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EOS-1D 

Overview


EF16-35/2.8L

EOS-1Dをスペックだけから判断すると驚異の秒8コマ連射でやや控えめの400万画素と言う点から報道・スポーツ向けのカメラと捕らえてしまいがちになる。たしかに瞬間を捉えるという点では1DのAFと連射能力は驚異的といえる。

しかし1Dはそれに留まらない万能カメラであるというところに真の魅力があると思う。
わたしは当初はやはりスカイスポーツの撮影のために1Dを導入したけれども、花写真や自然風景などでも1Dを使うのはその魅力があるからだ。
1DはCCDの大きさのわりに画素数が少ないので光を捉える能力に余裕があり、それが寄与しているのか1Dのなめらかな画像と特筆すべきハイライト側の強さは光をモチーフにした写真では大きな強みとなると思う。これは最近の流れとなっているCMOSではなく枯れた技術が使えるCCDであることも良い方に働いているのだろう。


EF100/2.8 Macro USM

1Dの巧みなところはバランスにある。1Dは画素数の少なさを補うためにローパスフィルターの効果を最小限にして、細かい部分でのシャープネスを上げて画像の見栄えをあげている。それによって生じる偽色の増加は撮影した画像の後段においてファームウエアで減らす手をとっている。いわばソフトでのローパスを併用しているわけだ。
これはとても効果をあげていて1DとD60の100%-50%縮小を見ていくと特に顕著である。そして1Dの絵を画素数カウント以上のものに見せている。実際にA4程度の印刷では600万画素モデルとほぼ遜色ないといえるだろう。
Feeling
また1Dは大きくて重いカメラであるけれども撮影するときは1Dを使いたい、と思わせるのはそのレスポンスとフラッグシップ機としてのフィーリングに尽きる。
銀塩ユーザーがデジタル一眼レフを使用した場合に感じる不満点の大きなものは、シャッターラグやメディア書き込み、または撮影後のプレビュー表示の遅さなどそのレスポンスの悪さであると思う。ところが1Dではそうしたレスポンスに不満を感じるところはない。特にCFへの書き込みの速さは特筆すべき点だと思う(D60の倍以上の速度レート)


EF70-200/2.8L IS
TCx2II

ただしいかに1DでもJPG+RAW記録で連射するとバッファ書き込みに手間取るので、バッファフルのときの回復にやや手間取ることになる。また1Gで書き込める枚数も少なくなる。
そこでスカイスポーツのアクロバット飛行の撮影などでは私はもっぱらJPGのみで撮っている。
正直言って24枚の連射バッファは足りないと思う。この辺は楽に増設できるはずなのでプロ用機としてはグレードアップパスを用意してほしかった。

1Dの扱いやすさはもう一つ、一般のAPSサイズのデジタルと違ってCCDが大きくてD60の1.6倍よりも楽な1.3倍(実際は計算すると約1.25倍)になっていることだ。このため、35mm一眼レフとそう大きく変わらない画角感が得られる。
28-70ズームであるならほぼ35-88となり広角もなんとかつかえる。またボケがやはりAPSサイズのものより大きく感じられ、それほど不満にはならない。F1.4はF1.76にほぼ等しくなる。(D60ならF1.4はF2.2)
またISO200が標準であるため、手持ちのときに一段余裕を持って切れるのは心強い。またISO400で撮ってもとてもノイズの少ない画像が得られる。ややコントラストが硬めになったと感じる程度だ。
Shutter
意外と見逃されがちな1Dの長所は電子シャッターによるシャッター効率の良さである。
最近はCMOSの発展によりメカシャッター機が増えているが(CMOSは電子シャッターが設けにくい)、アサヒカメラのD60と1Dsの診断室を見るとこうしたCMOS+メカシャッター機はフィルムよりもシャッターが撮像面より遠くなってしまうためシャッター効率が悪くなるようで、還元すると動体を止める力が弱くなるようだ。またシャッター幕の移動により上下に露光の時間のずれが生ずる。
これが1Dだと例えば回転しているプロペラを正面からとった場合に、弓状にしならずにまっすぐ撮ることができるのである。

Flaw

1Dの欠点として重さのほかにはよくゴミの付きやすさと、バンディングといわれる暗部での画質問題が指摘された。
しかし後者についてはわたしはいまだに気になったことはない。またゴミの付きやすさもよく言われる。しかしデジタル一眼一般にいえると思うが、これは買った初期によく問題になるけれども、時間がたつとあまり問題なくなる。そのことからレンズ交換時にマウントから入るものより内部的な問題がよく指摘される。これもわたしは今ではフィルムカメラとまったく同じ感覚でレンズ交換している。

Software

1DとD60を比べた場合の1Dの利点はパソコン上でのデータの扱いやすさにも現れている。1DとD60/10D/Kissデジタル系のデータの大きな違いは、RAW/JPG同時記録をしたときにファイルが別になるか、ということとRAWデータの格納の仕方の違いだ。D60では1Dで好評だったRAW/JPG同時記録を大きくファイル構造を変えずに実現するためにRAWデータの中にJPGを埋め込むという方法をとった。そのためD60系では専用ソフトを使ってRAWからJPGを取り出さねばならないが、1Dでは特別なソフトが無くてもエクスプローラでそれが可能になっている。これは自宅のデスクトップ以外でデータを取り出したいときに有利になる。
また拡張子を見るとわかるが、1DではRAWデータの格納にTIFFを使っているが、D60系ではCRWという独自のフォーマットを使っている。このため現像にはどちらも専用ソフトは必要だが、1Dではエクスプローラー上でサムネイルを参照することができるので、やはり自宅でなくても選別程度は可能になっている。
また標準の現像ユーティリティでもホワイトバランス適用変更のプレビューなどは圧倒的に1DのRAWが早い。
ここで混乱を避けるために注記すると、JPEGとTIFFという言い方は厳密には違いがある。
JPEGはJoint Photographic Coding Experts Groupによって制定された画像を圧縮するときの方法(CODEC)の名前であり、TIFFはTagged Image File Formatという画像を入れるファイルの形式の名前だからだ。
簡単に言うとTIFFは入れ物の形のことであり、JPEGは入れ物への詰め方のことである。TIFFはなにをいれるかは規定していないので、非圧縮や非破壊形式の画像をいれたりRAWデータのような独自形式を入れたりできる。それはタグという識別子によって区別される柔軟な形式となっている。
JPEGの方は正確に言うとJPEGファイルと一般にいわれているのは実際はJFIFまたはEXIFというファイル形式である。
Operation
カメラの基本性能としては1Vをそのまま受け継いでいるわけだけれども、キヤノン上級機の癖ともいえるややアンダー目に出る露出傾向も受け継いでいるのは良し悪しかもしれない。
操作性についてはD30系のメニュー+セットボタンではなく、ボタンを押しながら背面ダイヤルで機能を選択という形になっている。D30系は片手で操作できるが1Dは両手でやらねばならない。
たしかにわかりやすさという点ではD30系の方が良いかもしれないが、個人的には1Dの方がすばやい操作が可能で実戦的だと思う。これはボタンを離したときに設定ではなくて、メニューを回して選択しているときに同時に値もそのまま設定されると考えた方が良い。離すのは設定の動作ではなくて単に選択を止めるということである。
また従来の1v/3系のキヤノン上級機の機能選択をそのままデジタル部にも応用したとも言える。
ただデジタルであればISO設定は独立ボタンにしてほしかったところだ。この辺も含めて次期モデルではデジタルファーストでの開発を望みたいと思う。
Conclusion
デジタル機の世界は変遷も激しいが、EOS-1Dはそのレベルの高いバランスと完成度でおそらくデジタル機としてははじめてカメラの歴史に名を刻む名機として記憶されるカメラだと思う。

 

(2003.10.15)