り組みは家庭と社会との橋渡しですから、家庭のお風呂と銭湯などの公衆浴場の間をつなぐ、緩やかなルールのある公共のお風呂という位置づけで考えています。だから、もしかすると家庭では許されているかもしれない「いきなりドボン」や「濡れたまま出入り」は、「ここではこうするんだよ」と教えます。「こうすると、着ていたものと新しいものがごっちゃにならないよ」ということも教えます。同性同士だけなら実際にやって見せたいところなのですが、養護学校はなぜだか女性の方が多い。障害のある子どもは男の子が多い。というわけで、やってみせるところは家庭にお任せです。
「買い物の日」は地元の商店を主に利用しながら、必要に応じて電車を利用して市内の商店街にも行きます。食事作りやデザート作りは教師と共同作業で行います。それそれが出来ること得意なことを生かし、出来ない部分を教師が補うという取り組み方です。とはいえ、家庭でお手伝いの経験のない子どもたち。教師の補いの方が多い現状です。それでも、出来ることを精一杯やることで満足感が得られているのではないかと思っています。
さてさて、いよいよお泊まり会当日が明後日と迫ってきました。「帰る時間!」のA子さんは、お泊まり会の荷物が入ったカバンを見つめ「悪い予感」がしているそうです(A子さんのお母さん・談)。どんなお泊まり会になることやら、楽しみです。当日の様子は「お泊まり会特集」で。