伊岡瞬 『不審者』



              2022-05-25


(作品は、伊岡瞬著 『不審者』        集英社による。)
                  
          

 
初出 「青春と読書」2018年7月号〜2019年6月号。単行本化にあたり、大幅に加筆・修正。
 
本書 2019年(令和元年)9月刊行。

 伊岡瞬
(いおか・しゅん)(本書による)

 1960年東京生まれ。2005年「いつか、虹の向こうへ」で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞を受賞しデビュー。著書に「145gの孤独」「瑠璃の雫」「教室に雨は降らない」「代償」「もしも俺たちが天使なら」「痣」「悪寒」「本性」「冷たい檻」など。

主な登場人物:

折尾里佳子(りかこ)
夫 秀嗣
(しゅうじ)
息子 洸太
(こうた)
義母 治子
(はるこ)

準大手出版社を退職、結婚を機に校正・校閲の仕事をする、33才。6年前、秀嗣の実家に越してきた。自他共に認める心配性。
・秀嗣 チルド食品を主力にした中堅の食品メーカー「ヤナハル食品」の総務部企画調査課勤務、34才。
・洸太 年長の幼稚園児、5才。どちらかと言えば人見知り。
・治子 夫秀嗣の母親、75才。負けず嫌いで、気が強い。 中学の時数学の先生。離婚後旧姓の折尾を名乗る。

片柳優平

秀嗣の兄。起業してクラウドファンディグ。
21年前優平が中学1年の時、両親が離婚して、お父さんと一緒に出て行った。 21年を経て突然里佳子の家に居候のごとくに振る舞う。

小川潔(きよし)
妻 まさ枝
娘 姉 木乃美
(このみ)
妹 里佳子

・父親 酒好きだが体質的に強くない。飲むと変身、理不尽なことで怒り出す。 里佳子20才、専門学校2年性の時、失踪。
(台風の翌日、釣りに出て死亡?)
・まさ枝 腰が低く、治子とは真逆。今はさいたまのマンションに一人暮らし、63才。
・木乃美 3つ年上。短大卒業後家を出、6年前水死。
・里佳子 高校時代の友人の結婚式の二次会で秀嗣と出会い、付き合いだして結婚。

バス友ママたち

幼稚園のバス出迎え時の、折尾洸太のママ友たち。
・岩崎千紗   <ハキハキママ> 阿礼
(あれい)くんのママ。
・栗原由加利 <セレブ美人ママ>賢
(すぐる)くんのママ。
・横川亜実  <ラテン系ママ> 柑奈
(かんな)ちゃんのママ。

緒方省(しょう) フリーランスのライター。 高校時代付き合っていた。 2年前、再会。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 長年行方不明だった義兄の登場。崩れ始める、平穏だった家族関係。ある1つの悲劇をきっかけに、すべての景色は一転する。『代償』の著者が贈る、渾身のサスペンス&ミステリ。

読後感:

 主人公の折尾里佳子の家族は夫の秀嗣(しゅうじ)と息子の洸太(5才の年長幼稚園児)、そして夫の母親(治子)の4人暮らし。その中に夫の兄である片柳優平なる異分子が入り込んで、 里佳子の精神を揺さぶる行動を示す。
 里佳子は心配性でかつ過去に赤ん坊を死なせた負い目を持つし、酒好きの父親の失踪、及び突然の変貌をとげる父親の姿を見ていて、男性に対する拒絶感を抱いているという。


 そうしたことから、そういう心配のなさそうな秀嗣と結婚したものの、優平のような異分子が入り込んだときの夫の兄貴を頼り、何も里佳子の防波堤になってくれない行動がさらに里佳子を迷わせる。
 さらに義母の治子(はるこ)の認知症の気配も重なり、優平が里佳子以外の家族を手なずけていく様子に、ますます精神的負荷が追い打ちをかける。

 洸太の幼稚園の送迎バスのバス友ママたちとの交流も、校正・校閲の仕事をする里佳子にとって悩ましいことも追い打ちを掛ける。
 さて、果たして優平の侵略を止められるのか、優平の真の目的は何か、そして何者なのか、物語は果たしてどんでん返しが起きるのか、緊迫感が次第に読者を悩ませていくミステリー感溢れる物語である。


余談:

 序章で校正・校閲の仕事をしている里佳子が、気がつくとうつぶせに寝ている洸ちゃんの様子が変。 会社のゴルフ大会から帰ってきた夫の秀嗣が帰ってきて「これ。 なんだか、変じゃないか」と。 窓の外では嵐のような強風が吹き荒れている。 そんなシーンが描写されている。
 ラストの展開にやはり驚きのハプニングが待っていた。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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