本書 2015年(平成27年)5月刊行。書き下ろし作品。 堂場瞬一:(本書による) 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年秋「8年」にて第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ、「汐灘」サーガの他、「誤断」「Sの継承」「ラスト・コード」(以上小社刊)、「警視庁追跡捜査係」シリーズ(ハルキ文庫)、「アナザーフェイス」シリーズ(文春文庫)、「捜査一課・澤村慶司」シリーズ(角川文庫)、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ(講談社文庫)、「複合捜査」(集英社文庫)、「ルール」(実業之日本社)、「埋もれた牙」(講談社)、「警察回りの夏」(集英社)、「ターンオーバー」(角川春樹事務所)などがある。
・坂元 捜一課長。 ・相澤 殺しの方の特捜本部の強行犯係長。
極東物流の社員、アジア第一課。独身、32歳。 現地の物流基地のまとめ役、失踪中。
丸の内のオフィス街で爆破事件が発生。現場の物流企業で事情聴取を行った一之瀬は、企業脅迫事件と直感する。昇進前の功名心から事件担当を名乗り出ると、教育係の藤島からは一人でやれ、と突き放される。管内で新たに殺人事件も起き・・・。新米刑事・一之瀬に、自立の刻が訪れる。文庫書き下ろし第三弾。
「ルーキー」「見えざる貌」に次ぐ刑事の挑戦・一之瀬拓真シリーズの第3弾。交番勤務3年、刑事になって2年の新米刑事を主人公に現代の若者刑事らしい雰囲気を漂わせながら、紆余曲折を経て昇進試験合格し巡査部長に昇進。千代田署から捜査一課へ引っ張られる噂に気持ちは高ぶっているが、ぶち当たった事件、企業爆破事件にかり出され、さらには殺人事件が重なり、殺人事件の方に移動する。 容疑者を自ら取り逃がしてしまった失態に、めげずに失敗を取り戻そうと、一人で手柄を立てて挽回しようと行動して参考人被疑者を死なせてしまい、自らも負傷する。
事件の真相に至るまでの指導係の藤島警部補とのやりとり、なんだか相性が悪い相澤係長とのやりとり、同期で真逆の筋肉馬鹿の若杉とのマッチアップ、悩んで落ち込んでいるときの真友とも言える城田?との電話のやりとり、解説(若杉七海)で知ったが、失踪課の高城室長のことなど、新米刑事の物語も結構面白い。 物語中にもあるが、一之瀬の失態にもかかわらず、自ら手を挙げ希望する役割が認められる幸運には何か隠されたものがあるようだ。