観劇日記

わが心の竜馬・浩太朗夢まつり  1996年6月 大阪・劇場飛天

  わが心の竜馬  作・演出  ジェームス三木
  キャスト 坂本龍馬・里見浩太朗  寺田屋お登勢・加賀まりこ  おりょう・杜けあき  千葉佐那・浅利香津代
        中岡慎太郎・田村亮

 あらすじ
 1幕
伏見の寺田屋では竜馬の許婚者のおりょうと女将のお登勢が竜馬の帰りを待っている。そこに江戸の千葉道場から若侍が竜馬を訪ねて来る。帰り着いた竜馬と共にもしや竜馬を狙う刺客ではと一同が若侍と対面すると、若侍は千葉道場の娘佐那だった。佐那も自分こそが竜馬の許婚者だと名乗り、おりょうと佐那は対立する。勝ち気な二人にはさまれて竜馬は困り果て、一晩考えてどちらかを選ぶと答えてしまう。
その夜更け見廻り組に宿を襲われ、風呂場で危険を察知したおりょうは裸同然の姿で竜馬に知らせ、薩摩藩邸へ助けを求めて走る。
おりょうの機転で薩摩藩邸に逃げ込んだ竜馬の傷をおりょうは献身的に介護する。竜馬の盟友中岡新太郎はおりょうの働きと竜馬を思う気持ちの深さをを認めて竜馬とおりょうの結婚の仲立ちをする。
薩摩藩邸で二人は晴れて夫婦となり、薩摩に旅立つ竜馬について日本初のハネムーンに出発する。
 2幕
薩長同盟の実現のため奔走する竜馬は盟約の成立を受けて岩倉具視を訪ねる。竜馬は岩倉に天皇を中心とした新政府設立後は海援隊で世界を相手に貿易をする夢を語る。そんな竜馬をおりょうは新婚旅行後落ち着いた下関で一人待っている。いずれは政治活動から手を引き、おりょうと二人悠々自適の日々を送るという竜馬の言葉を信じて。
11月15日、京都河原町の近江屋に中岡と竜馬が語り合っている。その二人を刺客が襲う。
一人眠るおりょうの元に竜馬が返ってくる。雨に濡れた竜馬の姿におりょうは着替えを準備する。着替えを手に部屋に戻ったおりょうだが竜馬の姿を見つけることはできなかった。

 ショー
男装の女(薔薇)・藤娘(藤まつり)・フィナーレ(花の女)

 感激日記
時代劇スターの座長芝居しかも歌謡ショーつきというのは未体験だった。正直ついに私も杜さん見たさにこういうジャンルまで足を踏み入れるか…という一種の感慨があった(笑)。ところが実際見てみるとこれが面白くてはまってしまった。座長芝居も侮れません。
里見さんの芸能生活四十周年記念公演で、ジェームス三木さんの作・演出と言う異色の組み合わせ。劇中に流れるのはフラメンコ・ギターのドラマチックな音色。客席通路も効果的に使い、暗転のないスピーディーな舞台だった。ジェームス三木さんはテレビでの仕事が多いだけに舞台の作品でも客を飽きさせない方だ。
里見さんにとって竜馬は珍しいタイプの役柄だと思うが、茫洋として憎めない男、稚気があり人に愛される男性像が意外にもはまっていた。竜馬の死で終わる芝居だが見終わった後に爽やかさが残るのは笑いをちりばめた作・演出と共に里見さんの持ち味もあるだろう。
そして竜馬をめぐる女達3人。これがそれぞれ強くて可愛いい。座長公演にしては女優の比重が重い。だが、この女達が輝くほど彼女たちに愛される竜馬の人間的な魅力が増す。
まず寺田屋お登勢が加賀まりこさん。いい女優さんだ。小柄で可愛い顔立ちだが、キリッとした姉御肌。竜馬とは「わけあり」で姉さんぶってはいるが心の中で竜馬を思っている。3人の中で1番竜馬を愛していた女かも知れない。それなのに竜馬に許婚者のお竜を預かってくれと頼まれると妹分としておりょうの面倒も親身に見てしまう。女としては切ない。
2人目が千葉佐那の浅利香津代さん。千葉道場の娘で竜馬のために密偵のようなことまでする。自分こそが「竜馬の許婚者」と言い張る。芸達者な方だが、この役に最適かといえば疑問。初登場場面は男を装っている。女が男を演じる色気がない。杜さんの男役を見なれた目だから点が辛いかも知れないが。華やかさや甘さのある方ではないので、加賀さんや杜さんとトライアングルという役柄は損。
そして杜さんのおりょう。オイシイ役もらいましたね。1幕の出だしは勝ち気な船宿の女中。赤い着物がよく似合い、きびきびと働くようすがいい。竜馬が刺客に襲われる場面では白い肩を見せて長襦袢を引っかけた姿で飛び出してくる。こういうシチュエーションがあるのは知っていたが、実際見るとドッキリの場面。その長襦袢姿で客席を駆け抜けたりもする。そして1幕の最後は黒地の振り袖の花嫁衣装。2幕も着物姿のフラメンコ。竜馬をめぐる3人の女にはそれぞれ均等に見せ場が作ってある。しかし1番若い杜さんは次々と姿形(衣装)が変わるので目の保養。
杜さんのおりょうはおきゃんで竜馬のためなら命がけの思い切った行動もできる女。竜馬に対しては一途な可愛さがある。竜馬の帰りを辛抱強く待てる女でもある。竜馬の全てを受け入れる女という感じがした。
終幕近く一人眠るおりょうの枕辺に暗殺された竜馬が立つ。この時の杜さんがとても色っぽかった。寝間着姿で竜馬の濡れた身体をさぐりながら「濡れてはる……」と一言。この竜馬の身体をさぐる杜さんの腕がからみつくようで艶めかしかった。竜馬の幻が消えた後、一人たたずむおりょうで幕。

併演の「浩太朗夢まつり」は宝塚の演出家・植田紳爾さんの演出。伊達に宝塚で長年演出家をやってないと思わせた。ショー全体は花をモチーフとして里見さんの歌を入れながら上品にまとめてある。装置もシンプルで洒落ていた。
杜さんは三場面に登場。藤娘は可愛く、花の女はスッキリとした立ち姿が美しかった。ただ里見さんとあまり身長差がないようで藤娘の連れ舞は膝を折って大変そうだった(笑)。
圧巻は薔薇の女。若衆姿のソロで杜けあきの日舞の魅力が存分に出ていた。退団後のファンだから杜さんの生日舞は初見だ。若衆も初めてだったが、これを見られただけでも大収穫だった。杜さんの魅力を良く知っている植田演出の妙。団体客も多い飛天、座長公演の客席が杜さんの舞に魅入って静まり返っていた。


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