[98.08.23]

中大兄さまとの出会い

 

出会いって言ってもほんとうにお会いしたことはありません。さすがに愛情だけでは時空は超えられません。ちなみに中大兄皇子(天智天皇)は626年生まれ、671年没です。

みなさんは中大兄皇子にどんなイメージをお持ちでしょう。大化改新の中心人物で古人皇子を冤罪なのに謀反の罪で処刑し、盟友にして岳父の蘇我石川麻呂を冤罪で陥れ自害させ、蘇我赤兄を使って、有間皇子を謀反の罪に陥れた、冷厳卑劣な政治家? あるいは、無謀にも唐に戦いを仕掛け大敗した(白村江の戦い)能なし軍人?

わたしが、はじめて中大兄さまを知ったのは小学生の頃読んだ歴史読み物の本。大化改新に関する読み物で、若くて強い意志を持っていて行動力があってかっこいいなぁ…って一読み惚れです(笑)

それから学校の授業ですね。聞けば聞くほどすばらしい。19歳で政敵をやっつけるわ、国政を牛耳るわ、唐との戦いに乗り出すわ、スケールの大きさにうっとり。高校の頃読んだ『日本の歴史』で、「同母の妹の間人皇女といい仲だったのでなかなか即位できなかったのではないか」と書かれているのを読んだときには、<じつは兄妹>ネタが好きなわたしは完全にノックアウトされました。

#<じつは兄妹>ネタというのは、愛し合った男女がじつは兄妹で、許されない恋だったという話。かつて少女漫画によくあった。

わたしの中大兄熱が再燃したのは、遠山美都男氏の『大化改新』(中公新書)を新刊で読んでから。これはまじめな論文で、いままでの大化改新像をくつがえす説です。丹念な調査と論考に惹かれました。これぞ「本格ミステリ!」と思うようなおもしろさにも! 

で、じぶんでも『日本書紀』などを読み、じぶんなりに中大兄皇子の実像にアプローチしてみようと決意。それからいろいろと専門書も読み出しました。

いまわたしが考えている「中大兄がしたこと」は、わたしが一読み惚れした頃のものとはかなり違っています。でも、本質的な部分で最初の印象は変わっていません。……つまり、卑劣漢でもなければ能なし軍人でもない。

おそらく日本ではじめて日本を「国家」にしようと考えた人物。それだけのことを考える、思考の奥行きを持った人物です。世間では、冷酷で陰険で人を愛せないような人物と思われているフシがありますが、とてもそうは思えないのです。そういうことも含めて、ここで中大兄の業績・人物・時代について考えていけたらなぁって思ってます。


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