Big Bend National Park

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12/31/'96

国立公園までの最後の町、マラソンを過ぎ、漠々した広野をひたすら南へ下る。ここから先はモーテルもホテルもない。だからガスは満タン、食料も水も十分に積み込んである。ビッグベンドと云う名の通り、公園はリオグランデ川がぐるっと南へ大きな弧を描くことで、メキシコ側へせり出した格好になっており、まさにカクタスの宝庫だ。

ビッグベンド国立公園

 

ゲートを入って間もなく、ダートロードを東へ。石灰岩のスロープには、エビの御旗、ネオロイデア・コノイデア、太平丸が多い。たまに羅紗錦も見かける。足にまとわりつく厄介者はアガベ・レチュギラか。此処でみかけたマミ・ラシアカンサはやけに大きかった。直径5センチ以上はあっただろうか。気温は高くTシャツでも汗だくになる。2時間あまり歩き回ったが期待していたマスタス籐栄丸には会えなかった。

 

E. dasyacanthus

   御 旗

Neolloydia conoidea

円錐丸
G. wrightii
羅紗錦
M. lasiacantha
姫 玉

 

さらに南へ下り、宿営地リオグランデビレッジに着いたのはもう夕刻。すぐそこはもうメキシコ、ボクイラスキャニオンだ。夕日を見ようとリオグランデ川の崖を登っていくとマスタス・ワルノッキーの群落に出会う。日本ではほとんど栽培されていない植物で、一瞬コリファンタかテロと見まちがえそうだ。早くも花を着けている個体さえあった。

 

Boquillas Canyon

E. warnockii

 

夜はビレッジのキャンプエリアで。といってもテントはないので寝袋で地面に転がる。めまいがするほど沢山の星がそらを埋めつくしている。なんて贅沢なホテルだろう、と思ったのもつかの間、気温はどんどん下がって0度近くだろうか。震えながら新年を迎えた。遠くのほうでコヨーテが吠えるのを何度か聴いた。

 

1/1/'97
宿営地リオグランデビレッジの周辺は石灰岩の丘陵地だ。だいたいこういう場所にはサボテンが沢山あるので探すときのひとつの目安になる。新しい年、朝一番で見つけたのはフェロの大碇。朝日に赤い鈎刺が映えて遠くからも良く目立った。ニッポンでは赤はおめでたい色のひとつである。なんともこの日にぴったりの植物で少し可笑しくなった。

 

Ferocactus hamatacanthus
大 碇

 

大碇を見つけた丘をさらに登っていくとふたつの擬態植物に出会う。亀甲牡丹はリビングストンと云う名の通り、石灰の礫に埋もれているが、云われるほど見つけにくいモノではない。栽培植物のように青々したものはひとつもなく、半分死んでいるみたいな枯淡の風格がある。

 

A. fissuratus
亀甲牡丹

 

見つけて驚いたのはエピテ・小人の帽子だ。直径3センチ、石灰岩と全く同じ色の小さなボタンが地面に填り込んでいる感じだ。およそ生き物らしくない不思議な植物が等間隔に並んでいる様はなんとも奇妙な眺めである。こちらも栽培品のようにまるまるとはしておらず、ぺったんこだ。群生している株はひとつもない。同じ場所にそっくりのマミ・ラシアカンサも生えている。こちらは直径2センチあるかないか。あっという間に時間は過ぎ、いつの間にか汗だく。ゆうべ凍えたのが嘘のように思える。

 

Epithelantha micromeris v. bokei
 
M. lasiacantha

 

ビッグベンドは広大でとても二日三日で見て回れる場所ではない。リオグランデビレッジより南にも素晴らしいエリアがあるがそれらはトレッキングオンリーだ。後ろ髪をひかれつつも昼過ぎには帰路につく。こんどは公園を西から抜ける。帰り道で見かけた興味深い植物の写真を二枚ご覧戴きたいと思う。

 

E. russanthus

E. "emskoetteriana"

 

小人の帽子
姫玉
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このページでは、植物自生地への旅を絵日記風に紹介していきます。いまのところ、旧ホームページから掲載していたものだけですが、今後拡充する予定です。
Next trip is to South Arizona.......