Bの悲劇


ルシードは部活まで時間の空いている時は大学校舎の中庭でよく昼寝をしていた。
トリーシャが声をかけたのは昼寝を始めてちょうど10分位の時である。

「あん?トリーシャじゃねぇか、何かようか?」

ルシードが返事をしながら上半身を起こすとトリ−シャが隣に座った。

「うん、実は聞きたい事があって、ルシードさんて付き合ってる人いるの?」

「はあ?何でそんな事聞くんだ?」

「聞きたいからじゃダメ?ねえ教えてよルシードさん」

好奇心に満ちた目でルシードを見つめながらトリーシャは顔を近づけた。

「あのなあ、何で俺がそんな事いわなきゃならねーんだ。大体俺が誰と付き合おうが関係ないだろ」

「ええっ、やっぱり付き合ってる人いるんだ!」

「何でそうなる!例えばだ、例えば!!」

「じゃあいないの?」

「…お前俺の話聞いてるのか?」

「アハハ、御免ルシードさんつい夢中になっちゃって。実は色々噂が流れてたから
どうしても知りたくなったんだ」

ルシードの言葉に怒りが篭ってきた事に気付き、両手を合わせウインクしながら謝った。
(トリーシャにこの表情をされては許せない男はいないだろう)それ以上にトリーシャの
最後の言葉が気になりルシードの怒りは静まっていた。
(これも計算のうちだとしたら、恐るべしトリーシャ)

「噂って何だ?」

「えっと例えばティセはルシードさんの事ご主人様って言ってるから危険な関係じゃないか?とか怖がりな更紗が懐いてるからもしかして?とか…」

「ティセの奴は前犬に追っかけられてたのを助けてやってから勝手にご主人様とか言っているだけだし、更紗は家が近所でガキの頃から面倒見てやってたからだ!」

このあたりの質問は何度もされたのでさすがにうんざりしていた。

「その辺は有名だからボクも知ってたんだけど他にもあって…」

トリーシャは頬を赤らめながら言いにくそうにうつ向いてしまった。

「まだ何かあるのかよ、別に気にしねぇから言ってみろよ」

「う、うん実はルシードさんはゼファー先生の○奴隷説とかビセットを玩具にしてる説とかもあって…」

トリーシャは真っ赤になって下を向いた。

「何だそれは!そんな根も葉もない噂が流れてんのか!!」

「でも意外と信憑性のある噂なんだよ」

本人は身に覚えが無いのに何故か信憑性はあるという訳のわからない噂をルシードは強靭な精神力で何とか冷静に聞くことにした。

「女の子の間ではルシードさんの事を知りたいならゼファー先生に聞けって言う格言があるの知ってる?」

「格言じゃねーだろ。まあガキの頃からゼファーとは一緒だったからな、昔の事は俺より覚えてるかもしれないが」

「その情報量がすごいんだ、身長体重は当たり前、スリーサイズや視力聴力、好きな食べ物までなんでも知ってるんだって」

「聴力なんてどうやって知るんだ?」

「そうそう、最新の情報ではほくろの数まで知ってるらしいんだ」

「そんなの本人だってしらねえぞ」

ルシードの突っ込みに気付かないのかトリーシャは1人でどんどん盛り上がって行った。

「それでね、将棋部の子が『どうしてそんなに詳しいんですか?もしかして2人は恋人同士なんですか?』って冗談で聞いたんだって。そしたらゼファー先生がニヤッと笑って『それは言えない、だがルシードの事を全て知っているのは私だけだ』って言って部室から出ていったんだって」

「……(ゼファーの野郎!)」

「その時先生ノートを置き忘れて行ったんだ」

「まだ続くのか?」

「ルシードノートってタイトルで、そこにはルシードさんの全てが書いてあって、ここが弱いとか、あそこが感じるとか書いてあったらしいよ」

「……」

さらに沈黙、噂とは言っているがゼファーなら冗談でそこまでやりかねない、が証拠がない。表しようのない怒りをどう押さえて良いか思案していた。

「で耳たぶ齧られると感じるって書いてあったけど本当なの?」

トリーシャが興味深々といった顔で尋ねてくる。さっき赤くなったのは演技に違いないとルシードは思った。

「ちょっとまて、お前そのノート見たのか?」

「うん、先生に頼んで見せてもらったんだ」

トリーシャが嬉しそうに答える。

「噂でも何でもないじゃないか、ゼファーの野郎!遊んでいやがったな、ゆるせねえ!」

「じゃあやっぱり○奴隷って本当だったんだ」

「それは違う!全部ゼファーのでっち上げだ!からかわれたんだよ、お前らはな(とゆうか俺がな)」

「えーっ嘘だったの?そんなあ、ボクみんなに言っちゃったよ」

トリーシャは心底残念そうに溜息をついた。

「なっ・・・たくしょうがねえ、お前みんなの誤解ちゃんと解いてこいよ」

ルシードは立ち上がって歩き出した。

「え、ちょっとルシードさんどこ行くの?」

「ゼファーのところにきまってんだろ、2度と嘘がつけない体にしてやる」

「でもゼファー先生昨日から学会に出席してて1週間帰ってこないはずだよ」

「やられた、確信犯だ。ほとぼりが冷めた頃帰ってくるつもりだったな」

ルシードはガクっと膝を付きうめいた。

「そんなに落ち込まないでよ、ボクもみんなに誤解だって言っておくからさ、元気だして」

もともとトリーシャがみんなに言いまわっていたはずだがいつのまにかルシードの唯一の味方に見えてしまうからすごい。

「たく、そういやあもう一つ噂があるとか言ってたな?」

ルシードはトリーシャの正面に座りなおした。いくぶん落ち着いたように見える。

「ビセット玩具説の方?でもこれは…」

「あん?言えないような内容なのか?」

ルシードの目がきつくなる。

「そうゆうわけじゃないんだけどビセットを怒らないでね?」

「…今度はビセットがふざけた事をいってるのか?」

「うーん、本人に自覚はないだろうけどまあいっているといえばいってることになるのかな?」

「はっきりしねえなあ、とりあえず言ってみろよ」

話をうながす。ちなみに怒らないとは言っていない。

本当に怒らないでよねと念を押しながら話し始めた。

「ビセットってさあ、午前の授業は早弁するか寝てるかなんだけど…」

「まあそうだろうな」

「寝言でよくルシードさんの名前がでてくるんだ。その内容がすごくてさあ『ルシードそこはダメ!』とか『そんなの激しすぎるよルシード』とか大声で言うんだよね」

わざわざ声真似までしてトリ−シャは説明した。

「どんな夢を見てるんだあいつは!」

「うん、ボクも気になって聞いてみたんだけどビセットってば『べ、別にいいだろそんな事!』って言って真っ赤になって教室から出ていっちゃうんだ。それで怪しいって噂が広まったんだけどビセットに何をしたの?」

「知るかそんな事!あいつが勝手な夢を見てるだけだ、俺は何もしていない!」

「そうなの?なあんだ、つまらないの」

つまらなくない。ルシードはビセットがふざけた寝言を2度と言えなくする為もう一度立ち上がった。

「あっルシードさん怒らない約束だよ」

「そんな約束した覚えはねえ!」

「でも寝言なんだから本人に責任はないよ?」

「…じゃあ授業中眠らないよう注意してくる」

「うーん、それなら問題ないかな」

ルシードはグラウンドに向け歩き出した。

「あっそうだルシードさんボクの質問に答えてないよ。好きな人いるの?」

「別にいねーよ」

最初答えるつもりもなかったがもはやどうでもいいし隠す事でもない。ルシードは素直に答えた。

「そうなんだ、じゃあ程々にしてあげてね」

トリーシャは晴れやかな笑顔でルシードを見送った後、後ろの木に向かって話しかけた。

「好きな人いないってサ、良かったねシェール」

「うん、ありがとうトリーシャ」

2人の会話をずっと聞いていたらしいシェールはトリ−シャの側までやってきた。

「それで告白するの?」

「い、いきなりそんな事しないよ。でもチャンスがあるのは解ったからおね−ちゃんにケーキの作り方教わってバレンタインに渡そうと思って」

「えーっずいぶん気の長い話だね、そんなので大丈夫なの?」

「いいでしょ別に。そんな事より次はどんなタイプが好みか聞いてみてよ?」

「また聞くの?今度はケーキだけじゃすまさないよ?」

「うぐっ、まあそれは相談ということで」

「まあいいやとりあえず今日はシェールの奢りでケーキ食べに行こう」

「はあ、しょうがないか」



―下校時

「うわあっルシード何怒ってんだよ!」

「うるせえ、自分の胸に聞いてみろ!!」

グラウンドからビセットの悲鳴とルシードの怒声が聞こえる。

「うわー、ビセット気の毒にね」

「うん、まあ情報を得る為には多少の犠牲もあるから…あっ」

「どうしたのトリーシャ?」

「アハハ、何でもない。早くクーロンヌ行こう」

トリーシャは駆け出した。

(そういえばもう一つ噂があったの忘れてたなあ。文化祭終わってから広まったやつだけど
ルシードさんとルーさんの禁断の美形ホモ説。まあこれは次の時に聞けばいいや)


ルシードに関する噂話はまだまだ終わりそうにないようである


おしまい


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あとがき:
「ルシードさんビセットに何をしたの?」ただこの一言を言わせたくて書いてみた
SSなんだけど酷いね。1、2分でサクッと読めるのを書こうと思って色々はぶいて
書いてみたらひたすら2人の会話でしかもダラダラと長い。自分への戒めの為に
しばらく置いときます。オチてないし
ティセと更紗の所は適当。公式設定とかあるのかな?ドラマCDとかで。
と、思ったらティセは本当に襲いかかってきた犬(じゃれついた子犬)から
ルシードに助けられたらしい(笑)あとBの悲劇意味わかります?


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