第三回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ展

1996年3月22日(金)---4月7日(日)
北海道立近代美術館

  国際現代版画ビエンナーレ 準大賞にタンザニアのアブディさんら2氏 大賞なし
日本最大規模の国際版画展「さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ」の審査結果が10 日、発表された。
3回目の今年は、76カ国1256人から計3033点が 出品されたが、大賞の該当作はなく、
準大賞にタンザニアのハシム・アブデ ィさん(26)、英在住(中国籍)の許仲敏(シュウ・ゾンミン)さん(34)=と もに男性=の作品が選ばれた。
 このほか144点が入選した。うち日本人の作品は46点。受賞、入選作の展覧会は96年3月22日から4月7日まで、北海道立近代美術館で開かれる。
(95.11.11 東京読売新聞朝刊38頁 社会面)

 

New Age of ZanzibART

3 young artists from Tanzania

ザンジバルの3人のアーティストたち

Hashim Abdi(ハシム・アブディ)
Salum Muchi(サルム・ムチ)
Asaa Hamad(アサー・ハマッド)

Part1
1996.3月25日(月)----4月3日(水)

11:00am--6:30pm 初日のみ3:00pmより、最終日は5:00pmまで
ギャラリー・トモス
東京都中央区日本橋本町1-3-1渡辺ビルB1
tel:03-3271-6693 fax:03-3242-3075
3月30日(土)午後2時より作家ハシム氏を囲んで「タンザニア・アートの現在」についてのギャラリートーク(但し3月31日は休廊)


Part2
1996.3月25日(月)----3月30日(土)

11:30am--7:00pm 最終日は5:00pmまで
ギャラリー21+葉
東京都中央区銀座3-4-17チェリービル
tel&fax:03-3567-2816


Part3
1996.4月6日(土)----4月17日(水)

11:00am--7:00pm
松明堂ホール
東京都小平市鷹の台駅前松明堂書店B1
tel:0423-41-1455 fax:0423-41-9634
4月14日 (日)午後3時よりハシム氏のギャラリートーク 「私とザンジバルの妖怪、Shetaniについて」



ザンジバルの3人のアーティストについて

東アフリカ、タンザニア連邦共和国はキリマンジャロ山と巨大なクレーター内の動物の楽園ンゴロンゴロ自然公園などで日本にもなじみが深い。
今回の展覧会はそのタンザニア連邦共和国でインド洋に浮かぶ人口40万の小島でありながら、タンザニアでは4番目の都市でもある、ザンジバルの若い3人のアーティストを紹介する。
ザンジバルは海流と偏西風の関係で紀元1世紀頃から、すでにアラブ、インドとの交易が始まっており、特にアラブとの関係は深く、内陸部とは文化が異なっている地域である。
今回紹介する3人は、ザンジバル国立の美術・工芸学校である、Nyumba ya Sanaa(ニュンバ・ヤ・ サナー)の美術・版画科の講師である。
3人とも二十代で、本格的に作品の発表はじめて日が浅いが、 それだけにストレートな表現への信頼と喜びが伝わってくる、希有な作品を作り出している。
タンザニアでは、初等・中等教育では美術課程が無く、当然美術大学もほとんど無い。
彼等自身も前述の学校での5年間の教育を受けた後の初めてのタンザニア人講師である。



Hashim Abdi(ハシム・アブディ b.1969)
彼は今回、「第三回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ」の準大賞を受賞し、授賞式への 招待のため唯一来日する。
ザンジバルは住民の95%がイスラム教徒でありながら、一方で土着信仰も根強く残っている。
その信仰の主人公は「シェタニ」(サタンと同じ語源と考えられる)で、 日本の妖怪のようなものである。
シェタニは死者たちであり、私達と同じ次元で生活していると 考えられている。
そして、私達に悪戯を仕掛けて、楽しんだりしているが、 その姿は感受性の強い人や、強い状態の時しか見ることが出来ないと考えられている。
彼は、そのシェタニたちの物語をまるで呪術師の様に描き続けている。しかし彼に言わせれば、 彼の日常生活を描くごとく、それは普通のことらしい。
そう彼は決して、呪術師ではなく、レゲエとホイットニー・ヒューストンが好きな ザンジバルでは普通の青年である。


Asaa Hamad(アサー・ハマッド b.1969)
ザンジバルは19世紀から革命のあった1964年までアラブのオマーンのスルタン(王様) が統治していたことはあまり知られていない。
その宮廷音楽として栄え、のちに庶民の心を切々と 歌い上げる歌謡曲となったのがザンジバル独特の「ターラブ」である。
特にイスラム教の関係で日頃は表に出ることの少ない女性たちには、 彼女たちの本音を代弁してくれ、いい服を着て集えるコンサートは大人気である。
アサーは、そのターラブのコンサート自体やターラブの歌詞(その多くは恋愛をあつかったもの) をテーマに描いている。
しかし皮肉なことに彼の描く線は装飾的で、イスラム寺院の内装を喚起させるのである。






Salum Muchi(サルム・ムチ b.1967)
3人の中で一番年長の彼は、このグループのリーダー格でもある。
彼は、庶民の生活の語り部とでも言おうか、人々の生活や、 祭り、結婚式、呪術色の強い儀式等を黙々と描き続けている。
それらの多くは、どんどん近代化が進むザンジバルにおいて、 少しずつ無くなったり、形を変えて行きつつあるものである。
一方でムチは、彼等の身近な屋外でのディスコ大会や、喧噪のマーケットも活写している。
だから、私たちはそこに現代のアフリカの一地域の現在を直接的に感じることが出来るであろう。









以上簡単に彼等の作品を紹介しましたが、今回Hashim Abdi(ハシム・アブディ)との ギャラリートーク(3月30日土曜日、午後2時よりギャラリートモス+4月14日日曜日、午後3時より松明堂ホールにて)も考えており、動物とキリマンジャロとルワンダの隣の国である、 タンザニアのアーティストたちがどういう作品を作り、何を考えているのか、 皆さんにご紹介できればと思います。
作品は、「第三回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ」出品した80x90cm木版画の他、 150x200cmの木版画作品を中心に木版画の小品や、ペンによるドローイングを展示します。
是非、ご多数のご来場をお願いいたします。

*ザンジバル国立の美術・工芸学校、Nyumba ya Sanaa(ニュンバ・ヤ・サナー)について 1988年にザンジバル政府と日本の青年海外協力隊の共同プロジェクトとして設立。
ザンジバル人の教師が養成されるまでの間、染色・美術(版画)・彫刻の3つの部門の教師を協力隊で派遣した。
1995年3月このプロジェクトは、全部門でザンジバル人の教師が成立したので、 終了した。今回の展覧会は、元協力隊員で3人の直接の教師であった、荒井真一が、プロデュースしている。

上記の展覧会について詳しく知りたい方は、遠慮無く下記にメールを下さい。
arai@ppp.kabinet.or.jp

ホームページへ