花束を君に〜14話クレア編?

 

47

 

「そ、そういうことだったのか〜」

 さくら亭での遅い昼食の後、コージとクレアは『陽のあたる丘公園』の大きな木の下でのんびりとしていた。

トリーシャはシェリルと買物、ディアーナは病院の仕事の為にクラウド医院に戻っていた。

「申し訳ありませんコージ様、ディアーナ様に内緒と言われていましたので」

 最初からディアーナの計画通りだったらしい。

『コージさんを許す代りにご飯を奢って貰うつもりなのでトリーシャちゃんとクレアちゃんも付き合ってくださいね』

(酷いやディアーナ…ラ・ルナで1人分奢った方が安かったじゃないか)

 

「コージさま? それであの事件の事はどうなったのですか?」

 クレアが言っている事件とは当然ロビンが計画したエンフィールド襲撃計画についてであった。

「…そうだな、クレアも無関係じゃないし、話せる所までは話すよ」

コージはクレアに事件の事について話し始めた。

 

 

「そうでしたか…ロビン様、再審請求で刑が軽くなるといいですね」

「ああ、でもクレアは怖くない?」

「私が? どうしてですの?」

 クレアが不思議そうな顔で首をかしげた。

「一応エンフィールドで悪さしようとしてた奴だし…」

「…以前の事件の時、コージ様はロビン様を疑いながらも最後まで信じつづけてましたわ」

「そのせいで評議会占拠なんて事件までいっちゃったんだけど…」

 コージは思わず苦笑する。

「道を間違えてしまっただけ、コージ様はロビン様を今も信じていらっしゃるのでしょう?」

「ああ…」

 コージはしっかりと頷いた。

「私はコージ様を信じております。だから、ロビン様も信じておりますわ」

 コージにはクレアの微笑みがとても眩しく感じられた。

「ありがとうクレア。そういえばその、賞金が無くなっちゃって、優勝したら何か買ってあげるって言ってたんだけど…ゴメン」

「いやですわコージ様、私『怪我などしないで下さればそれで充分です』と言った筈ですわ」

 そう言った時のクレアの表情をみてコージはドッキッとした。

「それに、コージ様は兄様に勝ちましたわ。これでもう…」

 クレアが頬を染めながらコージを見つめる。

 

そして静かに目を閉じた。

 

「えっ? あっ…」

 思わずコージはうろたえる。

(これって…やっぱり…)

 

クレアの肩に両手を乗せる。

 

 クレアは一瞬ビックっとしたが、目は閉じたままであった。

なさけないことにコージは1度ゴクッと唾を飲みこんだ。

 

 

そして…

 

 

「…なにやってんだ、お前ら?」

「「!?」」

 2人だけの世界に突然の侵入者!コージとクレアは思わず飛びずさってしまった。

「へ、ヘキサ!」

 声のした方をみると膨れっ面をしたヘキサがコージ達を見下ろしていた。

「おいコージ! 飯もつくらねーでなにクレアといちゃいちゃしてんだよ! 俺はもう腹が減って死にそうなんだぞ!!」

「べ、別にいちゃついてなんか…」

「あ、それでは今日は優勝のお祝いに私が料理を作りますわ」

 うろたえるコージとは裏腹にクレアは何事も無かったかのようにヘキサに笑いかけた。

「ほんとか? それじゃあ今すぐ家に帰ろうぜ」

 ヘキサが嬉々としてクレアの腕を掴む。

「まずは材料を買いに行きませんと。コージ様も手伝って下さいますか?」

 クレアは立ちあがって歩き始めた。

「…女の子ってわからない」

「おいコージ、帰りはケーキで許してやるぞ」

 キビキビと歩きながら公園を出るクレアを見つめながら呆然と呟くコージにヘキサは勝ち誇った表情で話し掛けた。

「は? なんで俺がヘキサにケーキ買ってやらなきゃいけないんだ?」

「ほ〜、んじゃあクレアにキスしようとしてたことみんなに言っていいんだな?」

「!? お前見てたのか!!」

「…(ニヤリ)」

 ヘキサは無言でクレアの元へ飛んで行く。

「…あんな弟嫌いだ」

 

 結局ヘキサはコージの元に帰ってきた。主人に逆らった為カードに強制吸収されたヘキサカードをコージが引き取ったのだ。

主人に逆らい、魔法能力のほとんど全てをリセットされてしまった使い魔にもはや引き取り手は無いであろう。(コージ以外)

 

「でもなあ…」

 主人に逆らった場合のペナルティーはカードの持ち主が決める。ロビンがヘキサにかけたペナルティーは

『魔法能力の初期値化』であった。これによってヘキサは現在魔法Lv1程度しか魔法が使えない。

 ペナルティーはただそれだけだった。ヘキサ本人もペナルティーは『死』であると覚悟していたのだが。

 

「俺が主人だった頃から役にたつ魔法なんて使ったことないけどな」

 

 

そう、何も変わらない。

(もしかしたらロビンは…)

 

 

「コージ様! 早くいきませんか?」

 公園の入り口でクレアとヘキサが待っていた。

「ああ、今いくよ…」

 コージは立ちあがり歩き出す。

 

 

 いつもと変わらない、

 

  いや帰ってきた日常へ向かって…

 

 

  15話へ


 

―――2ヶ月後

「…ちっ、こんなことならさっさとやってりゃあよかったぜ」

全身黒づくめの男のつぶやき…

 

「わあっ!綺麗ね〜、それ何でも屋の彼氏からのプレゼント?」

「ち、違うわよ、そんな、彼氏だなんて…」

真っ赤になりながら否定する黒髪の少女…

 

そして…

 

次回:最終話『セロ』

 

 

あとがき

そうですか、クレアが好きですか(笑)

後少し!!とりあえず当初予定の「全キャラに見せ場」と「エンフィールドワールドにきっちりとした決着を!」

ってゆう目標はやります。SSでこーゆうやり方はどうかな?って思ったんだけど

一応(おい!)トリーシャとクレアをヒロインで!と言った以上これくらいの贔屓は・・・

最終話、はたして誰に花束を?ってことで。12個くらい分岐したりして(苦笑:笑えません)



SSトップに戻る HPに戻る