高樹のぶ子 『白磁海岸』



              2020-04-25


(作品は、高樹のぶ子著 『白磁海岸』      小学館による。)
                  
          

 初出 「北國文華」(北國新聞社刊)『波涛』と題して55号(2013年春号)〜71号(2017年春号)に連載。本書刊行に際して加筆訂正の上、改題。
 本書 2017年(平成29年)12月刊行。

 高樹のぶ子
(本書による)  

 1946年山口県生まれ。84年「光抱く友よ」で芥川賞、94年「蔦燃」で島清恋愛文学賞、95年「水脈」で女流文学賞、99年「透光の樹」で谷崎潤一郎賞、2006年「HKKAI」で芸術選奨文部科学大臣賞、10年「トモスイ」で川端康成文学賞を受賞。その他に「百年の預言」「満水子」「罪花」「ナポリ魔の風」「マイマイ新子」「甘苦上海」「fantasia」「飛水」「マルセル」「香夜」「少女霊異記」「オライオン飛行」など多くの作品がある。

主な登場人物:

堀雅代(60歳)

息子 圭介(22歳で没)
姉 二人

圭介を愛する母親はその死に、利夫、涼子夫婦が関係していると真相を突きとめようと、モロミ館(小さな多目的ホール)の管理人として金沢に半年前に来た。一級和裁士の資格を持つ。
・圭介 利夫と涼子が結婚、敗れた圭介が悲観して金沢港に投身自殺の噂。
・夫は大阪に単身赴任、二人の姉は結婚、

柿沼利夫(としお)
妻 涼子(旧姓 羽田)
娘 樹利

金沢芸術大学で美術科の准教授。
・妻の涼子は絵画レッスンの先生。利夫、圭介と母校で三人仲良しであった。

遠藤美津
母親 八重

竹久夢二記念館でミュージアムショップを預かる20歳。18歳も離れている利夫との逢瀬を重ねている。
・母親の八重は小料理屋「舟味
(ふなみ)」を営む。美津との母子家庭。

薄井宏之 30歳を越えたばかりの、金沢芸術大学情報管理部講師。3年前譲り受けた録音室の隅のロッカーの中から、灰白色の直径20数cmの皿が出てきて騒ぎに巻き込まれる。
金沢芸術大学関係者

・学長
・里山進教授
・岡部教授

羽田豪太郎(うだ・ごうたろう)<ウダゴウ>

柿沼涼子の父親。芸術院会員、金沢芸術大学の特別顧問。
著名な陶芸家に違いないが、吐く息が陰湿で高圧的。(薄井評)

伊東信次 新聞記者。薄井宏之の教え子。
藤吉千騎

一応定年退職している元新聞記者。長く羽咋警察署担当。
伊東の先輩記者。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 大学生だった息子の16年前の不可解な死の謎を追う母、息子の親友だった夫婦、不倫の恋に溺れる20歳の女性、謎の朝鮮白磁を発見した若き大学講師と陶芸界の黒幕の老人…。古都金沢を舞台に、大学生の死の謎と白磁の正体をめぐって驚くべき物語が展開する。

読後感:

 堀雅代なる母親が、息子の圭介が金沢港の防波堤から身を投げて亡くなったことに、圭介と同じ金沢芸術大学で仲良しであった柿沼利夫とその妻となった涼子に疑念を持ち、真相を知ろうと金沢のモロミ館の管理人として働く。時に涼子の娘の樹利を預かることも。
 その利夫は遠藤美津という竹下夢二記念館のミュージアムショップで働く18歳も年下の女性遠藤美津と不倫をしている。

 一方同じ金沢芸術大学で情報管理部の講師である薄井宏之が、自身のロッカーから灰色の皿が出てきたことから、学長や教授から呼び出された中に、羽田豪太郎という芸術院会員でこの大学の顧問に皿の出自を問いただされ、白磁の皿にまつわる詳細を調べ出すことに。

 物語は雅代の探偵もどきの動き、美津の利夫に対する恋の展開、薄井の雅代に聞いた圭介の自殺に関わるウダゴウの反応の異常さに、雅代や美津と連携しての真相追究と、上質のミステリーとしての展開が読者を引きつけていく。

 ラストには柿沼利夫の自滅的行動により一気に終末へと展開するが、利夫の残した手紙が事の成り行きを述べているのだが、結末はなんとなく中途半端な終わり方にしぼんでしまった感がぬぐえない。ウダゴウの大義のための“大義”が果たしてどういうものであったのかしっくりこない。


余談:

久しぶりの高樹のぶ子作品を読んだ。読んだのが1984年出版の芥川賞受賞作品「光抱く友よ」と2001年出版の「満水子」。その後2001年以降芥川賞の選考委員になっている。現在は変わっているようだが、2017年まではその様なことがウィキペディアでは載っていた。
 著者の作品をずっと読んでいるわけではないので書き風が変わってきたのかは分からないが、また他の作品も読んでみたくなるものだった。
 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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