それではどうして見ている人がいろいろ変わるのでしょうか。もう少し具体的に考えて見ましょう。

の写真は二倍の大きさの人間が見た写真になっています。従って写っている人はまるで人形の様に見えます。
ここに紹介した写真は、ほぼ現実の人の見た風景、人の数倍の大きさの人が見たもの、さらに巨大なキングコングが見た風景という様にいろいろな変化が見られます。

これらの違いはカメラの左右のレンズの間隔に関係があります。

この図は左右のカメラのレンズの幅と立体視したときのイメ−ジを描いたものです。

通常のステレオカメラの左右のレンズの幅は、人間の眼の左右の間隔とほぼ同じで6.5センチ位になっています。この間隔で写真をとるとこの一番左の人物の様に撮影者と出来た写真を立体視した人物とがほぼ等しい関係になります。カメラのレンズを14センチにすると、つまり人間の倍に広げると、撮影者と出来た写真を立体視したときとでは違いが出てきます。人間の倍の大きさの人が膝をついて見た写真になります。

さらに「沼袋の踏切」の様に間隔を1メ−トル以上も広げるとキングコングの様な巨大な人間が地面にはらいばいになって見た写真と言うように変化していきます。出来上がった写真の一枚一枚はそれぞれほとんど同じなのに立体視するとそれらは全く違った写真になります。被写体である一本の木も現実の木から盆栽の様な大きさになり、さらにまるで特撮で使ったミニチュアの木へと変化していきます。

見ている視点も立っているから、膝をついて、はらいばいへとだんだん低くなっていきます。これらのことから、立体写真とは必ず立体視する視点が繰り込まれている写真であると言うことがいえると思います。立体効果で取り上げた奥行き表現の路地の写真を思い出して下さい。あのおもちゃの様な世界も実はこのことが関係していたのです。

それではここで問題です。もし月をまるでボ−ルの様な立体像にして見るのにはどうしたらよいでしょうか。簡単ですよね。見ている人が月と同じくらいの頭の大きさがあればよいと言うことになります。つまり撮影する二台のカメラの左右が月の直径くらいの間隔があればよいことになります。実際には一台のカメラの二回撮りになります。月の自転を利用して同じ場所で時間をずらして撮影します。もちろん衛星を飛ばしての話ですよ。地上からでは月はいつも同じ方向しか見えませんからね