WiSPの概念 その他


● (FUROKU.22) WiSPの概念 その他 (1997年 5月30日)
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 1.「KISS」モードについて

   デジタル衛星の「UO-22」や「KO-23」,「KO-25」にアクセスするためには
   「G3RUH」形式のモデムを内蔵したTNCを使用し、またTNCを「KISS」モード
   にする必要があります。WiSPでは、「MSPE」の立ち上がりの瞬間に、
   自動的にTNCが「KISS」モードになり、「MSPE」の終了の瞬間に「KISS」
   モードから抜けるようになっています。

   インターネットを中心とした世界のコンピュータネットワークを結ぶ一連
   のプロトコル群が「TCP/IP」(インターネットプログラム) であることは
   ご存じのとおりです。その「TCP/IP」を無線通信に使用する特別モードが
   「KISS」モードです。

   「KA9Qインターネットパッケージ」によって、アマチュア無線のパケット
   通信において世界中にネットワークが構築され、日本でも転送型のネット
   ワークで主に構築されています。この特殊モードである「KISS」モードを
   MICROSAT衛星、UoSAT衛星などのデジタル衛星は採用しているのです。


 2.WiSPを使用した衛星とのアクセスの概念について

   「GSC」において正しく各種の設定がなされ、また、TNCの設定や衛星への
   アンテナ追尾も正しくなされていると仮定します。WiSPが正しく機能
   している場合、あらゆる機器を電源ONして「GSC」を立ち上げておくだ
   けで、衛星とのアクセスが完全に(無人で)自動的に実現します。(次順)

    (1)「GSC」のスケジューリングの中で、各衛星に個別に設定したAOSの
      数分前に、「MSPE」と「VIEWDIR」が自動的に立ち上がる。

    (2)その衛星がAOSした直後から、衛星からのブロードキャスト信号が
      「MSPE」画面に流れるように表示されていく。同時に衛星内のBBS
      ディレクトリ情報(ファイル情報)が、「VIEWDIR」に自動的に蓄積
      されていく。

    (3)衛星からの「BBLIST」信号に合わせ、その各ファイルの中のステー
      タス情報(P,A,etc)に従って「MSPE」から各ファイルまたはディレ
      クトリ(リスト)の獲得要求の信号が、衛星に向け自動的に数秒おき
      に送信される。

    (4)電波状況の良い時には、その自局からの要求信号が衛星にキャッチ
      され、そのファイルのデータが逐一、蓄積される。この時「MSPE」
      画面の左下の「PB欄」に、自局のコールサインが赤く表示される。
      電波状況の悪い時でも受信は大体できて、他局の衛星とのファイル
      情報のやりとりの結果も、自局の「VIEWDIR」に自動的に蓄積され
      ていく。

    (5)その時点における各ファイルの受信割合が、「VIEWDIR」画面の中
      でパーセント(%)表示される。衛星の1回のオービット(周回)で各
      ファイルのダウンロードが完了できなかった場合には、次回以降の
      オービットで残りの部分のダウンロードを継続して実行する。

    (6)衛星から一つのファイルがダウンロード完了した場合は、その瞬間
      に「PROCMAIL」が自動的に立ち上がり、そのファイルのZIP,LZH等
      の圧縮形式に従って解凍が実行され、自局のHDD(ハードディスク)
      内の所定のフォルダ内に、自動的に格納される。

    (7)例えば、ケプラーファイルの場合は、格納された後に「UPDKEPS」
      が自動的に立ち上がり、「GSC」内のケプラー要素が自動的に更新
      される。また、アスキー(TXT,MSG)ファイルの場合には「MSGVIEW」
      が自動的に立ち上がり、その内容が表示される。

    (8)送信用ファイルの作成には「MSGMAKER」を立ち上げ、所定の操作を
      行うことにより指定したエディタ等を用いて作成する。この作成し
      終えたファイルは、自局のHDD内の所定のフォルダ内に、自動的に
      格納される。

    (9)衛星からの「BBSTAT」信号に合わせ、アップロードのためのポップ
      アップ画面が自動的に現れ、電波状況の良い時には、その時の送信
      状況が刻々と表示されていく。その際、「MSPE」画面の右下の欄に
      自局のコールサインが赤く表示される。

    (10)1回のオービットでアップロードが完了しなかった場合は、次回以
      降のオービットで残りの部分のアップロードを継続して実行する。

    (11)衛星がLOSした後に、設定に従い数分後に自動的に「MSPE」が閉じ
      る。そして、「GSC」のスケジューリングに従い、次の衛星のAOSが
      来るまで、「GSC」はアイコン化して待機する。

   以上の(1)〜(11)が、デジタル衛星とアクセスをする時のWiSPの自動
   運用の大雑把な概念です。「GSC-Tracking-RunPass」とクリックして手動
   で「MSPE」を立ち上げることも可能ですが、ここから先は上記(2)以下の
   ように自動的に動作していきます。

   また、衛星とのアップリンク・ダウンリンクの周波数のドップラー偏移の
   補正については、次回解説するように、繊細に行う必要があります。


 3.「Broadcast Call Sign」と「BBS Call Sign」」について

   拙著「衛星通信入門」の中の「EISEI.33」(第61話)において、「PB/PG」
   の解説の中で各衛星個別の「Call」を紹介しています。ここを「GSC」の
   中できちんと設定しないと、各衛星とアップリンクもダウンリンクもでき
   ませんのでご確認下さい。参考までに、代表的なデジタル衛星の「Call」
   を下に記しておきます。(自局のコールサインを設定してはなりません。)

     satellite: AO-16      LO-19     UO-22      KO-23    KO-25
     -----------------------------------------------------------
     bdcstcall: PACSAT-11  LUSAT-11  UOSAT5-11  HL01-11  HL02-11
     bbscall  : PACSAT-12  LUSAT-12  UOSAT5-12  HL01-12  HL02-12


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