差別解消へ積極措置を R・M・カンター「企業の中の男と女」他

 女性差別の解消は、今日の最も重要な社会的目標の一つだが、成果はあまりはかばかしくない。地道な教育と啓蒙によって差別をなくすというのが一番穏当な方法だが、女性の地位をすみやかに向上させる効果は期待できない。
 そこで具体的な基準や目標を定め、雇用や昇進の際に女性を有利に扱うなど、差別をなくすための積極的な措置をとるというのが、アファーマティブ・アクションである。
 R・M・カンター著「企業の中の男と女」(生産性出版・二八〇〇円)は米国企業での調査から、アファーマティブ・アクションは差別解消のため、また企業の生産性向上のためにも有効な方策であることを明らかにした労作。
 著者の主張の中心は、「職務が人を作る」というものである。しばしば女性は、責任感に乏しく意欲が低いなどといわれる。これらは一般に女性の「特徴」として片づけられがちだが、実際には同じような境遇におかれた男性は同じような傾向を示すようになる。つまり、仕事上の機会が限られているときに人間が示す一般的な反応なのだ。
 しかも女性は、少数派に特有のプレッシャーを受けている。失敗すれば「やはり女性はダメ」といわれ、成功すれば「例外」とみなされる。昇進すればますます少数派になるから、昇進には慎重になる。
 したがって問題は女性の側にではなく、組織の男女構成にある。だから、女性の数を増やせばそれだけで、女性は能力を発揮するようになる、と著者は主張する。
 調査対象が終身雇用的な性格の強い大企業なので、日本の企業を考えるにも大いに参考になる。日本では最近、女子学生の採用が激減しているが、このことは長期的に、日本企業の足かせとなってくるのではないか。明快な結論は、そんな不安も抱かせる。
 清水久美子著「私は総合職の女」(講談社・一六〇〇円)は、インタビューをもとに女性総合職の実像を描いたもの。男性にはない様々な苦労がありのままに語られている。

(1995.5月配信)

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