"LIttlefield "  Mohave Co. Arizona
  (アリゾナ州北西部・リトルフィールドの平原)
Echinomastus johnsonii (英冠)

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 英冠は古くから白紅山や天狼、月想曲などと並んで難物サボテンの代表格のように語られてきました。北米高山サボのなかでも屈指の美しさを誇る強刺サボテンで、球体が見えないくらい密生した赤、黄、オレンジの刺姿は、全サボテンファンの憧れの的でした。実際、昭和30〜50年くらいまでのサボテン書には「高貴美麗にして栽培至難」といった感じで名前は必ず出てくるのですが、栽培が難しかったせいか写真はあまり載っていません。たまに市場に出る輸入球はとても高価なのに、奪い合い。トップコレクターじゃないと手が出ない代物でした。私は’80年頃に「大阪エキゾチック植物研究会」輸入の種子を入手したのが最初でした。当時正木で5年くらい、径2センチほどまで育てた記憶がありますが、軸がひからびたみたいな感じになって枯れました。自生環境についての知識などもなく、やっぱり難物なのだなあと思ったものです。
 自生地はネバダ・ユタなどのモハヴェ砂漠、標高400〜1200メートルくらい。平原の枯れ川沿いや石のおおい斜面などを好むようで、日射のとても強い暑く乾いた場所に生えています。大竜冠、鯱頭、沙漠丸、アガベの青磁炉などとともにあります。
 栽培については、いまになってあれこれ経験を積んでみると、肉質が柔らかくすぐに腐るスクレロ類などに比べればずっと楽です。成長期は東京の温室で2月〜5月と9月下旬頃。温度差がある時に動きますが、鉢内の温度をあげることと夜間温度を下げることが大事です。水のやり方ですが、与えるときはたっぷりめ、そのあと鉢土が完全に乾いたら2週間以上あけて、また灌水という感じ。梅雨〜盛夏の灌水は危険なので、だいたい年に7、8回くらい水をやる感じです。成長はゆっくりで、うちでいちばん早く咲いた個体が実生正木で9年目(径5センチ高さ8センチ位)でした。ちなみに接ぎおろしも容易に実根になります。
 刺、花、育てるおもしろさ・・どれをとっても英冠はスターの資格十分だと思いますが、過去にあまりに難物視されたことがアダになって、あまり栽培されていないようです。輸入種子は入手しやすいので、是非栽培してみてもらえたら、と思います。
 
     "Lake Mead " Clark Co. Nevada
      (ネヴァダ州・ミード湖のほとり)
 "Bunkerville”  Clark Co. Nevada
    (ネヴァダ州・バンカービル)
     ”BeaverDam Mt."  Washington Co. Utah
       (ユタ州・ビーバーダムマウンテン)
E.johonsonii ssp. lutescens
    "Searchlight" Clark Co. Nevada
 「黄花英冠」 (ネヴァダ州・サーチライト)
     "St. George"  Washington Co. Utah
       (ユタ州・セントジョージ)
荒々しく湾曲した刺は白粉をかぶった赤刺。男性的で美しいタイプだが、実生は成長がとても遅い。強烈な日射を受けるライムストンの丘に、鯱頭レコンテとともに生えていた。
平原の枯れ川沿い、石の多いところに密集している。小型の個体が多く、ほとんどが目にも鮮やかな黄刺。近くにはマミのテトランシストラも。
平原が終わり山裾がはじまるあたり、ヨシュアツリー(ユッカ)の群落と入れ替わりで英冠が増えてくる。"multicolor"と呼ばれる多色刺のコロニーで写真のように真っ赤からオレンジ、黄と様々で美しい。まっすぐな針状刺に覆われる感じはまさにイガグリのよう。このタイプは実生も栽培し易いように感じる。一番上の写真で後ろに移っている黄刺はエビの武勇丸。
大柄で、刺も濃赤で強い、英冠らしい英冠。ビーバーダムやリトルフィールドのタイプと、ミード湖タイプの中間といった感じ。より紫刺に近い個体もあった。
花がない写真で残念だが、これが黄花英冠。刺は強く白粉をかぶり、藤色〜灰色に見える。実生栽培はネヴァダ産のほかの英冠より丈夫に感じる。
ビーバーダム山の北側のコロニー。これより北はさらに高い山があり、越えればスクレロ黒虹山の分布エリアに。英冠はこのあたりまでだが、ここでも標高1200mくらいあり、冬の寒さは相当厳しそう。