『ロケットボーイズ』 読書感想文


● (No.307) 『ロケットボーイズ』 読書感想文 (2002年 2月8日)
 ----------------------------------------------------------

久々に(初めて?)、心から感動する本に出会いました。
アメリカNASA航空宇宙局の元エンジニアが、自分が高校生の時に、夢を持って
ロケットを自分たちで作って飛ばした頃のことを実話に基づいて描いた自叙伝
「ロケットボーイズ」 (HOMER H.HICKAM, JR.著, 武者圭子訳, 草思社) です。

本書はアメリカではロングセラーになり、1999年に映画化(October Sky) され
て、映画のほうもロングランヒットを記録しました。 日本でも 2000年3月に、
「遠い空の向こうに」という邦題で映画が公開されましたので、ご存知の方も
いるかと思います。

1957年 10月4日、旧ソ連は人類初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げ
ました。この衛星を、若かりし著者のホーマー・ヒッカム・ジュニアは、自宅
の裏庭で眺めたのをきっかけに、宇宙への夢を追い求めることになります。


 > ようやく見えた。小さな明るい球体が、ゆっくりと、稜線のあいだの
 > 狭い星空を横切っていく。神が金色の馬車に乗って夜空を横切ってい
 > くのを見たとしても、ここまでの畏怖は感じなかったのではないか。
 > ぼくは吸い寄せられたように空を見つめていた。 (一部抜粋)


この後、炭鉱の監督を務める父親に反対されながらも、学校の仲間や理解ある
先生、炭鉱の大人たちに囲まれ、精神的に成長していく様子が見事に描かれて
います。夢を持つこと、夢を育てていくこと、その実現を信じてあきらめずに
生きていくことの大切が、読後に心地よく伝わってきます。

著者は 40年後に、この本の最後の「エピローグ」で次のように述べています。


 > その小さな茶色の箱には、読みにくい父の字で 「サニー」(著者) と
 > だけ書かれていた。開けてみると、そこには何枚ものティッシュペー
 > パーでていねにくるまれた、とっくの昔になくなったと思っていたも
 > のが入っていた。科学フェアのリボンとメダル、それに変わった形の
 > 工芸品 --- ケイトンがつくってくれた、見事な出来栄えのラバール・
 > ノズルだった。
 > 
 >  1997年11月、ぼくが NASA を退職する直前に、友人の宇宙飛行士、
 > 土井隆雄氏が、父がとっておいてくれた科学フェアのメダルとオーク
 > 号のノズルを、スペースシャトル・コロンビア号に乗せて、宇宙に持
 > っていってくれた。打ち上げは完璧だった。ぼくはケープ・カナベラ
 > ルに出かけ、大きな宇宙船が発射台から打ち上がるようすを見守って
 > いた。誇らしく、満たされた気分だった。 BCMA のロケットは、つい
 > に宇宙に到達したのだ。


これに対し、宇宙飛行士の土井隆雄氏は、次のように寄せ書きをしています。


 > 「宇宙にこれを持っていってくれないか」
 > そう言ってホーマーが差し出したのは古びたメダルと小さなボルトの
 > ようなものだった。それらがいったい何で、どういう意味を持ってい
 > たのか、私はこの本を読んではじめてわかった。そして同時に、なぜ
 > ホーマーと私がこの年月親しい友人であり続けたのか、理解できた気
 > がする。宇宙を夢見て、何度も失敗を重ねながら夢を実現していった
 > サニー少年は、そのままかつての私だったのだ。
 >  (途中略)
 > 夢をもつことはむずかしい。そしてその夢を持ち続けることはもっと
 > むずかしい。だがこの本を読んで、夢を追い求めることのすばらしさ
 > に、より多くの子供たちが気づいてくれることを願う。そして、より
 > 多くの子供たちが、すばらしい夢を見つけることを願っている。
 >                   1999年 12月27日 土井隆雄


夢を実現するには、ほんのちょっとの勇気があればできる。これが、この本を
読んだ私の感想です。子供たちの夢を実現するには、周りの大人たちもずっと
その感性を持ち続けることが大切だと思います。そうでないと子供たちの持つ
夢を理解できないでしょう。

この本(映画)がビデオ化もされているそうです。さっそく明日、探しにいって
みます。 題名は映画と同じ、「遠い空の向こうに」、ということです。


先日、『ロケットボーイズ読書感想文』を投稿しましたが、この自伝を映画化
(October Sky) したビデオを、何軒もレンタルビデオ店を探し回り、やっと見
つけました。ビデオ名は邦題と同じ 『遠い空の向こうに』 でした。

さっそく自宅で2回も見てしまいました。学校のロケット仲間、理解ある先生、
炭鉱の大人たち、そして両親と、演ずる俳優もまた適役です。本と同様に感動
する映画(ビデオ)になっています。ストーリーもほぼ同様ですが、映画向けに
ところどころ、さらに感動的な場面が含まれています。

ただ残念なことに、本の最後のエピローグで著者が述べている、その40年前の
科学フェアのメダルとノズルを、宇宙飛行士の土井隆雄氏に委ねて、1998年に
スペースシャトル・コロンビア号に乗せて宇宙に持っていったという話が出て
きませんでした。

しかし 映画の最後で、当時の学校のロケット仲間の 40年後の実写と、著者の
ホーマー・ヒッカム・ジュニアが、NASAのスペースシャトル乗員訓練者となっ
て働いている姿の実写が、一瞬紹介されているところが、また、心憎い演出と
なっています。

横浜のある高等学校では、講堂で全生徒にこの映画の試写会を行ったという話
も聞いています。是非とも多感な中・高校生および大人の方々にもお薦めする
すばらしい映画だと思います。


「ロケットボーイズ」 (HOMER H.HICKAM, JR.著, 武者圭子訳, 草思社)
「遠い空の向こうに」 (UNIVERSAL STUDIOS, ビクタービデオ株式会社)


《補足》

 皆様、たくさんのコメントと感想をいただき ありがとうございました。
 先の記事が、諸々の企画のきっかけになることがあれば 幸いに思います。

   『OCTOBER SKY』      ... 原作
   『ロケットボーイズ』 ... 翻訳本
   『遠い空の向こうに』 ... 邦画、ビデオ、DVD

 どれも同じ内容のものなのですが題名が3つもあります。いずれも元NASA
 の技術者によって書かれた実話に基づく自叙伝なので、本にしても映画に
 しても、読んでいて(見ていて) ぐいぐい とその内容に引き込まれていき
 ます。本日(2/20)、この原著(洋書)を書店で購入してきました。
                            > Tnx. JN1GKZ


                   OCTOBER
                     SKY
                  ---------

                  A Memoir

     Originally published as ROCKET BOYS

             Homer H. Hickam, Jr.

                 A DELL BOOK


 宇宙飛行士の土井隆雄氏との関わりの部分がどのように書かれているのか
 興味があり、最後の "EPILOGUE" を 先に読んでしまいました。(抜粋)


   In November 1997, just before I retired from NASA,
   Dr. Takao Doi, an astronaut friend of mine, carried aboard
   space shuttle Columbia one of my science-fair medals and a
   piece of the Auk nozzle my father kept for me. It was a
   perfect launch, and as I watched the great ship blast off
   from the Cape Canaveral pad, I was filled with pride and
   happiness: The BCMA was finally going into space.


 この原書のペーパーバック本を、\1450 で購入しました。(ハードカバー
 は、約 \4000 ということでした。なお 翻訳本は、上下 各\1800 です。)
 この原書には、映画にも翻訳本にもない写真が、いくつか載っています。
 これから、じっくりと時間をかけて読んでみようと思います。


   『OCTOBER SKY』  Homer H. Hickam, Jr.

     Hardcover, 384 pages, US$ 24.95
     Paperback, 428 pages, US$  6.99



 《日本の参考書籍》

  手作りロケット入門    日本モデルロケット協会編 誠文堂新光社
  飛ばせ! 手作りロケット       〃         〃
  手作りロケット完全マニュアル    〃         〃


 トップ へ戻る.

 次のページ へ移る.

 ホームページ(目次) へ戻る.