篠田真由美 著作リスト 2002/08/12
篠田真由美作品のリストです。いま現在はおそらく、「講談社ノベルス建築探偵シリーズを書いているミステリ作家」として知られているのではないでしょうか。でも本来は幻想文学に造形が深い方で、デビュー作もそういう雰囲気を漂わせています。これまでに刊行された著作を分類して紹介します。
ミステリ<西洋時代物>
あえてシリーズと呼ぶ2作。第3作第4作があるのか気になります。なお、プレラッツィについては『彼方より』参照のこと。
1.『琥珀の城の殺人』 1992東京創元社→1998講談社文庫
ミステリ作家・篠田真由美のデビュー作。鮎川哲也賞の最終候補作に残り注目され、刊行されました。1775年ころの東ヨーロッパが舞台で、ちなみにこのタイトルは<ベルンシュタインブルグの殺人>と読みます。日本ミステリ界においては、本格的なヨーロッパ時代物であることがいちばんの特徴でしょう。探偵役は謎の美形中年フランチェスコ・プレラッツィ。
2.『祝福の園の殺人』 1994東京創元社
1.に続く第2弾。こちらの舞台は17世紀のイタリアです。1670年、フランスならばルイ14世ばりばりの時代。舞台装置は別荘、庭園。上の1.も城が舞台ですし、作者の建築に対する並々ならぬ関心が窺えます(それが建築探偵シリーズへ受け継がれるわけです)。 ところで巻末の解説のラストに、次回作・次々回作の構想が匂わされています。もしあるなら出してくださいねっ>東京創元社さん。
ミステリ<建築探偵桜井京介シリーズ>
これはご存じのかたも多いはず。いまや講談社ノベルスの看板シリーズの1つ。1-5が第一部、6で第二部が始まっています。
1.『未明の家』 講談社ノベルス/1994
舞台は1994年5月の黎明荘
2.『玄い女神』 講談社ノベルス/1995
舞台は1984年10月のインドと1994年10月の日本:恒河館
3.『翡翠の城』 講談社ノベルス/1995
舞台は1995年6月の碧水閣
4.『灰色の砦』 講談社ノベルス/1996
舞台は1988年12月の輝額荘
5.『原罪の庭』 講談社ノベルス/1997
舞台は1989年の美杜邸温室
6.『美貌の帳』 講談社ノベルス/1998
舞台は1996年10月の鹿鳴館
7.『桜闇』(短編集) 講談社ノベルス/1999
シリーズ初短編集。巻末に丁寧なシリーズ年譜があり、じっさいの年月と同じようにシリーズに時が流れていることがわかります。収録された短編は10作品。長編同様、作品世界が満開ですが、こちらのほうが明るい感じの作品が多いでしょうか。トリック的にはダヴィンチも設計を試みたという二重螺旋階段がポイントです。それにしても、深春と蒼のコンビがますますよろし(というか、アヤシイ??!)。
8.『仮面の島』 講談社ノベルス/2000
舞台は1999年10月のイタリア:サンタ・マッダレーナ島の城館
時代物ファンタジー
史実を題材にしたファンタジー群です。いずれも題材になった人物は(表というよりは裏の)歴史上の有名人物なのが特徴。篠田史観を感じることができます。
1.『ドラキュラ公 ヴラド・ツェペシュの肖像』 講談社/1994→講談社文庫/1997
吸血鬼ドラキュラにその名を使われた15世紀のワラキアの君主ヴラド・ツェペシュが主人公。真のツェペシュ像を再現するのが眼目です。ツェペシュへの、作者の愛情を感じます。
2.『ルチフェロ 切り裂きジャックの告白』 学研/1995
19世紀末ロンドンを恐怖に突き落とした切り裂きジャックがテーマ。わたしはこの作品が好きなんですよ。これはテーマ的に『天使の血脈』に通じるかも。つまり、天使なんです。
3.『彼方より』 講談社/1999
これはこの分類ではここ、時代物ファンタジーに入るのですが、じつはミステリ?の原点です。時代物としてみるとき、舞台は15世紀イタリアとフランス、テーマは、ジル・ド・レとジャンヌ・ダルク。ふたりが、というよりは、ジル・ド・レその人とレが崇めたジャンヌという少女、という捉え方が正解かもしれません。いっぽう、西洋時代ミステリシリーズのプロローグと見るとき、注目は俄然フランチェスコ・プレラッツィに集まります。
プレラッツィは実在の人物をモデルにしてるそうですが、日本で「プレラッツィ」といえば、まず篠田真由美が創作した人物でしょう。もともとは探偵ではなく一個の人物として創造されたプレラッツィの、等身大の姿がこの作品であきらかになります。
全体は二部構成で、前半は学友からプレラッツィが語られ、後半はプレラッツィが死に際し、その学友にあてた手記が披露されます。 プレラッツィについての事実は、もしかしたら『琥珀の城』というミステリが好きなファンには邪魔なものかもしれません。が、『琥珀の城』そして『祝福の園』を壮大な物語の一エピソードとして見るには、この作品が必要なのです。
SF系ファンタジー
1.『天使の血脈』 徳間ノベルス/1995
2.『堕とされしもの 天使の血脈』上下 徳間ノベルス/1996
1-2は完結したようではないので続きが待たれるシリーズです。長髪白人系美形キャラが好きな人にはとくにお薦めですが、内容的にはルネサンス期ヨーロッパのイメージ。篠田作品らしいファンタジー。
3.『天と血の娘 根の国の物語1』 中公C★NOVELS/1996
4.『芯の樹を求めて 根の国の物語2』 中公C★NOVELS/1996
5.『眩惑の魔都 根の国の物語3』 中公C★NOVELS/1997
6.『再生の環 根の国の物語4』 中公C★NOVELS/1997
3-6の『根の国の物語』は、うってかわって現代日本が(一応の)舞台で、日本神話にヒントがあります。古代日本というのは、篠田作品としては異色ではないでしょうか。これは4巻完結で、個人的には3の『眩惑の魔都』がお薦め。榊原クンがいい感じなんですよね。3を読むためにはもちろん、1と2を読んでください。4は(わたしには)意外な結末でした。
その他
1.『北イタリア幻想旅行』 三修社(文庫)/1987
2.『この貧しき地上に I』 講談社X文庫/1999
3.『この貧しき地上に II』 講談社X文庫/1999
4.『この貧しき地上に III』 講談社X文庫/1999
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