コピアポア属 
               Genus Copiapoa
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 南米サボテンでもっとも人気のある属のひとつがコピアポア。群生径1メートルを超す大型の黒王丸グループから、地上部はわずか1センチほどのラウイまで、見た目の姿は変化の幅がとても広いのですが、遺伝子レベルの差異はとても小さいと言われています。実際、種間交雑が容易に起きるため、自然雑種と思われる個体も多く、種の同定がなかなか難しいグループです。現地採集の種子を蒔いても、いろいろな顔の個体が出ます。自生地はすべて南米チリのアタカマ(海岸)沙漠に限られており、花など各器官の特徴はどれもきわめて近似しています(ほぼすべて黄花)。
 アタカマ沙漠は世界でももっとも降雨量の少ない地域で、サボテンではエリオシケ属の多くの種も分布しています。一帯は低緯度であるにもかかわらず、沖合を流れる寒流の影響であまり高温になりません。年間を通じての温度差も比較的小さく、降水量も年間50ミリ以下のエリアが大半で、ほとんど雨が降らない特殊な気候です。そのかわり毎朝海霧(海からの霧)が発生し、コピアポアの自生地を潤します。コピアポアはこの霧の水分になんらか依存していると考えられますが、雨が数年ふらない地域のコロニーはどんどん縮小(枯死)していくようですし、どこまでほんとうに「霧を吸って」生きているのかは謎に包まれています。いずれにせよこうした環境は、寒暖差が激しく雨季乾季の別がはっきりあるメキシコなどのサボテン自生地とはかなり異なります。
 そんな特異な環境に自生する割に、コピアポアの栽培はさほど難しくありません。寒さにも強く、多少の過灌水でも根腐れしません。ただ、成長期はほかのサボテンと少しズレているようで、私のところでは晩夏から冬にかけて、そして早春によく成長し、花を咲かせています。また、一部の種は成長点にカサブタ状の病変(エリオシケ属の項、参照)が出ることがあります。
 枯れないとは言っても、コピアポア各種を野生株のように美しく育てるのはなかなかの難事業です。たとえば代表種・黒王丸は、巨大に育ち固く蝋質をかぶった白肌と真っ黒で太い刺がすばらしいコントラストを見せるウルトラ人気種ですが、成長も遅く、野生株のような白肌の威厳ある姿に育て上げるのは至難です。自生地以外ではなかなか「白肌」にならないと言われるこれらの種も、実生するとそこそこ白くなる個体が出ます。写真をのせた孤竜丸はまずまずの選抜品ですがこれは実生正木で10年あまりかかっています(接ぎ木すると、肌が白くなりにくい)。しかし、これでも野生株の平均点にも及びません。今後日本人が得意とする「園芸化」を進めれば内地産の真っ白コピも実現できるかも知れませんが、「白い兜」のように簡単にはいかないでしょう。一方、小型のコピは植物体本体は地味ですが、根が巨大化し貯水機能を持つものが多く、野生ではほとんど地中に没して生育します。栽培下ではどうしても上に膨れて、だらしない群生株などになりがちですが、地表高1センチくらいの扁平で赤銅色の個体に育てるのが私の理想・・。
 コピアポア、特に大型種は成長が遅いのでなかなか開花株に至らないのですが、今後も写真を増やしたいと思っています。
 
Copiapoa barquitensis 
FR654 Barquit, Chile

コピアポア・バルクィトエンシス
Copiapoa calderana
KK 708 Cerro Copiapo

冥王丸(帝冠竜)
Copiapoa cinerea ssp. columna-alba 
KK611 Cifuncho

孤竜丸
Close up of flower, 10years old

上記、花のアップ。実生から約10年
Copiapoa gigantea
KK 80 Paposo - Taltal

ギガンティア(逆鱗玉)
Copiapoa laui
Esmeralda

コピアポア・ラウィ
Copiapoa maritima
KK1709, Paposo

コピアポア・マリチマ
Copiapoa mollicula 
KK657 Chanaral 

コピアポア・モリクラ