経済から迫る結婚問題 大橋照枝「未婚化の社会学」他

 皇太子の結婚で結婚ブームが起こるという希望的観測もあったが、今のところそのような兆しはみられない。女性のシングル志向という流れは止まらないようである。
 なぜ女性たちは結婚を望まなくなったのか。大橋照枝著「未婚化の社会学」(日本放送出版協会・八三〇円)は、これに明快な解答を与える。経済的に自立可能になった女性にとって、結婚には経済的デメリットが大きく、結婚を避けることが経済的に合理的選択になった、というのだ。
 結婚というシステムは、女性に家事・育児・介護という役割を無償で引き受けさせ、同時に世帯という単位をもとに人間を能率よく管理することを可能にするものだった。それはまた、女性の就業機会が少なく、その賃金も低い場合には、個人にとっても経済的に合理的であった。
 しかし今や、女性の高学歴化が進み、若い世代では賃金格差も縮小した。男性がほとんど家事を分担しない現状では、女性たちにとって結婚は、手に入りかけたキャリアと収入を失うことを意味する。結婚のコストが増大したのだ。
 著者は、さまざまなデータと経済理論の両面から、現代日本の「未婚化」現象を分析していく。結婚という問題に対する経済学的アプローチは、これまで紹介されることが少なかっただけに、新鮮な感じがする。後半部では女性の自立のためのさまざまな政策提言も盛り込まれている。記述は極めて平明である。
 では、高学歴でさまざまな可能性を持ちながら主婦となっていった女性たちはどうしているのか。緒方明「ミキハウス症侯群」(宝島社・一一〇〇円)は、こうした母親たちの精神分析。彼女たちは満たされない自己愛を満足させるために、子どもに高級ブランドを着せ、オシャレにすることによって自分の存在意義を確認するのだ。女性はナルシシズムが強く、宝石に自己愛的同一視する、といった決めつけが気になる部分もあるが、若い母親たちに勧めたい一冊である。

(1993.7月配信)

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