安東能明著 『死が舞い降りた』


 

              2017-01-25



(作品は、安東能明著 『死が舞い降りた』   新潮社による。)

          

  本書 1995年(平成7年)1月刊行。

 安東能明(本書より)
 
 昭和31年生まれ。静岡県出身。明治大学卒業後、浜松市役所へ。現在企画課で、新世代通信網の実用化実験を担当している。徹底した取材による迫力あるプロット展開を得意とし、ミステリー以外に、国際謀略小説などにも意欲を燃やす。 

主な登場人物:


藤岡光男
妹 達子
父親 伊久男

弘前から妹を残し東京に出て運送会社のフリーウェイの荷さばき所で働く。玉川上水に住む。
父親の伊久男の家系は代々マタギ仲間では首領家と呼ばれていた。山崩れで両親は死亡、青山に連れられた中学の光男と小学の達子見つかる。

エミリオ 日系ブラジル人。藤岡の口利きでフリーウェイに臨時雇いで。日本に来て2年目、5ヶ月後帰国の予定。
青山誠次

山を愛し焼き物を愛する陶芸家。伊久男の土地の山奥に住み、熊鷹の子を人工授精させ育てる。
親 レンザン、次 ワカツキ、次 有明(光男が名付け親)

榛葉淳子(しんば) 配管機器類の工事用材料の台帳管理が主な仕事。浜離宮の鷹狩りの実演会で藤岡と出会う。義手。

板倉忠義
妻 加代

京浜建設(株)勤務。リバーシティーの高層マンションに住む。かって京浜建設青森支店長で青森に。

真鶴延行(37歳)
妻 郁子

東京都立大学理学部助教授。昨年8月東京地質協会の幹事役拝命。ジョギング中襲撃され、致命傷は喉がアーミーナイフ様、眼球が抜き取られ・・。
高安順三 青森から出稼ぎの男。工事現場の6階から転落死。有楽町線月島駅内からの電話Boxから匿名で高安順三を「真鶴事件の犯人」と。
間宮 鰺(あじ)ケ沢に住み白神山地の林道建設に反対の最右翼。
雪島昌人 警視庁刑事部捜査一課第四係主任、警部補。
中川 同四係、巡査部長。
吉元 警視庁刑事部捜査一課第五係係長。
小柳津(こやなず) 本庁鑑識課、万年巡査部長。
奥村 本庁共助課。雪島と同じ大学の2年先輩。
榎本 多摩中央署刑事、警部補。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 旋風とともに背後から襲い、喉を突き刺し、眼球を抉る。過去を忘れ、何もなかったように生きる者こそ、わが標的。そう、これは「狩り」なのだ…。朝もやにけむる街でジョギング中の男が惨殺された。死亡推定時刻は午前六時。総頚動脈、後頚部に深い創傷。頚部椎間板亀裂。左鎖骨部分骨折。眼球剥落。死因は外傷性ショック死。遺留品は殆どなく、凶器も不明。行き詰まる捜査の果てに、やがて浮かんできたものは。森に棲む者の復讐を描くサスペンス。第7回日本推理サスペンス大賞優秀作。

読後感
  

 板倉と真鶴なる人物が誰かから狙われているという緊迫感があるシーンと一方で藤岡とエミリオなる人物がどういう関係があるのか分からないが展開する。そんな中真鶴家のコリー犬ジェミニーが異常な死に方をすることでミステリーの幕開けとなる。
 登場する刑事の雪島とコンビとなる中川の取り調べが並行して物語が展開する。
 なかなか殺人の発想が奇抜でおもしろい。

 第七回日本推理サスペンス大賞優秀作(「褐色の標的」)である。大賞にならなかった点は本書の最後に選評が掲載されているが、なるほど人物像の描きがもう少し足りないということか。
 二人が狙われる理由が最初の内は分からなくて、でも何故か白神山地が出てきたり、鷹の話が出てきたりと雰囲気がぐっと懐かしさというか以前に読んだ熊谷達也著の「邂逅の森」のマタギのシーンが思い出され引き込まれてしまった。

 ラストの藤岡光男の有様、榛葉淳子の藤岡に対する関係や証言、青山誠次に対する罪の有無、エミリオに対する追求といずれもなすすべもなく、榎本とともに青山の住む小屋を訪れ交わすやりとりがさわやかに聞こえてくるのも後味の良い作品と感じられた。

  

余談:

 
選評を読んで感じたが、安東能明という作家(本作から創作活動に入った)「出署せず」や「伴連れ」を先に読んで感銘を受けていたが、著者のはじめの頃の作品であるが、次第に力をつけている様子がうかがえて嬉しくなった。 
背景画は、海をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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