Ferocactus cylindraceus (=F.acanthodes)1 (鯱頭)         

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目が覚めるような鮮やかな赤刺はまさに刺サボテンの代表格。私が自生地をはじめて旅したのは、この鯱頭の野生の姿に出会うためでした。以来10年近く、数十箇所の鯱頭のコロニーを訪ねました。多くは極端な暑熱と乾燥に見舞われる環境にあり、エキノマスタスの英冠、エキノカクタスの大竜冠などと共に生えています。これらが名うての「難物」であることを考えると、まず枯れることがない鯱頭の育て易さは不思議なくらいです。もっとも栽培下で刺色鮮やかに育てるのはなかなか難しいですが。
実際に沙漠を歩いてみると、野生の鯱頭でもすべてが鮮やかな刺色を誇っている訳ではないことが分かります。一般に健康に生育している植物の刺は黄でも赤でも美しいですが、極端なストレスにさらされている個体は刺色の退色が甚だしい。同じ場所であっても、例えば倒伏して根が半分露出したものなどは、まるで「作落ち」したような姿をしています。自生地付近の民家などに移植され根張りが十分でないものなども同様で、刺はすっかり灰色。こうしたことから、鯱頭はじめ、フェロの刺は単に日射量や空中湿度などだけを要因に退色するのではなく、個体の健康状態を反映する部分が大きいと思われます。
     west of Needles, California
    (カリフォルニア州・ニードルズの西)
カリフォルニアから、かつての「ルート66」(いまのI-40)を東へ。小さな町、ニードルスの西、アリゾナ州境の岩山に見つけたコロニー。赤みが強く幅広の荒刺。
     Anza-Borrego desert state park, CA
    (カリフォルニア州南部・アンザボレゴ公園)
カリフォルニア南部〜メキシコ州境あたりのコロニーには大型で丈高く立派な個体が多い。刺は長く絡み旋風玉に近づくが、色はくすみやすいようで濃い赤刺は子どもだけ。大きくなると白ピンク〜黄刺といったものが目立ちます。
    JoshuaTreeNationalPark, CA
(カリフォルニア州・ヨシュアツリーナショナルパーク)
刺色の鮮やかさでは、カリフォルニア州のこのあたりのコロニーが、おそらくNo.1ではないか。大半が濁りのない濃赤刺だが、オレンジ刺の個体も混じる。石灰岩だらけの山が続き、おそろしく暑いところだが、個体密度は高い。