産業基盤を支える女たち 小関智弘「おんなたちの町工場」他

 女性の就業率は五〇%を越えた。つまり、十五才以上の生徒や学生、お年寄りを含めた女性の半数以上は職業を持っているのである。これに対して男性の就業率は七七%。もはや男性と女性の間に本質的な違いはない。
 これだけ多くの女性たちが職業を持っているのだから、当然、その内部は多様である。それでも、町工場で工作機械を操る女性職人となると、あまり目に触れることがない。小関智弘著「おんなたちの町工場」(現代書館・一八五四円)は、そんな女性たちを訪ね歩いた記録である。
 登場するのは、フライス盤や旋盤、印刷機などを操る、技術を持った女性たち。大企業のハイテク製品も、元をただせばこうした職人たちの作り出す金型や部品によって成り立っている。日本の産業の基盤を支える女たちである。
 著者は著述家であるとともに、現役の旋盤工でもある。そのためか著者の眼差しは、登場する女性たちの目と同じ高さから決して離れない。描かれた女性たちの健気な姿は読み手をひきつける。
 しかし読後には、やや重苦しい気分が残るのを禁じ得なかった。町工場の職人たちは、もっとも労働時間の長い人々に属する。最初は「自分の工場を持つ」という夢のために、後には経営のために。そんな中、彼女たちの何人かは、機械に巻き込まれて指を失ったり、若くして夫を失っている。女だからと同情するわけではないが、産業の二重構造の下半分を支える女職人たちの姿は、けっこう衝撃的である。
 働く女性の増加とともに、独身を貫く女性も増えてきた。しかし、彼女たちもやがては定年退職を迎える。松原惇子著「OL定年物語」(PHP研究所・一四〇〇円)は、四〇代前後の、そろそろ定年後を意識しはじめたOLたちを描いたノンフィクションノベル。これを読むと、「女性のシングル」というのが確実に、一つの生き方として根を下ろし始めたという気がしてくる。さて、それでは男性の方はどうなのだろうか。

(1994.3月配信)

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