人工衛星におけるトランスポンダについて


● (FUROKU.37) 人工衛星におけるトランスポンダについて (1997年 11月15日)
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 ご存じのように、人工衛星には地球観測衛星・気象観測衛星・放送衛星・
 通信衛星などの多くの科学用や商業用の衛星がありますが、私たちが普段
 追尾しているのはアマチュア衛星と呼ばれている衛星です。

 このアマチュア衛星には、トランスポンダと呼ばれる無線中継器が普通は
 積まれています。このトランスポンダには機能的に二種類があり、一つは
 アナログ系で、いわゆるSSBやCWにおいてマイクを通して通信を行う
 もので、もう一つはモデムとコンピューターを通してデジタル通信を行う
 デジタル系のものです。

 一般に、アマチュア衛星のトランスポンダでは、地上から衛星へ向け発信
 する(アップリンク)周波数帯と、その信号をトランスポンダを経由して
 衛星から地上へ送り返す(ダウンリンク)周波数帯は衛星ごとに異なって
 います。これはトランスポンダによって自動的に変換され、その周波数帯
 の組み合わせによってモードの呼び方が決まっています。 (たとえば、
 アップリンクが145MHz帯でダウンリンクが430MHz帯では、Jモード。)

 このようにトランスポンダには周波数変換器(コンバータ)が働いている
 のですが、このアップリンク周波数とダウンリンク周波数の間の関係には、
 ヘテロダイン方式と逆ヘテロダイン方式と呼ばれる二つの方式があります。

 ヘテロダイン方式とは、アップリンク周波数が上がるとダウンリンク周波
 数も上がる非反転型の方式のことで、逆ヘテロダイン方式とは、字のごと
 くアップリンク周波数が上がるとダウンリンク周波数が逆に下がる反転型
 の方式のことです。この周波数の上下間の関係式は、衛星ごとに決まって
 います。

 低軌道を描く衛星では、地上の観測者の頭上を最長でも20分ほどで通過し
 てしまいますので、実際の運用にはアンテナの追尾(水平・仰角)と共に
 アップリンク、ダウンリンク周波数の上記の関係とドップラー偏移による
 周波数のシフトの両方を考慮にいれなければなりません。

 アナログの反転型トランスポンダでSSB通信を行う場合は、アップリン
 クはLSBで送信し、ダウンリンクはUSBで受信するのが慣習となって
 います。非反転型では、アップリンクもダウンリンクもUSBで行います。

 デジタル通信用の衛星には、地上のパケット通信でも使われているAX.25
 プロトコルによるPSK変調方式のメールボックス機能を持たせたトラン
 スポンダを持つ衛星(FO-29など)や、FSK変調方式でブロードキャスト
 プロトコルによるファイルサーバー機能を持たせたトランスポンダを持つ
 衛星(UO-22,KO-23,KO-25など)があります。また、かつてはRUDAKと
 呼ばれるトランスポンダをもつ衛星(AO-13,AO-21)もありました。

 来春には、世界各国が開発,製作に協力していて日本もSCOPE(CCD
 カメラ)の設計,製作をした衛星「Phase-3D」が新たに打ち上げら
 れる予定です。この衛星は多くの斬新な機能を含む大型のアマチュア衛星
 で、トランスポンダはIFマトリックスにより、HFの21MHz帯からマイ
 クロ波の24GHz帯までの各周波数帯が何通りも組み合わさるようになって
 います。

 また、衛星「Phase-3D」にはデジタル通信のためにRUDAKも
 搭載される予定で、9600bpsFSKのモデムとDSP(デジタル信号処理)
 モデムも備えており、種々の変調方式にも対応できるようになっています。

 《参考》
 http://www.asahi-net.or.jp/~ei7m-wkt/eisei15.htm


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