京都 淀
淀「千両松」 鳥羽伏見で敗退した新選組を含む旧幕府軍は後退した淀でも再び敗れます。
新選組はこの地で井上源三郎をはじめとする多くの隊士を失います。
淀・千両松(伏見街道)の戦いのようす(部分) (聖徳記念絵画館蔵)
淀堤と千両松 「淀川両岸一覧」
2004年現在の宇治川右岸堤 東軍戦死者慰霊碑は至近 沼地(旧沼地の意味)
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東軍戦死者慰霊碑
伏見街道「淀・千両松」の激戦。宇治川の堤防上の戦いで、画面下は宇治川の河原、堤防の反対側(画面上部)は沼地という戦場でした。広く散開して戦うことができない戦場で、火器の優位が存分に発揮されたであろう戦場です。
新選組は、旧幕軍(東軍)の先頭で戦い、多くの隊士を失います。
地理的変化が大きく当時の戦場の面影を探すのは困難ですが、沼地の面影が運動公園周囲の水路部分(写真をご参照ください)に残されていると思われます。
淀「愛宕茶屋」 鳥羽街道・愛宕茶屋でも多くの兵士が倒れています。
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激戦地「愛宕茶屋」(鳥羽街道)周辺の景観 街道の側らにたつ慰霊碑
淀の古戦場
淀周辺の地理的変化は激しく、当時の街道の面影はありません。
鳥羽街道「愛宕茶屋」跡(納所岸ノ下)に激戦を物語る東軍戦死者を祀る
石碑が建てられていました。この戦場では、35名の旧幕軍戦死者が埋
葬されたようです。
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妙教寺
淀小橋至近にある寺院
鳥羽、伏見両街道の結節点にあり、後退する旧幕府軍、追撃の新政府軍
の激戦を物語る弾痕などをとどめるという。
さて、ここで再び敗退した新選組を含む旧幕府軍は至近距離にある淀城に入城しようとします。 淀藩主(稲葉家)は現
職の老中のひとりで幕政の中心にあった藩です。しかし、淀藩は入城を拒み、やむなく旧幕府軍は橋本まで後退せざ
るをえなくなります。
指揮官の無能を次々露呈していく旧幕府軍という感じですね。変革期の怖さということなのでしょうか。
淀城址
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淀城は中洲に築かれた城であり、戦闘のようすは
城から一望できたでしょう。
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※ 豊臣秀吉・淀殿の淀城ではありません。江戸時代になってから築かれました。
淀・歴史ミステリー探索
幕末の淀の町はどこに・・・・。淀の町は大きく変っています。
@ 中洲の中の淀城探索 ● 地理的景観の変化
幕末当時の地理的景観は現在と大きく変っています。たとえば、淀城は三川が合流する地点(現在の合流地点とは
異なる) の中洲に陸運・水運のおさえを目的として築かれた水城でした。現在は陸続きで当時の面影は全くありま
せん。このため、淀城の軍事的重要性が見えにくくなっています。淀藩の動きは現在の地理的事情から見える以
上に大きな影響を与えたといえるでしょう。
細見京絵図部分(文久2年)
中央部の橋は宇治川にかかる淀小橋です。右へ行くと伏見街道で千両松を経て伏見に至ります。左は鳥羽街道
で、愛宕茶屋から鳥羽伏見戦争の火蓋がきられた小枝橋方面です。左下隅の橋は木津川にかかる淀大橋です。
淀小橋
唐人雁木
さて、質問。有名な淀城の「水車」。どこにあったのでしょうか。石碑を探してみてください。
石碑をたどることで、往時の淀城の景観を少しずつイメージできるようになります。
探索の必需品は地図です。
発見した手がかりを地図にマークすることで、イメージの基礎をしっかりしたものにできます。
A 秀吉と淀殿の淀城はどこに・・・
現在石垣や堀を残す淀城址は江戸時代のもので、豊臣秀吉・淀殿ゆかりの淀城とは関係がありません。
淀の町を探索すると、手がかりが得られます。
淀殿の淀城は、納所(のうそ)に築かれ、「妙教寺」あたりにあったと考えられています。近くに薬師堂跡の石碑
が見られました。「薬師堂町」の町名や「納所城之内児童公園」など城にかかわる地名がみられますから、淀
殿の城跡をイメージすることができるでしょう。
妙教寺
薬師堂跡
B 新選組
新選組の戦い探訪
@ 戦場をイメージするためには、幕末の淀を復元することが大事です。大変貌した
景観ですから少し努力が必要ですが、不可欠の仕事です。
たとえば、
淀小橋周辺の景観を復元することで、千両松から後退した新選組が無念の思い
をかみしめて渡ったであろう往時をイメージできるでしょう。
A 復元作業には、地図が不可欠です。
つまり、幕末当時の淀の地図をつくる必要があります。
たとえば、戦死した井上源三郎の首を埋めた寺の門前とはどこであったのか。
妙教寺という説がありますが、地理をイメージできないとわからないでしょう。
交通と観察のポイント
●淀「千両松」東軍戦死者慰霊碑
京阪線淀駅下車徒歩15分
京阪電鉄線沿いに伏見方面へ、途中「淀小橋」石碑があります。
●「愛宕茶屋」東軍戦死者慰霊碑
京阪線 淀駅徒歩15分
淀駅から淀城址を経て桂川堤防にでるとわかりやすいでしょう。宮前橋を経てしばらく。
●妙教寺
京阪線 淀駅徒歩8分
●淀城跡
京阪線 淀駅すぐ
●淀小橋跡・唐人雁木跡
京阪線 淀駅徒歩5分
資料・参考文献
●聖徳記念絵画館壁画集 昭和11年(1936) 財団法人明治神宮奉賛会
●別冊太陽 京都古地図散歩 1994 平凡社
●文久改正 新増補細見京絵図大全完 文久二年(1862) 竹原好兵衛板
●別冊太陽 明治維新百人 昭和48年(1973) 平凡社