衛星FO-29 スピン周期


● (No.178) 衛星FO-29 スピン周期(1999年6月19日)
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 衛星FO-29のテレメトリ解析のためのプログラム(デジタル用)fo29tlm5 と
 (CW用)fo29cwt2 を、さらに改良を進めてバージョンアップしました。
                  (fo29tlm5 V5.01,  fo29cwt2 V2.01)

 懸案事項の究極の目標の一つの、解析結果を「折れ線グラフ」に表して、
 保存と印刷まで行えるようにしました。横軸はデータ数、縦軸は見やすく
 解析項目の最大値に対する相対的な比率で表現するようにしてあります。
                    (プログラム本体は下記URL参照)

 昨日(6月17日 '99)、JH6MME高山氏により受信された衛星FO-29のデジタル
 テレメトリとCWテレメトリが報告されました。そのデータを用いて以前
 から関心のあったスピン周期を解析してみたところ、デジタルデータから
 は約16秒(16304msec)、CWデータからは約11秒(10740.5msec)という結果
 が得られました。

 周回オービットが異なるとはいえ、同日のスピン周期の差が約5秒もある
 ので、JARL(日本アマチュア無線連盟)から公開されている解読式(換算表)
 を用いて、これらのデータをもとに手計算でも確認してみました。


 (デジタルデータ例)
 9C 03 63 08 00 62 00 00 00 00
 00 00 6E 3A A0 87 60 94 91 B0
 AA 52 A8 02 DF BA BC BB BA BB
 95 02 00 09 00 00 38 40 00 00
 97 CA D0 7D 62 9F A4 84 80 82
 00 00 00 AF 81 B3 F7 00 00 00

 この上から5行目の左端に位置する「97 CA」がスピン周期を表す部分です。
 先に、16進数の CAを2進数に変換すると 11001010、次に 97を変換すると
  10010111 なので、換算表に従うと 10740.5 となります。

                  CA                      97
      bit  msec   data        bit  msec   data
       0  16384    0           0     64    1
       1   8192    1           1     32    1
       2   4096    0           2     16    1
       3   2048    1           3      8    0
       4   1024    0           4      4    1
       5    512    0           5      2    0
       6    256    1           6      1    0
       7    128    1           7      0.5  1

    8192+2048+256+128+64+32+16+4+0.5 = 10740.5[msec]


 (CWデータ例)
HI HI AE C7 88 51 1F 50 FF 0D 00 16 83 33 85 61 93 91 B0 7B BE BB BD BD BA

 この HI HI の次から数えて7番目と8番目にある16進数「FF 0D」がスピン
 周期を表す部分です。FFを2進数に変換すると 11111111、0Dは 00001101 
 です。換算表に従うと 16304 となります。

                  FF                      0D
      bit  msec   data        bit  msec   data
       0   ----    1           0    128    1
       1   ----    1           1     64    0
       2   8192    1           2     32    1
       3   4096    1           3     16    1
       4   2048    1           4      8    0
       5   1024    1           5      4    0
       6    512    1           6      2    0
       7    256    1           7      1    0

    8192+4096+2048+1024+512+256+128+32+16 = 16304[msec]


 このデジタルデータとCWデータによるスピン周期の約5秒の差の原因は
 よくわかりませんが、衛星内部のセンサーの感度の違いかもしれません。

 なお先日(6月4日)、JG1LDV白子氏から衛星FO-20/29のスピンに関する貴重
 なご助言をいただきました。 参考のため、改めてここに紹介いたします。

  > FO-20の姿勢状態について一言。
  > FO-20には特定のスピン軸は存在しませんので、AO-10や一般的な
  > スピン衛星に見られる安定したスピンにより発生する受信レベル
  > の変化からのスピン計測とは異なった趣きを呈すると思います。
  > 
  > 開発当時のJAS-1ガイドブックやJARLnewsで解説されていますが、
  > 念のため。JAS-1/JAS-1Bの設計方針として積極的な姿勢制御をし
  > ない衛星の熱設計,発生電力,機器の収納性,アンテナパターン等の
  > 関係から形状を球形にしましたが、衛星姿勢が一定の状態に留ま
  > る事による一方向からの太陽光照射を受けないように姿勢変動用
  > 磁石を搭載して地球磁場との相互作用による姿勢変動を起こさせ
  > ていますので複雑な姿勢変化をしていると予想されます。

 次に、fo29tlm5 を用いた解析例を紹介します。


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