| 作品名 | こんな感じ |
| 越境 パット・バーカー/著 高儀進/訳 白水社 |
児童心理学者のトム・シーモアは妻と散歩中に川に飛び込んだ青年を助ける。イアンと名乗った青年は実は10歳の時に老婆殺しの容疑でトムの精神鑑定を受け、12年ぶりに新しい名前と身分を与えられて社会に出たダニー・ミラーだった。ダニーはトムがダニーの責任能力を認めた為に有罪になったことを恨んでいた。ダニーとの再会は偶然なのか…。再会をきっかけにトムとダニーはダニーの心に再び踏み込んでいく。 1992年、英国で起こった10歳の二人の少年による幼児殺害事件に触発されて書かれた小説。日本でも似た事件があり、震撼とさせられました。作者のパット・バーカーは人間の心理に深い興味のある人らしく面白く読めました。ただし心理学の本ではなくあくまで小説なので、犯罪を犯した少年の心理が理解できるという類のものではありません。 翻訳物なのでたまにわかりにくい言い回しもあった気がしますが、これは私の読解力に問題があるのかも…(笑)。 |
| 昏い部屋 ミネット・ウォルターズ/著 成川裕子/約 東京創元社 |
自動車を激突させて自殺を図ったらしい若い女性・ジンクス。意識が戻った時、彼女は過去数日間の記憶をなくしていた。婚約者と親友の裏切りと死、更には過去に起きた前夫の殺人事件…錯綜する幻影の中で彼女は疑問を持つ。「私が自殺するはずがない…。」マフィアとの黒い噂のある実業家の父、家族の厄介者の義理の弟たち、深く傷つきながら強固な精神力でジンクスは記憶の闇を探っていく。 イギリスの推理小説の探偵ってどんな危機に出会っても顔色一つ変えずに、というのがいいみたいなんですが、ジェームズ・ボンドに通じる魅力といいますか(笑)、ジンクスも女性ながら理性的で克己心に富んでます。主治医のプロザロウと交わす会話も知的で皮肉で面白い。 |
| LOVE LETTERS
上演版
訳=青井陽治 |
杜さんも出演された「ラブ・レターズ」の原作です。サンケイホールの公演時に記念に買って久しぶりに開きました。 小学校2年の時、同じクラスのメリッサに一目惚れしたアンディは彼女に手紙を送ります。それから50年、微妙な距離を保ちながら2人は手紙を交わしていきます。ちぐはぐな二人の人生がクロスした時、訪れる結末は…。 やっぱり良いですね。読み進んでいくうちにあの時のアンディとメリッサが甦ってきました。二人の最後の手紙のやりとりではいつものように涙涙…。またあの二人に再会できる日を今はひたすら待ってます。 |
| 雷桜 宇江佐真理(うえざ まり)/著 角川書店 |
瀬田村の庄屋助左衛門は愛娘の初節句の夜に娘お遊を何者かに連れ去られてしまう。それから14年、お遊の帰りを待ちわびる一家の元に帰り着いたのは山育ちの野生の少女だった。運命の波に翻弄されながらも凛として生きるお遊の鮮烈な生き方。 隣藩同士の確執、将軍の子・清水斉道の屈折といった話を縦糸に、狼女と呼称される「お遊」の数奇な人生が描かれ、なかなかおもしろい。イッキに読んでしまいました。斉道とお遊の別れは各々の痛切な思いが伝わってうるうる来てしまった。お遊と斉道を取り巻く人達が優しくて、決してハッピーエンドではないけれど、読後が爽やかでした。 |