約束



「あっ、ここかな?」

中央公園から大通りにでて、最初に見える赤い屋根の食堂。

「ロザリーの店。うん、間違いないや」

「いらっしゃいませ!!」

食堂のドアを開けると、赤毛で髪をおさげにした女の子

…歳はボクと同じ位かな?が元気に迎えてくれた。

ボクは奥の方の席に座ってメニューを広げる。

「ご注文はお決まりですか?」

「うん。このページのメニューを全部お願い」

「はい、わかりまし…ってええ!?」

「ど、どうしたの?」

「どうしたの?ってだって20品くらいあるわよ?」

「うん。今日は朝御飯食べてないからお腹空いてるんだ」

「お腹空いてるって今朝の10時なのに…」

赤毛の子はまだ怪訝な顔をしている。なんだろ?

「ねえ、変な顔してどうしたの?」

「…あの、失礼ですけどお支払いは大丈夫ですか?」

あ、そっか普通こんなに食事する人はいないってベルンストが言っていた

もんね。食い逃げと勘違いしたんだ。

「大丈夫、先にお金渡しておくね」

ボクは赤毛の子にベルンストから預かったお金を渡した。

「えっ、ちょっとこれは多すぎるわよ」

「うん、いいよ。そのかわりおいしいのお願い」

「…うん。まかせて!!」

赤毛の子はニッコリ笑って厨房に向かった。

「ちょっとゲン!手伝って!!」

「ええっ、姉ちゃん11時からでいいっていったじゃんか!?」

「忙しくなったの!早く降りてらっしゃい」

ゲンと呼ばれた少年が食堂に下りてくる。

「何だよ、お客さん1人じゃないか!忙しいなんて…」

「何言ってるの!今すぐ20品は作らなきゃいけないんだからさっさと準備して」

「えっ!20品?あの女1人で?食い逃げじゃないのか!?」

ボカッ!!

赤毛の子がゲンの頭を思いっきりゲンコツで殴った。

「いてっ!何すんだよ姉ちゃん!!」

「お客様に失礼でしょ!もう…ごめんなさいね、お客さん!!」

「あはは、いいよ。気にしてないから」

自分もさっき同じ事いってたのに。思わず笑っちゃった。

それにしても…弟かな?いいなあ姉弟仲がよくて。ボク…お姉ちゃんと

あんなふうに話したことないなあ…

 

 

「ふぅ、ごちそうさま。美味しかったよ…どうしたの2人共、口開けて?」

「…まさか本当に全部食べるとは思わなかったわ…」

「お腹空いてたし、おいしかったもん」

「そう、ありがとう。その顔は本当みたいね。作りがいがあったわ」

赤毛の子は満足そうに笑ってくれた。ゲンはまだ口を開けてボーっとしている。

(まだ時間あるなあ…)

「あとデザート頼んでいい?注文は…」

「デザートのページ全部でしょ?まかせて」

赤毛の子はニコニコしながら厨房に向かった。

カラン、カラン!!

「いらっ……」

「ようロザリーまた来てやったぜ」

アガルティアの軍服を着た男と兵士が入ってきた。

(なんだろ?2人共あからさまに嫌な顔してる…)

「おい、セルグ中佐がわざわざ来ているのに挨拶もないのかこの店は!」

兵士の1人がうるさく怒鳴ってる。

「まあ許してやれ、照れてるんだろう。ロザリー注文を取りに来てくれ!」

(絶対照れてるんじゃないと思う)

「…いらっしゃいませ」

ロザリーと呼ばれた赤毛の子は相手の目も見ないで返事をした。

(よっぽどあの連中が嫌いなのかな?)

ボクは近くにいたゲンに声をかけた。

「ねえ、あの連中何?」

「あのセルグっておっさん姉ちゃんに気があるんだよ。毎日来てさあ、本当に

迷惑なんだ!もうすぐ姉ちゃんが適当にあしらうから注文はチョットまってて」

「うん」

カランカラン!!

(別のお客が来た。今度は…結構大人数だなあ。なんだろ、見たこと無い服の人

とかもいる)

「あっ、いらっしゃいませ」

ゲンもロザリーも助かった!という顔をして団体客の方に行った。

セルグと呼ばれていたおじさんは面白くない顔をしている。

「ロザリー、ロザリー!!」

ロザリーが新しいお客と話してるのが面白くないのか、セルグと呼ばれてたおじさんが

騒ぎ出した。ロザリーも嫌々そっちのテーブルに行く。

(うるさいなあ、あのおじさん…あっ腕を掴んだ!)

「甘い顔をみせているからって、いい気になるなよ…」

(ヤな奴!)

「ねえちゃんを放せ!」

ゲンがすかさず助けに行く。

「うるせぇっ!」

ドカッ!!

(子供を殴った!もう駄目だ!ボク頭にきた!!)

ボクは立ち上がって兵士達のテーブルに向かった。

『き、貴様はだ…』

バキィ!!

ボクはセルグとかいうおじさんをちょっと力を抜いて殴ってやった!

(本気で殴ったらたぶん死んじゃうし)

『ちゅ、中佐!てめえ!』

一緒にいた兵士がボクに殴りかかってきた。

「あぶねぇ!」

パキィィィン!!

団体客の1人、若い男がお店の花瓶で思いっきり兵士を殴った!

「(やるじゃん)ナイスふぉろー!」

ボクは助けてくれた緑髪の若い男(ボクと同い年位かな)にお礼を言った。

(自分で避けられたけど)

「その花瓶…高かったのにぃ…」

ロザリーの違った意味の悲鳴も聞こえた気がするけどそっちは気にしない…

『ちっ、お、覚えてろよぉぉぉぉっ!!』

兵士達が捨て台詞をはいて店から出て行った。

(覚えてなんかやるもんか!)

「君、大丈夫?」

ボクはロザリーに声をかける。

「え?あ、は、はい。ありがとう…」

「あんなのがこの国を守っているなんて考えたくもないよ、まったく!(お父さん達の

気持ちわかっちゃうよ!)…あ、でもあんなことしてよかったのかな?もしかしておせっかいだった?」

「いいえ、困っていたんです、ありがとう」

ちょっと落ち込んでたみたい(花瓶について)だけど吹っ切れたみたい。

「そっか、よかった」

「あたしロザリー・テオラ・メルセーヌ。あなたは?」

「ああ、ボクは…」

カラン!カラン!!

「…これは…なるほど…・・?」

金髪の切れ長の目をした綺麗な女の人が入ってきた。

(あっ、この人…)

「…遅れて申し訳ありません。お迎えにまいりました」

ボクに向けて謝る。

「知り合い?」

ロザリーが不思議そうな顔でボクを見た。

「ま、まぁね」

「さ、御案内いたします」

「あ、ちょ、ちょっと!」

金髪の女性はカバンからお金を取り出し、ロザリーに手渡した。

「…これはアレの修理代と迷惑料です。お納め下さい。それでは」



(ロザリーと友達になれそうだったのに…)

「レオ−ネ様…でしたよね、これは極秘の会談ですので、あまり目立った

行動はお控え下さい」

「あっ、うん。ごめんなさい」

ボクはこれからお父さん(と思われる人)と会う。反応からしてお父さんに

間違いはないってお姉ちゃんは言っていたけどどうだろう?もし…お父さん

だったら…

(ボクはお父さんに会いたいけど会いたくないような

          …そんな不思議な気持ちだった)



つづく?


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エヘヘヘ、実はこれがボクとトウヤの初めての出会いだったんだよね。
ボクのピンチ(ほんとは避けられたんじゃねぇか)にとっさに助けてくれるなんて
やっぱり運命的な出会い(美化しすぎだろ?)だったんだね。
って、何さっきからぶつぶつ言ってるの?

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あとがき:・・・どうしよう。これをやっちゃうと
(自分の為にやってるんだけど)きついんじゃ・・・


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