F. cylindraceus 2 ”lecontei””eastwoodiae”
      (鯱頭レコンテ・イーストウディアエ)

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鯱頭には数多くの亜種変種が記載されていますが、各々の自生範囲が重なり合っており特徴も中間的なものが多い為、その区別はかなり困難です。そもそも、区別の必然性に疑問を感じる部分もありますが、ここではベンソンの地理的分類に準拠してそれぞれの種を紹介します。
レコンテ玉は日本でも園芸名として通用していますが、自生範囲はアリゾナ中西部からユタ、ネヴァダの南部。形態的な特徴は、中刺が緩やかにカーブするに留まりカギ刺にはならない。また刺はやや短く、絡み合わずに球体に沿って伸びる、というもの(鯱頭の基本種はこの反対の特徴をもつ)。確かにこの地域にはそうした個体が多いですが、なかにはかぎ刺のものもあるし、同一種の地域変異の範囲に入る気がします。日本国内では「ネヴァダ産鯱頭」が優形として認められているようですが、産地表示が正確にだとすればそれがレコンテになります。刺が球体に密着し、白粉をかぶった紫刺の個体は確かに美しいものですが、カリフォルニアの鯱頭に比べると、渋めの印象です。
一方のイーストウッディアエはもう少し特徴が顕著なもので、別種とする見方もあります。アリゾナ中南部のごく狭い範囲に分布し、川沿いの崖にしがみつくように生育します。刺は小〜中苗までは赤刺で、かぎ状の幅広中刺が際立つ感じは金赤龍に近い印象。それが径20センチくらいから刺の雰囲気が急に変わり、鯱頭のように長く絡むようになり、色も黄に変わります。大株は丈高くなり完全な白黄刺に。成長段階でハッキリ顔の変わる面白い植物で、中苗くらいまでは鮮赤刺の半島玉、大きくなると黄鳥丸になる、といった感じの美しいものです。自生範囲は鯱頭と金赤龍の境目にあり、両者の中間的植物という見方も出来ます。栽培植物としては、やや湿度のある地域に自生するため日本でも育てやすい気がしますが、あまり認知されていないようです。かつてはレコンテと混同されていたようで、20年くらいまえに某園からレコンテで入手した輸入株はいまにして思うとイーストウッディでした。このときの子孫がいまもレコンテで出回っているようなので、国内市場には混乱があるかも知れません。
"lecontei" north west of LasVegas, Nevada
  (レコンテ玉・ネヴァダ州ラスヴェガスの北西)
大竜冠、アガヴェのエボリスピナなどと共に岩山に生える。同じ場所の平地には沙漠丸が見られる。小さいうちは赤オレンジ刺で大株は黄刺。レコンテの産地にあたるが、特徴はやや曖昧なコロニー。
"lecontei" BeaverDam Mt. south west of Utah.
  (レコンテ玉・ユタ州ビーバーダムマウンテン)
幅広の白粉をかぶった「紫刺」の個体が多く、美しい。しかし大型になると黄色が目立ちはじめ刺も細くなる。記載どおりのレコンテらしい個体が多いが、なかにはかぎ刺に近いものもある。
"eastwoodiae" near Winkelman, Arizona
(イーストウッディアエ・アリゾナ州ウインケルマン)
川沿いの険しい崖にあり、クリフハンガーの別名がある。径15センチくらいまでは赤刺で中刺がが目立つが(下2枚の写真)、成長とともに刺の色、はえ方が変わり、大きな個体は完全に黄刺(上2枚の写真)。あまりポピュラーでないが、実はすぐれた観賞価値を持つ鯱頭。写真は同じ自生地で写したもの。